魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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モブ崎

「あ~重いしサイズが合わんわ…」

 

1セットを先取したので、少し休憩に入る為にベンチへと戻ってきた光國。

過去に着ていた日本代表のジャージを脱いでベンチへと置くとズシンと重い音がした。

 

「あ、鉛の板が…10キロぐらいあるわね|

 

「そんだけのハンデがあってもあんなに圧倒できるのか…」

 

光國の脱いだジャージに触れるエリカとレオ。

二科生代表の選手達とリーナが光國の周りに立って群がっている。

 

「ちょ、試合中やから退いてろ…油断してまう」

 

「そうは言っても、君が圧倒している。

確かに森崎も強いが、君の方が何十枚も上手で、本気すら出していないんだろう?」

 

「まだまだだね…」

 

それなら大丈夫だと安心するヨシヒコ。

この試合は勝ったと喜ぶのだが、リーナと光國は表情が優れない。

 

「く、そ……」

 

隣のベンチでは汗だくの森崎が息を整えていた。

光國の方がそれなりに動いたり、複雑な動きなどをしているが一向に体力は減っておらず森崎の体力は大きく減っていた。

 

「まだ、だ…」

 

「森崎くん…お疲れ様です」

 

試合が始まる前と今とでは状況がなにもかも変わってしまった。

だが、それでも諦めるかと闘志を燃やしている森崎を見て深雪は称賛した。

光國と森崎では格が違うので敗北はしてしまうが、諦める事なく挑み続けた事は見事だと、立派だと森崎を認めてドリンクを渡す。

 

「司波、さん…」

 

「ファイトです…負けたとしても私は、いえ、私達は貴方を責めません…それにまだ最後の団体戦が残っています」

 

深雪のこの言葉に少しだけ救われた気分になる森崎。

 

「…リーナ」

 

「なにかしら?」

 

地獄耳な光國にも深雪の声は聞こえており、色々と考えた末に作戦を実行に移すことを決意。

リーナになにかを告げると、コートへと戻った光國

 

「セカンドセットプレイ!」

 

「重りは外した…そこそこ本気でいかせて貰おう」

 

森崎のサーブからはじまるのだが、疲れている森崎。

呼吸を整えているのだが、視界に写る光國の雰囲気が一瞬で変わった事に気付く

 

「あれ…壊れた?」

 

観覧席に戻った美月は異変に気付いたのだが勘違いをしていた。

美月は巨乳眼鏡娘だが、この時代で眼鏡をかけている人の大体が眼が悪いからと言う理由ではなくオシャレだ。

富裕層でなくとも簡単に出来る格安の視力を良くする手術があり、眼が悪くなることは現代と同じくよくあることなのだが直ぐに回復は出来た。

美月が眼鏡をつけているのは、霊子放射光過敏症候群と言う先天性の病気の様なものを持っており、簡単に言えば人のオーラや霊的な存在が放つ光などが特殊な術なんかを使って感覚を研ぎ澄ます事をしなくても常人の何倍よりも見えてしまうというものだ。

上手く使えば相手の心理状態を読んだり、霊的な存在がどんな霊でなにか出来るか見抜くことが出来たりなど使う人にとっては便利なのだが美月にはなにかと不便なものだ。

しかし、そんな事は今関係ない。美月は霊子放射光などが見えなくなる眼鏡が壊れたと思い、眼鏡を確認したのだが眼鏡は指紋の汚れはあったが壊れてはいなかった。

 

「柴田さん、眼鏡は壊れてはいないよ…」

 

「なんだアレは…」

 

柴田の眼鏡は壊れてはいない。

ただただ、目の前で起きている事がとてつもない程の異様な光景だった。

 

「…どうした、さっさとサーブを打ってこい!」

 

雰囲気が一瞬で変わった光國。

雰囲気だけで終わるはずもなく霊子放射光過敏症候群でないヨシヒコと達也に試合を見ている全員が特殊な術や道具を使わず裸眼で捉える事ができる膨大な迄のオーラをラケットを持っていない左腕に集中させていた。

 

「幹比古、アレがなにかわかるか?」

 

