俺達は部長と共に城の中を走る。マリウスのクソ野郎をぶっ飛ばしてヴァレリーを助けるために。
「あの、今更ですが……良いんですかね、これ」
と、不意に小猫ちゃんが何かに怯えたように顔を青くして呟く。
「小猫?それに朱乃まで、どうしたのよ?」
良く見ると朱乃さんまで青い顔をしている。良く気づいたな、さすが部長。皆を良く見てる。
「クーデターって、完全に政治的なものですよね。一介の悪魔でしかない私達が関わって良い事件なんでしょうか」
「何言ってんだよ小猫ちゃん!このままだと、ヴァレリーが殺されちまうんだぞ!?それに、奴らはテロリストと繋がってる。放置なんて出来ねー!」
「ですが、小猫ちゃんの言うように私達は一介の悪魔。テロリスト対策チームと言うわけでもない。これは、外交問題になるのでは?」
小猫ちゃんの言葉に俺が叫ぶ。が、朱乃さんが窘めるように言う。
?どう言うことだ、ちっとも解らん。
「別に、かまわないでしょう。誰に怒られる訳でもないのだし。むしろ、今回の功績で日本神話のせいで下がった名声を取り戻せるわ!」
と、部長。
「何より、私の可愛い眷属を悲しませるなんて真似絶対にさせないわ!」
小猫ちゃんと朱乃さんは顔を見合わせる。と、その時開けた場所に出る。そこにはずらりと並ぶ人影。鎧を着込んだ吸血鬼達だ。
「足止めのようね。力を温存したいところだけど………」
「あ、じゃあ私はここに残ります」
「ずるいですわ小猫ちゃん。私も残りますわ」
部長が眉をしかめた時、小猫ちゃんと朱乃さんが一歩前に出る。この人数を相手にするつもりのようだ。
「………幸い、それほど地位があるようには見えませんね」
「ええ、それに向こうから攻撃してきてくれそうですわね………言い訳、できるでしょうか?」
何やらひそひそ話し合ってるけど作戦会議だろうか?邪魔しちゃ悪いよな。
「小猫ちゃん、朱乃さん、先に行く!後で、絶対会いましょう!」
『グハハハハッ!この間ぶりだなぁ、ドライグちゃんよぉぉぉぉっ!!』
と、その階層で現れたのは黒い鱗を持つ巨大なドラゴングレンデルだった。ロスヴァイセ先生に姉になってほしいとか言ってたユークリッドの連れていた邪龍だ!
「グレンデル!!」
『そうだぜぇ、お前等をぶっ殺したくてたまんねぇグレンデルさまだぜぇぇぇっ!ちょっとだけなら遊んでいいっつーからよぉ!』
最悪だ!こんな時に、こんな強い敵に!前回だって全く歯が立たず、向こうが去ってくれただけなのに。どうする?と、その時だった。
「弱点は脛」
ボキィィ!
『グギャアアアアア───!?』
突如現れたドラゴンの特徴を持った幼女がグレンデルの脛にドロップキックを放つ。鱗があっさり砕け中の骨が折れる。
「そして爪と指の隙間」
『ガァアァァァ!?イッデェェェッ!!』
そして足の小指の爪の隙間に鋭い尻尾の先端を突き刺す。ウワ、痛そう!ん?ていうかあの子、ヴァーリの親父のラゼヴァンのボディーガードのリリスじゃね?
『リ、リリスぅぅ!?てめぇ、何しやがんだぁぁぁ!!』
「五月蝿い」
『げぶぅ!?』
ペチンと頭をたたけばドゴォ!とグレンデルの頭が床にめり込む。
「お、お前………こんな所で、何して」
「それはこっちの台詞だ」
と、その声に振り返ると此方をにらみつけてくる柳とその後ろで気まずそうな顔をした小猫ちゃんと朱乃さんがいた。二人とも、無事だったのか!ん?てか何でここに柳が?
「てめぇ等なに無断で学校休んでやがる。しかもクーデターの起きた直後の国の城に乗り込むとか、立場ってもん弁えろよ」
「何言ってるのよ!これは
おお、さすが部長!物怖じしないぜ!と、今気づいたが柳の後ろにロスヴァイセさんとエルメンヒルデもいた。エルメンヒルデがなんか此奴マジかって顔で部長を見ている。
「アホかてめぇら。一介の悪魔如きがテロリスト刺激すんな。聞けば吸血鬼側からの救援要請があったそうだな………日本神話に何の連絡もなしとか、吸血鬼側も悪魔側も何考えてんだといいたいがそこは我慢してやる………が、封印候補の要注意対象の吸血鬼を三大勢力および三大勢力監視勢力の領域外に持ってくのは許さん。今すぐ日本に戻れ」
封印候補?要注意対象?ギャスパーの事か?持ってくとか、戻せとか、まるで物みたいに!ふざけやがって!
