ガールズ&パンツァー Re.Not a Hero 作:MBT-70
不定期更新、文才の無さ、呆れるかもしれませんがよんでいただければ幸いです。
PCで書いたりスマホで書いたりしてるので文字がおかしかったりします。ユルシテ。
それではどうぞ。
静けさが支配する平原。
近くに木々が見えるだけで、視界は青い空と平原、聴覚は小鳥の鳴く囀ずりと木々が揺れ擦り合う音が聞こえてくる。
しかし、ここにに居る少年にそれを楽しむ暇など無い。
彼はただ茂みの中に隠した鉄の車両から上半身のみを出し双眼鏡で辺りを見渡している。
「………いた」
平原を砂埃を舞い上げながら走る数十両の車両、その側面にはかつてのナチスドイツの勲章………によく似た校章が見える。
「シュトゥルム1より各隊へ、敵車両発見。マウスの姿が確認できず、が、おそらく本隊と思われる。並列を組みCラインを北上中、おくれ」
『了解。カイザーよりシュトゥルム1へ、発砲許可。1両を撃破、もしくは走行不能にし、できるだけこちらに誘いこめ』
「シュトゥルム1、了解」
わずか数十秒の無線のやり取り。直ちに少年は行動する。
「砲主、砲撃準備、目標敵走行中ティーガーl」
『了解!一発で決めますぜ!』
「頼む。発砲後直ちに後退、敵をEライン6へ誘い込む」
茂みの中から僅かにはみ出た砲身が動き、ティーガーの側面へと口を向けた。
「射撃よーい………Schießen!(撃て!)」
砲主が引き金を引く。
それに応じてロイヤル・オードナンス社製L7A3
105mmライフル砲からライフリングを投じて螺旋回転しながら爆炎と共に徹甲弾が発射される。
徹甲弾は吸い込まれるようにティーガーの側面に命中、貫通し行動不能で白旗が上がる。
「命中確認!…おぅ!?」
ガイン!!と鈍い音が車内に響く。
「操縦者何を聞いていた!全速後退!距離を離してから車体回頭180°!」
キリキリと無限起動がうなり、跡を残しながら茂みからその姿を表す。
ティーガーと同じく砲搭側面に校章、しかしその車体は
近代的な物となっている。
「すぐに撃ち返してきたぜ……パンターだったから良かったもののティーガーや王虎だったら殺られてたかもな……」
「こいつの防盾がパンター相手には役に立つことがわかっただけでも収穫だよ...」
ふう、と砲主の言葉に戦車のキューポラから上半身だけ出していた車長の少年がため息混じりで答える。
やはり手練れだ。すぐに打ち返してきた。
さすがと言わざるをえないな…と少年は目を細める。
そこでふと、車長は後ろをみた。
何故かはわからない、だが向いた方がいい気がした。
後ろは自分達を追ってくるティーガーを筆頭としたドイツ戦車部隊。
その内の1両………自分と同じように上半身をキューポラから出している指揮者の少女と目があった気がした。
「……ああ、そうか。やっぱりお前もそうか」
少し、いやそれ以上に解る。
目があった気がしただけだが……言葉を交わさずとも、あいつならそう思っている。
楽しい。
そうだ、いつか無くした感覚を取り戻したような感じに襲われた。
だからこそ
「「お前には、負けられない」」
こんなこと、ここに来なければ、ここ帰って来なければ味わえなかった、懐かしいライバル意識。
少年、景光 結城は自然と笑みがこぼれていた……
ああ、来てよかったな…と………。
~中学時代~
「………ん」
教室の窓から射し込む光がかなり眩しく感じた。
どうやら机に突っ伏して寝ていたことに景光は気付く。
「……(嫌な夢だったな)…」
思い出したくもないものを思い出してしまった。景光は溜め息をついて落胆した。
そこでふと、前の席の人が自分の方へ視線を向けて来ているのに気づいた。
いや、正面の人だけじゃない。周りのクラスメイトほとんどが自分に向けている。
その目線には同情、呆れ、そんな感じのものが多い。
そして、自分の右側に異常なオーラを放っている人物………担任の体育教師が腕を組んで怒のオーラを放っているのに今さら気付く。
……ああそっか。そういえば総合の時間だったか…
そして自分の存在に気づいたタイミングで体育教師はゆっくりと口を開く。
「……景光、言い訳はあるか?」
………死刑確定か。そう悟った景光は開き直る事にした。
「……気持ちよく寝れましたよ?」
「……そうか、いや最近お前さんが頑張って大会などでいい成績を残してちゃんと練習も頑張ってるのは先生はよーくわかっているつもりだ」
