会議はまずリアス・グレモリーの事件の説明から入った。
「ありがとうございますリアス・グレモリー殿。柳殿達の報告とも相違ないですね」
「ええ本当に。日本神話にいっさい連絡がなかったことまで忠実に話してくれてありがとうございます」
「「────!」」
鬼灯の言葉に、というか鬼灯が喋った事にビクリと震える天使長と堕天使総督。
「そういえばその件で日本神話からの抗議があったんですよね」
と、五道転輪王が手を挙げる。ホンワカした五道転輪王にサーゼクスはどこかホッとしたような顔をした。睨んでくる鬼灯と違い、彼は優しそうだ。
「まず、リアス・グレモリーさんからコカビエル侵入の報告が無かったことですね。堕天使側は報告してくれましたが悪魔からはありませんでしたよ?」
「それは、ここは我々悪魔の領地ですから。我々で解決するのが筋ですから」
「成る程責任感が強い方なんですね」
「ありがとうございます」
「まあ責任感があるのと責任を果たせるのは別ですが」
鬼灯がボソリと呟くと五道転輪王の言葉に誇らしげにしていたリアスはピシリと固まる。
「そうですね。鬼灯殿の言うとおり。責任感があるのは良いことですが、あくまで賃貸領地。大規模な事件はきちんと報告してください」
「まあまあ五道転輪王殿。リアスはまだ若い。大目に見てあげましょうよ、これから実績を積み成長するのですから」
「若い芽が育つのは嬉しいですよね」
「はい。リーアた……リアスが成長し、悪魔の未来を支えてくれると思うと魔王として喜ばしく思います」
「ですけどその結果大勢の無辜の民が犠牲になるなら、成長の機会は別の機会にしていただきたい」
五道転輪王がはっきり言い切るとリアスが再び固まる。
「それは………いや、すまない。貴方の言うとおりだ。堕天使幹部と対峙して、生きていてくれたことばかり喜んでいた。申し訳ない」
「いえいえ。家族が生きていればうれしいのは当然です。次からは兄としてではなく王として会談に望みましょう」
「ああ」
素直にうなずくサーゼクスにウンウンと微笑む五道転輪王。その様子にアザゼルとミカエルはホッとする。良かった、本気で良かった。悪魔と地獄に亀裂が入ったら巻き込まれる可能性も大いにあった。
「それとサーゼクス殿。実は神社から、貴方が魔力を放って神域を汚したと苦情がありました。貴方自身も報告、連絡、相談はきっちりしていただきたい。言ってくれれば許可証も出したのに」
「す、すまない……」
「それと悪魔の一人が山を吹き飛ばしたと報告も。日本の山は未だ神秘の隠れ家。動物や妖怪、木霊さん達から今後悪魔を日本の山で修行させるなと」
その言葉にイッセーは修行の際山一つ吹き飛ばしたのを思い出す。山は生命の宝庫だ。小動物、大型動物、そして植物と多くの命がある。それを跡形もなく吹き飛ばしたのは他でもない彼だ。そして山には多くの命があると同時に、神の持ち物。八百万の神々の家。そこを破壊したのだからそりゃ怒る。
「幸い貸してた場所ですから、定期的に環境を調整しに来る神は居なかったそうですが……」
いたらイッセーは下手したら神殺しになっていたわけだ。神によっては跳ね返されてたかもしれないが。
「それではそろそろ賠償の方に移りましょう。アザゼル殿からどうぞ」
「あ、ああ……俺は各勢力に神器研究の資料を……それと無理矢理転生させられた転生悪魔から悪魔の駒を抜く研究もしてたから殺さないでください勘弁してください」
と、鬼灯を見ながら震えるアザゼル。悪魔の駒を抜くという言葉にリアスが反応したが銀髪のメイドに睨まれ大人しく座る。今の彼女に発言権はない。
「それは助かります。此方で保護していた神器所有者達も、取り敢えず暴れたら気絶させる程度の対応しかできてなかったんですよね。それに家族に捨てられたとか力を利用されてるとかなら保護しやすいんですが、キチンと家族として過ごしていると説明して同意をもらわなければ行けませんでしたし」
「同意してから連れて行くんですか?」
「人間には悪いですが、危険な神器だった場合は無理矢理の時もあります」
「きちんと管理されていればこんなことも起きないんですがね」
「う……」
「まあ確かに。神の死後システムの管理は大変でしょう」
