ああ、そういえば、本編とはあまり関係がないのですが、ジョジョの5部がアニメ化するそうですね。
「祝福」しろ.....アニメ化の成功にはそれが必要だ.....
それでは今回もお楽しみくださいませ。
USJ、水難ルーム。
水難を解決するためのヒーローの素地が鍛えられる場所であり、そこではそれなりの大きさを持つ船が1隻、漂流している。
僕らが乗っているのはそれだ。その上に、僕と蛙吹さんと峰田君は乗っている。
そして、その船を包囲するのは、水中行動に秀でているであろうヴィランの大群。数は20人ほど。地上で喧嘩しても、数で押しきられてしまいそうな戦力差である。
この状況。切り抜ける方法はあるのか──。
「ど、どうすんだよォ……あんな奴ら……」
そんな声が聞こえ、横を向くと、峰田君が震えていた。その目には涙が浮かんでいる。
いくらヒーロー志望と言えど、僕らはこの間まで中学生だった高校一年生。まだまだ精神的に未熟なのだ。
「実際、四面楚歌、って感じよね。個性アドバンテージの面でも、こちらは負けているわ」
「確かに、水中で行動できそうなのは蛙吹さんだけだよね」
言いつつ、僕はいやに冷静な自分に気がついた。
どういうことだろうか。僕の中からは不自然に記憶が抜けているし、今の状況は彼女が言うように四面楚歌そのものだ。
にも関わらず、死の恐怖に戦いていないのはどういうことだろうか。
(まさか、僕は既に心の中で攻略の方法を見つけている──?)
そんなまさか、と。思考してから僕はかぶりを振ってそれを否定した。そんな方法、思い付けていない。
大体、僕は水中で機敏に動けないのだ。いくらワン・フォー・オールの身体強化があるからと言っても、僕はオールマイトとは違う。人間という規格でできないことは基本的にできない。
──水中では、行動できない。
そこまで思考してから、僕は漸く、「それ」に気付いた。
あるではないか。海をまっぷたつに裂いて紅海を渡ったモーセのように、この状況を突破して、全員で逃げおおせることのできる道が。
「ど、どーすんだよォ! このままじゃ俺たち、明日を迎えられねェよ!」
未だパニック状態の峰田君を尻目に、僕は船の手すりに足をかけ腕でそれを支え、ワン・フォー・オール20%の力を発動する。
「待って緑谷ちゃん、何をする気──」
「峰田君、蛙吹さん。僕が敵を惹き付けるから、隙を見て逃げて」
最後に。僕はこの「手」が成功できるように、笑って言った。
それから1拍置いて。手すりを蹴って疑似の海に飛び出した僕を、ヴィランは優しく迎えてくれなかった。各々の攻撃手段で、こちらを迎え撃つ。
最初に僕は、肥大化し、こちらへと伸びてきた腕を手刀で払うと、そのヴィランの頭に乗り、頭を蹴り抜いたうえで、そいつを踏み台にして一番近い位置のヴィランへと「飛び移る」──。
そして、飛び乗ったそいつに対しても同じことをした。頭を蹴り抜き、踏み台にして他の奴に移る。
今度、僕が使ったのは腕だった。まるで機関銃のように水圧の弾を飛ばしてくるそいつの攻撃を全て防ぎきってから、腕で首の関節をキメ、そいつに乗って高度の乏しい跳躍をした。
そこで腰から銃を引き抜き、そのシリンダーの中に入っていたウッドチップ弾を全て使いきって、眼下のヴィラン3体を撃破。そいつらの急所にはちゃんと弾を撃ち込めた。しかし、撃ったものの、腕など、急所ではない位置に撃ち込んでしまった二人は、昏倒させることができなかった。
そこから、足場に選ばれたヴィランを踏み抜いて、攻撃と移動を一度に行う。
──そう、これこそが僕の選んだ戦い方。顔を出し、こちらを警戒しているヴィランの体を踏み抜いて、一切水中に入らずに戦う戦法だ。
この状況。大きく跳躍すれば、個性やら違法に入手された銃器で打ち落とされてしまうだろう。だが、常に低い位置を飛び、縦横無尽に動き回っていればそんなことは起こらない。
「んのっ.....こんなクソガキの凡策にやられてたまるかァーーッ!」
「策じゃない! 勇気だッ!」
そう。一見完璧に見えるこの戦法に尤も重要なものは「勇気」だ。
もし、飛び回っているうちに着地をミスすれば? 上手く踏み台にした相手を昏倒させられなかったら? 運悪く打ち落とされてしまったら? この戦法は、至るところに落とし穴がある。
勇気と覚悟がなければできない戦法なのだ、これは。
僕は再び飛び上がり、たった今毒づいたヴィランを踏みつけて跳躍する。
いける。この戦法なら、ヴィランを殲滅できるかもしれない。僕はそう思い始めていた。
後々思い返してみれば、これは慢心だったのだろう。この時点で、僕は驕り高ぶり、ヴィランという存在を軽視していたのだろう。
ヴィランはどこまでも自由な存在。法にも、他人にも、自身の理性にだって抑圧されない。
次の瞬間。僕は、飛び乗った異形型個性のヴィランに、蹴りを回避され、足を掴まれた。
「────ッ!」
極限まで圧し殺した悲鳴をあげてから、僕はそれを振りほどこうとした。
しかし。僕の行動よりも速く、フリーになっていた6人ほどのヴィランが、こちらへと遠距離攻撃の個性を一斉に浴びせてきた。
水圧のカッターに切り裂かれ、見えない空気の矢に胸を貫かれ、タコ足のようなものに捕縛されてから、僕は疑似の海へと叩きつけられた。
まずい。早く地上に上がらなくては。そんな思考を浮かばせつつ、僕は体にまとわりついたタコ足を破壊しようと腕に力を込め、身じろぎを始めた。
体のタコ足相手に悪戦苦闘すること3秒。どうやら、この「個性」はそれほど頑丈ではないらしく、直ぐに破壊することができた。
これで僕の体は自由だ。後は海面に出て、息継ぎをするだけ。
──とそんな中。さっきも僕を襲った水圧カッターが、傷を負っている背中を直撃した。肺から息が漏れる。これで潜水時間が縮まってしまった。
僕は取り敢えず、海面すれすれで攻撃をしかけてきていたそいつの方向へと向かって泳いだ。これで、反撃と海からの脱出が同時にできる。
ワン・フォー・オールの補正を頼りに、連続で打ち出されている水圧カッターを掻い潜りつつ、僕はヴィランの間合いへと入ったところで、拳を振りかぶり──。
その拳を打ち込む寸前、全身から力が抜けて、拳の進む速度が急激に遅まった。
肉体時間制限。20%の力にはタイムリミットが課せられており、そのことを僕は知っていた。知っていた筈なのだが──。
どうやら、記憶が抜け落ちていた間に、僕は何らかの場面でワン・フォー・オール20%の力を使ってしまっていたらしい。それで時間制限が縮まり、今の状況が作り出されてしまった。
次の瞬間、緩慢に前進する拳は、水中で自由自在に動くことのできるヴィランに回避される。
(まずいまずいまずいッッ! 早く息継ぎしなきゃ──!)
僕は焦って、その態勢をロクに整えず海面に出ようとした。もう少しで、無呼吸状態の体が限界を迎えるのだ。急いで酸素を補給しなければ──。
──と、その刹那。海面が頭上3センチまで迫ったところで、僕は足を引っ張られ、そのまま水中に逆戻りした。
何気に初の出久君のピンチ。流石に無双するのはどうかと思った結果でした。