緑谷出久はサイコな二重人格のようです   作:サハクィエル

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 そう言えば、もうお気付きかも知れませんが、この小説は異常なくらい誤字やら誤用やらが多いのです。
 作者もできる限り見返してはいるのですが、どうしても至らない点があり、毎回やらかしてしまっています。
 その度に直して下さっている方々には本当に感謝しています。いつもありがとうございます。


疾走

「しっかりして! ねぇ、ちょっと──!」

 

 頬を叩かれている。デクはそれを感じ、それを止めさせるべく、目を開きつつ腕を動かした。

 

 デクは全身が痛む感覚を感じていた。ヴィランとの戦いでできた擦過傷によるものだ。それが彼の意識を刈り取らん、というくらいに激しく自己主張をしているのだった。

 

「ここ、は──」

 

 今一状況が思い出せず、彼は呟きつつ体を起こした。ぼんやりとした視界の中に、血が滲むほど強く握ったナイフと、乱雑にホルスターに突っ込まれている拳銃が映った。

 

「──気が付いたのね……良かった……」

 

 それを言ったのは蛙吹だった。それを聞き、漸く明瞭になった視界で、傷だらけになっている彼女を観察したデクは、自分が助けられたのだ、ということを悟る。

 

(出久の奴に意識を譲ってやったらこのザマだ──。全く、笑い話にすらならない)

 

 助けられた、ということは、彼にとって屈辱であった。常に自分が優位でありたいデクにとっては。

 

 しかし、それを発露させることは得策ではない、と考え、そのどうしようもない憤懣は内側へと溜まるしかなかった。

 

 デクはワン・フォー・オールが続かないことに胸中で歯噛みしつつ、立ち上がった。「出久」側の肉体が限界になったことで、制限時間が出久よりも長いデクも等しく力が使えなくなったのである。

 

 どこに敵が潜んでいるとも分からないこの状況で、個性が使えなくなる、というのは実際痛いことだった。

 

 立ち上がった彼は周囲を見回す。ここがどこなのか、結局聞けていない──。

 

 暫く視線をせわしなく繰っていたデクは、そこで見てしまった。

 

 どれだけのダメージを食らったのだろうか? 人間の形を保っているのが不思議なほどに体に打撲痕を作った相澤先生が、脳味噌の露出したヴィランに腕を掴まれていた。

 

 体格からして、それを行ったのはあいつだろう。

 

 次の瞬間。デクは一瞬とて躊躇せず腰から拳銃を抜き、撃鉄を起こすと、アイアンサイトで照準を定めて発砲した。

 

 その弾はウッドチップ弾であったが、しかし、ウッドチップ弾だってライフリングによって回転運動をしているのだ。命中すればそれなりに痛い。

 

 銃弾は真っ直ぐに脳味噌ヴィランへと向かい、命中──と同時に地面に落ちた。

 

 回転運動が完全に無力化され、原型を留めたまま落ちる銃弾。

 

(運動を消す「個性」……か! 厄介なヴィランだ──)

 

 しかし、今ので奴の注意は引けただろう。後はどうにかして奴を攻略してやればいいだけだ。──と、デクはそう考えていた。

 

 行き当たりばったりなのに、彼は気付けていない。

 

 ──と次の瞬間。その脳味噌ヴィランの横で悠然と立っていたヒョロヒョロの男に、黒い靄状のヴィランが近付き、何かを囁いた途端に気分を害したような素振りを見せた。

 

 何を言っていたのかはいまいち分からないが──奴等にとっていい知らせ(グッド・ニュース)ではないことは推察できる。大方、生徒を一人取り逃がしたなど、そんなところか。

 

「あァァ、だめだ、こんちくしょう。応援を呼ばれる。それじゃダメだ、ダメだよなぁ.....? 今日の所は帰るとしようか──」

 

 震えた声で──恐らく憤懣や悔恨の感情から来る震えだ──言い切ると、フラフラと、どこへ行くでもなく歩き出した。

 

