「わーたーしーがー!」
「普通にドアから来たッ!」
──と、そんな決まり文句のアレンジで、その授業、ヒーロー基礎学は始まったのだった。
「すげぇ、ホントに先生やってんだ、オールマイト……」
「
そのような黄色い(黄色い?)声援を受けつつ、オールマイトは教卓の前に立ち、芝居がかったポージングをしつつ、声高らかに宣言した。
「早速だが、今日はコレだ! 戦闘訓練!」
戦闘訓練。その言葉に、僕は少し気持ちが浮き立つのを感じた。
対人戦闘。テレビの中にしか存在しえなかった筈の、ヒーローの本分である。自分が目指すヒーローは、どんな人でも笑顔で助けられるヒーローなので、少々その本分からは離れているかもしれないが、しかし、基本的に僕は対人戦闘が得意だ。
同じ思いなのだろう、かっちゃんの目も歓喜に見開かれている。
次いで、オールマイトは何やらリモコンを操作し、壁を展開。そこにあった、ロッカーのようなものを露わにさせた。
「さて。これは、入学前の「要望」と「個性届け」を元に作られた、各々の
コスチューム。ずっと前から妄想していたくせに、自分には過ぎた代物だ、と、妄想の度に諦めてきた物。
でも、もうそれは妄想じゃない。手を伸ばせば、そこにある物なんだ。
*
「ジャンプスーツ?」
グラウンドβにて、麗日さんはそう問いかけた。
「ああ、うん。動きやすいのが一番いいかな、って思って」
そう。動きやすさ、というのは、実は最も重要なことなのだと僕は思う。銃だってそうだ。引き金を引いたら弾が出ることこそ重要だと言われている。
それに、ワン・フォー・オールで攻撃を全て回避すれば、装備の防御力はあまり関係ないし、装備の防御力を削った分動きが機敏になるので、攻撃性能の上昇にも繋がるのだ。
だから僕の装備は、ジャンプスーツなのだ。
そんな個性を活かすための装備の右腰には、少々僕の思い描くヒーロー像には似合わないものが納められている。
拳銃。世紀単位で前に使われた、黎明期のリボルバー。正確性の塊である。
これを決めたときのことは、よく覚えていない。銃だけではない。ジャンプスーツ以外の部分──例えば閃光玉とかサバイバルナイフとか、腕に取り付けられた、ガントレット型の衝撃軽減圧縮機構とか、このコスチュームには身に覚えなのない装備が多数存在している。
「そ、そう言えば、麗日さん、そのスーツは……?」
全身を覆う麗日さんのコスチュームは、少々アブナイ一品だと思う。
「要望ちゃんと書けば良かったよ。パツパツスーツんなった……」
そのロボットアニメのパイロットスーツみたいなデザインは、青少年の心を高ぶらせるには十分だとも思う。
──と、雑念を浮かべていると、僕の真横に居た、いかにも特撮ヒーロー、といったようなデザインの人が発言した。
「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」
声は飯田くんのものだった。ベルトが付いていないので仮面のバイク乗りではないだろうが、正直、格好良いと思う。
「いいや、もう二歩先に踏み込む。屋内での戦闘訓練だ」
言いつつ、オールマイトはカンペを取りだし、説明を開始した。
「ここでは、それぞれ2人ずつの2チームが「ヴィラン」と「ヒーロー」に分かれ、それぞれ、設定された目標を達成してもらう」
本格的な実践訓練のようだった。
そう言えば、フィールドは屋内だと言っていた。ワン・フォー・オールの力を存分に発揮できそうな戦場である。水中など、体が動かしづらい場所ではなさそうなので安心した。
「では、状況を説明しよう──」
オールマイトによると。
この「ヴィランチーム」は、拠点に核兵器を隠し持っていて、「ヒーローチーム」はそれを処理しようとしているという設定らしい。ヒーローは核兵器に触るか、ヴィランに「確保テープ」という確保証明用のテープを巻き付ければ条件達成となる。
しかし、逆も然り。ヴィランも、確保テープをヒーローに巻き付ければ確保したことになる。そのうえ、時間制限内に核が奪われなければヴィラン側の勝利となってしまうのだ。
ヒーロー側が圧倒的に不利な条件である。しかし、ヒーローというのは
チーム分けのくじ引きの結果、僕は麗日さんとヒーローを演じることとなった。
──そして。その役職で、ヴィランチームである、飯田君と、かっちゃんを打ち倒すのだ。
デク君は前回の一件で雄英の生徒への興味を完全に無くしてしまい(格好良く言っていますが、用はバカにされたのでスネているだけです)、生徒の前には率先して出なくなりそうです。デク君が学級委員長に尾白君を選ぶ展開とか、色々妄想していたのですが、全部パーにしました。
因みに、この世界のデク君は母親から気味悪がられており、入学祝を買ってもらっていません。そのため、ジャンプスーツのチョイスは、彼自身が決めたこととなります。