「鬼灯様、見てください悪魔祓いの霊ですよ」
「これは珍しい。殉職すれば天界に連れて行かれるのに」
と、浮遊霊を見て呟く柳と鬼灯。
どうやら日本人らしく、長い黒髪をしている。
『──っ。君達は、僕が見えるのか?』
「ええ職業柄。見たところ幽霊歴数年目と言ったところのようですが、天界に連絡しましょうか?ウチでは大焼処に送らなくてはいけなくなりますし」
『天界?無理だ、僕は魂が消滅したことになっているからね』
「…………詳しくお聞きしても?」
話を纏めるとこの幽霊、八重垣正臣は元々教会所属の正規の悪魔祓いだったらしい。が、悪魔と恋に落ち、悪魔と教会に粛正された。
「妙ですね。数年前、確かに大規模な聖力と魔力のぶつかり合いが確認されましたが………」
「聖力と魔力?それってつまり、お互い同族の相手を殺そうとしたって事ですか?同じ日に?」
「手を組んでいたんでしょうね。珍しい」
『………そうだ。僕は、彼女を守るために悪魔と教会と戦った』
領地を任されていた悪魔と言うことは貴族悪魔なのだろう。その悪魔を粛正するなら間違いなく同じ貴族。プライドの高い貴族が人間と協力したとは意外だったのか鬼灯がふむ、と顎に手を当てる。
「彼女の名は?」
『クレーリア・ベリアルです。相手は、違うみたいでした』
「ベリアル……それ程名を気にする家ではありませんね。それに、他の家に命令できるほど、ましてや教会と組ませることが出来るほどの人望があるわけでもない」
「鬼灯様?」
「これは、下手したら魔王……あるいは貴族派筆頭が関わっているかもしれませんね」
『なんだって?』
「……………」
鬼灯の見解は、クレーリア・ベリアルは貴族派にとって知られたくない何かを知ってしまい粛正にかこつけ殺されたのではないかと言うものだ。
「と言うわけで、何か知りませんか柳さん」
「うぇい!?何で俺?」
「知ってそうですから。知ってますよね?」
「…………ハイ、シッテマス」
鬼灯に睨まれ目を逸らしながら返す柳。鬼灯としては睨んでいるつもりはないのだろうが地獄最強の鬼神の威圧感は半端ない。
「実は、クレーリア・ベリアルは王の駒の存在について知ってしまいまして」
「王の駒?それは悪魔の駒のことですか?しかし、悪魔の駒に王は……」
「存在したんですよ。人によっては暴走するから、隠されてた。効果は使用者の力を何倍にも引き上げる。悪魔の行うレーテイング・ゲーム……その上位者の殆どが使用者です」
『つまりクレーリアは、貴族達の見栄のために殺されたって言うのか!?』
「柳さんの言葉の通りならそうでしょうね」
『何で、そんなに冷静なんだ!』
「え、だって私クレーリアさんについて知りませんし」
『………………』
確かにその通りだけども。
淡々と語る鬼灯に叫んだ八重垣は何とも言えぬ顔をする。
『……いや、すまない。君達に当たっても意味のないことだったな』
「お気になさらず。しかし、困りましたね証拠がない」
『彼は知っているのでは?』
「知っているだけでしょう。どうして知ってるかは、聞くつもりはありませんよ。柳さんも隠したいことはあるでしょう」
「…………ありがとうございます」
「いえ。それで、八重垣さんはどうします?生前が生前なので、地獄で保護しましょうか?」
「そういや十字教って、魂の送り迎えどうなってるんですか?」
「昔は善性な人間を天使が、悪人を悪魔がそれぞれの世界に連れて行ってました。時が経ち自動化され、死んだら即冥界に行ってエネルギー化したり天界に行ったりしてたんですが神の死後狂いが生じて現世は幽霊で溢れ始めました。八重垣さんはそのバグに巻き込まれたわけですね」
「『………今さらっと神死んだって言わなかった?』」