やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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職場見学の終了です。


(120)職場見学の終わり、そして……

職場見学中だったのだが、美智恵さんに呼ばれ体験コーナーを途中で抜け、その後運悪く陽乃さんに捕まった。

美智恵さんに、職場見学の内容についての感想を聞かれ、俺は正直に答えた。

やはり俺の推測通りで、美智恵さんの狙いはGSのイメージアップ戦略とゴーストスイーパー自体の人員増強だった。

だが、そんな美智恵さんからは、何か焦りのような物を感じた。

 

陽乃さんは、やはり関西の名家土御門家の名代として、この職場見学の有用性を確認しにここに来ていたのだった。

だが、陽乃さん自身は別の思惑があった。

キヌさんの弱みを握りにきたのだ。

何故そんな事を?と思ったが、どうやら雪ノ下がキヌさんと仲が良い事を陽乃さんについしゃべってしまったようだ。それにシスコンの陽乃さんがキヌさんに嫉妬してこんな感じに……。

キヌさんに弱点なんて無いんだけどな……まあ、しいて言えば横島師匠に惚れてるということぐらいだが、弱点にはならないだろう。

因みに、俺は俺で陽乃さんにデートの約束をさせられる。

俺のどこがいいのかわからんが、無下には出来ない。

小竜姫様にもそう言われてるしな。

はぁ、気が重い。

 

 

漸く解放された俺は、第2訓練室に戻ってみると……

美神さんが真面目に皆に何かを説明していた。

「札といってもね。いろんな種類があるし、術式も多彩にあるわ。状況を見極め、適した札を選び適した術式を付与させないと意味がないわ」

美神さんはそう言って数種類の札を取り出し、皆の間に掲げる。

やっぱ何だかんだと、ちゃんと生徒達に教えてる。

信じてましたよ美神さん。

 

「この場合はこうよ」

そう言って、美神さんは札から爆符を選び、術式を込め、斜め上に向かって投げつける。

 

その先には、す巻きに猿ぐつわを噛まされた若者が天井から吊るされていた。

美神さんが投げつけた札は、その若者に当たって爆発。

 

「むぐ―――っ、むぐーーーーっ!!」

その若者、横島師匠は爆発をモロに食らって、煙を上げていた。

 

………

……

おい!何やってんだ!あんたら!?

ちょっ、こんな公衆の面前でいつものノリは流石に厳しいぞ!

あんたらの常識は、世間では非常識っていうんだぞ!

 

「今私が選んだ札は、変態の悪霊に効果的なものよ。今の札が効果を発揮したということは、この頭の中がかわいそうな人は、変態の悪霊に憑りつかれてるというわけよ」

しかも、何もなかったように美神さんは講義を続けてるし、生徒達も何もなかったかのように真面目に聞いてるんだが!?しかも何メモってんだよお前らも?

それとだ。変態の悪霊に効果がある札なんて聞いた事も無いんだが!そもそも変態の悪霊って、どういうカテゴリーなんだ?それに美神さんが投げた札は、人間にもよく効く、爆符の札だぞ!

 

キヌさんはオロオロと心配そうに横島師匠を見上げてるし……

 

な、何があった!?

 

キヌさんが止めないところを見ると、横島師匠に落ち度があった事は明確だが……

 

俺は後ろの方にいる雪ノ下と由比ヶ浜、川崎の所に行きコソッと状況を聞く。

「何があった?」

 

「見てのとおりよ。あなたこそ、何処に行っていたのかしら?」

「ヒッキーのお師匠さんね。また現れたの。そんでカメラマンのふりして写真をパシャパシャと撮りだして、女の子ばっかり」

「美神さんがあの変態の脳天に一発かかと落としを入れて、あそこに吊るしたのよ。流石は現役最高と言われるゴーストスイーパーね」

雪ノ下、由比ヶ浜、川崎がそれぞれ応えてくれる。

 

それだけで十分理解出来た。

 

どうやら、横島師匠は美神さんのデモンストレーション中に、デモ内容を撮影するカメラマンか何かのふりをして再び現れて、「女子高生、女子高生の夏服!」とか叫びながら、女子生徒達の写真を撮りまくってたのだろう。しかもきわどい角度から。

