やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
前回の続きの決着です。
いえ、式神のね。
ちょっと長めです。
美神さんから、六道冥子さんの式神、十二神将の内の二体が、千葉方面にコントロール不能で逃げ出したと連絡があった。
美神さんは半泣き状態で、何でもいいから捕まえろと。
かなり無茶振りなんですが、俺は式神についてはGS試験程度の基本知識しかない。
うちの事務所には式神使いはいないし、対式神戦は心得てるが、それは扱うのとは全く別物だ。
捕えろと言われてもな。
一応基本は理解してるのだが、式神を捕えるには、式神を攻撃や術式で弱体化させて、捕え屈服させ拘束するのがセオリー。
ただ、今回の相手はそれだけでも一苦労なのだが、その後の処理もさらに問題だ。相手は特殊能力を持った式神、しかもあの十二神将だ。生半可な霊的拘束でどうにかなるものなのか……やはりちゃんとした封印を行う必要がありそうだ。
しかし、今の俺ではあのレベルの式神の封印は出来ないだろう。
式神に対する知識や経験が不足しすぎてる。
幸か不幸か丁度居合わせた土御門家の術式と式神を操る陰陽師の陽乃さんに、致し方なくお願いし協力を取り付けたのだが、見返りは温泉旅行という事になった。
何それ?まあ、超金持ちだからお金とかは要らないのだろうが、俺と温泉旅行に行って楽しいのか?それともマジで俺を婿にしようと?
はぁ、この頃、トラブルが望んでもないのに向こうからやって来る。
しかも、今回はどうやら身内の不始末が原因らしいしな!
式神は東京から東京湾沿岸を伝って千葉に到着するだろう。
何方にしろ、理性を失った式神は本能の赴くままに、ただ単に美神さんの実家から東や東南に向かってるだけだからな。最終到達点はわからないが、通過する場所はある程度限定されているため予想付きやすい。
このまま黙って行くわけにもいかないだろう。陽乃さんも居ることだしな。由比ヶ浜と雪ノ下には、軽く挨拶して、行くか。まだ時間はある。
俺は陽乃さんと先ほどの喫茶店に戻ると、着物姿の女性が雪ノ下に話しかけていた。
その女性は、雪ノ下と陽乃さんと顔立ちがそっくりだが、40前後の大人の女性だ。多分雪ノ下達の母親だろう。
俺はその女性に軽く会釈してから、由比ヶ浜達に話しかける。
「由比ヶ浜すまん。バイト先の仕事が急に入ってな。先に行くわ。雪ノ下も葉山も悪いがここでな。俺のタラコスパ代分は後日払う」
「ヒッキー、気を付けてね」
「比企谷君、その、プレゼントありがとう。また、学校で」
由比ヶ浜と雪ノ下はその話だけで、GS関係のトラブルだろうと察してくれたのだろう。俺を何も言わずに、送り出してくれる。
「ヒキタニくん、バイトしてるんだ。それも意外だな」
葉山にはバイトはバレたが、GSとは流石にわからないだろう。
「あら陽乃。こんなに早く帰って来るなんて、土御門のご当主様には失礼は無かったのかしら?それと、彼は?雪乃も陽乃も知り合いの様ね」
雪ノ下の母親らしき女性は陽乃さんを見つけると声を掛ける。
「母さん。問題ないわ。それと彼は雪乃ちゃんとは同級生の比企谷君。私と比企谷君は……うーん。今は友達かな?それで将来は旦那さんかしら?」
おいーーーー!!何言ってんだこの人!!問題大ありだーーー!!
