ガールズ&パンツァー Re.Not a Hero 作:MBT-70
今回は文字より、投稿優先です。
「先輩、隊長って一体どんな人なんです?」
隊長の部屋へ向かっている途中、率直にその質問を投げ掛けてみた。
「ん?まあ、ゆったりっていうか…マイペース?みたいな人だよ。普段はあれだけどいざとなったら強い、みたいな。まあ悪い人じゃないのは確かだし、あってみればわかるさっと、着いたぞ」
先輩は流れるようにノックすらせずに失礼しまーすと入っていってしまった。
「おやおや、ノックはするよういったはずなんだけどね~」
白髪の、ニッコリしている人物がそう口を開いた。
「別にいいじゃないっすか隊長。それより、連れてきましたぜ」
「うん、ご苦労様。それじゃあ話をしよう。景光 結城君だね?」
「はい。」
「いい返事だ。私は『伊藤 清』。よく名前と性格が真逆だとからかわれてるよ。
ここ、黒森峰学園戦車道男子部の隊長さ。実際には『参謀本部部長』っていう肩書きだけどね。君のとはよく聞いてるよ。
戦車道の話、もちろん君の小学部戦車道の頃の事もね。近畿に移り『無銘の英雄』なんて呼ばれてた事も。今回こちらに来る………いや帰ってくると言った方が正しいかな?そのことで学園の方から詳しい話を聞いてるよ。その上で君を受け入れてくれたと言うことは、君は黒森峰の学園艦から正式に認められたということ………君はここで戦車道をする、これに偽りはないね?」
これには黙って頷く形で肯定した。
「うん、それじゃあ『高校生戦車道男子部』について詳しく話そうか。
まず高校生戦車道男子部は根本的にルールが覆される。中学までは女子戦車道と同じルールだっったけど高校では基本ルールが『違う』と思ってほしい。
まず戦車の制限だけど戦車道連盟が定めている男子戦車道は基本的にこれと言った制限はほとんど無いんだ。あるのは『その国で運用された、試作、計画された戦車』だけであって制限はほとんどない。けど第三世代主力戦車には制限がある。
特に10式戦車なんて強すぎるしね。他には運用前に連盟に届け出をして許可をもらわないと駄目だし」
うんうん、と頷きながら満足するように言う隊長。
「その他に男子戦車道は基本年中競技でね。学園艦に直接攻め込んで来るなんてことがある。
この前はサンダースがプラウダにシェリダンを投入して資材を強奪したなんて話をきいたよ。これを『拠点戦』って言ってね。攻められた側を防衛側、攻める側を攻撃側として攻める側は勝利すれば資材が手にはいるし負ければ捕虜。そして防衛側はカウンターとして相手の拠点に攻撃する権利が与えられる……他にもあるけどこれは追々話そうか。
そして何より厄介なルールが『タンクロック』。これは撃破された戦車は数日間使えなくなるというものでね、戦車によってロックされる時間は違うけどロックされてる間は試合にもでれないし修理さえできないんだ。
これを狙って工作兵が戦車の破壊工作をしに来る事だってある。
そのため特殊カーボン製防弾チョッキは必須だよ。勿論拳銃やライフルと言った火器もね」
そうなると面倒くさい。タンクロックされてる間は戦車に触れられないないし、試合と重なれば出撃もできない。そうなったら数量が足りずに行く、なんてこともあり得るだろう。
「一応大会もある。女子戦車道とべつの大会と、男女共同戦車道大会って言うのがね。これは近づいてきたら話そうか。そして、言うまでもなく黒森峰の目標は『全国大会9連覇』、それにプラス『男女共同戦車道大会での9連覇』、『男子戦車道年間名声得点1位』を目標に活動しているよ。そしてこれは今日君に支給する物だよ。」
そういって机のしたから取り出した少し大きめのスーツケース。
「中には戦車道の制服、特殊カーボン製防弾チョッキ、そして私からのささやかなプレゼントがはいってるよ。制服や防弾チョッキの事はそこに居る君の先輩に聞くといい。それじゃあ行こうか」
「?行く?何処へです?」
「君の配属される戦車にさ」