「いや…僕よりアンジェリーナさんの方が知っているんじゃないかい?」

 

達也は本気で調べようとしたのだが、なにかが邪魔をして分からずCADを使っていないので古式魔法の一種だと考えてヨシヒコに聞いたのだが、ヨシヒコも知らず、最終的にはリーナに回ってきた

 

「百錬自得の極み…光國が魔法師になってから出来るようになって、光國はそう言ってるのだけど…色々と解析したりしたけど、中々と分からない事が多いのよ…」

 

どう答えれば良いのか悩むリーナ。

明らかに光國は手加減に加えて無駄な事をしており、言って良いことかと悩む。

 

「ほーぅ、ほーぅ…使えるのかぁ……」

 

すると今まで目を閉じていたオジイが目を開いて光國を見る。

 

「爺さん、アレも知ってるのか?」

 

「スポーツの中にはぁ、宗教的なものとかがぁ起源のものがあってぇ、テニスもその内の一つでぇ、それ用の魔法…百錬自得の極み…」

 

「テニス用の魔法って…聞いたこと無いわよ」

 

「いや、待ってくれエリカ…お爺さんの言うとおりかもしれない。

相撲の様に起源が神事だったりするスポーツはちゃんとあるし、テニスの様に一つの球を複数の人間が打ち返す競技を宗教的な理由で古代のエジプトで行われていた記録があり、紀元前15世紀の壁画にも書かれている…紀元前は古式魔法の存在が当たり前で神権政治の時代、それ用の魔法が存在していてもおかしくはない」

 

説明をしてくれたオジイの言っていることが嘘だと思ったエリカだが、ヨシヒコは本当だと推測する。

 

「…無我の境地…今で言う、ぞぉんとかふろぉの状態。

それを無意識とか偶然とかじゃなく、自分の意思でおん、おふが出来るようになったら出来る三つの奥義の一つでぇ、百練自得の極みは無我の境地の爆発的なぱわぁを一ヶ所に集める…けどぉ、その分他が疎かになっちゃうよ」

 

「無我の境地を自力で…いや、三年前とはいえ手塚は世界一

世界レベルのスポーツ選手ならば、自力でゾーンや無我の境地に入れるが…更に先…それで効果は?」

 

オジイの説明を聞いたが、まだ効果を教えてもらってはいない達也達。

森崎や審判をしている七草達も聞こえておりオジイの説明を待っているのだが

 

「サーブ、打たないの?」

 

「15-0だ…いくら相手が雑草の二科生とはいえ油断をしまくりだ!」

 

森崎が一向にサーブを打たないので、遅延行為扱いになり光國はポイントを取った。

 

「余り遅延行為が酷くやる気がないならば、強制的に敗北だ…はやく来い!」

 

「なにが来るかは分からないが…倒すまでだ!」

 

百練自得の極みに対する説明をオジイがしてくれないので、不安な森崎。

光國はサーブを打ち返すとセンターマークへと立ち、森崎とラリーを始める

 

「……なにも起きないわね」

 

第一セットは光國が多彩な技を使い、光國が森崎になにもさせず圧倒。

そんな第一セットとは真逆と言って良いほど普通にテニスをしているように見えるエリカ。

 

「なぁ、百錬自得の極み失敗したんじゃないのか?」

 

普通過ぎるのと光國の体を見て、百練自得の極みを失敗したとレオは感じる。

 

「手塚…ラケットを持ってない方にオーラが集まってるぜ」

 

光國はラケットを握っていない左腕一本に溢れんばかりのオーラを集中させている。

テニスで両手打ちはありにはありだが、片手で打つのが基本でラケットを握っている右手にオーラを集中させていない。

レオは、ラケットを握っている手にオーラを集中させるのが正しいと見抜いた。

 

「失敗じゃないわ…アレで良いのよ」

 

しかし、リーナはあれで正しいと否定した。

 

「百錬自得の極みは威力や回転を倍返しにして打ち返すことが出来るのだけれど…」

 

「じゃあ尚更、失敗じゃない!」

 

「アレって、直ぐに解除できないんですか?」

 

