ある先導者とユニット達   作:スタンドトリガーカムバック

1 / 1
楽しんで頂けたら幸いです。



ある先導者とユニット達

 

 ある日、全世界のヴァンガードファイターは自分の持つカード、【ユニット】と話す事が出来る様になった。

 

「…………ぐぅー……」

 

 それもお気に入りのユニット達と話せるというのだからファイターには夢の様な体験だ。

 

「ぐぅ……」

 

 今、こうしてのんきに寝ている社会人の俺にも何体かユニットがいて――

 

「――っがぁぁぁ!? は、鼻がぁぁぁぁぁ!?」

 

「おう、お目覚めかヴァンガード。にしししっ」

 

 だが、決して嬉しい事だけじゃない。

 今日はそんな俺の騒がしい日常をお送りしよう。

 

 

 

「“りっく”のヤロー……人を起こすのに鼻ワサビとか正気か……【ヒールトリガー】のする事じゃねえだろ」

 

 社会人の朝を見事に台無しにしてくれたのが、悲鳴の原因となった“お化けのりっく”。

 りっくは海賊団【グランブルー】の癒やし担当だが、とんでもないダメージを与えられた。

 

「おいおい、俺はヴァンガードが死んだ様に寝てるから荒治療で生き返らせようと思っただけだぜ?」

 

「嘘つけ! この間、俺に向かってイビキが煩いって言ったの誰だよ!?」

 

「えー? 俺様、ヴァンガードに忠誠誓ってるからそんな悪口吐いてないと思うけどナー」

 

「白々し過ぎるだろうが……!」

 

 静かに怒りを燃やしながも、顔を洗い終わった俺はトイレから出る。幽霊のコイツを殴る事は叶わないので怒りは溜まったままだが。

 

 そんな俺も、キッチンに付けば笑顔になる。何故ならそこには朝食と、天使の笑顔が輝いているから。

 

「あ、マイヴァンガード! おはっよー!」

「おはよう〜、“スターコールぺったん”」

 

 “スターコールぺったん”、改め、“スターコール・トランペッター”。

 俺の好きなユニット、“スターダスト・トランペッター”の成長した姿。今この姿なのは、俺の朝食を作ってくれる為だ。

 今日も忙しなく動く赤髪が可愛い。

 

『本日の降水確率は――』

 

「あ、起きたんだ。おはよう、マイヴァンガード」

 

 そして、ソファーで寝っ転がりながら声をかけて来たのは“黒ぺったん”こと“ダークサイド・トランペッター”。

 ダランと垂れている紫色の髪が可愛い。

 

「黒ぺったん! 今日は君が俺を起こしてくる当番だったよね!? なんでりっくなの!?」

 

 そう、いくら可愛くても怒る所は怒らないと。俺は彼女達のヴァンガードなのだから。

 

「……ごめんなさい。めんど――じゃなくて、りっくが無理矢理……」

 

「りっくてめぇゴラ! 表に出やがれ戦争だぁ!!」

 

「おい、今思いっ切り面倒って言って――」

 

「煩え! わさびの分も合わせて痛い目見せてやるから覚悟しろ!」

 

 俺は机の上に置かれた銀製のナイフを手に取った。

 魔除けの効果のあるこれなら、お化けだろうと退散させることが可能なのだ。

 

「おい、落ち着けよヴァンガ――うおぉぉぉぉぉ!?」

 

 ナイフが刺さったりっくは、縛らずに放した風船の様に、縮みながらカードへと吸い込まれていった。

 

「これでよし!」

 

(ダークサイドちゃん、りっくを唆してまで星座占いが見たかったのかな?)

 

「はい! マイヴァンガード! 今日もトーストとハムエッグだよ!」

 

「そうそう、我が家はこれこれ! じゃあ、いただきます!」

 

 手を合わせた俺は、彼女の思いやり溢れる味に感動しつつ、完食すると出勤の準備を終えて家を出た。

 

 

 

「良い天気だなぁ……」

「忌々しい天気ね……」

 

 家を出るとカードを置いて行くのでユニット達は消えてしまうが、コンビニで衝動的に買った【竜神列伝】のパックの中から出たユニットが、頭を手で覆いながら一寸法師サイズで俺のカバンの上に座っている。

 

「……あのさ、太陽が苦手だったらカードの中に戻ったら?」

 

「貴方が私の事ばっかりイメージしているからこうなっているんでしょう?」

 

 当たったのはダブルレアの“アモンの眷属 アビズム・ラスト”。この【ダークイレギュラーズ】のカードは俺の姉へのお土産になるだろう。

 

「いや、姉ちゃんに渡そうって考えているだけなんだけど……」

 

「なんですって? もしかしなくても貴方、私じゃなくて他の女の事を考えているの?」

 

「うわぁ……面倒なタイプ」

「今なんて言った?」

 

「な、なんでもないです……」

 

 当たっただけのカードは忠誠心とか微塵も無いから言動が怖い。

 でも、デッキに入ってないユニットは質量を持たないし小さいので、雰囲気に押されただけだったりする。

 

 頭からアビズムのイメージを押し出して実体化を止めつつ、会社へと向かった。

 