俺は額に手をやり、やってしまったとばかりに大きくため息を吐く。
「えーーーー!!ヒッキー!?」
「ね、ね、姉さん!?」
由比ヶ浜は目を見開いて驚き、雪ノ下はかなり混乱したような顔をしていた。
「陽乃、説明してくれるかしら?勝手なことは許されませんよ。雪乃はこうして雪ノ下の跡を、あなたは本家の人間として、土御門と雪ノ下を強固にし、関西にも雪ノ下の基盤をと」
雪ノ下の母親は陽乃さんに説教を始める。
「母さん、帰ったら説明するわ。私も用事が出来たから、先に失礼するわ」
陽乃さんは母親の小言を遮るようにそう言って、先に店を出て行った。
「陽乃!!」
「あの!この人の冗談なんで!真に受けないでください!!俺は用事があるので失礼します」
ここは誤解の無い様に言っておかないと後で大変なことになる。
そう、語気を強め、踵を返して店を出て行った。
「まあまあ、陽乃さんのいつもの冗談ですよ。きっと」
葉山がそうフォローするのが後ろから聞こえてくる。ナイスだ葉山。タラコスパの代金は必ず払うし、マッ缶もつけてやろう。
「なんなんですかあれは!!」
俺は早足で陽乃さんに追いつき、噛みつく。
「何怒ってるの?八幡」
「将来の旦那さんって!なぜこのタイミングで言います!?」
絶対何か企んでるな。母親に対する何かの当てつけだろ!
「えーー?だったら正式に家に来て言う?」
「そういう問題じゃないでしょ!!俺は将来、陽乃さんと結婚なんて全然決めてませんよ!!」
俺は語気を強くし、はっきりと言う。こうでもしないと、この人はじわじわと周りから俺を攻めてくる。
今回の事もそうだ。ついに、自分の実家にも何らかの工作を企み始めた。
俺をダシに使ってだ。いや、俺との結婚すらも計画の一つなのかもしれない。
「えー、いいじゃない。どうせ将来そうなるんだし」
「ちゃんと説明してくださいよ。雪ノ下にも親御さんにも、さっきのは冗談だったって!」
「冗談じゃないのに」
「いいですね!!」
俺は早足でこのモールの外に向かいながら、陽乃さんに強く念押しする。
「もう、わかったわよ。でも、温泉旅行の約束は忘れないでよ」
拗ねた表情をする陽乃さん。
この本心さらけ出した陽乃さんは感情を子供のようにコロコロ変えるからトリッキー過ぎて、つかみどころが無さすぎだ!
「……それは約束しましたし、わかりました。でもちゃんと式神を捕えてからです」
「俄然やる気がでるわね!」
そう言う陽乃さんの目はギラついていた。
ほんと戦い好きだなこの人。
タクシーを捕まえ乗り込む。
タマモに連絡すると、実は小町とタマモは家に帰っておらず。
雪ノ下のプレゼントを速攻買って、有名店のスイーツ食べ放題を堪能し、プリクラ撮って、タマモが行きたがっていた古本屋に寄ってたのだそうだ。
なぜ、家に帰ったなんて言ったんだ小町の奴。
まあ、そのおかげで合流するのが早くなるのだがな。
俺の予想では、式神達は幕張沿岸を通過すると……
アンチラは本来本能的に真東、アジラは東南から東南東に突っ走るはずだ。
アンチラは十二支の卯の式神だ。姿はウサギそのもので、動きがかなり俊敏で速い。耳が鋭い刃物になっており、対象物を切り裂く。
アジラは十二支の辰の式神だ。姿はイグアナかカメレオンのような姿で結構小さい。口から炎を吐き、それに触れると石化するのだ。ただ、動きはそれほど速くない。
何れにしろ、二匹とも空中に長期間飛翔できる式神ではない。
だから東京湾沿岸を多少大回りし進むはずだ。
予想では、アジラはアンチラの背中に乗って移動してる。
美神さんはその二匹は同じ方向に向かったと言ってる事からもそうだろう。
もし、アジラが単独で移動したのなら、下手をすると東京湾を横断するアクアラインを通る可能性がある。
幕張海浜公園に到着し、タマモとも合流を果たす。
「で……八幡、この金髪美女は誰?また浮気かしら?人じゃなさそうだけど」
陽乃さんはジトっとした目で俺と俺の隣に居るタマモを見る。
流石に優秀な霊能者にはわかっちゃうよな。
浮気って、その話は身内の前で勘弁してください。
「はぁ、うちの事務所の同僚のタマモです」
俺の胃は持つのだろうか?