「出来るけど…しないわ」

 

「…森崎を挑発するためか?」

 

「ええ」

 

百練自得の極みの説明をすると美月とエリカは失敗したと考えるが、達也だけは違う答えを出した。

光國は勝負を決めるために百練自得の極みを発動したのではなく、ただただ森崎を挑発するためだけに百錬自得の極みを発動し、わざと左腕にオーラを集中させていた。

 

「動かざること、山の如し」

 

ただ嫌がらせの為、森崎を何時でも倒せるけど手加減をしていると見せつける為だけに発動した光國。

風林火山の最後である、山を使いはじめたのだが、森崎とのラリーが続くだけだった。

 

「風は縮地法の素早い動きやジャイロレーザー等の素早い球を打つスピードのテニス、林は星花火やトルネードスネイクなんかのテクニックのテニス、火は波動球やグランドスマッシュの様な重くて強い球を打ちまくる攻撃的なテニス…後はなんだと思う?」

 

「スピード、テクニック、パワーとなると…!」

 

「雫、ほのか、深雪…あれ!」

 

山のテニスがなんなのか考えていると、光國が実戦しており山がなにか気付く達也。

遅れてエイミィも光國の異変に気付いたようで、光國に指をさして見てくれとほのか達に言う。

 

「…え、嘘!」

 

「スピード、パワー、テクニックとなれば後は防御力、ディフェンスだけど…」

 

「手塚さん、センターマークから動いていない…」

 

光國だけを集中して見ることにより光國の山を理解したほのか、雫、深雪。

センターマークを軸にして、そこから一歩も動くことなく森崎のボールを左右に打ち返している。

 

「私も真似しようと思えば、前後の縮地法も麒麟落としの劣化版のヒグマ落としも両手打ちの波動球も出来る…けれど、アレだけは…手塚ゾーンだけは誰も真似する事は出来ないわ」

 

「拾参式波動球!!」

 

「ぐぉっぉおう!!!」

 

「森崎くん!?」

 

百練自得の極みをわざと使わない左腕に使い挑発する。

挑発だけで終わらせず、鉄壁の防御力と相手のスタミナを削る風林火山の山を発動し手塚ゾーンで全てのボールを回収し自身の体力を温存しつつスタミナが減って隙が出来た森崎に風か林か火の技を叩き込む。

 

「リーナ、山だけがオレしか使えない技じゃない」

 

「あ、そうだったわ…」

 

手塚ゾーンからのドロップショットを決める光國。

森崎は全速力でネット際まで走り、ボールが地面につく前に間に合いラケットを振るのだが

 

「伝家の宝刀、零式ドロップも光國しか出来ないわね」

 

ボールは弾むことなく、ネットに向かって転がっていった。

 

「…て、手塚ぁああああああああ!!」

 

「ゲーム手塚!5-0!!チェンジコート……圧倒的ね…」

 

「手塚のスペックが遥かに森崎を勝っているな…」

 

「ルールも手塚くんを味方している…」

 

椅子に座っている主審の真由美は、森崎側のコートでボールを拾う役と審判している十文字は、光國側でボールを拾う役と審判をしている摩利はもう光國が勝つことを確信した。

森崎の基本能力は一科生の中では優秀には優秀なのだがほのかや雫、それにこの対抗戦には出ていない一年の優秀な女子一科生と比べれば下だ。

クイック・ドロウと言う技術と家業であるボディーガードを手伝った事により得た経験などで溝をなんとか埋めている。

しかし、埋めれたのは学校の成績だけで深雪やリーナの様に圧倒的な存在には勝てず、達也の様に実戦向けの人間には届くことはなかった。

 

「リーナ」

 

「…相手が、相手が悪かったわね…森崎」

 

光國から指示が出されたので、言われた通りの事を言うリーナ。

ただ相手が悪かった。それだけを言ってほしいと光國はリーナに頼んだ。

 

「…そう、だよね。

私かほのかが出ても、手塚さんには勝てない…深雪は?」

 

「難しいわ…ルールで使える魔法が制限されていて手塚さんに有利で…」

 

