やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

32 / 187
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

というわけで、GS回です。


㉜巷にうわさの事件を任される。

「はちまーん!すぐに出るぞ!」

 

「ちょっ、師匠、美神さんにもまだ挨拶もしてないんですよ」

事務所に来た途端これだ。建物の入り口前で横島師匠に捕まったのだ。

 

「横島ーーーー!!どこに行ったーーーーー!!」

建物の上階から美神さんの怒声が聞こえる。

 

「げっ!」

 

「………師匠何やらかしたんですか?」

 

「そんなのは後、後!に、逃げるぞ!!」

 

「ちょっ、俺を巻き込まないでくださいよ!」

 

「横島ーーーーー!!」

 

 

俺は横島師匠に強引に引っ張られ、車に乗せられ、美神令子除霊事務所を後にする……

バックミラーにはタオルを羽織っただけの美神さんが鬼の形相で神通棍振り回しながら追いかけてきていた。

 

 

「……覗きですか?」

 

「いやーーーーちょっとした出来心で、覗きじゃないぞ。ちょっと脱ぎたてパンティを……」

 

俺は無言でサイドブレーキを思いっきり引っ張る。

 

キキキキキキキッ

車は半回転しながら止まる。

 

「何すんだ八幡!!」

 

「怒られるなら早い方がいいですよ。後になると、とんでもない事になるんで、もしかしたら明日の朝日を拝めないかもしれませんよ」

 

「………た、確かに、あの女容赦しないからな……布切れ一枚で死ぬのもなんだしな」

 

ドゴン!!

 

「誰があの女ですって!!……あんたのその性根は一旦死なないとわからないようね!!」

美神さんがタオルまいただけの半裸で、車のフロントガラスの上に降ってきた。

 

 

「ひえーーーっ!!」

横島師匠がアクセルを慌てて踏もうとした。

 

「車壊れちゃうんで……観念してください」

車の後部座席に積んでいた呪縛ロープで師匠をぐるぐる巻きにする。

 

「裏切者ーーーーーーー!!」

 

「師匠の身を案じてですよ。今やられるのと、帰ってからやられるのとはどのくらい死に近づくんですかね」

 

「よくやった!!比企谷!!」

これで俺の共謀罪の疑いは晴れた。

すんません師匠、俺の雇い主は美神さんなんで、逆らえません。

でも、師匠、今やられた方が絶対ダメージ少ないはずですよ。

 

美神さんは勢いよく運転席の扉を開き、呪縛ロープにまかれた師匠を引きずりだす。

 

「か、堪忍や!!ちょうど掃除で拭くものがあったから拾ったらパンティだっただけなんや!!」

 

「ほーう。遺言はそれだけ?プライベートのシャワールームに入るなと、一体どれだけ言えばわかる……この、変態が!!!!」

 

「ギャーーーース!!」

そして、横島師匠は凄まじい攻撃をその身に受けていく。

 

 

……この人、毎度こんな状態なのに、懲りないな。学習能力ゼロなのでは……いや、これは一種のプレイなのではないのではないか?覗きから、下着泥……そして、この極上の折檻までがワンセットの……きっとそうに違いない……美神さんも横島師匠も結構ノリノリで楽しんでいるのではないだろうか……

 

血みどろのボロ雑巾と化した横島師匠を見て、それはないなと……命がいくつあっても足りない。

 

気が済んだのか、美神さんは横島師匠がポケットに隠し持った自分のパンツを取り出し、事務所に戻っていく。

美神さんはタオル巻いただけの姿なのだが……ぐっと来ない。美人でスタイルがいいのだが……鬼にしか見えん。鬼の腰巻や腹巻を見て興奮する奴はいないだろう。それと一緒の心理だ。

 

「師匠、一応聞いておきますが、生きてますか?」

血まみれになり、地面にはいつくばってる横島師匠に一応聞いてみる。

 

「………まあ……なんとか」

返事は帰ってきた。俺だったら全治1か月以上だろう。

 

「……後でだったら、たぶんこの倍はひどい目にあってますよ。というか、もう下着泥やめてください。どうせ、すぐ取り返されるんですから」

 

「………め、目の前にあったらつい…」

 

「はぁ、あんた、良く警察に捕まらないな。外ではそんなことやらないでしょ?美神さんにだけでしょ?」

プレイじゃないにしろ、一種のスキンシップなのかもしれないな……美神さんとの

……この頃思う。雪ノ下のあの毒舌も不器用なスキンシップの一つなのではないかと……

由比ヶ浜のスキンシップは……無意識な可能性が高いな。女の子なのだから自覚してほしい。

 

「…………」

 

「なにその沈黙?外でもやってるんすか?」

 

「あははははははっ!何を言ってる八幡!!外では紳士的な態度をとってるわ!!」

 

「……あやしい」

俺は思う。誰かこの人を一度警察に突き出してほしいと……ちょっとは反省してほしい。

しかも、もう復活してるし、まあ、ところどころ傷だらけだが……服は元に戻らんよな。

 

 

 

俺は改めて、事務所に行き美神さんに挨拶をする。

今日はバイトに行く日ではなかったが、急な呼び出しで、部活を早退して来てるのだ。

 

「比企谷君、ちょっと待ってなさい。おキヌちゃんも、もう来るから」

 

「ごめんなさい。遅くなっちゃって」

制服姿のキヌさんが慌てて事務所に入ってきた。

 

「いえ」

 

「そろったわね。じゃあ、始めるわね。あなた達二人で協力して事に当たってほしい依頼があるの、単発ものではないわ。時間がかかる仕事よ」

美神さんはそう言って俺とキヌさんの前に依頼内容が示されているタブレットPCを置き、キヌさんが受け取り俺はそれを横目で見る。

 