そんで、デモンストレーションを邪魔をし、恥をさらした横島師匠を、美神さんの怒りの一撃からの、す巻き、天井吊り下げと……。

さらに横島師匠を変態の悪霊に憑りつかれた可哀そうな人という事にしておいて、悪霊に憑りつかれた人にたいしてのお祓い実証デモンストレーションの的になったと。

横島師匠はまさに自業自得なんだが。

なるほど、それで生徒達は実戦形式のデモンストレーションだと思って、この異常な状況でも平然と講義を受けてられるということか。

納得だ。

 

 

 

この後も、横島師匠は実戦形式のデモンストレーションの名の元で、美神さんから、数々の呪術的折檻を受けるのだった。

 

まあ、横島師匠は普段から美神さんから攻撃受け慣れてるから、死にはしないだろうけどな。

 

最後にはどこから持ってきたのかわからないが、グツグツと煮えたぎった熱湯が入った大釜の上に、手足を縛られ猿ぐつわをされたままの横島師匠を吊るし……

「もう、変態の悪霊は抜けたと思うけど、それを確認しないといけないわ。この熱湯に落ちて生きていたら、まだ変態の悪霊が憑りついているわ。死んじゃったら人間ね」

 

……それって、どっちに転んでも死んじゃう奴ですよね。

どこの魔女裁判だ!

 

しかも生徒達は興味深々に見てるんだが!

 

美神さん何してるんすか!

横島師匠はそれで死なないとは思いますが、生徒達にトラウマでも焼き付けるつもりですか!

誰か止めてあげて!

 

キヌさんが美神さんを説得しようとしてるけど、止まる気配がない。こめかみがぴくぴくしてるし!

相当お怒りの様だ!

 

美神さんは投げナイフを投げ、横島師匠を吊るしてるロープを切る。

横島師匠は、涙ちょちょ切らせながら、熱湯が入った大釜に落ちて行く。

その反動で猿ぐつわは外れ……

 

「うギャーーーーっ!じゅわっちーーーーーっ!」

熱湯の大釜に落ちた横島師匠は手足を縛られたまま、飛沫を上げながら器用に飛び跳ねる。

 

「あら、死んで無いわね。どうやらまだ変態の悪霊が付いてるみたいね。こういう時は強引に!ふんっ!」

「ギャーーーース!!」

美神さんは飛び跳ねた横島師匠に向かって、神通棍を振るい、空中で思いっきり叩きつける。

横島師匠は思いっきり吹き飛び、そのまま壁に激突、崩れるように倒れ、間抜けた顔をさらし、痙攣する。

………何時もの事なのだが、毎度毎度よくこれで死なないよな横島師匠。

たぶん、1分後には復活してるだろうけども。

 

「これで変態の悪霊は退治されたわ。憑りつかれた頭の中がかわいそうな人も、1分後には元気な姿に戻るはずよ。まあ、こんなところね」

美神さんは綺麗に締めくくり、生徒達から拍手が送られる。

 

こうして職場見学は幕を閉じる。

 

穏便に終わってよかった……のか?

ま、まあ、なんだ、生徒達は勘違いしてくれてるから、よかったものの、実際どうなんだこれ?

 

「ヒッキーのお師匠さん、大丈夫かな?」

由比ヶ浜は心配そうに俺に聞いてくる。

由比ヶ浜は何だかんだと優しいからな。

 

「大丈夫だぞ。美神さんも手加減してくれてるはずだ」

俺は由比ヶ浜にこう答える。

まあ、死なない程度の絶妙な匙加減でな。

これ、ほぼ毎日やってるからな美神さんと横島師匠は……、前も言ったが、これは二人のプレイなのだ。きっとそうなのだろう。

 

「あんたは苦労してそうね」

川崎も呆れたように俺に聞く。

 

「そうでもない」

いや、俺はまだいい。

美神さんと横島師匠の間に介入しないしな。

キヌさんが大変だ。

キヌさんが全力でフォローに回るから、まだ何とかなってるのだろう。

 