「まあ落ち着けよ。今はそれ所じゃ──」
「アザゼル、堕天使にもキチンと抗議するからな。それ所?知るか。神器が抜かれて吸血鬼が死のうが俺達の気にする事じゃねぇ。攻めてきたら潰すだけだ」
「死のうが、って………ヴァレリーを、そんな風に言うな!」
「知るかボケ。実際あったこともない奴のために怒れるほど俺は優しくないんだよ。まあ、テロリスト共が関わってんなら俺ら大人の仕事だ。ガキは帰れ」
「絶対イヤだ!ヴァレリーを助けるまで、帰らない!」
「………男になったじゃねぇかギャスパー。ここは俺にまかせぇぇぇぇ!!」
「イッセーさぁぁぁん!?」
頬に激痛が走った瞬間、ものすごい浮遊感に襲われ、アーシアの絶叫を聞きながら意識を失った。
「………はぁ」
柳は一誠を壁まで蹴り飛ばし気絶させた後飛んできた滅びの魔力に向き直る。ためてたのか少し引っ張られる感覚あるな。まあこの程度なら───と、滅びの魔力を一本の剣が貫く。
「………魔帝剣グラム?」
ストン、と床に突き刺さった剣の柄に降り立つ人影。後頭部でひとまとめにした髪が揺らめき眼鏡の奥には隈が刻まれた目が見える。
「やっと見つけたよこの問題児共」
魔王レヴィアタンはギロリとリアス達を睨みつける。
「何勝手に余所の、しかも同盟結んでない吸血鬼の領域に行ってんの?死にたいの?殺していいの?しかも日本神話の地獄のお偉いさんに攻撃とか………リアスちゃん、サーゼクスちゃんの妹じゃなかったらその首かっきるぞ♪」
徹夜でテンションがいろいろ可笑しいセラフォルー。床に降りるとグラムを抜き構える。
「さっさと自分の領に戻れ。直ぐ戻れ。これは魔王としての命令だよ……あ、領って駒王じゃないよ?彼処日本神話のものだから。グレモリー領に軟禁されろって言ってるからあしからず」
「ま、まってください魔王様!このままじゃ、ヴァレリーが!」
と、ギャスパーが叫ぶ。彼としてはどうしてもヴァレリーを救いたいのだ。と、その時──
「その心配はない。既に終わった」
そんな声とともに新たな吸血鬼が現れる。その手には金色に輝く杯。パチンと指を鳴らすと床に女性が現れる。
「ヴァレリー!」
ギャスパーが駆け寄る。彼女がヴァレリーなのだろう。
「無駄だよ。聖杯は抜いた。彼女はもう、死んだ」
「──────」
泣き叫んでいたギャスパーの声が消える。次々現れる吸血鬼達が何か言っているが、彼にはもう聞こえていないだろう。彼はただ一言、命じる。
「───死ね」
瞬間、闇色の獣が吸血鬼達と
「「断る」」
そして漆黒の龍と極寒の吹雪に飲まれ消えた。目を見開くギャスパーをセラフォルーが頭を踏みつけ気絶させる。
「これは後で再封印するとして───」
と、セラフォルーは何人か死んだ吸血鬼を見る。
「此度の件。我々の末端がそちらに迷惑をかけたことを謝罪いたします。申し訳ありません」
「いえいえかまいませんよ」
余裕ぶって答えるのはマリウスだ。マリウスの態度に他の貴族吸血鬼達も平静を取り戻す。
「ただ一つだけ。どうやらあなた方は、地上を支配するおつもりだとか………そうなれば他の神話も、ひいては我々も動くことになります。その上でまだ行動に移されますか?」
「ふん。卑しいコウモリ風情が、貴様等や神々が何か言ってきたところで、進化した我々に何の問題もない」
「………つまり敵対すると?」
「敵対ではない。一方的な虐殺になるだけだ」
「そうですか………じゃあ───」
と、グラムを水平に掲げるセラフォルー。グラムを冷気と魔力が覆う。
「──殺す」