「ニュースになってるから知ってると思うのだけど、千葉で頻繁に起こってる学生の突然の発狂や暴力行動事件よ。起こした複数の生徒から何らかの術式を受けた形跡があったわ。それは呪いによく似た構造をしていたけど……私もママもこれに該当する術式はしらなかったわ。それとエミ(小笠原エミ。AランクGSの呪いのスペシャリスト)にも聞いたけど、呪いではない可能性が高いと言っていたわ……呪いであればそれを辿れば術者が判明する。エミぐらいになれば、そんなことはたやすくできるのだけどね。それが術者とその術式がつながっていないのよ。まったく、あの呪い屋たまには役に立ちなさいよね!」

なるほど、昨日小町と見たあのニュースの事件はオカルトが関係していたのか……確かに千葉だけ異様に件数が多かったしな。

それにしても、エミさんとは仲が悪そうだが一応GSとしての能力は一目置いてるんだよな。この人。

 

「美神さん。私は呪いに関してはそれほど得意な方では……」

「俺も、あまり呪い関係については知識が乏しいです」

キヌさんも俺も呪いに関しては得意じゃない。

 

「わかってるわ。今回はあなた達がまだ学生であるということが最大の理由よ。オカルトGメンもGS協会もこの件について警察から正式に依頼が来てるの。でも学生のGSなんて今の時代珍しいしね。しかも、CランクGSであることもね。だからあなた達に白羽の矢が立ったの。まあ、どっちからの依頼だし、結構報酬も高いし!!」

やっぱ、そこかよ。

確かに学生のGS免許所持者はかなり少ない。ほんの一握りだ。それこそひと昔はそこそこの人数がいたようだが、法整備が進んだ昨今では、社会人・大学生未満でGS免許を取得し霊能者としての活動を行うには条件が厳しいのだ。

ちなみに、キヌさんもCランクGSだが……経験は圧倒的に彼女の方が上だ。同じCランクなんて思うなどおこがましい。ただ、キヌさんの能力はあまり戦闘に向いていない能力なため、GS免許2次試験ではギリギリの通過だったらしい。それでも、この一年半で実績を認められEランクからCランクまで上がってきたのだ。

 

「美神さん、しかし、それだけじゃ何とも手がかりも無いですよね」

 

「そうね。3ページ目を見なさい」

 

「……霊的構造のほんの一部を書き換え?」

 

「そう、人の霊的構造の上尸(頭から上の部分を司る霊的存在)の部分になんてこともない霊組織を注入しているだけの術式よ。だから、異物が入った上尸が過剰反応をしめし、感情のコントロールを失って暴走するってわけよ。至ってシンプルな術式。呪いとも言えないようなものね」

 

「そこまでわかっていて……」

 

「この術式がいつ誰が、学生達に仕掛けたかがわからないのよ。暴走した子はあまりにもランダムで接点も無いわ。誰かを狙って付与した術式じゃないわね。まるで愉快犯よ」

……俺はその美神さんの言葉を聞いて、思い出した。この前のデジャブーランドでのコンプレックス3妖怪が現れた件だ。あれも結局犯人はわからずじまい。何がしたかったのかもわからない。

それと同じ臭いがする……

 

「美神さん。私たちの役割は学生から噂を聞き、手掛かりを見つけることですね」

キヌさんは美神さんにそう聞いた。

 

「その通りよ。……だから結局千葉在住で、千葉の学生である比企谷君に頼ることになるのだけどね。おキヌちゃんはどっちかというと、比企谷君の相談役。横島の奴は役に立たないわ。あいつが学生時代にまともな生活を送ってきてなかったことは十分知ってるから」

今、ペナルティで一人でこの建物の窓ふきをしているだろう横島師匠は、たぶん美神さんのせいで、普通の学生生活を送れてなかったんだと……それは口が裂けてもこの場では言えなかった。

 

「それでキヌさんと俺ですか、俺の役目はその術式が何時、暴走した生徒につけられたのかというルート探しですね……わかりました。やってみます」

 

「一人前の事を言うようになったじゃない、あんた。頼りにしてるわよ比企谷君」

美神さんに頼りにしてると言われると俄然やる気が出る。

 

「がんばりましょう。比企谷君」

しかもキヌさんと一緒か、やる気はさらにアップする。

キヌさんの笑顔が眩しい。

 

この後、美神さんからいろいろとレクチャーを受ける。

さすが超一流のGS、しかも相当頭が切れる。いろんな角度からの事件の可能性について検証していた。俺は感心するばかりだった。

やはり、俺はまだまだのようだ。

 

それと、事件の捜査の際、オカルトGメンの西条さんに協力を仰いでいいとのこと、場合によってはシロとタマモを連れて行っていいと言ってくれた。普段の仕事は、美神さんと横島師匠、シロ、タマモで回すから、キヌさんと俺はしばらくそれに集中してくれとのことだった。

 

 

キヌさんと打ち合わせをする。

とりあえず、学生が行きそうな場所、犯人と接触する可能性がある場所を上げていく。

警察の資料を見ると、今まで真面目だった人間が急にというパターンもある。

そんな人間でも行きそうな場所だ。

 

キヌさんの六道女学院の話を聞くと……俺の総武高校の学生生活とはかけ離れていた。

まじで、お嬢様学校だ。……ティータイムって何?所作の授業って何?……うーん。

 

しかし、よく考えると俺は高校ではボッチだ。普通の学生とは接点がない。戸塚……雪ノ下、由比ヶ浜………あと材木座?ぐらいだ。

肝心なところで役立たずの俺……まあ、明日あいつらに聞いてみるか……

 

そういえば、小町の学校の生徒もそんなことになってたな。今日帰って小町に詳しく聞く事にした。

 

 




でもって、次はガイル回にGSミックス

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。