緑谷出久はサイコな二重人格のようです   作:サハクィエル

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 お久しぶりです。
 何を書いていいか分からず。また、現実も忙しく、更新をすることができませんでした。
 申し訳ないです。これからは更新ペースを上げていきたいです。


粛清者の舞踏会

「らあッ!」

 

 切迫した叫びとともに、その日の夜も拳は振るわれる。

 

 夜の帳が、地上に落ちる光を消してしまう、魔性の時間帯。草木も眠る、深夜1時。

 

 夜というものには、不思議な力があり。その時間帯には、人間の「たが」が少し外れてしまう。法の鎖が、一瞬だけ弱まってしまうのだ。

 

 その間隙を突いて、今日も、非(ヴィラン)犯罪は行われる。ヒーローの見回りが小康状態に入り、かつ人目のなくなる絶好の時間帯。

 

 デクは、そんな犯罪を抹殺しつつ、彼の「目的」を達成するために夜の町を疾駆していたのだが──意外にも、この日、彼の目に入った薬物売買は、郊外の公園で行われていた。

 

 成る程そこは、人通りが驚くほど少ない。こそこそと薬物を販売するにはうってつけの場所だった。

 

 それを視界へ入れるや否や、デクは地面を蹴ってそこへ闖入し、販売員とおぼしき男へ拳を叩き込んだのだった。

 

 そいつは驚くほどあっさりと背後へ吹っ飛び、遊具に後頭部を打ち付けて昏倒した。それを確認すると、少々雑に他の奴をその肉体で突き飛ばしてから、最初に攻撃したそいつに歩み寄る。

 

「ちょっと警戒が足りないんじゃないの?」

 

 言いつつ、デクはそいつの頭を掴み、何度か遊具へと打ち付けた。後頭部から血がしたたり、喉から妙な呻き声がもれる。

 

「やり甲斐がないっていうかさァ……もっとちゃんとしてくれないとこっちも困るっていうかさ」

 

 誰に向けてのものなのか、いまいちはっきりしないその言葉に反応したかのように、さっき吹っ飛ばした他の販売員2人が起き上がってきた。どうやら、彼らはタフだったようだ。

 

 そいつらは懐から拳銃を取り出した。拳銃は何やら安っぽい造形をしている。おもちゃではないか、と一瞬疑ったが、男たちの顔に浮かぶ自信から、それはないだろうと考えを改めた。

 

 ──本物だとすれば、どれだけ命中精度が低かろうと、急所に弾が命中すれば即死だ。それを思い出したデクは、次の瞬間には、低く身を屈めて駆け出していた。

 

 弾が頭部を掠める感覚がある。しかし、それだけだ。弾は当たらない。

 

 デクと、銃を取り出した2人の間合いが詰まりきった時。その時既に、男の運命は決まっていた。

 

「遅い」

 

 刹那。水平に振りきられたデクの拳は、男たちの手に握られた拳銃を2つとも弾き飛ばした。

 

 デクには身体能力を強化する個性がある。だから、この間合いならば無敵だ。それを確信していた彼は、必殺の一撃となる追撃を叩き込もうとし──そこで、手を止めた。

 

 そのまま、防衛本能のままにその場から飛び退く。それから一拍おいて、襲おうとしていた男二人が、まるで糸が切れたかのように倒れた。

 

(これは……殺気……! チンピラじゃない……プロか……!?)

 

 デクは身構えた。彼が感じ取った殺気は常人の放つそれではなかった。

 

 そんなデクの眼前に、殺気の正体が現れる──。

 

「あァ、好い夜だ……こんな日には、こんな屑どもが騒ぎ出すのも仕方がないことだ。そう思わないか、そこのお前」

 

 声をかけられた。そう気付くのに数秒を要した。

 

 デクは決して、恐怖でヤケになっているわけではない。驚いていたのだ。こんな時間、こんな場所に、ここまで洗練された達人と出会えるなど。

 

「そうかもね」

 

「ああそうさ。そしてそれは、お前とて例外ではない」

 

 相手の視線は、まるで猛禽類のように鋭く。その構えには、決して隙がなかった。

 

 そいつは両手を使い、背中から長物を取り出して凄んだ。月光が照らす公園には、男の声だけが響く──。

 

「お前も社会を歪ませる癌だ。お前は、処刑人を、正義の執行者を名乗るには、あまりにも歪み過ぎている──我が名はステイン。粛清のための使徒……ッ!」

 

 次の瞬間。そいつは、両手に持った蛮刀を構えてこちらへ突進してきた。その早さは尋常ではなかった。個性による肉体的な早さと言うよりも、歩法による加速、という感じだった。

 

 デクはそれを真正面から受ける気にはなれず、腰からナイフを投てきしようとし──そこで、気付いた。

 

 奴は、口からふくみ針を射出した。そいつは、真っ直ぐに胴体へと向かっていく──。

 

 デクは直感した。ステインの狙いは臓器だと。そこに針を命中させ、大量出血で自分を窮地へ追い込む気だと。

 

 彼はナイフを抜きつつ、無理矢理左側へと横っ飛びした。態勢が崩れ、転びそうになるが、知ったことではない。そこから、ナイフを投てきしようと、ベルトからナイフを抜き放つ。

 

「考えることは同じか」

 

 そこで、デクは気付く。ステインは、回避させるためにふくみ針を射出したのだと。全ては、「ここ」で攻撃を命中させるための布石なのだと。

 

 次の瞬間、蛮刀の刃がデクに肉薄する。必死でナイフを抜くものの、その蛮刀は明らかに彼の指が動く速度よりも早い。

 

 このままでは切り裂かれる──。そう悟った時、デクは無意識のうちに、空いている手の指を弾いていた。

 

「デラウェア・スマッシュ」

 

 刹那。まるでスーパーセルかのような風圧が指先から迸り、デクは背後へ、ステインも背後へ吹っ飛ばされた。離脱と攻撃が両立した手段であった。その不遜な威力に、彼の指は骨折してしまったのだったが。

 

 しかし、そのスマッシュで、ステインの脇腹は抉れた。衝撃を完全に叩き込むことはできなかったが、しかし、ダメージを与えられたので十分だろう、とデクは考えていた。

 

 しかし。刹那の安堵が、彼に不幸をもたらした。ステインはそこから、ナイフを投てきしたのだ。とんでもない執念である。それにより、デクは足を負傷した。

 

「な、なんだ、この威力は──」

 

 デクが片膝を地面につくのと、ステインがぼそりとこぼしたのは、ほぼ同時だった。

 

「危険過ぎる、お前を生かしておくのは、あまりにも──」

 

 ぶつぶつと呟きながらも、しかし、その自称粛清者は、その場から逃げようとしていた。

 

 逃がすか、そう叫ぶよりも早く、デクは漸く抜き放つことに成功した、腰のナイフを投てきする。それは宙を駆け、ステインに肉薄した。

 

 ナイフが命中する直前。奴は、手に持った蛮刀で、ナイフを天高く舞い上げた。脇腹が抉れていても尚乱れない、達人のような身のこなしであった。

 

 ステインは、重力で落下してきたそのナイフのグリップをしっかり掴むと、そいつをポーチへ納めた。

 

 そして、その場から走り去っていく──。

 

 ──かくして。洗練されてはいるがしかし、決定的な破綻を避けえていない社会の粛清者と、未熟なひとりよがりな善意(エゴ)の卵の、一度目の邂逅は、その幕を下ろした。




 そう言えば、僕のヒーローアカデミアの劇場アニメーションが公開されるそうな。仮面ライダーも見なきゃあいけないし、BLEACHも興味あるし、やることが多すぎて困ります。
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