お?もしかして許してくれるパターンかな?と景光の期待は儚く散った。
「だが……授業で寝るのは了承できんな」
ボキ!ボキ!と拳を鳴らし始めた担任。
「……ふふ、怖い」
体育教師の鉄拳が炸裂した。
三重県 亀山市。
街という街はなく、自然豊かなこの市は県庁所在地である津市、鈴鹿サーキットがある有名な鈴鹿市などと隣接している。
特に有名な物はない。あえていうなればヤマトタケルの墓があったり、日本棚田百景の「坂本棚田」があったりとわりと名前は聞いたことあるくらいの物があったりする。
景光はその市の中学3年であった。
成績はそこそこ、部活の所属は無し。ごく平均的な学生である。
しかし、彼はあることで有名だった。
『戦車道 男子部』
女子戦車道から数年後に始まった一般的に『男子戦車道』と呼ばれる物で景光は好成績を残していた。
しかし、練習は一時間以上かけて愛知県まで行かないとできないために練習は週に二回。土曜と日曜に行っていた。
日曜日の夜遅くに帰ってくるため月曜日のあさはきつい。
担任もわかってはいるのだが教師として注意しなければならない。
それが故に、景光は月曜日に怒られる光景はクラスメイトにとっては日常茶飯事になっていた。
クラスメイトも理解してくれているため、景光は充実な中学生活を送っていた。
しかし、中学3年には受験が始まる。
その進路のことで景光はこの日の放課後教師に呼び出されていた……。
「……景光、本当にこれでいいのか?」
「…いいもなにも、それ以外何かありますか?」
もうあと数ヶ月で願書の提出期間となる………その最後の進路調査で景光が書いたのは地元高校への進学。
だが、毎度毎度担任の体育教師は進路調査の度に景光を呼び出した。
「景光、お前さん戦車道の推薦がいくつかきてたろ。それを全部断ってまで地元高校への進学にするのか?推薦なら結果は残さなきゃならんがある程度の勉学は免除される………その方が」
「いいんですよ先生。元々、ここに来て戦車道をやるつもりなんて無かったですし…」
そう、景光には戦車道をするという道は選択肢に
「いや、しかしだな…」
「しかしもなにも、ですよ。先生にはなぜここに引っ越してきた細かい理由を説明したはずです」
景光にとって、担任の体育教師は校内で一番信頼できる教師といっても過言では無かった。
故に、話た。
何故ここに引っ越してきたのか、
それでも、体育教師は将来の為にと推薦のはなしを持ってきてくれた。
しばらく考えていた体育教師だったが鼻で大きく息を吐くと席を立ち上がった。
その顔は少し迷い………いや仕方無いというまるで最後の手段を使うか…といった用な表情に景光には感じた。
担任が席を離れて数分後。担任は少し大きめの封筒を手に再び椅子に腰をおろした。
「あまりお前さんに渡したくは無かったが………お前さんがもし地元高校への進学の意思を変えないのなら渡してくれと相手のお偉いさんから頭下げてまで頼まれて
な……不本意だが約束は約束。これを見てどうするかはお前さん次第だ」
「?」
少し、深刻そうな表情の担任から封筒を受け取る。
話からして推薦の話だろう。
今頃推薦の話?と思考に浸る。
戦車道の推薦は確かに幾つかあった。
サンダース、プラウダ、他多数。
学園艦からお呼ばれすることはほとんど事例の無いことらしい。
しかし、景光はその話を断って地元の高校に進学することをすでに決めていた。
だからこそ、何故自分が地元高校に進学する意思が変わらないならこの封筒を渡して欲しいとわざわざ頭を下げてまで頼む必要があるのか、その理由がわからなかった。
そこまでして自分に来て欲しいのだろうか。
なら自分の意思を関係無しに受け取った当日、担任はこの封筒を自分の元へ持ってくるはずだ。
なら何故………
そう思考しながら差出人名義を確認した時、景光の目は見開いた。
「そんな……何で………何で!!」
自然と手に力が入り、震えた。
封筒の右下に書かれた『黒森峰学園』の文字。
その文字を見た瞬間、
「何で…!何で今頃…!!」
それに、担任が『相手のお偉いさんから頭下げてまで頼まれた』といっていた。
黒森峰のお偉いさん、つまり理事長、西住流師範でありながら黒森峰学園理事長を務める『西住しほ』を指している。