隊長達と共に再び格納へ戻ってきた。
よく見ればつなぎを来ている人とごつめのミリタリーチョッキらしきものを来ている人との区別が見てとれる。
おそらく前者が整備班、後者が戦車兵だろう。
思えば黒森峰の男子戦車道がここまで大規模なものだとは思ってもいなかった。
いや、知らなかった。おそらく彼女は知っていたんだろうと思うとため息がでる。
仕方ないか。小さい頃に両親をなくして狂ったかのように戦車道にのめり混んでいたころは対人関係すらまともじゃなかった。もちろん西住姉妹とも。
いま思えばあの時、もっとしっかりしていればあの引き留められた時に恐怖に殺されず一言二言彼女に何か言えたのかもしれない。
戦車道も引っ越してから元々するつもりはなかった。
なので高校の戦車道に関しては何一つ調べてない。
そして、自分が『無銘の英雄』なんて呼ばれてた事も知らない。
これに関しては呼び名を着けた奴を戦車に縛り付けて引きずり回したい気分だ。
なんだよ無銘の英雄って、エ◯ヤか?エ◯ヤシロ◯なのか?という沸々と何かが煮える感覚がした所で景光は考えるのを止めた。
さて、少し幼い頃の話をしよう。
小学二年生時、両親を事故で亡くした。
高速道路での玉突き交通事故、車には自分も乗っていたが幸い怪我は無く、救急隊員により救い出された……が両親はすでに死亡していた。
というより、生き残ったのは自分だけだった。
狂った。何故自分なのかと。生き残ったのは自分だったのかと。
サヴァイバーズ・ギルト。その症状に苦しみ、その苦しみを殺すように戦車道へと打ち込んだ。
この時点、ある意味ではエ◯ヤシロ◯と似てるのかもしれない……が問題はそこではない。
小学二年生で両親を失って、なにもできないよりはましだと戦車道に打ち込んだ体が、精神が、その無茶に耐えられるはずがない。
その異変に最初に気づいたのが、西住まほだった。
「着いたよ。ここだ」
思考を中断。目の前には大きめの扉があった。
「この中に?」
「もちろん」
とボタンを押すと扉が開かれる。
中は暗く何も見えなかったが何か置いてあるのはわかった。
扉が開ききると同時に照明が点灯。そのシルエットを浮かび上がらせた。
ドイツ戦車特有の灰色。しかしその容姿はティーガーやパンターといった大型戦車では無く現代的となっている戦車があった。
先輩ですらほぉ…と唸る戦車。
「こいつは」
「そう。戦後西ドイツでの主力戦車となったポルシェ社主体で完成させられた第二世代主力戦車『Leopard 1』(レオパルト アインス)。君の配属されるレオパルトで構成された部隊『シュトゥルム』の戦車さ」
第二世代主力戦車。こんな戦車が自分に与えらるとは。
景光は感動と衝撃のあまりに言葉が出なかった。
「ちょ、隊長!」
「ん?」
「(いいんすか!?シュトゥルムは…)」
「(もちろん。シュトゥルム、任務達成率98%の私が持つ直属の超精鋭部隊。そこに彼を入れるのは危険だし、何より西住さんの為ならない、そう言いたいんだろう?)」
「(そ、そうですが…)」
「(安心してくれたまえ。承知の上だし何よりこの部隊が一番彼に適任なんだ。それに優遇してるようだが、この部隊に入れれば回りも贔屓の目は向けにくいしね。そしてなにより)」
「(なにより?)」
「(なにより私はバッドエンドは嫌いだからね!そうならないようになんとかするさ!)」
駄目だこいつ早くなんとかしないと……改めてそう思った先輩であった。
「さて景光君。君は2日間の休暇を出そう。明々後日には練習を開始するからここに戻って来て欲しい。やりたいことはあるだろうし、なにより募る話もあるんじゃないかい?」
「………そう、ですね。陸に行って花も添えなきゃいけないし……」
「うんうん。それじゃあとりあえず連絡船の発着場まで送ってあげたまえ」
「りょーかい」
いくぞ、と先輩に促されて追従した。
「景光君」
「はい?」
「こんな台詞があってね。『選ぶ道を間違えたら、行きたい所へは行けない』。君はこの2日間で色々あると思うけど
