緑谷出久はサイコな二重人格のようです   作:サハクィエル

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最近スランプのようなものに陥ってしまい、全く内容がまとまらない中で投稿してしまったので、この話からは「まとまり」というものが欠如してしまっていることと思います。
また、体育祭第二種目である騎馬戦はダイジェストで流れ、物語は一気に最終種目へと突入してしまいますが、ご了承下さい。騎馬戦を書いているうちに、全く原作と同じ展開が出来上がってしまい、こんなものを投稿するならダイジェストの方がいいや、と思ってしまった結果でした。
そういうことで。騎馬戦のあらましは原作と殆ど同じだと考えて下さい。


宣戦布告

 日本最大の学校行事、雄英体育祭第二種目の騎馬戦は、熾烈を極めた。

 

 ここでの騎馬戦は「前種目となる障害物競争の順位に応じて、持ちP(ポイント)が高まる」という条件の中で、その持ちポイントを示すハチマキを取り合う、という一見単純なものだが、チーム構成やら「騎馬」という体系であるために、どうしても低下してしまう機動力をどのようにして補うかやらで、それなりに奥の深い競技になっている。

 

 そのようなルールのため。デクは、自分の元に集まってきた雄英生徒の中から、クラスメイトの麗日と、サポート科だという発目をチームに抜擢し、チームバランスをとるために、中距離戦闘に長けたクラスメイト、常闇を加え、自身は殆ど個性を使わずに、騎馬戦を戦い抜いたのだった。

 

 結果は4位。順当な結果である。最終種目にも出場できたうえ、彼は個性による疲弊もしていない。

 

 しかし、それでも彼は、「物足りなさ」を心の中で感じていた。

 

 インパクトが足りない。観客を「魅せられて」いない、と感じていたのだった。

 

 そんな中。昼休憩の合間、デクは、半冷半熱の能力を持つクラスメイト、轟 焦凍に呼び出された。

 

「話って何だい、(とどろき)君?」

 

 話がある。何やら神妙な顔をした彼はそう言っていたのだった。

 

「騎馬戦の最後。俺は、お前に気圧された。絶対に使わないって誓ってきた、左側(熱の個性)を思わず使っちまうくらいに」

 

 騎馬戦の最後。デクは、追い込まれた状況で、轟に肉薄し、刹那的に個性を使ったのだ。彼はそのことを言っているのだろう。

 

「お前に、「オールマイト」の何かを感じたってことだよ、なあ、緑谷……出久。お前は、」

 

 息を吐き。彼はその言葉を口にした。

 

「オールマイトの、「何」なんだ? 「隠し子」か……? それとも──」

 

「まさか、そんなわけないでしょ」

 

 デクは途中で轟の言葉を遮った。その顔には、まるで悪戯をする子供のような笑みが浮かんでいる。

 

 自己顕示欲。誰の中にも大なり小なりあるそれが、発露しようとしていることには、誰も、そう、デク自身も気付かない。

 

「もっと深い繋がりだよ、ねぇ、No.2の息子君?」

 

 小馬鹿にしたような、その口調が。何も写していないような、その瞳が。自分の全てを否定するかのような、その笑みが。

 

 「轟焦凍」を、激昂させた。

 

「ふざけるなッ!」

 

 気付けば、彼は右手でデクを殴っていた。長年鍛えられた肉体と技術による、「戦士」の殴打だった。

 

 しかし、デクはその拳を横薙ぎにはらうことで対応した。それにより、力の込められた拳はあらぬ方向へ向き、デクの背にあった壁に突き刺さる。怒りで個性がコントロールできていないのか、壁が次第に凍てついていく。

 

「おっと、怖い怖い」

 

「この体に──あんなクズと同じ血が流れてると思うだけで、虫酸が走る……!」

 

 その言葉は、どちらかと言えば独白に近かった。デクに向けられたわけでもなく、かといって、彼の父親、エンデヴァーに向けられたものでもない。行き場も、やり場もない憤懣。

 