「あの時切り捨てた癖に……邪魔って追い出した癖に…!今頃戻ってこいとでも言いたいのかよ!!」
怒り、憎悪。それが景光の思考を支配している中、担任はただじっと景光を見つめていた。
ああ、いっそのことこの封筒を破ってしまおうか……
そう思った。
しかし
「なあ景光、そろそろ正直になったらどうだ」
えっ……と景光は担任の言葉に驚いた。
……いや、驚いたというより、何か核心的な物を突かれた気がした。
「お前さん、本当に戦車道をやりたく無いのか?」
「それは…」
「なら何故、こっちに来ても続けたんだ?お前さんが止めたいならわざわざ愛知まで通わなくても止めればいい話じゃないか。でもお前さんは続けた。なんでだ?」
「……」
答え無い。いや、答えられない。担任の言葉は遠回しであれど、図星をついて来ている。
だが答えられない。
そう、景光は今心の奥底にある物を
「お前さん、まだ戦車道諦めてないだろ」
「っ」
自然と顔が渋ったのが分かった。
「いいか?お前さんが本当に戦車道を止めたかったのなら大会でこんないい成績は残しちゃいない。けどお前さんはわざわざ愛知まで通い、こんな成績を残したんだ。それは、お前さんの心がまだ、戦車道での活躍を諦めてないからなんじゃ無いか?」
「…」
図星だ。自分はまだ心の奥底で期待していたんだ。
どんなに否定されても、追い出されても、心はその諦めないと灯火を燃やし続けていた。
「もしお前さんが諦めてないなら、その学園艦に乗れ。そこにお前さんの目指している物があるはずだ」
…ああ、なんて優しいのだろう。
ここまで捻くれてしまった自分を三年間ずっと見てくれていた担任。
その優しさに感謝した。
封筒をつかんでいた手は力は抜けてはいなかったが、震えは止まっていた。
まるで、決意をした手のように。
卒業式の次の日。三重をたち、熊本へと向かった。
3年振りの帰省となる熊本、入学する黒森峰学園艦へと乗艦する為に。
「……相変わらず、デカいな」
黒森峰学園艦。
かつてナチスドイツが開発、運用しようとしていたグラーフツェッペリン級………によく似た艦影をしている。
が、その大きさは比べ物にならないくらいに大きい。
何せ、この艦の飛行甲板にあたる部分には何万という人々が生活している。
無論かつて生活していた景光自身の故郷………となるのだが、正直複雑だというのが今の気持ちであった。
受験票、及び招待状を見せ特に何も言われずに乗艦した。
「…」
思わず黄昏てしまった。
多分戻って来ないだろうと、二度と踏む事はないだろうと。
かつての、3年前目に焼き付けたはずの光景が今目の前にある。
あの日、後悔に溺れて逃げるように去ったこの艦の光景は、何一つ変わってなどいなかった。
飛行甲板に出て指定の場所へと向かう。
『黒森峰学園 男子校送迎バス』と書かれたバス……には乗らず、隣の明らか軍用ジープに向かう。
運転手はこちらに近づく自分に気付き、驚愕した。
「お前……景光か!!」
「お久しぶりです。先輩」
かつて小学生時代にお世話になった先輩……現在は黒森峰男子校にて操縦士として活躍している。
これもあの人なりの気遣いなのだろうか……。
多少の会話をしたあと、ジープに乗り込む。
オープントップの車両の為に少し肌寒い。
「そうか、向こうでも続けてたのか……いや中部、近畿の方でいい腕の中学生がいるとは聞いたが……」
「そんな、言うほどじゃありませんよ……ただまあ、複雑な心境でした」
「まあそうだろう。しっかし隊長に練習休んで一人客を迎えに行けって言われたから誰だと思ったが……まさかお前とはな……」
「……あの後、どうなりましたか?」
恐る恐る、そう景光は聞いた。
運転手はため息をつきながらもハンドルを離すことなくゆっくりと口を開いた。
「……大混乱だったよ。『景光が追い出された』ってな。俺からみてもお前は頭一つ抜けてた技術があったし先輩らも楽しみにしてたんだ。そしたら追い出されたって聞いたから今年の一年の将来有望が消えちまったって先輩が頭抱えてた事をよく覚えてる」
「……」
しかし、と続ける。
「一番大変だったのは西住妹だったよ。数日後に訪ねてきて何か知らないかと涙ながらに聞いてきて先輩達もお手上げ状態だったよ………言わなかったんだな」
「…言ったのは、あいつだけですから」
「あいつって………姉の方か」
「ええ………でもあいつはきっと俺を
自然と握り拳となり、力が入った。