「………先行き不安ね」

俺の隣で雪ノ下はこんな事を呟いていた。

俺はこの時、このつぶやきの意味が分かっていなかった。

 

 

なんて言うか、色々ありすぎた職場見学だった。

俺のGSバレは避けられたし、生徒からも犠牲者は出なかったし、良しとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その週末の土曜日。

俺は早朝からいつも通り事務所に向かう。

 

俺はまず、美神さんに挨拶すべく4階の事務所にノックをして入るのだが……

「比企谷君、おはよう」

 

「………雪ノ下、こんな所で何してんだ?」

そう、俺の職場の事務所で、私服姿の雪ノ下が掃除機をかけていたのだ。

 

「見てわからない?掃除よ」

雪ノ下は平然と答える。

 

「……見りゃわかるだろ。俺が言いたいのは、なんでここで掃除してるかだ」

 

「そうね。どう言ったらいいのかしら?後学のためかしら?」

雪ノ下は人差し指を顎に持って行き、思案顔をしながらこんな事を言う。

なんで疑問形なんだよ。

 

「……まさか!?………雪ノ下、悪い事は言わない。ここでバイトをするのだけはやめておけ」

まさか、オカルト事務管理資格者認定試験に合格したからって、手近なここでバイトするつもりか?

やめておけ、ここはお前の常識が通じる場所じゃないんだぞ!

 

「なぜかしら?でも、もう手遅れかしら」

雪ノ下は悪戯っぽい笑顔を俺に向ける。

 

「どういう……」

 

「雪ノ下雪乃さんは私が雇ったのよ。何か文句ある?」

事務所の入口から美神さんが現れて、俺に一睨みして来る。

ちょ、まじでか?

 

「美神さん。おはようございます」

雪ノ下は掃除機を止めて、美神さんに綺麗なお辞儀をし、挨拶をする。

 

「おはよう。雪乃さん」

美神さんもそれに当然の如く挨拶を返す。

 

「ちょ、まっ………」

俺は慌てて美神さんと雪ノ下に声を掛けようとしたが……。

 

「早速で悪いんだけど、私の部屋の洗濯物もお願いね」

 

「わかりました」

雪ノ下は美神さんから5階の自室の鍵を渡される。

はぁ?美神さんが自室の鍵を雪ノ下に渡しただと?

何時の間にそんな仲になったんだ?

 

「もし横島の奴が現れたらぶん殴って良いから、頼むわね」

美神さんは軽く手を振って、事務所の所長室に向かい、雪ノ下は扉の前で一令して、事務所を出て行った。

 

「ちょっ、ちょっと美神さんどういうことですか?」

俺は所長席にドカッと座る美神さんに勢いよく、所長机を挟んで迫る。

 

「どうもこうも、あの子をバイトとして雇ったのよ。なんか文句でもあるわけ?」

 

「いや、どうして?霊能者でも何でもないんですよ!雪ノ下は!?」

 

「ちょうど事務系の手が足りなかったのよ。おキヌちゃんは大学行きながらだから、前よりも時間が取れないわ。それに仕事も増えてきてるのに、横島の奴は出張が多いし、はっきり言って人不足だったのよ。渡りに船ってこの事ね」

 

「だからって、なんで雪ノ下なんですか!?」

 

「土日限定、しかも事務所内の仕事だけよ。危険は無いわ。それに彼女は頭もいいし優秀よ。オカルト事務管理資格者も一発で通ったし、それに掃除洗濯、料理から家事全般も出来るのよ!それだけでも貴重な人材だわ。それにこのままだと、おキヌちゃん大学行きながら、無理してでも全部こなそうとするじゃない。その負担も軽減できるわ。合理的判断に基づいてよ」

美神さんの言葉にはいちいち説得力はある。

確かに雪ノ下自身優秀だ。それにキヌさんの負担が大きくなっていた事も確かだ。

キヌさんがこの事務所の内部的な切り盛りを一手に引き受けていたと言っていいだろう。

その点、雪ノ下はキヌさん並みに、家事や料理も出来る。

出来るんだが……、俺はどうしても納得が出来なかった。

 

「学校に申請はどうしたんですか?」

 

「ん?申請は通ったわよ。便利よね、オカルト事務管理資格者認定って、あれがあればかなり手続きが緩くなるわ。それにあんたよ。あんたが2年以上もここで働いても学校生活に支障が無いと学校も認めてるから、すんなり通ったみたいよ」

美神さんは不敵な笑みをを零しながら、答える。

……お、俺か?俺のせいで、すんなり通ったって事か?