「タマモさんっていうの。ふーん。ん?美神令子除霊事務所に妖狐が所属してるって聞いてたけど、その霊格……まさか、九尾の妖狐、大妖怪玉藻前!?」
陽乃さんは大いに驚いて、タマモをまじまじと見る。
見る人が見るとわかっちゃうもんだな。仮にも陽乃さんは土御門家門下の霊能者だ。その辺の知識も豊富なのだろう。
「そうらしいです。転生体とはつきますが」
「……八幡、私と八幡だけで十分じゃない?なんでこの人いるの?」
タマモは陽乃さんを一瞥してから、俺に小声で言う。
「聞こえてるわよ。あなたこそ邪魔じゃない?せっかくの八幡との初めての共同作業なのよ!」
それ。言い方がおかしくないですか?
陽乃さんは俺越しにタマモに文句たらしく言う。
九尾の妖狐と知ってもお構いなしだな。度胸がいいと言うかなんて言うか。普通は気後れ位するものだろうに。
「いや、俺は式神の封印術式は素人同然だ。あの強力な式神を封印するには、この人の協力が必要なんだ」
俺は陽乃さんの戯言を無視しタマモに説明する。
いちいち反応していたら話が進まんからな。
「ほら、私の方が八幡のパートナーにふさわしいんだから!」
陽乃さんはそう言って俺の腕にしがみつく。
何、張り合ってるんですか陽乃さん?何時もの余裕は?外面仮面のあんたはそんなキャラじゃないでしょう?
まあ、素を丸出しの陽乃さんは、感情が赴くままだな。まじで、ちょっとアレだな、中学生レベルな感じがする。
陽乃さんもかなりの美女だけど、タマモは何ていうか、多少ツンツンしてるが気品も色気もある金髪美少女だ。自分に匹敵する存在に、その辺で張り合ってるのだろうか?
「精々、私と八幡の邪魔はしないようにお願いするわ」
タマモは相変わらずツンとした態度だ。
「ふんだ」
陽乃さんは子供っぽくそっぽを向く。
美女は美女同士仲良くしてほしい。
胃がキリキリしてくるんですが。
俺は霊視能力を最大限に発揮させ、近辺を警戒する。
3キロ先を飛び跳ねるように海岸埠頭をこっちに進む式神を発見する。
予想通り、アンチラ上にアジラが乗っていた。
俺は2匹まとめて居た事にホッとする。
「来たな……」
「流石ね八幡。私にはまだ見えないわ」
「当然よ。八幡とあなたを一緒にしないで」
「「フン」」
いちいちいがみ合うのはやめていただけないでしょうか?
い、胃が痛い。
「タマモ。式神が範囲内に入ってきたら幻術と幻影で付近の一般人の人払いと俺達を見えないようにしてくれ」
「わかったわ」
「陽乃さんは式神封印術式の準備をって、あの陽乃さん?そろそろ腕、離してもらえませんか?」
「仕方ないわね。ちゃっちゃと終わらせて、温泉旅館の予約をしないとね」
そんな事を言いつつ、やはり土御門の陰陽師。
封印用の札をセカンドバックから2枚取り出し、そこに言霊を乗せ術式を足して行く。
やはり、通常の封印札では対応できないようだ。俺も始めて見る術式だ。
多分、土御門の術式なのだろう。
「作戦はさっき説明したとおりです。……来ました!」
アンチラがかなりのスピードで飛び跳ねるように、この海岸公園に入ってきた。
俺はあらかじめ海岸公園に仕掛けていた、数枚の札と砂で描いた簡易拘束術式を起動させる。
同時にタマモは手を空に掲げ、幻術を幕張海浜公園一帯広範囲に展開。そして俺達の周囲に幻影を張った。これで目撃者も人的被害も出ないだろう。
流石タマモだこれだけの規模の幻影・幻術をなんなくこなす。
俺が起動させた簡易拘束術はアンチラとアジラを空中で捕えるが、直ぐにアンチラの耳のブレードで拘束術式ごと断ち切られる。
それは想定済みだ。
俺はその間に、身体基礎能力強化と霊視空間把握能力を発動させ、アンチラのブレードから放たれる風刀をけん制しつつ、アンチラとアジラの核を探る。アンチラとアジラをなるべく海側に足止めと気を引くために、陽乃さんに間合いを取りながら氷結術を断続的に行ってもらい、けん制してもらう。