「恨む?」
「あいつは、戦車道の練習が本格的に始まってだいぶと性格が変わった。日に日に感情も読めなくなってきて、出ていくと言っても『そうか』って一言言っただけだった……けど、出ていく数日前に…たった一言『行かないでくれ…』って……顔は見えなかったけど…あの時、俺は逃げるようにあの家とこの艦を去った……あいつは……」
「…なるほどな」
そう顎を撫でながら、鼻でため息をつき『勘違いってのは怖いなぁ……』と呟いた先輩。
「勘違い?」
「ま、今は知らなくていいさ。言えることはお前の考えは憂鬱で終わるかもしれんってことだな」
「?」
憂鬱で終わるかもしれない?その意味を問いただそうとしたとき、
「着いたぜ」
着いたぜ、とは言われたが何も無い。ただの暗い建物……いや大きい鉄の箱と言った方が正しいか、少し不気味な感じさえ覚えた。
「……何もないっ!?」
突如としてガコンッという音と共に箱が動き始めた。
「これは……!?」
「そうか、お前さんは初めてか。この黒森峰の高校男子戦車道部は戦車の保有数がサンダースに次いで多い。こんな数甲板の上じゃ間に合わなくてな。そこでだ。この学園艦ってのは面白くてな。所々に史実の物をそのまま再現した部分があったりする。空母ってのはエレベーターがついていてな、その下は,」
暗かったエレベーターに光が差した。
「格納庫って相場が決まってる」
「…これが、男子戦車道部の整備場……」
広い。ただただ広い。その広さにびっしりと戦車が置かれ、つなぎを着た整備士らしい姿の人や戦車道の人が慌ただしく動いている。
「ヴァッフェントレーガー...RU251...計画戦車や試作戦車がめだつような...」
「あったりめーよ。そうじゃなきゃ
「?勝てない?」
「ま、それはお前がここで戦車道をやったらわかるさ...」
エレベーターが止まりジープがゆっくりと低速で走り出す。
「さて、とりあえずお前を隊長のところにつれていく。詳しい話はそこで全部説明するぞ」
「...先輩、女子の戦車道は」
「安心しろ、女子戦車道は甲板で活動している」
それを聞いて安心したような、少し残念なような、そんな気持ちになった。
会いたくない...だが会いたいような気持ちも多少なりともある。
でもここまで来たら嫌でも会うことになる。
覚悟を決めろ。
そうでなければ、心の奥底にある愚かな希望を抱いたまま溺れ死ねと。
女性は複雑な気持ちにあった。
手に持たれている『受験生一覧(推薦含む)』の名簿を見て複雑になってしまった。
一覧の中にある『景光 結城』の文字。
ここに戻って来てくれた嬉しさ反面、
そう、女性……西住しほは景光を追放した張本人である。
今思い返せば自分は正常ではなかったのかもしれない。
いや、異常だった。
両親を失い、途方に暮れて狂ったように戦車道に打ち込んだあの子は才の塊、開花させていった。
そして狂ったようなあの子を止めた自分の娘、まほ。
その二人の関係がまほの戦車道の成長の妨げるのではと恐れ、追放してしまった。
治りかけてたあの子の心を、再び壊してしまった。
あの子は私を恨んでいる。自分が行った行為は間違いだったとあの子に言ってもきっと彼の憎悪は消えはしない。
でも、せめてまほだけは……と、愛知の名古屋港に寄港した際に三重のあの子の中学に訪れた。
けれども現実は厳しい。担任は『景光からすべて聞いています。その上で、担任として、あなたを景光に会わせるわけには行きません』と言われた。
わかっていた事だ。自分の行為がどれだけ愚かであったと。
けれど、それでも、あの子が近畿で戦車道をしていると、そうきいた時は嬉しかったのだ。
だから、もし彼が戦車道をせずに地元高校の進学を考えているなら、これを渡してくれと。封筒を渡した。
担任は渋々『わかりました………が、これを見せて考えが変わるかはあの子次第です』と一応受け取ってくれた。
推薦枠の一覧に名前があるということは、封筒は彼の手にわたったのだろう。
彼のことは男子校に任せている。上手くやってくれるはず。
きっとこちらから出向かない限り、彼とは会えないだろう。推薦枠であるため、彼は面接のみであり、3月中に許しては貰えないだろうが謝罪を込めてあの子の所へ出向こう。
でも、その前に
「何か御用でしょうか、お母様」
「…いい、まほ。よく聞いて頂戴」
まほが今、あの子をどう思っているか。