リーナのその言葉に頷く雫と深雪。

二人はもう森崎が敗けだと決めつけていた。

 

「お兄様ならどうなさいますか?」

 

「そうだな…手塚がまだ二つの戦法を見せていないから、まだなんとも言えないな」

 

「達也くん、なんでまだ手塚くんが2つも隠し持ってるって言えるのかしら?」

 

「壬生先輩…手塚はオールラウンダーですが、風林火山のスタイルに分けて戦っています…風林火山ですよ」

 

「あ!」

 

風林火山がなんなのかを知っていた壬生は理解した。

光國はまだ本気になっていない事を、それを使っていないことを。

 

「少なくとも手塚の残り二つが分からない以上、手塚の風林火山に対して此方も風林火山となる魔法や技術を用意して相殺したり相性の良いスタイルをぶつけて突破するのが一番の攻略法だ」

 

そして達也は今の手加減をしまくっている光國の正しい攻略法を言った。

風林火山に対して同等の風林火山をぶつける。それが正しい攻略方法でそれ以外となれば、火をも越える炎の様な攻めや林をも越える森の様に静かで壮大な技巧など、どれでもいいので光國を上回っている一芸を武器にして戦うぐらいだ。

 

「NEO・ブラックジャックナイフ!!」

 

「15-0!!」

 

一歩、また一歩と着実に勝利へと歩む光國

 

「よっしゃあ!森崎のラケットを弾いたぜ!!」

 

「後、3ポイントよ!」

 

「吉田くん、団体戦を…勝ちましょう!絶対に!」

 

「ああ、勝とう柴田さん…壬生先輩、戦えますか?」

 

「勿論よ!」

 

レオ、エリカ、美月、ヨシヒコ、壬生は勝利したと最後の団体戦に頭を切り替えて勝つんだと意気込む。

壬生以外は負けてしまったが、光國が戻してくれたと最後まで持ってきてくれたと負けないと諦めないと勝つんだと強い気持ちを持つ。

その光景を見て、自分達は才能がないと、雑草だからと諦めていた二科生の希望へと変わる。

壬生が感じ、苦しんだ一科生の二科生を見下す視線が無くなっていく。

 

「30-0!」

 

「く…そ…」

 

「森崎、お前もよくやった!!」

 

そして戦った森崎を称賛する。

1ポイントも奪えず、光國とのレベルの違いが露になるが森崎自体は弱くはない。

ただ相手が悪かった、森崎は弱くはないんだと皆が森崎の実力を認めて、森崎を攻めることを一切しない。本当に相手が悪かったのだから。

 

「森崎くん…最後まで頑張ってください!」

 

どちらかと言うと森崎が苦手な深雪はエールを送る。

 

「まだ最後の試合が残っているから、大丈夫」

 

それに続き雫もエールを送る。

 

「これが狙いか、手塚…」

 

達也は気付いた。

光國が森崎を完膚なきまでに叩きのめすことは簡単に出来る。

百錬自得の極みをちゃんと使えば良いだけだが、それだけだと森崎は変わらない。

森崎を変えるには森崎に勝つだけでなく、心も折らなければならず、森崎自身が敗けを認めなければいけなかった。

一科生と二科生の意識を改革し、尚且つ典型的な駄目な一科生とも言える森崎の心を変える。

その為にリーナに負けて当然の相手だと言わせたと見抜いた。

 

「…ふぅ」

 

無駄でしかない百錬自得の極みを解いた光國。

普通のサーブを打ってラリーを始めるのだが、直ぐに手塚ゾーンを使う。

 

「うぉおおおおお!!」

 

最後の力を振り絞り光國に挑む森崎。

負けるのは分かっているが、せめて1ポイントだけでも奪ってやるとボールを追いかけるが

 

「よし、アウトだ!」

 

力が上手く入らず、ボールを天高く打ち上げてしまう。

明らかなアウトボールで、レオはガッツポーズを取ったのだが

 

「…気付いているか、森崎?」

 

「え、なんで!?」

 

光國は手塚ゾーンをやめて、アウトになるボールをゆっくりと打ち返した。

 

