「さて、行きますよ」
「いやー、漸くだねぇ。ワシ冥界行くの初めてだよ」
地獄の大王閻魔、そして閻魔大王第一補佐官は冥界行きの列車に向かう。
「大王、嘗められるわけには行かないので一言も喋らないでくださいね」
「君が一番ワシをなめてない?」
「うひゃひゃ!そりゃあ仕方ねーってもんよエンマ様。だってあんた威厳ねーもん」
「そんなことないわ。大王様のお髭と威厳たっぷりだと思いますわよ」
と、銀髪の男が爆笑し金髪の女性がたしなめる。どちらも仮面で顔を隠している。
「ところでその仮面は?」
「サプライズサプライズ。悪魔の連中がどんな反応するかお楽しみってな!」
「私は息子に付き合ってるだけよ。親子らしいこと全然してこなかったしね」
二人の足下の執事服を着た二足歩行の山羊ははぁ、とため息を吐いた。
「まあ、いずれあなた方の存在は報告しなくてはならないですし、あなた方が旧魔王派と通じてると思われても後々面倒ですしキチンと正体を明かすなら良いでしょう」
「良いんだ」
と、山羊が呟いた。
冥界のパーティー会場にやってきた鬼灯達。
異教の者達に不躾な視線が飛ぶが鬼灯の鋭い目つきと目が合うと慌てて逸らす。
「お初にお目にかかります閻魔大王殿。私は魔王サーゼクスと申します」
「ああこんにちは。君が今の魔王だね?魔王と会うのはサタン王以来だよ」
「サタン……?」
「ああそうか君達は知らないんだっけ?サタン王って言うのはね───」
ドゴォ!とエンマが壁まで吹き飛んだ。隣にいた鬼灯は何時の間にか金棒を振り抜いていた。
魔王達ですら反応できない速度で、さらにあの巨体が吹っ飛ぶ一撃。死んだんじゃないかあの人、と思っているとエンマはいたた、と立ち上がった。
「酷いよ鬼灯君……」
「その真実は隠せと言っているでしょう。今の所は、ですが……」
「でも何時かは教えるなら別に今でも」
「禍の団が動いている以上余計な混乱は無くすべきです。終えてから教えましょう。幸い、貴族どもを潰す良い手は見つかりましたし」
「ああ、あれね。八重垣君とクレーリアさんの思い出の場所に隠されてたんだっけ?八重垣君、恥ずかしそうにしてたよね」
小声で会話するエンマと鬼灯だったが、割り込む者はいない。閻魔大王という異教の地獄の王とそれを吹き飛ばした部下に萎縮しているのだ。
「鬼灯様ー!見てみて、黒猫捕まえた!これ配達員に教育しよーゼブラ!?」
黒猫を掲げて走ってきた銀髪仮面(と、先程魔王達に名乗っていた男)は下から抉るような金棒に顎を打たれ天井近くまで飛び落下した。が、直ぐに立ち上がった。丈夫だ。
「捨ててきなさい!どうせあなた仕事のせいで動物飼えないんだから!」
「そんな事ねーって!この猫ちゃんだって懐いてるっす!」
「にゃにゃにゃ!ふしゃー!」
思い切り引っかかれていた。
「あの………」
「ん?何だい白髪チビ」
「チ、チビ!?その………黒猫見せて貰って良いですか?」
と、奇行を公然の場で行う銀髪仮面に近づく猛者がいた。グレモリー眷属の塔城小猫だ。
「その猫、見せて貰って良いですか?」
「良いけど返せよ?後で三味線にするんだから」
「ふにゃ!?」
「配達員にするんじゃ………あ」
「あ……」
猫は小猫の手からピョンと逃げ出すと会場の外に向かって走る。それはもう、全力で。
「逃がすか!捕まえて、どうしよう!?」
「知りませんよ!」
「てか何で君までついてきてんの?みたとこ化け猫だけど……いくら男に相手にされない身体だからって雌猫に発情するのはおっと!?」
「ッチ」
銀髪仮面は小猫の拳を躱し猫を追いかけた。走っていく小猫の姿を見たイッセーも取り敢えず追いかけ、イッセーのストー………イッセーと相思相愛ながら未だつき合っているわけではないリアス・グレモリーもその後を追った。
そこで目にした光景は………
「ヒャッハー!食らえや猿!猿には猿にふさわしい攻撃をくれてやる!」
「うおぉ!?くっせ、なんだこりゃ!!」
「うひひ!臭いの元を蒸留して濃縮した特製液だ!洗っても落ちねーその名も『これを投げれば服屋が儲かる』!ほら、猿ってウ○コ投げるじゃん?」
小さな壷を投げられ壷が割れると同時に茶色い液体が服にかかり鼻を押さえる美猴と、その美猴から距離をとる黒髪の美人。そして何ともいえない表情をした小猫だった。
「なんか変なのが……まあ良いにゃん。私は白音を連れて帰るわ。美猴は一緒に帰りたくないから一人で帰ってきてね」
「おいふざけんな!」
「知ーらない。にゃ?何お前、邪魔する気?」
美猴の文句を無視して小猫に歩み寄ろうとした美人だが、その間に銀髪仮面が割り込む。
「ふっ。連れていかせーねぜ。この子は、俺ちゃんと漫才でトップを目指す約束をしたからな!」
「…………してませんけど」
「とか言ってるけど?」
「ふっ。さっそくボケたか!任せろ!突っ込んでやるぜ!」
「私がボケなんですか!?」
何だろうこの銀髪仮面。話しててすごく疲れる。
「つーかあんた黒歌だろ?知ってるぜ……」
「………」
「藤舞さんが謝りたがってたぜ。キチンと育てられず、あんな男を優先したことを後悔してるって」
「母様が!?」
「………母様?」
銀髪仮面の言葉に黒歌が目を見開き叫び、小猫が反応する。慌てて口を押さえるも小猫は黒歌と銀髪仮面をじっとみていた。
「今なら取引次第で日本地獄が保護するぜ。お前の知る禍の団の構成員。詳しい情報はヤナギンが思い出してくれるだろうし」
「………私に、ヴァーリ達を裏切れって言うの?」
「ちなみに日本地獄には天龍より強い龍の因子を持つ雄が───」
「のった!」
銀髪仮面、一体何者なんだ……