やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
早速の四話です。
それとタイトルの「やはり俺は〇〇の弟子になるのは間違っていた。」の〇〇の部分はいい案が思いつかずにこんな感じに。
〇〇候補で
変態 横島忠夫 師匠 変態師匠とか考えていたんですが、なんかしっくり来なくて。
なにかいい案があればご協力ください。
最終的に〇〇のまま行っちゃうかもですが……
週明けの学校。
5限のホームルームの時間。
クラスの連中は喜色の声を上げ騒いでいる。
秋の修学旅行の班分けや係決めを行っているのだ。
俺は班など既に決まっている。
そう、班分けを行った後に、人数が足りない班に強制的に入るからだ。
だから、俺は特に何もしなくていい。
しかし……
「八幡!僕と一緒の班になろうよ!」
天使、いや、戸塚が俺の席に来て、こんな事を言ってくる。
しかも、首を傾けながらだ!なんて破壊力だ。
「あ、ああ」
俺はこう言うしか無かった。仕方ない、戸塚だし。うん。
その後結局俺と戸塚は、葉山のイケメングループに吸収され、葉山、戸部、大岡、大和、戸塚、俺という6人の班となった。
まあ、こいつらのことだから、何時もつるんでる女子の三浦達の班と合流するのだろうがな。
因みに、三浦の班は、三浦、海老名、由比ヶ浜、川崎の4人だ。
まあ、こいつらのことだから、全校の嫌われ者の俺が班にいたところで、影響はないだろう。
葉山のイケメンパワーと三浦の女番長パワーで俺の悪評程度。余裕で相殺できる。
それに戸部以外、俺の事をとやかく言う奴はいない。というか興味がないだろう…それでなくとも、俺は集団の中でも1人になれる才能があるから特に問題ない。
放課後。何時も通り奉仕部にゆったりとした足取りで向かう。
奉仕部とはボランティア部とは異なり、部長の雪ノ下曰く、エサを与えるのではなくエサのとり方を教える部なのだそうだ。
要するに、悩みの解決そのものをするのではなく、自分で解決できるよう手助けを行う部だ。まあ、簡単に言えば悩み相談所みたいなものだ。
部長の雪ノ下雪乃、部員は俺と由比ヶ浜結衣の同学年の3人だけの小さな部だ。
俺は入りたくて入ったわけじゃない。生活指導の平塚先生に今年の4月に強引に入れさせられたのだ。
最初は居心地が悪かったが、今はそうでもない……と思う。
「こんにちは、比企谷くん」
「うっす」
雪ノ下雪乃は奉仕部の教室窓際の椅子に座り、何時ものように姿勢正しく猫模様のブックカバーの本を読んでいる。それが何故か様になっているのだ。
俺は雪ノ下と真逆の廊下側の椅子に座り、鞄を置く。俺も本を取り出して読む。
俺も本は好きだ。もちろんラノベもな。ただ今日は美神さんに借りたタロット占いの本を読んでいる。
タロット占いは素人がやればただの遊びだが、ちゃんとした術具としてのタロットカードを用いて霊能力者が実施すれば予知になる。
まあ、予知に関する霊的センスがかなり必要なのだが。美神さんが行うとその予知はほぼ100パーセントなのだ。
因みに横島師匠はこのへんはてんでダメらしい。
美神さん曰く、俺自身、自分の霊的センスがどんなものかを把握するためにも、色々な物に手を出してやってみる事が大事なのだそうだ。
「やっはろー」
「こんにちは、由比ヶ浜さん」
「うっす」
由比ヶ浜結衣がいつもの変な挨拶をしながら、部室に入ってくる。
何時もは雪ノ下の直ぐ隣の椅子に座るのだが、何故か俺の方にやってくる。
「ヒッキー、修学旅行楽しみだね。ヒッキーも隼人くんの班だから、一緒に回れるね」
「お、おう。そうだな」
由比ヶ浜は俺の事をヒッキーと呼ぶ唯一の奴だ。あだ名のセンスは独自性過ぎてこいつしか使わない。因みに雪ノ下の事はゆきのんと呼んでいる。
男の俺にも距離感がおかしい。今もそうだ。一々ボディタッチをしないと話が出来んのかこいつは、なんかいい匂いするし、勘違いするだろ。
「ヒッキー何読んでるの?」
由比ヶ浜は俺の後ろから肩越しに顔をだして、俺の読んでるタロット占いの本を見る。
由比ヶ浜さん……あの、柔らかいものが2つ背中に当たってるんですけど………無心だ。ここは無心だ。というかやめてくれー
「あーー、知ってるこれ!占いのトランプだ!」
「タロットカードな」
相変わらず頭は残念な子である。
「比企谷くんタロット占いに興味でも?何を占うのかしら、将来についてなら貴方の未来は占うまでもなく無職か刑務所行きよ」