「なんのつもり、だ!」

 

森崎はそのボールを打ち返すも、変な所に飛んでいく。

しかし、光國は手塚ゾーンでボールを引き寄せて弱く打ち返す

 

「なにを…なにをやっているの光國!?」

 

リーナには分からなかった。

勝つことは簡単なのに、勝負を決めに来ない光國の行動が、これ以上なにをするか分からなかった。

 

「オレはCADをつけていない。

そして百錬自得の極みは使わないようにしている左腕に使い、才気煥発の極みを一切使わずにお前をここまで追い詰めた…」

 

「なにが、言いたい…」

 

「待て、手塚!!」

 

「悪いが待っている暇はない!!」

 

達也は気付いた。

森崎の心をプライドを、光國は完膚なきまでに叩きのめすと。

 

「伍拾四式波動球!!」

 

「ぐふぉおう!!」

 

光國の波動球を真正面から受けた森崎。

吹き飛ばされるが、十文字御得意の防壁魔法ことファランクス使い受け止める。

 

「お前は今、敗けを認めた。

百錬自得の極みは魔法師になってしまった後に覚えたものだ。

だが、波動球も星花火も縮地法も全て魔法師になる前にオレは会得した。

お前は魔法師としてこのテニヌに挑んだが、オレはテニスプレイヤーとしてこのテニヌに挑んだ…お前は認めたんだ。ただの人より特別だと思っている魔法師がただの人でも覚える事が出来る使える技術に負けるのを、仕方ないと…人間を舐めるな、見下すな…」

 

「………」

 

果たして普通の人間がなにかは別として、人でも覚えることが出来る技術に敗けを認めた魔法師・森崎。

 

「お前は自分が、魔法師が特別な存在だと思っているかもしれない。

この第一高校には三巨頭と呼ばれる学生の枠には納まらない三人がいる。

この第一高校には十師族の下に位置する百家の人間がいる。

この第一高校には光のエレメンツの末裔がいる。

この第一高校には財閥のお嬢様がいる。

この第一高校には霊子放射光過敏症候群を持ち、どうにかしようとする生徒がいる。

この第一高校には神童と呼ばれていた古式魔法の名家の次男がいる。

この第一高校には剣術の関東一位と剣道の全国二位がいる。

この第一高校には実技は苦手だが、エンジニアとしては大天才と言えるやつがいる。

この第一高校には名家でもなんでもないが、強い奴等がいる。

そして…この第一高校には魔法を一切使わなくても、森崎家の人間に勝てるやつがいる…魔法師と人間は変わらない…お前はこの第一高校でも特別でもなんでもないんだ」

 

「っ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モブ崎」

 

 

 

 

 

 

 

 

光國は折った、森崎の心を。

試合を見ている生徒の中にある、魔法師=特別だと言う考えを変えさせるために、少しでもなくすために極限まで叩き折った。

 

「七草主審…」

 

「40-0、マッチ、ポイント…」

 

そこまでやるかと言う空気の中、第四試合は最後を迎える…

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が、モブ崎だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

「手塚ぁ…言って良いことと悪いことがあるだろぉ…」

 

「!?」

 

「も、森崎くん!?」

 

森崎は最初から苛ついていた。

魔法科高校の中でも一番と言っても良い第一高校に主席ではなかったとは言え、一科生として入ることが出来て更には成績優秀者のみが入ることが出来る1-Aの生徒になった。

それだけで終わらず、心を奪われた絶世の美女たる深雪と同じクラスでアプローチをかけるのだがあえなく撃沈、同性には勝てないと、同性だからコミュニケーションが取りやすいからそこは仕方ないと一旦は諦めるが、直ぐにアプローチ。

