魔法科らは逃げれない。   作:アルピ交通事務局

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争いはまた争いの種を残す

「最後の一人、連れてきたわよ!」

 

「だから、離してくれ!」

 

一先ずはなにをするか話すと、話に乗った壬生達。

本日のカリキュラムを終えて体育館裏へと集まったのだが、エリカと光國が遅刻で先にエリカが男子の二科生を連れてきた、ほぼ無理矢理でだ。

 

「あれ、お前って確か…」

 

エリカが連れてきたぱっとしない中性的な顔の二科生に心当たりがあるレオ。

美月も何処かで見たようなと言う顔をするが、ハッキリと言えない。

 

「…吉田幹比古、君達と同じクラスだ」

 

「ミキったら、友達を作ろうとしてないから顔を覚えられてないのよ…」

 

「ミキじゃない、幹比古だ!

と言うか、僕にいったいなんの用なんだ?」

 

無理矢理連れてこられた事により不機嫌な幹比古。

エリカは一切の説明をせずに連れてきたようで、その辺は光國に押し付けようとしていた。

 

「って、あれ…手塚くんは?」

 

「彼なら遅刻よ…一番、無いと思ったのだけれど…」

 

「えっと、貴方は?」

 

「私は壬生、壬生沙耶香、貴方と同じ二科生よ」

 

一番、遅刻しなさそうな光國が遅刻してる間に軽く自己紹介を済ませる壬生達。

エリカが無理矢理連れてきたが、一先ずは仲良くなれそうな雰囲気を出しており、幹比古が連れてこられた理由は光國が説明をすると言い待つエリカ達

 

「あ、来まし…」

 

「おーい、てづ…」

 

「遅かったじゃ…」

 

美月、レオ、エリカの順で光國に気付いたのだが別のことにも気付いた。

光國の首輪の紐が浮いている。

 

「すまない、遅れてしまった。

…確かお前は吉田幹比古だったな、手塚光國だ…大方、千葉に無理矢理連れてこられたと言うところだろう、ちゃんと説明をしよう」

 

「確かに説明もして貰いたいが、その…」

 

「…あ、別に良いわよ」

 

「よくないよ!」

 

首輪の紐を握り、直ぐ側を歩いているリーナ。

油断すると光國がなにをするのかわからないので、首輪(物理)をしたのだが初日から使うとは思っていなかった。

自分に気にせずに話して良いと上の口は緩かったり固かったりするが、下の口はすごいリーナ。

 

「吉田くん、これはHなのじゃないです」

 

「どう見てもそう見えるだろう…じゃなくて!」

 

「ミキのむっつりすけべ!」

 

「ちょっと、距離を置きましょう」

 

「どんまい、幹比古!」

 

事情を大体知っている四人はエロい事を妄想したヨシヒコと一歩距離を置いた。

ヨシヒコは友情を3失った。

 

「いや、ある意味リーナもここから重要になってくる…が、その前にだ」

 

幹比古に説明をしようとするが、その前にやる事が出来た。

光國はダイスサーベルを取り出して軽く数回素振りをする。

 

「それは?」

 

「古式魔法の武装型CAD的なものだ。

オレは本当なら魔法科高校に通わない方が良いレベルなんだが、九島の持つこのCADはオレしか適合しない代物で、常に不安定で大抵の審査にも引っ掛かる、軍隊的には良いものだが、学校的には迷惑なものだ」

 

「手塚、君も古式魔法の使い手だったのかい!?」

 

全くといってそんな素振りを見せることは無かった光國。

ヨシヒコは古式魔法師だと知ると驚き、親近感を持ち、持っているダイスサーベルに目がいくのだが

 

「やめなさい、それ以上は…九島に関わることよ」

 

リーナが止めた。

光國か、ヨシヒコかどちらに言ったかは分からないが九島の名を出すのは相当なことだ。

しかしリーナにとっては九島はどうでも良い。古式魔法の事を言ったのもどうでも良い、ただただ光國に辛い思いをして欲しくなかった、ただそれだけだ。

尚人工魔法師だとは絶対に教えるなとは釘を刺されているが、古式魔法師と言う設定は九島的にはありで、実際にいにしえの魔法使いなので間違いない。

 