雪ノ下は俺に対しては容赦がない。最近わかってきたが、これがこいつのコミュニケーションのとり方らしい。俺じゃなきゃ泣いちゃうぞ。
「おい、無職はいいが、刑務所ってのはなんだ?」
「……ヒッキー、無職はいいんだ」
「まあな、専業主夫と名前を変えればいいだけだからな」
「そんな事を恥ずかしげもなく、誇らしげに言えるわね。あなた」
雪ノ下は頭痛がするがごとく額を抑える。
「でも、占いって楽しそう!チョット待ってね」
由比ヶ浜はそう言って、パタパタと部室を出て行く。
「あなた、本当に本なら何でも読むのね」
雪ノ下は呆れた様な口ぶりで言う。
「ああ、これの事か、まあな、その時その時に気になった本を片っ端からな。興味がなくなってから読むのは辛いだろ?」
今回に関しては言い訳だが、何時もはそんな感じで本をチョイスしてる。
「確かに、そうかも知れないわね」
雪ノ下は珍しく俺の意見に同意した。
「ゆきのん!ヒッキー!タロットカード借りてきた!占いやろ!」
由比ヶ浜は楽しそうに部室に戻ってきた。
「そうね。依頼も無いことだし、幸薄い比企谷くんの将来を占って上げましょう」
「え?マジで」
なに、マジでやるの?二人共結構乗り気だぞ。まあ、遊び程度だからいいか練習にもなるしな。
「じゃあ、ヒッキーよろしく!」
「俺がやるのかよ……」
まあ、そうなるわな。
俺は由比ヶ浜からタロットカードを受け取る。
?………これ、霊気が宿っているぞ、カード内に術式があるんじゃ……本物じゃないか?
「……由比ヶ浜、これ誰に借りてきた?」
「平塚先生!宿直室で、これを見て泣いてた!」
……恋愛運を調べてたな、どっかの怪しい露天とかで高額できっと手に入れたんだろう。
しかも、いつも絶望的な結果が出るのだろう。占いに頼る前に、私生活をなんとかしろよ。
雪ノ下もそれを聞いて呆れた様な表情をしていた。
「じゃあ、ヒッキーの将来を占ってみよう!」
そんじゃ、まあやってみるか…………
死神のタロットがでる。
「うわ、なんか不吉そう」
由比ヶ浜が顔を顰める。
めちゃ不吉だ。
その後もカードを開く。
「どういう解釈なのかしら?」
雪ノ下もなんだかんだと興味深々だ。
「正位の死神のタロット…………西に気をつけるべし、近々西遠方に行けば不幸に見舞われる。最悪死」
俺は占い本を読みながら結果を読む。
なにこれ、死ってなんだよ。俺絶対西に行かないぞ。
「死…西って、ヒッキー………」
由比ヶ浜が心配そうに俺を見つめる。
「西に行かなきゃいいだけだ。まあ、占いなんて当てずっぽだしな」
「あなた、まさか知らないの?月末の修学旅行は京都よ。ここから丁度西の方角よ」
「はぁ?まじかよ」
「呆れた。自分が行く修学旅行先も知らないなんて」
「ヒッキーどうしよう?」
「まぁ、所詮は占いだ。関係ない」
と、俺は言いつつも、このタロットカード本物なのだ。俺は内心焦る。俺の予知センスが無いことを祈るばかりだ。
「そうね」
雪ノ下は平然としていた。
興味はあるが、信じていないのだろう。
「なんか、嫌だな~、じゃあ、気を取り直してヒッキーの恋愛運!」
「まだやるのかよ」
「いいじゃん。いいじゃん、次はきっといいこと有るって」
そう言って、俺の恋愛運を占う。
結果をタロット本を見ながら由比ヶ浜が読み上げる。
「女性に鈍感な貴方は将来、沢山の女性を泣かすでしょう。近々長い黒髪を下ろしている方と急接近するかも…………………」
なに!?キヌさんは確かに長い黒髪をストレートで下ろしている!!まじか!!………聖母と急接近!?恐れ多いが………俺にも春が!?……なわけないか、この占いが当たると、西の遠方、修学旅行の京都で死んじゃうかもしれないしな。
由比ヶ浜は無言で、雪ノ下を見ていた。
「え?」
雪ノ下は顔を赤らめている。
ん?なんだ。
「しょ、所詮占いよ。当たるわけ無いわ。そもそも比企谷くんが恋愛なんて出来る高尚な生き物ではないわ」
雪ノ下は顔を赤らめ、まくしたてるように言う。
なんで、そこで俺をディスるんだよ。おまえは……
「ちょっといいかな」
「チースッ!」
そこにイケメン葉山隼人と戸部翔が奉仕部に現れる。
なぜここにって?奴らは依頼に来たのだ。
内容は至ってシンプル。
戸部が海老名さんと付き合えるように協力してほしいということだ。
俺の意見はNOだ。
雪ノ下もNOだっただが、由比ヶ浜がどうしてもやりたいということで、受けることになった。
因みに、その後、戸部の恋愛運をタロットで占ったんだが………
脈なし、諦めたほうがいいと出た。
まじ、やめたほうが良いんじゃないか?