 そして、唐突にその足を止める。

 

「ああ、そうだ。その前にさ……ヒーローとしての矜持を少しでも──『折って』……! 帰るとするかなッ!」

 

 ──とそう宣言した次の瞬間。その男は指を突き出し、こちらを指差した。刹那に警戒し、遠距離までカバーできる攻撃を撃って来るかと思考したが、その思考は空振りすることになる。それは直接的な攻撃の予備動作ではなかったのだ。

 

 それは「移動」のためのサインだった。

 

 1拍と置かず。黒い靄に包まれた男が、こちらの間合いへと移動してきた。瞬間移動。靄の男が個性を行使したのだ。

 

 その不健康に痩せ細った男の手は、ワープゲートの中から真っ直ぐに伸びていて──。

 

 気が付いた時には、既に、蛙吹の頭部に触れていた。

 

「─────ッ!」

 

 圧し殺した悲鳴を挙げてから、デクはその男へと向かって拳を振り上げた。その腕には緑色の閃光がまとわりついている。個性は発動しない筈だったが、しかし、それはノーリスクで個性を打とうとした場合の話だ。

 

 体のことを顧みなければ、個性を行使することが可能である──。

 

 刹那。その腕がそいつへ届く直前。男とデクの間に闖入者が現れた。あの脳味噌の露出した男である。

 

 その異形型個性の男は自らの体でデクの拳を受け止めると、その衝撃を個性によって相殺した。

 

 20%スマッシュの力が吸収され、デクの腕に反動が顕れる。

 

 しかし、彼は予め個性の内容を推察できていたので、特に逡巡なく次の行動に移ることができた。直ぐ様そのヴィランの右腕に組み付き、間接を外すべく自分の腕に力を込めた。

 

 そのデクの腕には、深紅のラインが表れている。

 

 ──ワン・フォー・オール100%。「個性」の限界点だ。

 

 3秒間だけ行使できる、デクだけの不遜な裏技である。

 

 しかし。その攻撃は通用しなかった。100%の力すらも、脳味噌ヴィランには吸収されてしまったのだ。

 

 と次の瞬間、そいつの丸太のように太い足蹴りがデクを貫いた。それにより、彼は大きく後ろへと吹っ飛ばされ、地面との摩擦で脇腹を抉られつつも停止した。

 

 そこで、痛みに喘ぎ、咳を2、3回してから、彼は向こうを見据える。結局、蛙吹に及ぶであろうヴィランの攻撃を止めることはできなかった──。

 

 しかし。彼女には何の異常も現れていなかった。即座に逃げ出した彼女は、驚愕した顔の細いヴィランに追われている。

 

 ──とそこで、デクは気付いた。

 

 さっき使った右腕が折れていること、蹴られた肋骨が折れていること。そして、さっきした咳に、血が混じっていること。その全てを。

 

 不味い。ここにきて、個性どころか体まで使えなくなるなんて。

 

 デクは動こうとした。立ち上がり、今すぐ蛙吹の救援に向かおうとした。

 

 しかし、体が動かない。足が立たず、落ちていく瞼を止めることができない。

 

 そうだ。指なら。

 

 未だ生きている左手の指でなら、攻撃を繰り出すことができる。

 

 デクはそう思考すると、躊躇なく左手の指を突き出した。その指には深紅のラインが浮かんでいる。

 

 しかし、その指が弾かれる直前、響き渡った声が、デクの体を止めた。

 

「もう大丈夫だ少年少女。私が来たッッ!」

 

 そこに立つのは、平和の象徴。




 内容薄いっすかね……
 あ、途中でデク君の腕が折れているのは、「個性」の反動です。時間制限を越えて使用すると、段々体の耐久力が薄くなっていくのです(限界時間と同じ時間無理をおして使い続けると耐久力関係なしにバキバキに折れます)。
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