鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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吸血鬼の国

 ルーマニアに向かうために飛行機のチケットを大人用2つと子供用1つを買う柳。

 ルーマニアにつくと吸血鬼たちに出迎えられた。とはいえ、わざわざ人間ごときを迎えるのは癪なのか明らかに不機嫌そうな連中が混じっていたが。

 そのまま彼等に案内され、吸血鬼の隠れ里ならぬ隠れ国にやってくる。

 

「百均はあるんでしょうか?」

「知らん。と、見えてきたぞ。エルメンヒルデの屋敷だ」

 

 

 

「お、お久しぶりです柳様………」

 

 カタカタと青白い顔で出迎えた吸血鬼の美少女。ただでさえ白い吸血鬼の肌から血の気が引いて、もう本当に死体にしか見えない。

 

 

 

 

「成る程、聖杯ね………それでツェペシュ派でクーデターが起きたわけか」

「はぐはぐうまうま」

「は、はい……どうもヴァレリー・ツェペシュに宿ったらしく、それを使い弱点を克服し………そ、その……柳様に、復讐、すると……」

 

 まぁた神器だ。しかも聖遺物の神滅具。三大勢力は本当にいい加減にしてほしい。膝の上に座り茶菓子を食う三子の頭を撫で落ち着くと、取り敢えず話を変えることにする。

 

「取り敢えず停止能力持ちのハーフ吸血鬼は現在俺の管轄だ。返してもらおう」

「し、しかし!その……来るべき戦いに」

「別にいらんだろう?散々使えない、無能、なり損ないと見下していた相手を使うほど落ちぶれたかと言えば上はあっさり返してくれると思うがな」

「ま、まあ確かに返しそうですが……その、ギャスパー・ヴラディ自身も残りたがって。何でもヴァレリー・ツェペシュとは親友だったらしく………」

 

 だからこそ本人も残りたがっているらしい。

 

「初代カーミラとツェペシュは別段敵対して居なかったはずだが、今から交友を結ぶとかしねーの?」

「今更出来ませんわ………それに、向こうの目的は吸血鬼が人間を家畜化することです」

「吸血鬼って、実際は死者なんだよなぁ。それが、人間を支配?仕方ない、潰すか」

「もご!?」

 

 よっこいしょ、と立ち上がる柳。柳の隣で滅多に食べられない高級品を味わっていたロスヴァイセが慌てて後を追おうとする。

 

「まあ、まずは交渉が先だな。後生徒たちにも会わねーと」

「生徒?」

「リアス・グレモリーとその眷属達は俺の学校の生徒なんだよ」

「…………へ?」

 

 結構失礼な態度をとったのを思い出しさぁ、と顔を青くする。何せ自分は和平に応じてやるから力を貸せと──いや、寄越せと言ったのだ。

 

「しかし何故今更ギャスパー・ヴラディを?所詮時間を止めるだけだろ」

「………ギャスパー・ヴラディは、特別なのです。彼の出生をご存知ですか?」

「いや」

 

 エルメンヒルデの話によれば、ギャスパーは生まれた時、人の形をしていなかったらしい。黒く蠢く不気味な物体で、産婆を含めた出産の際に近くにいた者達を呪い殺したとか……ようするにそちらの力を期待しているのだろう。

 

「呪い、ねぇ……」

 

 柳はつい最近手にした新たな力を僅かに身体から滲み出させる。怨霊大国日本の大怨霊や怨みから妖怪となった清姫、怨みから地獄最強の鬼神を召喚することだけなら出来る巻物を神より授かった滝夜叉姫などから呪いの使い方は学んだが、西洋の呪いとどちらが強いのだろうか。

 

「まあ良いか。取り敢えず俺は勝手に無断欠席して旅行したバカ共を持って帰りに行くか。彼奴等今何処に行んの?」

「ツェペシュ領に………」

「また面倒なところに…………」

 

 ツェペシュ領と言えば、その昔殆どを血の池漬けにした連中の住処だ。素直に入れるとは思えない。復讐の機会をうかがってるらしいし………。

 

「し、侵入ルートならあります。ご一緒しましょう」

「現カーミラの許可はいいのか?」

「カーミラ派上層部で貴方に逆らうものなど居ませんよ」

 

 この人吸血鬼に何したんだろう、という目で柳をみるロスヴァイセ。取り敢えずツェペシュ領に移動することにする一同。

 

 

 

 

 ツェペシュ領の城下町、クーデターがあったというのに静かなものだ。静かに現政権を追い出したのだろう。

 街並みはカーミラ領とさして変わらない。街づくりを下っ端、吸血鬼にした元人間にやらせているのだから当たり前だが。

 

「さて、バカ共を探すか」

「おー」

 

 柳の言葉に肩に乗った三子が両手をあげる。ロスヴァイセは安いお土産をジッと見ている。エルメンヒルデはカタカタ涙目になりながらも、客人のため目を離すわけにも行かず付いてくる。

 

「ん?」

「む?」

 

 と、その時。不意に柳と三子が同じ方向に、何かに気づいたように振り返る。そこには一人の少女がいた。オーフィスに良く似た少女。その頬には鱗、頭には角。手も鋭い爪が生えており、服は背中が大きく開いて一対の翼が生えていた。

 尻尾がゆらゆら揺れていた。

 

「……………」

 

 ジーッと柳を見つめていた少女はテトテト駆け寄ってくる。

 

「パパ」

「…………ふぁ?」

 

 ぎゅっと腰に抱きついてきた少女は柳を父と呼ぶ。ロスヴァイセが目を見開きエルメンヒルデも口を大きくあげる。

 

「えっと………俺がパパ?」

「ん。パパ……上のはおばあちゃん」

「我おばあちゃん?」

「や、柳さんお子さんがいたんですか!?し、しかも三子ちゃんが柳さんのお母さんだったなんて──!」

「やー、まてまてロスヴァイセ。俺に子なんて居るはずねぇだろ。それにこの子、かなり大量の龍の気があるな。これ、邪龍か?」

「パパー」

「パパじゃないパパじゃない、離れろ」

 

 腰に抱きついた少女はぎゅーっと抱きついたまま離れようとしない。三子の蛇を食って力を取り戻しつつあるとは言え全盛期には程遠い柳より少女の力の方が強いようだ。

 

「む……」

 

 と、三子が肩から飛び降りると少女を引き剥がそうとする。

 

「柳様から離れて」

「やだ」

 

 その光景は父を取り合う姉妹喧嘩。しかし柳の腰からメキメキ音が鳴る。と、その時だった──

 城を覆うように光の壁が浮かび上がる。

 

「……何だ?」

「ん。ラゼヴァンが動いた」

「ラゼヴァン?」

「どうやらマリウス・ツェペシュ一派が聖杯を用いた一連の行動の、最終段階に移行するようですわね。ヴァレリー・ツェペシュから聖杯を抜き出しこの城下町の住民全てを作り替える気でしょう」

 

 と、エルメンヒルデがキリッとした表情で説明し、柳の視線が向くとひぅ、と涙目になりロスヴァイセの後ろに隠れる。

 

「さ、さあ行きましょう!案内します!」

「そうだな。取り敢えずぶち殺しに行くか」

「我も頑張る」

「リリスもパパと戦う」

「え、お前も?」

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