やってきた運動会当日。いまいちやる気になっていないクラスを見て柳はふむ、と顎に手を当てる。まあ体育祭なんて運動部に属してない限り、面倒な行事だ。柳なんて生前運動会は走ればブーイングが飛び綱引きは前の奴が腹に肘を入れてくるしで基本的にサボっていたし。
「まあ良いか……」
やるやらないは本人の自由だ。別に強制する気はない。と、その時
「センセー!優勝したらご褒美とかないんですか?」
「具体的には先生のお世話になってる神社の女神主さんの手料理とか!」
「是非誘ってください!三子ちゃんに会わせてください!」
「………ハゲ、メガネ………黙って参加するのと黙って帰る、好きな方選べ」
イッセーは流石に神社に近付けないからかバカなことは言わなかったがバカ言った松田と元浜はギロリと睨まれた。
「お前等は毎度毎度……。女が好きなのは別にいい。年頃だもんな、仕方ない。が、欲が強すぎだ抑えろ」
「せ、先生だって解るでしょう!俺達は若いんす!」
「次俺の前で若さを理由に犯罪を正当化しようとしたら教師生命と引き換えにテメェを下半身不随にしてやる」
要約すると訴えられ且つ後遺症が残るレベルの暴力を振るうと言われ大人しくなる松田と元浜。そして体育祭が始まった。
「すいませーん!こっちにも人手を!」
玉入れの後、大量に転がった玉を集める体育祭実行委員と生徒会、数名の教師。柳も手伝うことにした。
玉を拾うと即座に籠の中に向かって投げる。籠の中という取りやすい位置にある玉を他の者達が袋に詰めていく。あっという間に片付いた。
「先生、ありがとうございます」
と、玉を運んでいると不意にソーナが礼を言ってきた。
「手伝いなんて他の教師もしてるだろ?」
「いえ。学校の滞在を許してくれたこととか………」
「ああ。まあ匙なんかは妹と弟居るし、他の眷属にも家族が居るからな。事情は知らんみたいだが」
「はい。彼等にも冥界に戻る際キチンと話してみます」
「そうか。まあ止めやしねーよ。で、こととかってことは他にもあんの?」
寧ろ本来知ってしかるべき事だ。親ならともかく弟や妹は、本来なら見送る側のはずが見送られる側になるのだし。
「もう一つは、お姉様です」
「あー………」
「貴方のおかげで最近漸くまともになりました!本当に、本当にありがとうございます!」
「ああ、うん」
別に外交の場での態度を改めさせるだけのつもりで、決して魔法少女から卒業させようと思ったわけではないが、まあ良いだろう。別に。
「まあ今度は禍の団の旧魔王派が現れるたびにテロリスト殺す!って叫んで飛び出していくことが増えたんですが。最近ではお姉様『氷獄の殲滅鬼』と呼ばれていてこの前もクルゼレイ・アスモデウスが氷漬けにされ砕かれました」
「そういや旧魔王派のトップの一人を討ったって報告あったな」
まあテロで苦労してストレスがたまっているのだろう。それは柳のせいではない。
「後貴族とかもぶん殴って言うこと聞かせてます」
「魔王らしくていんじゃね?」
「最近超越者の一人に数えられました」
「そうか」
「超越者の妹と言うことで婚約の申し込みも増えて…………すいません。お礼を言いたかっただけなのに愚痴になってしまいました」
色々疲れているのだろう。まあ教師なので生徒の悩みぐらい聞いてやると言ったらお礼に今度お菓子作ると言ってきたので丁重にお断りしたが。
「まあ姉妹仲改善して良かったんじゃねーの?俺は姉貴には数年は会ってなかったけどな」
「仲、悪いんですか?」
「俺が親父をぶちのめした年から会ってない。もし会ったら
「さて、体育祭も終わりか。あー疲れた疲れた」
借り物競走で尊敬する先生としてソーナに連れて行かれたり教員対抗100メートル走で無難な順位を出したりして、少し疲れた。
柳は冷蔵庫を開け調理を始める。麺をゆでるとその間に胡瓜、ハム、トマトを切り、茹でたチキンを手頃な大きさに分け、麺を冷やし氷を乗せ野菜、ハム、肉を乗せ特製のツユを注ぐ。
「冷やし中華出来たぞー。飯だ飯、早く来い」
柳が呼ぶとテレビを見ていた三子と絵馬を確認していたイチョウがテーブルにやってくる。
「「「いただきます」」」
と、冷やし中華を食べ始める三人。当然柳と三子は何回かお代わりしたが。
「そういえば北欧神話から観光したいからと案内と護衛を頼む手紙が来ておったぞ。天照大神様にも既に許可をもらったようだ」
「ああ、三大勢力、日本神話、北欧神話で会談だっけ。護衛に注文は」
「柳だとさ」
「………了解。北欧神話からはやっぱりオーディン様か?」
「それとロキ様、ヘル様だ」
「…………そうか」