タマモには、周りに被害が出ないように、アジラが放った石化炎ブレスの対処をしてもらう。
式神たちの攻撃を見過ごすと、公園の並木や林、構造物が、真っ二つになったり、石になったりしてしまい。明日にはニュースになってしまう。それは避けなければならない。秘密裏に処理をしなくてはならないのだ。
普通に相対するよりも、気を使わなければならない。
さらに、倒すよりも、捕まえる方が難易度が数倍に跳ね上がる。
「流石は六道家の十二神将ってところね。氷結術があの炎でかき消されるわ」
氷結術を操りながら、俺に声を掛ける陽乃さん。
「陽乃さん成功です。アンチラとアジラは俺達の事を敵とみなしました。これでどこかに行くことはないでしょう。核の場所もわかりました」
俺もサイキックソーサーで間合いを取りながらアンチラのブレードから放たれる風刀を捌く。
アンチラのブレードに直接触れるのは自殺行為だが、そこから放たれる風の刃は防ぐことが出来る。
「これで、ようやく全力を出せるわね」
そう言って陽乃さんは一本角の鬼、自らの式神である雪刃丸を顕現させる。
「全力はやめてください。消滅してしまったら元も子も無いので、十二神将は術者から相当離れてるから、十分に力が発揮出来ず、弱体化してる状態なんですから」
「これで、本調子じゃないの?末恐ろしいわね。こんなのが十二体同時に操れるっていうの、六道冥子は。相当な化け物ね」
そう、今の十二神将は本来の力を失いつつある。依り代となってる六道冥子さんと物理的にも霊的にも距離が離れすぎてるからだ。
六道冥子さんが化け物って、……同じ式神使いだからその凄まじい力を肌に感じたんだろう。十二神将を侍らかしてる姿はまさに百鬼夜行だけどな。
本人は、世事に疎い、ぽわぽわ系の超絶お嬢様なんだよな。こんな恐ろし気な式神達を操れるとはとても思えない。
「八幡、あの子たち、びっくりしてるだけ。驚いて逃げだしただけみたい」
タマモは炎を操り、アジラの石化炎を相殺しながら俺に言う。
「後は任せろ。……陽乃さんは封印術式の準備を」
「比企谷君?私の方がよくない?雪刃丸だったら、あの式神の攻撃ごと叩きのめすことが出来るわ」
確かに、陽乃さんの式神雪刃丸一体だけなら、十二神将に引けを取らない。力が十分発揮できないアンチラとアジラを叩きのめすことが出来るだろう。しかし……
「流石に叩きのめすのは気が引けますんで、核に直接霊気を送り込んで、活動を鈍らせます。
その間に、封印術式をお願いします」
「直接って、弱体化してるとは言え、あのウサギの式神(アンチラ)のブレードの切れ味と間合いは脅威よ。流石に直接切られたら、怪我じゃすまないわ。そんなリスクを負う必要はないわ」
「大丈夫です。当たらなければいいんで」
「八幡、小町を悲しませるような事だけはしないでね」
タマモはそっけなく言うが、どうやら心配してくれてるらしい。
「大丈夫だ。流石に二体同時は厄介だから、離してほしい」
「はぁ、比企谷君はとことんお人よしね。これじゃ、先が思いやられるわ。でも嫌いじゃないわ」
「わかったわ」
俺は集中を高め、霊気を放出する。
身体基礎能力を更に高め、霊視空間把握能力の発展形、霊視空間結界を発動する。
陽乃さんの氷結術と雪刃丸の連携、さらにタマモの火遁の術で、アジラは、アンチラから離れた。
先ずは、アンチラからだ。
俺は地面の上で体勢を低くして威嚇するアンチラの真正面に一気に迫る。
アンチラは両耳のブレードを振り回し、けん制してくるが、既に俺の霊視空間結界の間合いの中、どこから攻撃してくるかは把握済みだ。更に黒い雲、俺のシャドウ、『ダーク・アンド・ダーククラウド』省略、『ダーククラウド』を顕現させ、アンチラの速度を鈍らせる。