「──今疑惑が確信に変わったよ。轟君、君はやっぱり、個性婚で……」

 

 個性婚。その言葉が発せられた瞬間、壁の凍結が広がった。コンプレックスを刺激されたことによる怒りが、更に強くなっているのが顕著に現れている。

 

「だったら──何だって言うんだ」

 

「個性婚で生まれたから。それで、君の人生は『自分のもの』ではなく、『父親の2周目』になってしまったから。だから、熱の個性を使わないのか、君は」

 

 違う、そんなもんじゃねぇ。彼はそう言い返した。しかし、そこにさっきまでの、触れれば低温火傷してしまいそうな激しく、悲壮感に満ち溢れた響きはない。

 

 個性の影響か、さっきと比べて、その怒りは勢いを落としているようだった。時間は彼に、壁から拳を引き抜くだけの余裕を与えた。轟は拳を壁から離す。

 

「下らないな」

 

 その言葉に、轟は音がたつほどに歯を食い縛った。拳は強く握りしめられ、顔に激情が浮かぶ。

 

「恵まれた奴が。自分に力がある君が。その力を使わない、だなんて。ふざけた話じゃないか? ん?」

 

「ああ、確かに俺には力がある」

 

 その声は怒りに震えていたが、言葉はどこか自嘲するようだった。

 

「母の力がある。俺はこの力だけで、てめぇに勝つ」

 

「力、ねぇ……」

 

 含みを持たせたデクの返し言葉に、轟は「クソ親父の個性なんか無くたってな」と吐き捨てるように言い放ってから、その場を去っていく。

 

 そこには、デクだけが残された──。

 

「自分が恵まれたってことを分かってんのか、「あれ」は」

 

 残されたデクもまた、そんな呪詛のような言葉を虚空に吐き捨てて、その場を後にした。食堂はきっと、今頃混んでいるだろう。急がなくてはいけない。

 

 

 昼休憩終了後は、最終種目の発表となった。

 

 最終種目はトーナメント方式、一対一形式のバトルで、騎馬戦の上位4チームがそのトーナメントのメンバーとなるのだが、発表の場で、なんということか、騎馬戦3位のチームから2人、棄権者が出たのだった。

 

 そのうちの一人はクラスメイトで、戦ってる時の記憶が一切ないだとか、スポーツマンシップがどうだとか言って出場権を破棄。それにより、次点となるチームが繰り上がり、B組から2人の選手が出場することとなった。

 

(バカだなァ。ここで出場権を放棄するなんてさ)

 

 デクがそんなことを考えているうちに、くじ引きの結果から組まれた、トーナメントの組み合わせが発表される。どうやら、彼の一回戦の相手は、普通科の生徒であるようだ。

 

(さて、どうやって倒そうか……相手にも見せ場が欲しいが──)

 

 余裕ぶってそんなことを考えていると、ふと、彼は背後から声をかけられた。

 

「あんただよな、緑谷出久って」

 

 それはどうやら、一回戦の相手であるようだった。何やらガラの悪そうな顔をしている。そんな相手の言葉に、デクが回答を寄越そうとした瞬間、真横から尻尾のようなものが伸びてきた。その軌道上には、デクの顔がある。

 

 咄嗟にその尻尾を掴み、真横を見据える。そこには、さっき棄権したクラスメイトが神妙な面持ちで佇んでいた。

 

「奴に……『答え』るな……!」

 

 尻尾を捕まれて、そのクラスメイトは少し困惑したような表情を見せたが、直ぐに、何やら曖昧とした「警告」のようなものを投げ掛けてきた。

 

 デクがまだ事態を掴めていないうちに、そいつは満足して不敵な笑みを浮かべつつ、その場を去ってしまう。

 

「さて、どういうことか──説明してくれないか、ええと、誰だっけか」

 

「尾白だ。──説明するよ。でもここじゃあ良くない、場所を変えよう」

 

 そう言って、尾白は歩き出した。

 

 最終種目は、静かに時を待つ──。

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