鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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地獄に住む母親

 バラキエルと朱乃は朧車に乗り地獄に向かう。

 小猫も途中まで乗っていたが、柳に連れられ降りていった。

 

「つきましたよ」

 

 と、鬼灯が言う。バラキエルは朱乃を見るが朱乃は何も言わず無言で降りる。

 衆合地獄。邪淫を犯した者が堕ちる地獄。鬼灯の後を無言でついて行くと、一人の女性が現れた。巫女服を着た、猫を模した仮面を被った女性。

 

「姫島さん仮面仮面」

「あ……!」

 

 鬼灯の言葉に慌てて仮面を外す女性。どうやら彼等の前で外そうとしていたのではなく単純に忘れていたらしい。

 仮面を外すと現れたのは、朱乃に良く似た顔。それを見て、2人は駆け出しそうになり、しかし抑える。

 

「………あ、し……朱璃」

「はい、貴方」

 

 名前を呼ばれ嬉しそうに微笑む朱璃は、そのままバラキエルに駆け寄り頬に触れる。

 

「少し老けたかしら?」

「私は堕天使だ。数年では老けんよ」

「じゃあ髭が伸びたのね?もう、私が居なくなってからキチンと処理してないのね」

「…………ああ」

 

 拗ねたような朱璃の言葉に頬をかくバラキエル。しかし朱璃はふっ、と優しい笑みを浮かべた。

 

「会いたかった」

「───ッ!私も、私もだ………会いたかった。抱きしめたかった、ずっと!すまない、私の……私がお前を選んでしまったから…!」

「悲しいことを言わないで。私は、貴方に出会えて幸せだったのよ?」

 

 バラキエルが涙を流しながら叫ぶと、朱璃は悲しそうな顔をしてその言葉を否定した。バラキエルは朱璃を抱き締め、朱璃は微笑み腕をその背中に回す。

 

「………して……」

 

 と、そんな光景を見て、朱乃がフルフルと首を横に振りながら後ずさる。

 

「どうして、そんな風に………だって、その男が居なければ、堕天使なんかと結ばれなければ!」

「朱乃………」

「違う。本当は、解ってた……私が居なければ良かった。私が産まれなければ、二人はまだ引き返せたかもしれない」

「朱乃!」

 

 パン!と朱乃の頬を朱璃が叩く。

 

「そんな悲しいことを言わないで。私は………」

「……あの」

 

 と、鬼灯が不意に手を挙げる。

 

「ここに来る前に言ったと思いますが今回は特例でそこまで時間がないので、手短に」

「鬼灯様、空気読みましょうよ………」

 

 と、朱璃が呆れたように呟く。

 

「朱乃、時間も少ないみたいだから端的に言うわね。私は、私たちは貴方が産まれてきて良かった。貴方を愛している」

 

 

 

「あれは何ですか?」

「お前の両親と姉」

 

 小猫が見た先には爆走するバイクを満面の笑みで操る女性と、必死な顔でその女性の腰にしがみつく黒髪の女性、バイクに引きずり回される鎖で繋がれた男性。

 

「あ、亡者に罰を与える獄卒ですね。姉様は見習いでしょうか?両親ということは父は?」

「あの罰を与えられている亡者。罪状は子を認知しない事と研究の際多くの犠牲を出したことと子供をいざという時実験材料になるという情報をお前の元主に流したこととか………うん、まあ色々」

「………父と母は、愛し合っていて、父は事故で亡くなったと、姉様が」

「愛されてんだな。実際はお前等の事なんて気にせず研究ばっかしてドカーン。しかも死後もお前等に迷惑をかけた……なんかショック受けねーみたいだから話しちまったけど、今から聞くな?大丈夫か?」

「あの光景見たら何かもう、割とどうでも良く………」

「ま、確かにな……」

 

 目の前で母親と思わしき女性が目を回しそうな姉を乗せ、父と思われる男をバイクで引きずり回していたら、大抵の人間は思考停止することだろう。人間ではないが。

 

「行くわよ黒歌!音速のその先に───!」

「行くなつっーの」

 

 何時の間にかバイクの前方に移動した柳が前輪を踏みつけ地面にめり込ませる。黒歌と女性が吹っ飛び、鎖に繋がれた男が柳に向かってきたのではたき落とすと後輪に巻き込まれミンチになった。

 

「うっわ……」

 

 小猫がどん引きしていたがどうせ死者はこの地獄では何度でも蘇る。

 

「そう言えば蘇るってのは黄泉帰る。つまり黄泉から帰ることだ。黄泉である地獄の場合蘇るで良いのかね?」

「知りませんよ。それで、あの二人は平気なんですか?」

「いたた。あ、柳………様、と……白音!?」

「白音!?あなたが白音なの?大きくなったわね!」

 

 と、黒歌の言葉に振り返り飛びついてくる女性、藤舞。豊満な胸が小猫の顔に押し付けられムニュリと潰れ、小猫の額にビキリと青筋が浮かび、反応が遅れた小猫は岩だらけの地面に無防備に倒れる。

 

「あいったー!」

 

 戦車の力で藤舞を押しのけ頭を押さえゴロゴロ転がる小猫。黒歌はどこか遠い目でそれを見ていた。

 

「いたたた………えっと………母様、ですか?」

「………ええ」

「………姉様も」

「………にゃ」

「……………」

「……………」

「……………」

「因みに面会時間に限りはあるからな。塔城は日本勢力じゃねーし」

「「「空気読め」」」

 

 

 

 

 と言うわけで面会時間終了間際まで、離れた場所で岩に腰掛け煙管から煙を吸う柳。ふぅ、と吐き出した煙はユラユラと昇り消えていく。

 

「そろそろ時間ですよ柳さん」

「と、鬼灯様。其方は終わったんですか?」

「ええ、まあ」

 

 なら迎えに行くかと藤舞達の下に向かう二人と朧車。そこには抱き合う三人の化け猫が。

 

 

 

「で、久々の家族の再会はどうだった?」

 

 柳が尋ねると三人は顔を見合わせる。

 

「朱璃は、変わらず綺麗だった。鞭の腕も冴え渡っていた……」

「…………ん?」

「公共の場で突然SMプレイを始めましてね。取り敢えず三人とも気絶させました」

「そ、そうですか………三人?」

「娘さんも交じってました」

 

 鬼灯の言葉に、娘と妻に鞭で打たれるバラキエルを想像する。此奴、頭可笑しいんじゃねーの?

 

「私は……姉様と仲直りできました。ありがとうございます先生」

「ん」

「あと、母様も姉様も今代の赤龍帝だけはやめろ、と……」

「あら小猫ちゃんも?私もですわ」

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