「さて、まぁ、とりあえずだ」

 

後ろを振り向く光國。

特に魔法らしい魔法を発動する素振りをせず、体育館裏の曲がり角に向かってダイスサーベルを投げて地面に突き刺す。

 

「あのCAD、武器の部分が中々の業物ね」

 

「それもあるけど、単純に手塚くんの力で地面に刺しているわね」

 

「…出てこい、もうリーナとオレは気づいている。」

 

そこちゃうやろと言いたいが、言葉を飲んだ光國は曲がり角を利用して隠れている人に言う。

 

「イチハラ、だったわね…」

 

光國の要求を飲んで出てきたのは生徒会の市原だった。

七草真由美と司波深雪のイメージが強すぎるが故に若干だがリーナは名前は忘れかけていた。

 

「オレがこれ以上なにかやらかさん為の監視か?」

 

市原が出てきたのでダイスサーベルを拾いにいくついでに距離を縮める光國は聞いた。

この後、本来の道筋で起きるイベントは二科生達が放送室を占拠して会長と討論からのテロリストに襲われるぐらい。しかしそれまでの間にそこそこのイベントがあるぐらいであり、特に気にする事件は起きない。いや、テロリストに襲われてる時点でダメだが。

しかし自分と言う異質な存在が本来の道筋を壊しており、既に色々と追い込まれている第一高校。ここで更なる一手は魔法科高校の劣等生お知らせの瞬間とも言える。

 

「はい」

 

市原はそれなりに忙しかったのだがバ会長に命じられて、光國がちゃんと自宅に帰宅するまで監視をしてほしいとの無茶ぶりが来た。

そう言うのは七草真由美の犬(パシリ)の副会長にでも頼んでもらいたいのだが、一科生と二科生関連で既にやらかしており、その辺を言及されればまずいのでカッとならない冷静な貴女にと言われて渋々引き受けたがバレた。

しかし特に驚く事はなく、冷静の彼女。バレるのは分かっていたのだから驚く必要はない。

 

「っ!」

 

「落ち着いてください、壬生先輩」

 

自分達がこれからなにかやろうとしている事を知られたと焦る壬生だが光國に心配をされる。

ただでさえ老け顔の光國が言うもんだから、どっちが先輩なのか分からない。

 

「オレ達は一科生と二科生の溝をオレ達なりに埋める、ただそれだけです。

七草バ会長達は勝ち組のエリート街道まっしぐらな住人、二科生からすれば、なにを言っても嫌味にしか聞こえず更には下の立場を味わった事のない人です…無理やと思うで」

 

「…彼についてどうお考えで?」

 

バ会長は無視し、バ会長が溝を埋めるためと個人的な趣味で入れた達也。

少しずつ認められており彼ならばと市原も感じている。光國はそんなのを無駄だと昨日否定した。

 

「達也自身はなにも悪くはない。

アイツは魔法力が低いのを認めて、別の部分を鍛えている…けど、生徒が認めてくれても、学校側がある程度の評価をしてくれないんじゃ、話にならんわ」

 

達也はとにもかくにも学校側が用意した実技の授業がダメだ。

ヨシヒコや光國は絡まないが、知っている。レオ達はそれを詳しく知っていて、お兄様本人も実技だけはダメだが実戦とかなら別だ的な事を言っている。さすおにの方もそんな感じの事をいっている。

しかしそれがどうしたと言うのが今のところの学校側で、本来の道筋では来年からお兄様の功績のお陰で技術系の科が出来る。

 

「魔法師としてのランクは魔法の力かそれとも戦闘力か、国が魔法求めてるんか兵器求めてるんか。

もし達也がこのまま功績を作り上げて、その辺を認めてくれるんやったら万々歳や。

けどまぁ、深雪やバ会長達は気付いているのか無意識なのかは知らんけども国の方針に逆らっとるわけで、今の今までやっていた測定は間違いでしたと達也で証明しようとしてる地味に面倒なことで、達也はどちらかと言うと」

 

「え、ちょっと待って!?」

 

普段通りの事をするだけで魔法師のランクの決め方を、国のやり方を変えるなんて流石ですお兄様。

 

