鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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家族

「お茶よ」

「敬語使えよリアス・グレモリー………ん、樒さんの四分の一ぐらい美味い」

 

 明らかに敵意むき出しのリアスに特に気にした様子もなくお茶を飲む柳。感想は……絶対苛立ってたわこれ。

 

「俺犬だからカフェイン駄目なんだよね~、牛乳頂戴!」

「お前って遠慮ねーよなー」

「まあ今回は客人なんだしいいんじゃね?」

 

 元桃太郎のお供だという三匹の動物達を見てアーシアは恐る恐る手を伸ばす。が、ヘルが持って行く。

 

「ああ!」

「むふふ」

 

 アーシアが切なそうな声を出しヘルはやはり抑揚のない声で堪能する。楽しんでいるのだろうか?ちなみに芥子はガブリエルと女子トークをしていた。

 

「それで、妻は………朱璃は今地獄に?」

「貴方に夫を名乗る価値など……!」

「はいはいくだらねー喧嘩はやめろ」

「くだらないですって!?」

 

 バチバチと体から雷光を迸らせる朱乃に対し柳は面倒くさそうに雷封じの札を張り付ける。自分では剥がせないのか必死に剥がそうとする朱乃だが剥がれない。

 

「要するにあれだ。単身赴任の多い父が妻の死に際に間に合わなくて喚いているようなもんだろ。そんなありふれた事情なんて、地獄じゃありふれすぎて減刑の対象にすらなりゃしねー」

「そんなのと一緒にしないでください!母は、この男のせいで殺された!」

「バラキエル殿が堕天使だからか?ぶっちゃけ言っちまえば、『姫島』の、五大宗家やらかし具合から考えても堕天使とさして変わらねーと思うが」

 

 と、頭をかく柳。要するにたまたまバラキエル……堕天使を憎む者が狙ってきただけで、姫島朱璃個人を狙った者達も来た可能性はあるのだ。

 

「適当なことを仰らないでください!母が、誰に恨みを買ったと言うのですか!?」

「何だっけ……ああ、そうそう。虚蝉機関(うつせみきかん)だ。五大宗家の追放者。無能の烙印を押されて追放された彼奴等にとっちゃ、当主に目をかけられておきながら自ら家を抜けた姫島朱璃は憎くて仕方ないだろうよ。実際地獄で朱璃さんを見るなり殺そうとしてた奴もいるしな」

 

 因みに五大宗家も虚蝉機関も現世に来ていた鬼灯にうっかり攻撃して、五大宗家は約定違反で鬼灯にこってり絞められ片方は組織再編不可能なほど壊滅的な被害を受けた。

 

「でも、それはつまり………その男と駆け落ちしなければ……」

「………ああ、その場合は単純に姫島として虚蝉機関や妖怪に狙われただけだろうが」

「それ、でも………」

「………ああ、面倒くさ。やめだやめ、単刀直入に言うか」

 

 柳はそう言うと頭をかき、ギロリと朱乃を睨みつける。

 

「お前が親嫌いでもそこに関して言うことはねーよ。俺だって両親は憎いしな……けどな、自分が生まれたことを否定するな。この世界にゃ産まれたくても産まれられない命だってあるんだぞ」

「別に、私は産まれたことを否定してなんて……」

「してるだろ?両親が結ばれるべきじゃなかったなんてよ………俺はあの両親を殺したいほど嫌いだけど、あの両親から産まれたくなかったと考えたことはない」

 

 自分で自分を哀れと思うほど、柳は弱くない。それは鬼灯も同様だろう。孤児、余所者と蔑まれても、その事で差別されることには怒りを覚えても自分を哀れんだことはないだろう。

 

「……柳君、妻には………朱璃には会える、のか?」

「手続きさえしてくれるなら。ディハウザーも、クレーリアの恋人である八重垣さんに会いますか?」

「………そうですね、是非。どのくらいの期間が必要ですか?」

「特例を除いたら最短でも一年だな。鬼灯様にも相談してみる」

 

 話は終わりだと席から立ち上がる柳。と、その背中に朱乃が声をかけてきた。

 

「母は、元気でやっているのですか?」

「私も、その事について教えてほしい」

「………また家族三人で暮らしたいとよ。羨ましいこった」

 

 

 

「あれは嫉妬か、小僧?」

 

 兵藤家から出て、不意にロキが話しかけてきた。

 

「愛されなかった哀れな子が、愛されている者に羨望でも覚えたか」

「そりゃ誤解ですよロキ様。私は家族に愛されたいと思ったことはありません。それが羨ましいと思ったことも……何せ姉は俺を愛しすぎて大変でしたから」

「ほう?姉がいるのか」

「ええ、重度のブラコンでしてね………こんな話があります。正義感が強く、いじめに反発していたとある上級生の女子が居て、その人は姉が拳を血に染めて戻ってきた次の日からこなくなって転校しました」

「…………そうか。その、大変だな」

 

 からかうつもりだったが予想外の闇に何も言えなくなるロキ。

 

「ほほう?ヤンデレと言う奴か?」

 

 日本文化の間違った覚え方をしているオーディンは興味深そうに話しかけてきた。

 

「ヤンデレと言うのは具体的にどんな事をしてくる?ほれ、言ってみい」

「そうですね。姉は確か、俺のことを暴力から救ってくれたヒーローとして見てました。ただ単に俺に押しつけているという罪悪感から逃れたかったんでしょうね。で、俺を手当したりする事でそのヒーローの特別であろうとした。いてーのに青痣や傷を舐めてくるしわりかし怪我がなくても舐めてくるし性知識が無い頃それを良いことに色々されたし………思い出したら腹立ってきた」

 

 柳の目が段々と鋭くなっていき殺気が漏れる。普通の動物達はあっという間に逃げだした。

 

「ふうむ。しかしヤンデレと言うのは世界を越えても好きな男の下に現れると言うらしいのぅ。いずれ来るかの?」

「そん時は殺すし。まあ追ってこないでしょう。俺が親父をぶっ飛ばした時点で、か弱くも身を張るヒーローから親父と同じ暴力を暴力で押さえつける恐ろしい男に変わったんで」

 

 と、そこまで言って柳は不意に足を止め振り返る。

 

「ふむふむにゃるほど。柳の旦那の過去、掘れば掘るほど闇が深いと……」

「何してるクソネコ」

「………あ」

 

 メモを片手に頷く猫をヒョイと持ち上げる柳。猫又の小判。地獄に住む化け猫。おそらく柳がケモレンジャーを連れて現世に出るときこっそり紛れたのだろう。柳はニコリと笑うとヘルに向かって差し出す。

 

「好きなだけ撫で回してどうぞ」

「………良いの?」

「はい。小判、その方国賓だから。傷一つでも付けたら合法的に殺すからな」


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