俺は若干スピードが落ちたアンチラのブレードを掻い潜り、頭の核に振れ、霊気を送り込む。
弱体化したとしても、アンチラの動きやブレード捌きはかなりのスピードだ。しかし、横島師匠の組手や小竜姫様のあの超スピードに比べれば、どうってことはない。
ダーククラウドを出すまでもなかったかもしれないが、これも慣れておかないとな。
そして、俺はそのままジャンプし、空へ逃れたアジラを追う。アジラの石化炎ブレスはタマモの炎によって悉く無効化されていた。俺はアジラの腹の核に振れ、霊気を送り込む。
核に霊気を注がれたアンチラとアジラは一時的にフリーズ状態になり、活動を停止する。
「陽乃さん、今です!」
「え?ええ、わかったわ」
陽乃さんは俺が声を掛けた際、呆けた表情をしていたが、直ぐに態勢を整え、アンチラとアジラに封印札を飛ばす。アンチラとアジラは封印札に振れると同時に、陽乃さんは印を結び。封印札から術を展開させ、アンチラとアジラは札の中へと姿を消していく。
俺はその札を回収し、陽乃さんとタマモの元に駆けつけ、礼を言う。
「陽乃さん助かりました。流石は土御門の陰陽師ですね。封印も完璧です。俺ではこうはいかなかった。タマモも助かった」
「……比企谷君、前に試合をした時とはまるで動きが別人。スピードが段違いよ。相手の式神の動きが鈍くなったような……あれも何かの術なの?」
俺が思っていた反応とは違い、静かに何故か悔しそうに俺にポツリポツリと聞いてくる。
てっきり、今からデートとか、温泉旅行プランたてに行こうとか言うかと思ったのだが……
「言ったでしょ、悔しかったから修行したって、あの術はまだ改良中なんで、企業秘密です」
「そう……私も修行しなくっちゃ……こうしては居られないわ。あなたに負けてられない!!いーい!!八幡!!私は強くなって!!また、あなたを追い越すわ!!覚悟しておいて!!今から京都に戻る!!」
陽乃さんは最初は小声だったが、急に俺を戦闘中のようなギラ付いた眼で見据え、大声で一方的に宣言し、踵を返し公園出口の方へ歩み出した。
ええー、何それ、なんかライバル宣言みたいな感じなんですが、あのー、それ以上陽乃さんに強くなってもらっては困るんですが。それと今から京都って、今日帰ってきたばっかりなのでは?しかも明日からこっちで挨拶回りがあるんじゃ。
「温泉旅行の約束は忘れないでね。はーちまん」
陽乃さんは急に立ち止まり、こちらに振り返って笑顔でそんなこと言って投げキスを送って来る。
その約束は無しにしてほしかった。
しばらく、俺は公園を後にする陽乃さんの背中を眺めていた。
きっと陽乃さん、今度会ったときには強くなってるんだろうなーと漠然と思っていた。
「八幡。あの人何なの?八幡の何?小町も気に入ってたみたいだけど」
隣でタマモが俺の肩をつつき、いぶかし気に聞いてきた。
「なんなんだろ。よくわからんがライバル?なのかな?」
「それだけ?」
「さあな」
それだけであってほしい。結婚とか旦那さんとかは無しの方向で。
確かに俺の同期で、実力が拮抗していたのは陽乃さんだけだ。
ライバルと言ってもいいのかもしれない。
何だかんだとよく関わるしな。
「あああーーー!!あの人、このまま京都に帰るつもりか!!せめて母親と妹に誤解を解いてから帰ってくれよな!!」
俺は思い出した。あの人がここに来る前に悪戯なのかよくわからん爆弾発言をとんでもない場所で残していったのを!!どーするんだよこれ!!
次回は、久々の学校と奉仕部です。
陽乃さんの八幡呼びと比企谷呼びが混ざってるのはわざとです。
真面目な話をしてる時は比企谷呼びになってます。