私の弟子は俗に言う──サイコパスかもしれない。
──数多のヒーローの頂点に君臨する「平和の象徴」オールマイトは、時々そんなことを考える。
尤も、それはあくまで可能性だ。本当にそうだ、という保証はないし、普段のあの少年は、至って純真なヒーローの卵だ。
だが。時々、そんな彼を押し退けて、「何か」──。狂気にも似た感情を燻らせる何かが顕れるのは事実だ。
緑谷少年には、その、何というか、表の顔と裏の顔がある。2つの顔があるのだと思う。
上手く包み隠しているが、ふとしたところで、その片鱗が現れるのだ。
ヴィランは極力無力化するように、という国の方針に懐疑的で──つまるところヴィランは殺せばいいと思っているのだ──そのうえ、オールマイトはどうして刃物とか使わないんですか、その方が早いのに、と聞いてきたこともあった。
それでも、彼は私が見初めた人材だ。誰よりも正義感が強く、理想を掴み取るクレバーな飢えと実直さがある。
そんな彼を良い方向へ導くことが、私の役目だ。
*
私の息子は、どこかがおかしい。
──誰よりも緑谷出久を知っている筈の人物、彼の母親、緑谷インコは頻繁にそんなことを思う。
子どもの頃、近所の子ども3人と喧嘩をして、凄惨、という形容が相応しいような成果を挙げて帰ってきた時に、初めて芽生えた疑念は、いつしか確信に変わっていた。
出久はどうやら、夜中、どこかへ出掛けているようだ。深夜、普通の学生なら補導されかねない時間帯に、何やら大荷物を携えて家を後にする。
出久自身、そのことについて追及されるのは望ましくないようで、かなり前などは、当て身を、外出を引き留めたこちらに食らわせて気絶させ、そのうえで脱出を図ったのだ。
──はっきり言ってしまおう、異常だ。
このような症状は子どもの頃から続いていた。具体的には、4歳の頃からか。個性がないことに多大な劣等感を感じていたのだろうか、今となっては分からない。
もう出久の異常性は補整できないのだろう。実際のところ、どうしようもない。
今はただ、誰よりも、自分の息子が怖い。
*
俺の幼馴染みははっきり言って──異常だ。
──幼い頃から、異常な性格と、純真な気質の混在するデクを知っている少年、爆豪 勝己は、彼を見掛ける度にそんなことを思う。
幼い頃、俺は完膚なきまでに打ちのめされた。あの頃はまだ特別な技術など身に付けてもいない筈なのに。誰よりも弱い、「無個性」の筈なのに。
しかも、だ。後々になってその時のことを問い詰めたら、「あれ? そんなことあったっけ?」などと返答しやがるのだ。
そのことに対して、怒りは沸いてこない。そのあっけらかんとした表情に、拳を叩き込んでやろうとも思えない。
怖い。怖い。コワイ。
どれだけ思考しようと、どれだけ謀略を巡らせようと、彼に勝つイメージが出てこない。
まるで純真な
俺はいつもそれを思っている。彼は悪者のようだ、と。
だからヒーローになる。悪を砕くヒーローになって、あの途方もない恐怖を克服してやるのだ。
*
私には今、気になる人が居る。
──「デク」とはあまり関わりがない少女、麗日お茶子は、そんなことを思う。
私は雄英高校の入試当日に、転びそうになっていたその人を助けようとして──そして、逆に転ばされた。
何を言っているのか分からないと思うけど、私も何をされたのか分からなかった。あれは「達人」という形容が相応しいような動きだった──。
普通の人は、そんなことしない。
普通ならこういう場合.....おびえ、「この破綻者!」と軽蔑するだろう。
でも、私は。彼のあの軽やかな動きを。どこか遠くを見据えているような眼差しを。言葉を。
──「なんてロマンチックなんやろ」.....と! 心の底から思った。
後々分かったことだけど、彼はあの実技入試を一位で通過していた。私があの時抱いた、「達人みたい」という感想はあながち間違ってもいなかったわけだ。
学校が始まったら、彼──
今回は文字数少な目です。本当ならもうちょっと文字数の多い原作のストーリーを投稿する筈だったのですが、現実の方が忙しく、中々時間が取れませんでしたので、いかにも手軽に書けそうな群像劇風の話を投稿させていただきました。
次はもっと文字数を多めに取ります。