後日になるが、海老名が奉仕部に訪れて、謎の言葉を残して帰っていった。
いったい何だったんだ?
奉仕部で占いを行った二日後、美神さんに呼び出しをくらい。
奉仕部を休み。美神令子除霊事務所に向かった。
平日の急な呼び出しは珍しい。何か人手がいる緊急案件か?
何故か事務所の応接ソファーに座らされた。
俺の前には美神さん、その横にキヌさん。俺の隣には横島師匠だ。
なにか、何時もと雰囲気が違う。
「どうしたんですか?急に呼び出しなんて」
「比企谷くん、私達のところに来て、もうそろそろ1年半よね」
「はい、お世話になってます。……もしかしてクビ!?借金もまだ返してないですよ!」
俺は焦る。この切り出し方はクビではないかと、いやいやいや、俺は失敗していないはず。
横島師匠の面倒をみているから、貢献してるまである。
「落ち着きなさい。そうじゃないわ。君は意外と使える奴だと思っているわ」
「はー、じゃあなんでしょうか」
良かった。ここをやめさせられたら、あの高額な借金なんて返せない。
ん?もしかして、今なにげに褒められた?美神さんがこんな事を言うとは、なにこれ、嬉しいぞ。頑張ってやって来たかいがあったということだ。
「10月22日のGS資格試験に出なさい!これは業務命令よ。既に登録は済ませ、親御さんの許可は得たわ」
「え?」
なにそれ、最早逃げ道が無いんですけど……あの両親どもめ、勝手なことを!なんか小躍りしながら許可出してる姿が容易に想像出来るぞ。
「GS試験は二次試験でベスト16に残れば、晴れてGSの資格が手に入るわ。一次試験はペーパーと簡単な能力判定試験。二次試験は受験生同士の試合よ」
「ちょ…」
「君は横島くんの弟子にってことになってるけど、私の弟子でもあるわ。必ず合格しなさいトップでね!この美神令子の名に泥を塗るようなことだけはゆるさないわ」
「比企谷くん。頑張ってくださいね」
「八幡なら、大丈夫だろ。あん時の俺よりも出来るしな」
「まじですか」
美神さんもキヌさんも横島師匠も俺を励ましてくれた。
いや、なんか認められた気がして嬉しいんですけど、というかなにげに美神さんの脅しが恐ろしいんだが。
しかし、俺で大丈夫か?
GS資格は年に2回行われる超難関資格の一つだ。国が実施する国家試験。実際に悪霊や霊や妖怪と戦うのだから、それなりの実力が必要なのだ。しかも、法律も色々ややこしい、ペーパー試験も難しいはずだ。
この試験のための予備校や専門学校が有るぐらいだ。
しかも、専門学科がある高校があったりする。因みにキヌさんは有名女子校の霊能科に通っている。
でも、俺は普通の高校に通い、この事務所しか知らないから、自分の実力がどれほどなのかは、正直わからない。
………横島師匠も普通の高校に通いながら、GS試験に合格したと言っていたな。ペーパー試験を通るぐらいだから、きっと学校の成績も良かったのだろう。そうはとても見えないが。
「頑張らせてもらいます」
俺はGS資格試験を受けることになった。因みに修学旅行の三日前だ。
怪我して、修学旅行に行けないと言う落ちはなかろうか?
「資格試験の試合は横島くん、最近のはおキヌちゃんが詳しいから、ペーパーはおキヌちゃんから教えてもらいなさい」
美神さんはそう言って、ソファーから立ち上がり、元の社長席に戻っていった。
「まあ、いつもどおりの八幡だったら余裕だろう。対人戦闘の訓練ぐらいは付き合うか」
そうなの?……確かに対人戦闘なんて行ったこと無い。横島師匠が訓練で相手してくれるぐらいだ。
「比企谷くん、私も1年半前に合格したばかりだし、筆記試験の内容はそれ程変わらないから、一緒に勉強しましょう」
流石聖母キヌさん。もしかして二人っきりで勉強?……やばい、今日の占いを思い出した。『近々長い黒髪を下ろしている方と接近』もしやこれの事か?
美神さんが所長席から声を大にして、俺に言う。
「そうそう、比企谷くん。私の占いで、西遠方に要注意って出ていたわ。死ぬほどきつい目にあいそうだから行かないほうがいいわよ。最悪死んじゃうかもね」
え?まじで………
今後の予定
GS試験編
京都修学旅行編