緑谷出久はサイコな二重人格のようです   作:サハクィエル

8 / 47
 そう言えば、この小説、最近ランキング載ったらしいですね。
 「ありがとう」.....それしか言う言葉が見つからない.....(天才ジョッキー)
 ジョジョネタはこれくらいにして、とにかく、皆様、本当にありがとうございます。これも全て評価してくださった皆様方のお陰です。
 .....そう言えばこの小説、主人公がまだ雄英高校にすら入学してませんが、こんなに盛り上がって大丈夫なんでしょうか。


守って助けて勝つ、そんなヒーロー

 試験も残り2分。「デク」は既に、50過ぎほどのポイントを獲得していた。

 

 そう、50過ぎ。──あれだけの勢いでポイントを稼いでいたのしては、些か少なすぎる数値である。

 

(足が……重い……!)

 

 彼はらしくなく焦っていた。それも、最大限に気を遣っている筈の体についてでだ。

 

 デクは限界だった。肉体、という意味ではなく、個性という意味で。──20%の稼働限界を迎えたのだ。時間が切れ、これ以上ワン・フォー・オールを発動すれば体が砕けてしまうであろう状態である。

 

 なので、彼は通常の身体能力で町を駆けていた。その手に最早、道路標識は握られていない。

 

 しかしそれでも、彼の体は確実に疲労に蝕まれていた。

 

 取り敢えず眼前に見えた1Pヴィランを処理するか。そんなことを考えつつ、彼は足に力を込めてひと思いに駆け出した。

 

 だが。刹那に辺り一帯を震わせた巨大な衝撃によって、彼の歩みは止まってしまう。

 

 デクは一瞬驚いたものの、直ぐ態勢を整えて前方を見据える。1Pヴィランの後方を。

 

 ──そこに見えるのは、圧倒的脅威。

 

 彼は見た。5階はあるビルを、その片腕で悠々と破壊する巨体を。

 

 彼は思い出した。それが、説明用資料に記載のあった0Pヴィランであることを。

 

 「デク」は、理解した。あの存在には敵わないということを。

 

 デクは、見た。そのヴィランの足元に、瓦礫に足を取られて動けなくなっている受験生が居るのを。

 

 ──「僕」は。考えるよりも速く体を動かした。

 

 刹那。「ヒーローとしての信念」から覚醒した僕は、一瞬で状況を把握すると、地面を100%の出力で蹴って飛び出した。

 

 跳躍力が倍増し、一瞬にして5階分の距離が詰まる。

 

(余計なことを.....!)

 

 心の中でそんな声が聞こえた気がしたが、知ったことではない。

 

 倒しても成果にはならない? 他のヴィランを倒すべきだ? そんなもの、「くそくらえ」だ。

 

 ヒーローが困っている人間を見過ごしてどうする。

 

「デトロイト.....!」

 

 叫びつつ、僕は腕を後ろに引く。もう、彼我の距離は3メートルとない。直ぐに激突してしまう。その前に決めなければならない。

 

「スマッシューーッ!」

 

 次の瞬間。いくつかのことが立て続けに起きた。

 

 先ず、前へ前へと向かっていた僕が、パンチの威力により空中で静止し。

 

 次いで、眼前のロボットの顔面がアンパンのようにヘコみ。

 

 最後に、派手な音を立ててヴィランが大きく後方へと吹っ飛んだ。

 

 そこまでは良かった。この瞬間まで僕はスーパーヒーローで、そこに悪点は1つだってなかった。

 

 でも。1拍置いて腕に伝わってきた痛みが、僕をちっぽけな少年へと引き戻した。

 

「ぐ──ッ!」

 

 腕の痛みに低く喘いでから、僕は必死に今の状況を確認する。

 

 今、僕は落ちている。仮想の町に向かって、自由落下運動と洒落こんでいるのだ。このまま落ちるようなことがあれば、間違いなく即死である。

 

 そして。右足と右腕、ついでに左手の中指が折れていた。100%の力を、何の制限なしに振るったのだ。当然の報いと言えよう。

 

 この状況。切り抜ける方法は──。

 

 ある。胸中でそう叫んでから、僕はまだ動かせる左腕を真横に突きだし、その人差し指を弾いた。人差し指にはワン・フォー・オール100%の力が付与されている。なので、尋常ならざる威力の「デコピン」が指の先へと出力され、その風圧で、僕は大きく真横へと飛ぶことになる。技の代償で派手にに吹っ飛ぶなんて、あまり格好が付かない。

 

 だが、今はそれがいい(、、、、、)

 

 次の瞬間。僕はガラスを突き破り、向かって右手側にあったビルへと思いきり突っ込んだ。

 

 これが僕の逃走経路だ。自分の人差し指を犠牲にすることで、自分の身の安全を守ること。それが、僕の「覚悟」だった。

 

「終・了~~!!」

 

 と、ふと。僕の耳にそんな声が聞こえてきた。この声はプレゼントマイクだろう。

 

 字面からも、それが終了のコールであることは明白だった。

 

 ここで終わり、か。僕はしみじみと思った。

 

 ──正直なところ、全く記憶がない。思い出せるのは、入試で使われたロボットの情報と、0Pヴィランに立ち向かったことだけだ。

 

 それでも、過ぎた時間は戻ってこない。ここを去らなくては。そんな思考をまたたかせつつ、僕は立ち上がろうとした。

 

 しかし、足が動かなかった。脳内麻薬でも分泌されているのか、あまり痛みは感じなくなってきたが、体は限界のようだ。

 

 暫くしてから、救護班が駆けつけて、然るべき処置を施してくれたらしいが、その時には既に意識がなく、気付いたら、僕は雄英の保健室に居たのだった。

 

 折れていた筈の腕と足、ついでに指も、気付いた時には完治しており、雄英の力に驚かされつつも、僕は試験会場を後にした。

 

 筆記は取れている──と思いたい。何せ、あそこの偏差値は70を越えている。下手を打っていれば容易く切り捨てられる。

 

 そんなことを思いながら帰宅し、死んだように眠り、そして数日が経った。

 

 夜のこと。動きを参考にするためにオールマイトの古いドキュメンタリーを鑑賞していた僕に、母は手短に告げた。

 

「出久……これ、来てたよ」

 

 その言葉の意味が分からない僕じゃない。──来た。そのままの意味だ。雄英高校の結果が「来た」のだ。

 

 それを聞くと、僕は手紙を受け取り、急ぎ足で部屋に駆け込んだ。

 

 そして、手紙を開封する。緊張しつつ、中にあった投影機を机に置いてスイッチを押すと、それなりのサイズがあるモニターが顕現され、そこに、予め録画してあったであろう映像が──オールマイト直々のメッセージがーー再生された。

 

 それによれば。僕は──。

 

 見事、雄英高校に受かったのだそうだ。筆記は合格ライン越え。実技の方は(ヴィラン)ポイント53。救助活動(レスキュー)ポイント57の、文句なしの合格らしい。

 




 色々な原作の説明シーンやらはバッサリ切り捨てております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。