「え、ええ!それはもう、私も頑張っているつもりなのですが……!」
「堕天使側と協力すれば上手くいきそうではありますがね。少なくとも神器システムに関してなら何とかなるんじゃないかと」
ミカエルがアザゼルを見ると目を逸らされる。どうも神器の機能ばかり研究していたようだ。しかし、神器を抜き取る術式を始めて完成させたのは堕天使だったりする。
「まあ堕天使側は神器研究。天使側は、堕天使と協力して神器転移システムの解析もしくは神器を抜き取る際の危険の排除をお願いします」
「あの、堕天使と協力したら謀反が起きそうなんですが」
「そこはあなた方が何とかしてください。人との恋に落ちただけの堕天使とかも神を裏切り欲にまみれた俗物という認識を刷り込んだのは貴方でしょう?下々の説得は上の責任ですよ」
「………五道転輪王様って言う時って言いますよね」
「昔サタン様を前にして、『可愛い僵尸くれ』と言う頼みを普通に断ったお人ですからね。と言うかあの人地獄の裁判官の一人ですし」
「そりゃ肝も据わってますか」
天使、堕天使とくれば最後は悪魔だ。今回は悪魔の領地で起こった事件だし、悪魔達は堕天使のように神器研究など、日本の地獄に役に立ちそうな成果はない。どんな内容が来るのだろうとゴクリと唾を飲む。
「駒王町の現領主リアス・グレモリーの領地剥奪ですかね」
「………え、それだけで良いんですか?」
「彼女とその眷属は学生ですからね。卒業ぐらいはさせますよ」
「いや、てっきり悪魔を日本から追い出すのかと………」
「しませんよ。キチンと管理してる方だっていらっしゃるんですから」
リアスの評価はリアスの評価。悪魔全体の評価ではない。流石人事の鬼、その辺りはきっちりしている。が、納得できない者も居たらしい。
「おい待てよ!それじゃあ部長がキチンと管理してないみたいじゃないか!」
「え、いやだって出来てませんよね?」
叫ぶのはイッセー。その言葉に鬼灯は何言ってんだ此奴と言いたげな顔をした。
「聞けば教会側からコカビエルの存在を聞いておきながら魔王を呼ばなかったとか。民を守る気がない領主に日本の地を管理されたくありませんし」
「部長がんな人の訳あるか!キチンとこの町を守ろうとしてた!何も知らない奴が勝手なこと言うんじゃねぇよ!」
「何も知らないからこそ客観的に。大戦を生き抜いた堕天使の幹部を自分達だけで倒せると思ったんですか?思ったとしたら過信しすぎで、思ってなかったら町の住人巻き込んで心中するなと言いたいですね」
ギン、と音が聞こえてきそうな鬼灯の眼光にアザゼルとミカエルはあわわ、と抱き合い震える。対面したイッセーとリアスは震えることすら出来ず顔を青くする。と、その時………
「…………」
「鬼灯様?」
不意に鬼灯が窓の外を睨んだ。同時に、グレモリー眷属とシトリー眷属達の呼吸の音が止まる。
「これは、時間が止まっている?」
「俺達は平気ですけど……」
「貴方は曲がりなりにも三子さんの眷属とも言える。私や五道転輪王様は神格持ちですし、チュンさんは五道転輪王様の最高傑作。一子さんと二子さんは建物の中では絶対的なルールを持つ座敷童子ですからね」
「成る程」
「しかし時間を止めるなんて、いったい何者でしょう」
「ッ!まさか、ギャスパー!?」
と、リアスが叫んだ。何気に彼女と彼女の騎士は動けていた。因みに教会側は2人そろって固まっている。
「ギャスパーとは?」
「私の眷属よ。
「護衛は付けなかったんですか?」
「まさか魔王と天使長、堕天使総督が居る場に攻める無謀な奴らがいるなんて思わなくて」
「あ、この人自分を客観視出来てない」
相手が自分より強いというのに挑みに行った者が、強者が揃う場が攻められるはずがないと思いこんでいるのを見て鬼灯は悪魔の将来が心配になった。
「あれ、何か魔法使いっぽい連中が来ましたよ」
「あれは現代のならず魔法使いですね。昔は悪魔と契約することで魔力を得ていたのですがその昔一人の天才が人のまま再現する術式を編み出したのです。因みにマリンさんは旧魔法使いに属します」
「成る程。で、何で彼奴等既に捕まってるんですか?」
「入り口以外からはいると捕まるように晴明さんと道満法師にお願いしてたんです。絶対襲撃あるから」