確かに学校では、成績もそこそこのレベルで残してるし、校則違反などは一切してないしな。

自分で言うのもなんだが、嫌われ者だという以外は、模範的生徒だと言って良い。

 

「じゃあ、雪ノ下の親御さんの許可がいるでしょ!そうじゃないと、市役所にも登録できないじゃないですか!」

俺は美神さんに強めに抗議をする。

流石に雪ノ下の両親や陽乃さんが黙っちゃいないだろう。

 

「ああ、それね。それももう通ったわよ。まあ、それに関しては彼女がファインプレーね。ふっ、私の懐もあったまるし、いいわあの子。私の事をも良くわかってるわね。ほんと使える子だわ」

 

「どういうことっすか!?」

マジでか?何をやった雪ノ下!しかも美神さんの懐があったまるって何をした!しかも今の美神さんのちょっとギラついた笑みは、金が絡んだ時の顔だ!金か大金詰んで如何にかしたのか?いや、美神さんの懐があったまるレベルの大金となると、流石の雪ノ下でも用意できないだろう。何をやった雪ノ下!

 

「ふふふふっ、あの子、いいみっけもんだわ。うふふふふふ、ふはははははっ!」

美神さんが素の笑い方をし出した!怖っ!?悪魔も慄く悪だくみを含んだ笑い方だ!

絶対何かを企んでる!しかも雪ノ下を使って何かをだ!!

雪ノ下を何としてもここのバイトを辞めさせなければ!!

この悪魔の呪縛から解放させないと!!

 

「……掃除してきます」

こうなった美神さんは俺にはもう止められない。

美神さんの説得をあきらめ、事務所を出て、階段の掃除に向かう。

まずは雪ノ下の説得だ。

 

 

 

俺は階段や廊下の掃除しつつ、雪ノ下が美神さんの洗濯物を終わらせ降りてくるのを待ち、雪ノ下がエレベータで降りてくるなり、俺は雪ノ下に迫る。

 

「雪ノ下、悪い事はいわん。ここのバイトだけはやめておけ、お前だって分かってるだろ?美神さんの恐ろしさを……」

雪ノ下も分かってるはずだ。あの2月の温泉訓練の時に、美神さんのあの悪魔のような性根を!

 

「あなた、私を心配してくれるのかしら?大丈夫よ。絹さんがいらっしゃるから」

雪ノ下の奴、いつの間にかキヌさんを下の名前で、いや、そんな事を言ってる場合じゃない。

確かに、キヌさんが居れば、何とかなるかもしれんが、さっきの美神さんの様子を見るに、絶対何か悪だくみをしてるはずだ。それが何なのかは全くわからないが。

 

「それに雪ノ下は幽霊とか苦手だろ?なんでこんなところでバイトなんてするんだ?そもそも雪ノ下は金には困ってないだろ?」

 

「大丈夫よ、比企谷君も居るのだし……その…好きな人と同じ場所でアルバイトをしたいと思う気持ちはおかしな事かしら?」

雪ノ下は若干顔を赤らめ、少々恥ずかしそうにしながら、こんな事を俺に言う。

 

「な?…それはだな……」

ちょ…待ってくれ、それを言われると何も言い返せないぞ。

俺も自分の顔が赤くなるのがわかる。

雪ノ下の恥ずかしそうな顔を見ると、そのだ。ドキドキしてしまう。

 

お互い顔を逸らし、沈黙する。

 

しかし、俺は沈黙を破る打開策を思いついた。

「それにだ。うちの事務所にはあの横島師匠もいるんだぞ。何されるか分かったもんじゃないぞ」

これだ!横島師匠!今だけは師匠のその途方もないスケベに感謝します!

