緑谷出久はサイコな二重人格のようです   作:サハクィエル

1 / 47
 どっかでやられているかもしれない、ヒロアカの二重人格ものです。作者は調べておりませんが、これと酷似した作品が存在するかもしれません。非常にシンプルなアイディアですので。
 二重人格と化してしまったデク君のお話です。警告タグにオリ主、とありますが、あれは二つ目の人格が完全に独自のものであるからです。それでも主人公はデク君です。

※原作へのアンチ・ヘイトが多く含まれております。苦手な方は今からでも遅くありませんのでブラウザバックをお願いします。


歪曲しきったプロローグ

「無個性の癖によォ……ヒーロー気取りか、デクゥ!」

 

 声が、夏の晴天に融ける。

 

 手から、ニトロのような汗を分泌させ、それを絶え間なく爆発させる金髪の少年は、眼前に佇む、緑髪の少年を煽るようにそう叫ぶ。

 

 否、煽るように、ではなく、本当に煽っているのだ。「無個性」──。その言葉は、実際のところ、緑髪の少年にとって最も痛手な蔑称だった。

 

 その言葉の所為か、はたまた、背後に控える旧友を守ることができない己の無力さを悔いているからか、少年は半泣きだ。今にも泣き出しそうな表情をしている。

 

 それでも、少年は退かない。

 

 それでも、握った拳を緩めない。

 

 少年は「英雄(ヒーロー)」になりたかった。どんな人間も笑って助けられるようなヒーローに。

 

 だが、それは絶望的だった。こと、能力社会に於いて──勿論暗喩ではない──彼に課せられた、「無個性(ハンディキャップ)」の存在はあまりにも重く、そして、膨大だった。

 

 少年はヒーローにはなれないと悟った。そして、誰もそれを否定してくれなかった。友人も、未来のライバルも、医者も、教師も。そして、産みの親でさえも。

 

 誰かに肯定してほしかった。自分はヒーローになれるのだ、と。希望を持て、と。

 

 しかし、それは叶わない。

 

 無個性だから。虚弱だから。そう言われ撥ね付けられ、唾棄された──。

 

 それが少年を歪めてしまった。狂わせてしまった。本来あり得ない筈の運命を産み出してしまった。

 

 亀裂の入った心。精神の分裂。──二重の、人格。

 

 悲痛な顔を携える少年に、「いじめっこ」の一人が歩み寄る。下卑た笑みを浮かべながら。嘲笑の気をはらんだ言葉を投げ掛けながら。

 

「ほら、どけよ」

 

「や、やめてよ──頭が、痛い」

 

 いじめっこに押され、緑髪の少年は頭を押さえつつ僅かに後退する。どうやら、頭痛を訴えているようだ。だが、いじめっこはそれを気にも留めない。

 

「無個性がよォ……うっとーしィんだよ!」

 

 押されても、尚そいつの前に立ちはだかるその少年に、指を伸ばす「個性」を持った少年はきれたようだった。無遠慮に拳を振りかぶり、それを前に突き出す。

 

 パァン、と乾いた音が響き、その拳は緑髪の少年に命中──しなかった。

 

 受け止められていた。少年の、その左の掌で。

 

「いつも寄ってくる……こんなアホが……この世はアホだらけなのか……!」

 

 次の瞬間だった。少年は足払いをかけ、そのいじめっこを転倒させた。

 

「い、いってぇ!」

 

 そいつは喚き、再度立ち上がろうとする。しかし、緑髪の少年はそれを、胸を蹴りつけることで阻止すると、派手に吹っ飛んだいじめっこの胸ぐらを掴んで上方へと上げ、アッパーカットを見舞わせる。それによってそいつの顔面は仰け反る。──喉ががら空きになった。

 

 刹那。豹変した少年は、その喉へと肘を打ち込み、いじめっこを完全に気絶させた。

 

「で、デク、てめぇ!?」

 

 そのいじめっこ三人のリーダー的存在、金髪の少年は、そこで漸く事態の異常性に気付き、困惑しつつも、緑髪に殴打を加えようと拳を振りかぶった。

 

 振りかぶったのは右の拳。今まで歯向かわれた経験に乏しいために形成されてしまった、異常なくらいの大振り。

 

 デクと呼ばれた少年は、その大振り攻撃を受け止め、1秒とかからずその腕を曲げて、付近に居た、翼を生やしたもう一人のいじめっこへと衝突させる。

 

 その瞬間。金髪の掌が爆発した。否、正確には、金髪の汗が爆発したのだ。

 

 とにもかくにも、その尋常ならざる攻撃を受けた翼の少年は仰向けに倒れ、そして動かなくなった。

 

 ──と。そんなデクを、金髪は蹴り飛ばした。流石に、その様は黙って見ていられるほどそいつは女々しくないようだった。

 

 しかし。緑髪の少年は吹っ飛ばされまい、と、爆発の能力を持った少年の手を掴んでいた。その所為で、間合いは1メートルとて空かない。

 

 次の瞬間、デクのアッパーカットが正確に金髪の顎を射抜いた。

 

 それにより、爆発の少年は仰け反った。そして、そのまま動けなくなる。

 

 その隙を突かない手はなかった。緑髪は、そんな金髪に合計13発もの拳を叩き込み、最後の一撃を頭部に打ち込んで地面に押し倒した。

 

 そのまま、ゆっくりと足を少年の頭へと乗せてゆく。

 

 この時点で、勝負は決していた。もう追撃する必要などどこにもなかった。

 

 だが。「デク」は、攻撃を止めない。

 

 少年の頭に押し付けられた足が、そのまま左右に激しく動かされる。ぎりぎり、ぎりぎり、と肉が擦れ、靴が鳴った。

 

 否、攻撃はそれだけではない。

 

 少年は、次第に、踏みつける力を強めているのだった。

 

誰も(ノーワン)……」

 

 ふとデクが口ずさんだのは、古いロックバンド、オインゴ・ボインゴの誰も永遠には生きない(ノーワンリブズフォーエバー)の一説だった。

 

 陽気なリズムにミスマッチした、血生臭い歌詞。

 

 それが、この奇妙かつ、凄惨たる状況に、妙にマッチしているのだった──。

 

「誰も、誰も、誰も、誰も、誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も──」

 

 その後の歌詞に辿り着かないまま、延々と、ループ再生のようにその歌詞だけが繰り返される。

 

 やがて、近所の世話焼きな交番勤務の警察官が現れるまで、その「攻撃」は続いたのだった。

 




 ジョジョネタとブギーポップネタがひどい(今更感)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。