これはメフテルハーネのとある日常を切りとった物語(ストーリア)




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春を齎す者

 

妖精の国で、一番最初に春が訪れる場所。

 

春の丘。

 

 

今日はそんな場所の物語(ストーリア)を見てみることにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむ……やあっ!」

 

 

どうやら、1人のおてんばな女の子が頑張っている様子。

周りには御付きのお爺さんらしき人と…小さな白い竜がいるようです。

 

 

「姫さま〜! 頑張ってくだされ〜! なかなかいい感じですぞ〜!」

 

「きゅ〜っ!」

 

 

2人の声援を受けて、ますます頑張る女の子。

その手から優しげな光が溢れていきます。

 

 

「ふんぬぬぬ………や〜っ!」

 

 

女の子が力を込めると、手から溢れ出た光が一箇所に集まり…眩いばかりの閃光が走りました!

 

 

そして、光が集まっていた場所には…なんと満開の花が咲いて……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……いたら素敵なのですが、そこには小さな小さな芽がちょこんと出ているだけでした。

 

 

「うぅっ…。 なんで花が咲かないの〜っ!?」

 

「ひ、姫さま! 泣かないでくだされ! 大丈夫!陛下も姫さまと同じくらいの頃はこんなものでしたぞ!」

 

「えっ?あの母さまが?」

 

「そうですぞ。 陛下も若い頃は姫さまに負けず劣らずのおてんばでしたからな。ゼフュロダイ殿と蜂蜜茶をめぐっての攻防をよくしておりました。」

 

「へ、へぇ〜…。 なんか想像できないや…。」

 

「そうこうしている内に、いつのまにかあれ程の『春咲花術』を使いこなしておりました…。

今ではこの春の丘を述べる女王ですからなぁ…。時が経つのは早いものです。」

 

 

今の話を聞いたところ、どうやらこの女の子は春の丘の王女様のようですね。

春の力を使いこなすための勉強中でしょうか?

 

 

「へぇ〜…。

 

それじゃあさ…私も黒の森の人とそんなことをしてたら母さまみたいな『春咲花術』を使えるようになるかな!」

 

「ほっほっほ。 もしかしたらそうかもしれませんな。」

 

 

そう御付きのお爺さんが返すと、王女様はニヤリと笑いました。

これは何か思いついたような顔ですね…。一体何を考えついたのやら…。

 

 

「それじゃあ、私これから『黒の森』に行ってくる! 春の力にどーたらこーたら言ってくる男の子がいるからソイツのことをギャフンと言わせてやるわ! そういうわけだから…じいや!母さまにそう伝えておいてね!」

 

「お、男の子…!? 姫さま!お待ちくだされ!

その何処の馬の骨とも知れない野郎のことを爺に詳しく教えてくだされぇ!」

 

「後で教えてあげるから、今はもう出かけるわ! フリューリング!行きましょう!」

 

「きゅるる〜!」

 

 

お姫様は背中にある翼でふわりと浮かび上がり、白い竜と一緒に飛んでいきました。

 

 

「ひ、姫さま〜っ! お待ちくだされ〜っ!」

 

 

青空の下、御付きのお爺さんの痛々しい悲鳴が響き渡りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!いい気持ち! やっぱり春は最高だわ!

フリューリングもそう思うでしょ?」

 

「きゅるっ!」

 

 

花が咲き誇る木々の中を飛んでいくお姫様と白い竜。

2人はとっても楽しげです。

 

 

 

 

ここは春の丘。妖精の国で一番最初に春が訪れる場所。

 

 

そこでは、息づく皆へ春を齎す力を持った小さな芽が、すくすくと育っているようですね。

 

 

 

 



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