深雪は森崎に対して興味を持っておらず、二科生を堂々と補欠扱いして見下した為に苦手な人だと思われていた。

深雪の兄である達也は二科生だからと見下し、次席で深雪と同等の存在とも言えるリーナが光國の側にいるとダメになるという考えを持ってしまった。

美月に一科生と二科生を同列に扱われた事に苛立ち、CADを向けて以降は大きく大きく転落していった。

肝心の光國が捕まらなかったから仕方なく風紀委員にしたと、カッとなって問題行動を起こす危ない奴と見られていた。

今回の一件で一番悪いのは今まで放置していた国だが騒ぎを起こしたのは二科生達で一番の原因は光國だと憎悪を抱いた。

そしてやって来た対抗戦、自分が出るまでもなく二科生に勝つと勝利し続けるが、考え方を徐々に徐々に改めていく一科生やほのか達。

遂には二科生は一科生に勝ってしまい、自分の番を迎えて遂に光國を堂々と倒せると思えば光國は自分を遥かに凌駕。

認めたくはないが、認めなければならない。

場の空気や雰囲気に流されて、自分でも薄々感じてきてしまった。

二科生は、手塚光國は強いと。

しかしそれは光國達の強さを認めるだけであり、魔法師=特別という考えは持ったままだった。魔法師=特別と言う考えを完膚なきまでに叩きのめされ、森崎の中に残っていたプライドが傲慢が誇りが粉々に砕かれた…そして森崎は…ハジけた。

 

「さっさと来い…殺してやるよ…」

 

「…悪魔(デビル)化しただと…」

 

モブ崎により、森崎の中のなにかがキレた。

激しい憎悪に身を焦がした森崎は目が充血するどころか、身体全体が真っ赤になり髪が真っ白になった。

光國は知っている、この状態を。見るのははじめてだが、知識では知っている。

 

悪魔(デビル)

 

冷静さを失う代わりに、物凄いまでにスペックを上げる諸刃の剣とも言える状態に森崎はなった。

 

「待て…いきなりそんな状態になって、試合を続行するだなんて」

 

「風紀委員長、会頭、主審…試合を止めないでくれ」

 

流石に今の森崎はヤバイと感じたのか、試合を中断しようとする摩利。

今この状態で試合を中断するのはむしろ危険だ。今の森崎は冷静さが失われているだけだと光國は試合を続けさせてもらう事を頼む

 

「試合を続けるだなんて、そんな」

 

「良いから続けさせてくださいよぉ…今は手塚を潰さないと気がすまないんだから…それとも会長が相手になってくれるんですかぁ…」

 

明らかに風貌も様子も違う森崎。

ドクターストップをかけても、強制的に試合を終了させても止まることはない。むしろ、止めてはいけない。

 

「七草…続けろ」

 

「でも」

 

「万が一の時には俺達がいる、それにここには全校生徒がいる…」

 

仮に森崎が暴れたとしても、あっという間に取り押さえる事が出来る。

そう判断した十文字は森崎と光國の試合を続行させた。

 

「…まずいな……一・球・入・魂!!」

 

光國のサーブから再開され、今日一番のサーブを打った。

速度や角度共に最高で、本日最高速度の218キロを叩き出すのだが

 

「おせええ!!!」

 

森崎は余裕で追い付き、目にも止まらぬ早さで打ち返し

 

「ぐぁっ!!!」

 

「森崎、あいつわざと光國に!」

 

光國の頭にわざと当てた。

 

「…マジかよ」

 

「七草会長、はやくコールをしてくださいよぉ!!」

 

「40-15!」

 

「ヒャーッヒャッヒャッヒャ!!

遂に…遂に手塚からポイントを奪ってやったぞ…今までの借りを全部返してやる!!」

 

「そんなものはいらん!!」

 

再びサーブを打つ光國だが、先程よりは遅く余裕で打ち返す森崎。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ァアアアア!!」

 

悪魔(デビル)化していた森崎は光國を遥かに凌駕。

伍拾四式波動球をも簡単に打ち返し、全てのボールを光國にぶつけてポイントを奪い

 

「そうだ…花弁(ブルーム)の一科生は選ばれた生徒で、雑草(ウィード)の二科生は補欠なんだ…ましては魔法師でもなんでもないただの人間に負けるはずが無いだろう…」

 

「…ゲーム森崎、7-5…1-1(ワンオール)…」

 

「はぁはぁ…こりゃヤバイわ…」

 

大逆転をはたした。








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