 

「その……何かあったら、その……あなたが守ってくれるから……」

元々色白の雪ノ下の俯き加減の顔がますます赤く染まる。

 

「……いや、そのだな」

あれ?……なんだこれ?なんだこれは?ラブコメのコメが無いやつじゃないのかこれは?

雪ノ下がなんだか、そのだ。かわいいというか。元々美人なんだか、その……なんていうかだ。

 

また、お互い目をそらし、2人の間に沈黙が訪れる。

 

 

「八幡殿と雪乃殿おはようでござる。こんな所で何をしてるでござるか?」

「………シロ、空気を読みなさいよね」

そこにシロとタマモが階段を上がって来て、俺達に声を掛ける。

 

俺は、パッと二人の方へ振り向き挨拶を返す。

「お、おう、おはよう」

声が上ずってしまうのは仕方が無いだろう。

いや、ちょっと待てよ。幽霊や妖怪が苦手な雪ノ下にとって、妖怪であるシロとタマモは……。

同じ職場で働く仲間となるのに、シロとタマモの正体を知らせないわけには行かない。

シロとタマモには悪いが、これも雪ノ下の為だ。その事を……。

 

「雪乃殿!あの肉の塊をぐるぐる焼いた料理をまた作ってくだされ!!肉だけで!!」

「雪乃、この前借りた本、面白かったわ。次も何か貸してくれないかしら?」

シロは目をキラキラさせ尻尾を振り振りしながら、雪ノ下に迫る。

タマモはタマモで、狐火を顕現させ、その中から本を取り出していた。

おい!お前ら、擬態はどうした!もろ、物の怪ってバレるだろうが!

いや、これはこれで良かったのかもしれない。何れバレる。

バレるのは速い方が良い、その方がお互い傷も浅いだろう。

これで雪ノ下も、ここのバイトを辞めてくれるだろう。

シロとタマモには悪いが……

 

俺は雪ノ下が怯えてるだろう事を察しながら、雪ノ下の方を振り向くが……。

「シロさん、ケバブの事ね。お肉だけでもいいのだけど、パンや野菜と食べると栄養バランスがいいわ。タマモさん、その作者の本はまだ幾つかあるわ。次に来る時に持ってくるわ」

あれ?どういうことだ?普通なんだが……別段怯えてるようには見えない。どちらかというと親しみを持った感じがするんだが。

もしかして、尻尾と狐火が見えてないとか?

 

「……雪ノ下……シロの尻尾、みえてないのか?」

「見えてるわよ。ふさふさして可愛らしいわ。それがなにか?」

「なんでござるか?八幡殿。シロのプリチーな尻尾に見とれていたでござるか?」

 

「……雪ノ下……さっき、タマモが宙に浮く火の玉から、本をだしたよな」

「そうね。もう、見慣れたわ」

「何八幡?この狐火は物を燃やす程の熱はでないわ。私が本を傷つけるとでも?」

 

あれっ?どういうこと?

俺は雪ノ下に小声で耳打ちする。

「そのだ。お前、シロとタマモは……」

 

「ええ、知ってるわ。最初は驚いたのだけど、それよりも先に彼女達の人となりを知った後だったから………」

雪ノ下はどうやら、既にシロとタマモが妖怪だということを知っていた様だ。

しかも、かなり親しげだ。

 

「八幡殿、丸聞こえでござるよ。しかも今更でござる」

「そうね。知らなかったのは八幡ぐらいよ」

何?知らなかったのは俺だけか?

俺はバレない様に気を使ってたのは何だったんだ?いつからだ?