「そんな、そんな危険な橋を彼は歩いているの?」

 

達也の立ち位置を知って驚愕する壬生。

危険な橋どころかゴールが見えない、下手したら誰かに斬られるかもしれない綱を使った綱渡りを達也はしている。その綱で達也は歩くのではなく、走っている。

 

「危険どころの話ちゃうわ。

達也が活躍するだけで、一校だけじゃなく、九校全てに影響がある。

もしかしたら、うちにも学校側が評価出来ないだけで、自分達の個人的な見解をすれば物凄く高評価を出来る生徒が居るんじゃって、それで出て来て優秀な奴等がそいつを押して成果をあげれば学校側は大迷惑…っと、これ以上はやめておくか。

達也に関しては認められればよかったなとしか言えない…なにせ活躍しているのが達也だけなんだから、他の二科生が活躍しないと」

 

「それならば、貴方が風紀委員に入れば良かったのでは?」

 

「それはパス。

面倒なんもあるけど、それで出来んは一科生と二科生の溝を埋める事だけや」

 

「…?

それならば、尚更の事、入れば良かったのでは?」

 

一科生と二科生の溝を埋めるべく、真由美も光國も動いている。

互いに利害が一致しているならば協力すれば良いだけで、光國が風紀委員に入れば良かっただけの話だ。

 

「一科生と二科生の溝を埋めるだけで…本当の敵とも言える学校側をどうにも出来ひん。

オレ達が入学する前から溝はあったのに、知らんぷり決め込んどる学校側をどないかせんと意味ないわ、オレ達二科生の敵は森崎の様に傲慢な一科生とそれを良しとする学校や」

 

「…」

 

市原は三年生だ。

故に去年と一昨年もこの第一高校におり、知っている。

一科生と二科生の露骨な差別や、部活動勧誘期間の間に魔法による問題や軽い乱闘事件があったのを。それら全てが今の今まで誤魔化されているのを。

 

「確かに手塚の言うとおりだが…それと僕の関係を、僕が呼ばれた理由を教えてくれないか?」

 

「………をしようと思っている。

成功すれば森崎の様に傲慢な一科生の鼻を叩き折れる。学校側も騙るしかない。自分は二科生だと諦めている二科生の…二科生の…二科生の…」

 

「光國?」

 

「希望に、なれ…と、とにかくそれには吉田、お前の力が必要だ」

 

これを言うのはもう一人の方じゃないかと、希望の魔法使いじゃない古の魔法使いの自分が言って良いのかと光國は一瞬だけ考えて言い切れなかった。

 

「確かにそれなら、解決できるし永続的に続けることが出来る。

だが…昔は神童と言われた、昔の僕なら力になれた、けど今の僕は二科生だ…」

 

落ちて二科生になってから色々と思うこともあり、光國のやろうとしている事には賛成だったヨシヒコだが、貸せるほどの力を持っていない。

 

「因みにだがその前に…をする。

火の無い所に煙はたたないのならば、火を起こすためにガソリンをぶちまけて世間の風で扇いで炎にする」

 

「なっ!」

 

「待って、光國!

それは流石にやり過ぎよ!そんな事をすれば…ただでさえうるさい反魔法師の団体が、いえ、それだけじゃない…魔法師も敵に」

 

「リーナ…ヨシヒコ、それに市原先輩も…ここにいるのはそれを覚悟の上で、それをするって分かって話に乗ったんだ」

 

開幕の火を起こす事を知ると止めに入ったリーナ。

光國達がやろうとしている事は、余りにも危険すぎる。世間どころか魔法師も敵にする。

 

「今すぐに考え直しなさい。

もし、失敗すれば最後、三年間負け犬の烙印押されて…」

 

「馬鹿を言ってもらったら困る。

活躍を出来る場を貰っている達也を除けば全員、三年間負け犬の烙印を押されているも同然だ…正当な評価なんてものはオレは求めない。不平等でも良い、だけど二科生が活躍を出来る場をオレは求める」

 

本当に本当に無謀なことで市原も止めるも、光國達は止まらない。

一度回り始めた水車は水が無くなるまでは止まらず、水はなくなることはない。

ならば、回る水車を利用するしかない。

 

「決行は明日だ…」


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