「……了解です」
見送る隊長を背に再びジープに乗り込み格納庫を後にした。
「運命というのは選ぶんじゃない。掴みとるんだよ景光君。…あ。もしもし?ええ花を添えにいくと……はい。それでは……」
自身の母親の話を聞いて少女、西住まほは驚愕していた。
両親を失った結城を、母親であるしほは引き取った。
何故肉親に預けなかったのかと言うと彼の両親は駆け落ちだった為、肉親という肉親と連絡など一切取っていなかった。
幼馴染であったため一緒に暮らす事に苦は無かったが結城の様子は可笑しかった。私やみほの前では明るく振る舞っていたが、戦車道に打ち込むようになった結城はまるで
それからだろうか、結城の笑顔は作り笑いにしか見えなくなってしまった。
気付いた時には、結城の心身はボロボロだった。
今考えて見れば小学生で両親を失ったのだ。その結城の心は計り知れない。
だからこそ、自分が止めなければならないと、暴走を続ける結城を止めた。
いつしか、幼馴染ではなくまた違った目で結城を見ていた。
…………それに気付いたのはごく最近の事だったが。
「はあ」とため息をつき、立ち上がる。
結城は、陸に来ているらしい。
あの時、行くなと言った時に返事が無かった理由を聞きに行くか、と決めると玄関を出た。
「…久しぶりかな……最後に来たのはいつだっけ……」
重いスーツケースを持ちながら『影光家墓地』と書かれた墓石のまえに結城はたっていた。
思った以上に墓石は綺麗であった。
おそらく誰かが手入れをしてくれてたのだろう。
「………ただいま、母さん、父さん。俺、帰ってこれたよ…」
二度と見れる事がないだろうと思っていた両親の墓石に、そう言葉を結城は漏らした。
「さて…どうしようか」
学園艦から出て既に二時間以上が経過していた。今から学園艦に戻るとしても遅いし、ここら辺はホテルもほとんどない。
となると、自分のいく宛は
「あの家、か……」
消去方で西住家となる。
…消去法って言ってる時点で腰が引いてる気がする……
兎に角、このままでは野宿になりかねないので足を動かす。
肌寒いかぜが肌を刺激する。
それでも結城にとっては懐かしく感じて仕方がなかった。
3年経って、細かいところがいろいろ変わっていた。
今は3月中旬、世間の学校ではまだ冬休み。
黒森峰の男子戦車道ももちろん4月からなのだが来るように言われた為にこうして3年振りの故郷を歩いている。
……変わったな。いや、変わろうとしてないのは俺だけか……
覚悟を決めたが、揺らぐ。
……後悔しかない。だからこそここへは来たくなかった…
「ひどい顔だな。まるで、帰ってきたくなかったと言うような顔だ」
不意に、声が聞こえた。
それも自分へ対するもの。
「まさか、その顔で帰ってきたと言うつもりか?」
「………いや、そんなつもりは…」
「ならあの時、何故話してくれなかった……?」
……あの時、あの時か。行かないでくれと、止められた時。
「…私が頼れなかったか?」
「違う!そうじゃない……違うんだ…俺はあの時……ただ、お前の為だと思って……いや知ってたさ…あの人達が俺を追い出そうとしてることくらい……でも頼れなかったわけじゃないんだ!………無力な俺を、責めてくれてかまわない…恨んでくれてもいい…けど、信じてくれ、まほ……」
「……知ってたさ」
ゆっくりと近づいてくる
「お前が、追放されそうなのも。お前がそれに耐えていたことも」
「あれは、知った上での私の我が儘だった。だから…」
そして、数歩手前で止まり。
「お帰り、結城」
その瞬間に、頬を涙がつたった
「泣くな、男じゃないのか?全く…」
と、その肩に抱き寄せられる。
「しょうがないな。昔の泣き虫に戻ったか?」
「…泣いてなんか、ない…!」
「そこで意地を張るのは、変わってないな。早く泣き止め。みほが家で待ってる」
「…わかった」
スッと離れ。返すべき言葉を返す。
「ただいま、まほ」
「ああ……お帰り、ゆう」