 

「何で黙ってたんだ?」

 

「とっくに知ってたと思っていたでござる」

「結衣も知ってるわよ」

シロとタマモは呆れたように俺にこんな事を言ってくる。

 

「由比ヶ浜も?……」

 

「そうね。由比ヶ浜さんと一緒に絹さんの部屋に何度かお邪魔させた貰ったわ。その時にシロさんもタマモさんも……」

 

「はぁ?」

俺の知らない内に、そんな事が……

 

「あなたに黙っていたのは心苦しいのだけど、驚いたあなたも見てみたかったから……絹さんや由比ヶ浜さんにも黙ってもらう様にお願いしていたの……驚いてくれたかしら?」

雪ノ下は頬をほんのり染めながら、控えめな上目遣いでこんな事を言ってくる。

 

「驚いたは驚いたが、この職場は色々と危険だ」

俺はそれでも、雪ノ下をここでバイトすることには反対だった。

 

「八幡殿は心配性でござる」

「……八幡らしいといえば、そうなるわね」

いや、悪霊や妖怪とかの危険とかよりも、美神さんの方が怖い。あの人、絶対何か企んでるはずだ!

 

そこに、キヌさんが階段から上がって、俺達に微笑みながら挨拶をしてくれる。

「雪乃ちゃんに比企谷君、シロちゃんとタマモちゃんもおはようございます」

雪ノ下とシロ、タマモはそれぞれ挨拶を返す。

雪乃ちゃん?……なにこれ?いつの間にかそんなに仲良く?

美神さんもシロもタマモもそうだが、キヌさんともこんなに……。

しかもちゃん付けで、そりゃ、陽乃さんも嫉妬するだろう。

 

「おはようございますキヌさん、雪ノ下の件ですが……」

俺がキヌさんに雪ノ下を説得してもらおうと話しかけるが……

 

「雪乃ちゃん、今日からアルバイト開始ですね。うれしいわ、一緒にお仕事出来るなんて、今日は付きっ切りで事務内容を教えちゃいます」

「お願いします。絹さん」

キヌさんと雪ノ下はそう言って、事務所に入って行ってしまった。

そして、シロとタマモもその後に続いた。

 

俺はポツンと廊下に残される。

え?き、キヌさんまで雪ノ下のバイトを認めてる?

 

ど、どうする?

八方ふさがりとはこの事なんだが……

 

 

「八幡、心配するな。雪ノ下ちゃんだったら大丈夫だ」

後ろから、横島師匠の声が聞こえた。

 

俺は振り向き…

「いや、しかしですね。………何やってるんすか?」

横島師匠の姿を見たのだが…

 

ロープです巻きにされ、シャクトリ虫のように腰を上下させ、階段から降りてくる横島師匠の姿があった。

 

「ふっ、美神さんが事務所に降りたのを見計らって、朝シャン後のパンツを頂こうとしたのだ。しかし、洗面所で雪ノ下ちゃんにばったりあって、このざまだ。見ろ。この見事なロープの縛り具合。全く抜け出せん。美神さんバリのロープ捌きだ。……何も心配いらん」

何?カッコつけてるんですか?す巻きにされた姿でカッコつけられてもな。

また懲りずに下着泥棒ですか?

しかも雪ノ下の奴、ロープ捌きだけは美神流の免許皆伝じゃないのか?

 

「……全く説得力がないんですが」

 

「八幡。心配するなって、いざとなれば皆が助けてくれる……それに、普通に外に歩いていても、何か事件に巻き込まれる時代だ。逆にここの方が安全かもしれないし、美神さんはあれで面倒見はいい。……それとだ。頭から否定したら何も始まらない。しばらく様子を見ればいい。それに八幡をあれだけ慕ってくれてるんだぞ」

横島師匠はたまにする真面目な話は、大概俺の心に響く。

ただ……す巻き状態で、しまらないけどな。

 

「わかりました……」

俺はこう返事をするしかなかった。

 

 

こうして、雪ノ下は土日限定のアルバイト事務要員として、美神令子除霊事務所の一員となった。

 




ゆきのんが本格参入。
次回は……遂にあの人登場w

この前のアンケート結果です。
【何となくアンケート。今後このお話にでるだろうキャラを予想はいかが? 】
(97) 伊達雪之丞 3位
(38) 横島大樹
(129) 城廻めぐり2位
(157) 鶴見留美 1位
(18) その他
1位と2位はいずれもガイル勢、大差無しです。
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