鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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グラシャラボラスの災難

「はい、あー」

「あー」

「いー」

「いー」

 

 三子は柳に歯を磨いて貰い、柳が持つコップを受け取り口に含む。柳が洗面台まで抱えるとペッと吐き出した。

 

「よし、じゃあテレビでも見るか?」

「我『教えて!ミキちゃん&ブラザーズ』みたい」

「あれまだ冥界じゃ放送してないからな。外交結ぶんだしその内放送するかもだけど……」

「にゃーん」

「………それ、プライベートの時本人の前でやってやるなよ?あの子の暗黒面見ることになるから」 

 

 鬼灯と行動を共にしていると直接会う機会もあったが、あの闇は想像以上だ。セラフォルー辺りと会わせたら発狂する可能性すらある。

 

「ちなみに三子はどっち派?俺はミキ派。懸命な子って良いよな………それにあの子野干(やかん)(地獄の狐)だし」

「ミキちゃん可愛いにゃーん」

「ミキ派か………頼むからあのキャラを真似ないでくれよ。俺とミキさんの精神が死ぬ」

 

 と、三子の頭を撫でながら言う柳。ミキ自身はいい子ではあるのだが、あのキャラ付けは正直痛い。本人の前では言わないが。

 言ったら本人が可哀想なので言わないが。

 

 

 

「ついたー」

「着いたよー」

 

 ルシファードの駅で仲良く両手をあげる三子とチュン。

 

「柳様、我あれ食べたい」

 

 と、三子が袖を引っ張りながら店の一つを指さす。見ると満干全席大食いチャレンジがやっていた。一時間以内にその日一番の記録を出せればただらしい。

 

「さっき歯を磨いたばかりだろ」

「良いじゃないですか。子供はよく食べて、良く育つのです」

「此奴世界の誰よりも年上ですけど……まあ俺も小腹すいてましたしね。幸い、最大で四人で受けられるようです」

「私は良いです」

「私も良いよ」

「じゃあ二人ですね」

 

 

「御馳走様でした」

「我、お代わり所望する」

「駄目だ。この後は五道転輪王様の観光がある」

 

 30分で食べ終わった三子はお代わりを要求するが柳が拒否する。店内がほっとした雰囲気に包まれた。

 

「まあまあ。見て楽しむのも旅の一興ですよ……何か面白そうなのが目に留まったら言ってください。多少の寄り道は許します」

「鬼灯様のお土産に曰く付きのアイテムでも探してみますか」

「浮気神獣不能にする薬探してみるよ。それか呪い殺せる呪具」

「裏通りにでも行ってみますか」

 

 

 

 ゼファードル・グラシャラボラスは不機嫌に街中を歩く。新人悪魔の顔合わせ。同世代の次期当主候補の繋がりを作る為の行事。本来ゼファードルはこの行事に参加するはずではなかった。が、兄の不審死により次期当主にされた。正直面倒くさい。

 周りの連中も、死んだ兄と比べてくる。

 今の彼に寄ってくるのは彼の才能を認めたものではなく、魔王の血縁という部分に目を付けた奴らだけだ。

 

「っあー……面倒くせぇ。どっかに良い女いねーかな」

 

 彼はまあ、女好きではある。処女厨と言うわけではないが男を知らぬ女に男を教えるのは楽しい。と、曲がり角を曲がろうとした時人にぶつかる。

 

對不起(ドゥイプゥツィ)(ごめんなさい)」

「気をつけやがれ!ん?」

「………?」

 

 ぶつかった相手は異国風の衣装に身を包んだ小柄な少女。フェニックス家の眷属に似たような格好をした奴がいたのを雑誌で見たような気がする。が、目の前の少女は悪魔ではないようだ。

 

「どっかの眷属候補か?中々可愛い顔してんじゃねーか」

「…………」

 

 腕を掴み顔を引き寄せるゼファードル。と、連れであろう男がゼファードルの手を掴む。

 

「やめた方が良いですよ。いや、ほんと……」

「ああ?んだてめぇ、俺がグラシャラボラス家次期当主と知っての狼藉か?」

 

 家名を出し睨みつける。良く見ると男の顔は青くなっておりゼファードルはふんと鼻を鳴らす。

 

「我々は日本の地獄から来た使者。つまりは国賓です。それに無理矢理迫ったとなればむしろ家名に泥を塗ることになりますよ?」

「日本?ああ………はん、極東の島国の弱小勢力如きに何で遠慮しなくちゃなんねー。殺すぞガキ、さっさと離せ」

「…………ああん?」

 

 ボギリとゼファードルの腕が鳴る。関節が鳴った音ではない。握りつぶされた音だ。

 

「あが!?て、てめぇ!」

「もう一辺言ってみろクソガキ。弱小勢力?遠慮しなくちゃなんねー?なめた態度取ってると細かく切り刻んで金魚草の肥料にすんぞ」

「こ、この!ぶち殺せ!そのガキの手足ちぎって、目の前で女犯してやらぁ!」

「………此奴等やって良いか?」

 

 ゼファードルの言葉に反応した眷属達が爪や武器を構えると少女が何処か嬉しそうに尋ねる。それに対して残りの連れの一人の優男がはぁ、と肩をすくめる。

 

「地獄が下に見られるようになってしまっては他の十王に合わせる顔がない。チュン、やっておしまい」

「あいなー。柳、良く見てるよ。これが──」

「死ね!」

「蟷螂拳」

 

 足を低く開き両手を曲げ鎌に見立てた少女はその手を延ばし迫ってきた兵士二人を吹っ飛ばす。

 

「鷹爪拳」

 

 僧侶二人が魔法を放つがトン、と高く跳び回避すると、落下の速度を利用した蹴りが片方を蹴り飛ばしもう片方に当たると壁まで吹き飛んだ。

 

「これが崩拳」

 

 戦車の腹を殴り付けるとその衝撃は戦車の背後まで伝わり、咄嗟に仲間を盾にしたもう一人の戦車共々全身から血を吹き出す。

 

「まだまだ行くよー」

 

 残りの兵士もあっという間に倒した。

 

 

 

「…………チュンさん拳法学んだんですね」

「柳にキチンと教えてあげたかったからね。また暇な時に教えるよ」

「………頑張ります」

 

 チュンの言葉に顔を青くする柳。善意からの言葉なので断ることも出来ない。

 

「うんうんちゃんと手加減していますね」

「これで……」

 

 まあ確かに誰も死んでいないが。

 

「……な、なんだと…………」

「あ、忘れてた」

 

 入れ墨をしたヤンキー風の男に漸く気づく柳。チュンの華麗かつ恐ろしすぎる動きに見とれ忘れていた。

 

「てめぇら、こんな事してただですむと思ってんのか!!」

「はい」

「ええ」

「「?」」

 

 ヤンキーの叫びに五道転輪王と柳が即答しチュンと三子は首を傾げる。

 

「先程言ったように、我らは国賓。それも私は王の一人ですからね。むしろ、あなたを地獄に引き渡せと言う要求すら出来る」

「辛いですよ日本の地獄は。死ねた方がマシと言われていますから」

「な!?お、俺は魔王の血縁だぞ!そんな事してただですむと……」

「魔王の血縁?お前自身なんか凄いの?」

 

 と、首を傾げた三子の言葉にヤンキーは固まる。

 

「我々地獄はこの事態をなあなあで片付けるつもりはありません。抗議はさせてもらうので、己の身を心配しては?」

 

 柳の言葉に顔を青くしたヤンキー。四人はその横を通り抜け、魔王達に呼ばれた建物に向かった。

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