鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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目指せ京都

「松田、元浜、兵藤。喜べ朗報だ」

 

 朝のホームルーム、柳は唐突に三人を名指した。

 

「朗報?まさか、可愛い転校生ですか!?」

「んなわけねーだろ。修学旅行、お前等は班決めしなくて良いって報告だよ。良かったな、こう言うのって人間関係の亀裂生んだりするんだろ?」

「え?何で……」

 

 どうせならアーシアと班を組もうと思っていたのにと、イッセーは勿論可愛い女の子と親密度を上げたかった松田と元浜は不満そうだ。

 

「覗きのための穴作り、その穴を使った覗き行為、スカート捲り、胸に触る、エ……エッチなDVD………これを聞いてどう思いますか?」

 

 と、副担任の新任先生ロスヴァイセがイッセー達に顔を赤くしながら尋ねる。

 

「「「青春です!」」」

「死ね」

 

 ロスヴァイセはずっこけ柳は反射的に呟く。

 

「すまん間違えた。殺すぞ」

「あんま変わんねー!」

 

 叫ぶイッセーに柳ははぁ、と疲れたように溜息を吐き頭を押さえる。

 

「本来ならお前等修学旅行への参加すら怪しかったんだぞ。主に女子生徒を持つ保護者達の願いでな、参加させるなって」

「な、何でですか!?」

「てめーらの青春が原因だよ」

 

 柳はそういうとガリガリ頭をかく。

 

「けど人生で一度きりの修学旅行で、お前等の親からも懇願があった。だから泊まる場所と班を女子から離すことに決定した」

「なっ!?そんなの、学園側の横暴だ!」

「俺達は平等を希望する!」

「じゃあ覗きをしねーか?」

「「「……………」」」

 

 三人はピタリと口を噤む。覗くつもりだったようだ。女子から冷たい視線が飛ぶ。

 

「文句はねーな?」

「「「………はい」」」

 

 

 

 

「桐生、修学旅行には巫女服を持ってけ」

「ほえ、何で?」

 

 と、首を傾げる桐生。三子と一緒に羊羹を食べていた。

 

「イチョウは世界ユグドラシル連盟に入ってるからな。植物系の妖精、神が集まってる……」

「世界世界樹(ユグドラシル)連盟って……重複してるし……それで、何か関係あるの?」

「ウカ様……宇迦御魂(ウカノミタマ)様は稲穂の、植物の神だから参加してて、その関係で……」

「神事を行った私に会いたい、と?」

「そういうこと」

 

 宇迦御魂といえば素戔嗚尊の娘で、稲荷大神だ。そんなに大物に目をかけられるとかある意味凄い事だ。

 

「神だって人間とさして変わらないからな。ブスって理由で振られて美人嫌いになった奴もいるし。ウカ様の場合は、人々から離れ祭事も行われなかった友人に久方ぶりの祭事を行った者へのお礼、とさ」

「んー……わかりやすく!」

「遠くに引っ越した友達が転校先で友達できなかった所に歓迎会を開いてくれたお礼がしたいとさ」

「すっごい分かり易い」

 

 

 

 そして修学旅行。柳は車両の端の席に座っていた。生徒達が見渡せる位置だ。問題行動を起こされても直ぐに対処出きる。

 

「京都は初めてかロスヴァイセ?」

「はい!日本文化を調べて、まず最初に行ってみたくなりました!」

 

 アザゼルの言葉にロスヴァイセが京都案内を見ながら言う。

 

「まあ楽しめよ………お、すっげえ美人」

「…………ん?」

 

 不意にアザゼルが隣の車両と繋がる通路を見て鼻の下をのばす。柳は柳で覚えのある気配に振り返る。

 

「こんにちは柳」

「………妲己様?何で現世に……?」

 

 そこにいたのは現世に合わせてか、洋装というかなりレアな格好をした妲己。

 いや、しかし何故ここにいる?妲己は移住してきた妖怪ではなく死後地獄に堕ちた魂だ。現世にほいほい来れるはずがない。

 

「ああ、そういや他勢力との会合も増えて、現世に赴くことも多くなったから意外と緩くなったんだっけ」

「ええ。勉強して許可証もらえば後はお金で券を買って現世まで……簡単だったわ」

 

 流石ぼったくり妓楼の経営者にして才女。この程度のことはお手の物のようだ。

 

「座って良いかしら?」

「どーぞ」

 

 柳が言うと妲己はストンと腰を下ろした。柳の膝の上に。

 国が傾きそうなほどの美人、というか実際に過去国を傾けた傾国の美女の登場に色めき立っていた男子達は嫉妬の籠もった目を柳に向けてくる。

 

「………動きにくいんだけど」

「あらつまらない」

 

 柳の対応に妲己は肩をすくめ隣の空席に座る。ロスヴァイセがムムムと妲己を見る。柳と仲が良さそうだが、どんな関係何だろう。

 

「おいおい妲己って言ったか?傾国の大妖とお前、どんな関係だよ」

「私は妓楼をやってるの。柳はそこの常連よ」

「や、柳先生そんな店に行くんですか!?」

 

 妲己の言葉にロスヴァイセは慌てる。聞き耳を立てていた者達は妓楼の意味が分からなかったのか首を傾げている。

 

「ん?ああ、まあ……結構気持ちいいんだぞ」

「き、気持ち───!?」

「妲己様の毛並み」

「…………へ?け、けな……え?」

「妲己っていやぁ………九尾の狐か。そういや柳、いっつも放課後動物撫でてたな」

「………………」

 

 ロスヴァイセが妲己を見ると不機嫌そうにふん、と窓の外を見る。同性ながら可愛いと思ってしまった。

 

「うおおおお!おっぱいぃぃぃ!」

「!?ぬお、やめろ松田!何故いきなり俺の胸を揉む!男の胸などもんで何が楽しい!」

 

 と、不意にそんな声が聞こえてきた。見れば松田が元浜の胸をもんでいる。おぞましい光景だ。吐き気がする。

 

「おいおい松田、何してやがる。おっぱい欠乏症か?イッセーみたいな奴だな……」

 

 と、あきれた様子でアザゼルが諫めにいった。おっぱい欠乏症って何だ病気みたいに。いや、ある意味病気ではあるが。

 

「全く最近の子は……」

「そう?衆道なんて昔からあったのよぉ?中国でも日本でもね……」

「…………………」

「あら、どうしたの柳。考え事?」

 

 と、妲己は顎に手を当て考え込む柳を見る。柳はいや、と首を振りロスヴァイセと妲己の顔……より少し下を見る。

 

「何故か急に胸を揉みたく………あ、思い出した。よっと」

 

 柳は唐突に自分の腹を殴る。うぷ、と頬を膨らませ口の中から宝玉をペッと吐き出した。

 

「なぁにそれ?」

「人から人へと渡り歩き寄生した人を胸を揉む痴漢に変える宝玉」

「ええ!?そ、そんな恐ろしいものが………知ってますよ。痴漢は冤罪だけでもその人の人生を狂わせるって……それを、実際に行わせるなんて───!!」

 

 ロスヴァイセが戦慄する中、柳はその宝玉を握りつぶすのだった。

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