 

 

「……疲れたぁ」

 

 昼休憩になって背伸びをする。社内にはヴァンガードをする人間が俺1人なので他人のユニットが見える事はないし、逆に他人のユニットを見る事もない。

 

「あら、終わったかしら?」

「アビズム……くそぅ、自分のヴァンガ脳が悩ましい……」

 

 気を抜くと直ぐにカードの事を考える自分を殴りたくなったが、そんな事よりも先ずは腹ごしらえだ。

 

 スターコール・トランペッターの手作り弁当……とは行かず、朝に寄ったコンビニで買った弁当を開ける。

 

「あれ? 体の中から他のユニットの魔力を感じたと思ったんだけどなぁ……?」

 

「ぺったんは難しいの作れないから、愛情込めて俺の朝食を作ってくれてんの!」

 

「へー……」

 

 面白い事を聞いた、みたいな顔をしたアビズム・ラストは俺が箸で摘んだおかずを見ると、そっと近付いて来た。

 

「……え、何?」

「何でもないわ」

 

 小さいので何をしたか見えなかったが、今のアビズムに何か出来る筈もないので気にせず食べ続けた。

 

「……ふぅう、ご馳走様でした」

「食べ終わったわね」

 

「ん……? あれ、心無しか体が軽い様な……?」

「私のおかげよ。さあ、キビキビ働いて来なさい」

 

「なんでだ……いや、分かったよ」

 

 衝動買いしたパックで手に入れたカードだけど、そんな僅かな縁でも絆が出来る。  

 

 カードとの絆を実感したような感動を言いかけた文句と共に胸に仕舞う事にした。

 

 

 

「……あのさ、他の人が俺の後ろを通る度にパソコンの画面の前でセクシーポーズ取るの心臓に悪いから止めてくれない?」

 

「私をイメージする貴方が悪いの。集中しなさい」

 

 

 

「ねーちゃん、いるー?」

「んー、いるよー」

 

 扉を開けてから気の抜けた声で在宅を確認すると、同じく気の抜けた返事が返ってきた。

 

「お土産持ってきた……って、ねーちゃん?」

「んー?」

 

 玄関を台所から顔だけだして覗いてくるねーちゃんに、俺はドン引きしながら聞いた。

 

「また“アモン様”と散歩して来たの?」

「うん、今日もして来たよ!」

 

 ねーちゃんはダークイレギュラーズの中でも【魔界侯爵 アモン】をアモン様と呼んで信仰している。

 

 名前通りの邪悪なユニットだが、まあ確かにそれに惚れる事は理解出来なくもない……出来なくもないが……

 

「またリビングの天井を貫通してるんだけど、座布団」

 

 アモンは巨大な姿を持っている為家でも実体化はするが質量はない。

 それ故に、アモンの下に置かれた座布団が数十枚と重なり天井の上でアモンが座っているシュールな事が度々発生する。

 

 ダークイレギュラーズはソウル、所謂魂が貯まると力が発揮されるカード群なので、散歩の途中でそこらへんの魂を集めまくり、家ではそれが座布団になってしまうそうだ。

 

「今日はねー30枚くらいだって!」

「おーう、デッキアウト待ったなしだな」

 

 ねーちゃんは嬉しそうに座布団を眺めながらひょこっと俺に向けて手を出してきた。

 

「ほらほらぁ……お土産でしょう? 早く出しなよぉ〜」

「我が姉ながら現金な奴め……ほらよ」

 

 例のカード、アビズム・ラストを差し出した。

 

「おー! 効果付きヒールトリガー! やったぜ! 全然足りないから助かるわー!」

 

「精々大事にしろよー全く……」

 

 カードに頬ずりする姉に呆れていると、突然座布団がすぅーっと移動し、天井から不気味な風貌の魔物がその姿を表した。

 

『良くぞ我の眷属を連れて参った……褒美をやろう』

 

 そう言うと、台所でサランラップの箱と料理の置かれた皿が動き出し、ハンバーグが盛り付けられた皿がラップに包まれた状態で俺の手元に収まった。

 

「あ、でもそれはアモン様の今日のお供え物……」

 

『我、食えぬ』

 

 要らない食事を押し付けただけかいっ!

 

 

 

「ただいまー」

 

 家に帰って電気を付ける。

 その瞬間、家中に俺のユニットが現れた。

 

『お帰り!!』

 

 さて、今日も楽しくて騒がしい我が家のこの時間がやって来た。

 

「マイ、ヴァンガード……」

 

 騒がしい我が家でも一番大人しい娘、【新参海賊 ジーナ】ちゃんが最初に俺の袖を引っ張った。

 

「今日は、トマトスープ……飲みたい」

「……うん、うん! いいよいいよ!! よし、たっぷり飲ませてあげよう!」

 

「それでね、あのね……」

 

 遠慮しがちに何か続きを口にしようとする彼女に、俺は笑顔とガッツポーズを見せ

た。

 

「……! じゃあ、お願いしたいんだけど……ヴァンガードの血、一杯入れて欲しい!」

 

「うん、いいぜ! ……あれ?」

 

「ヴァンガード、死ぬぞ? にっしし!」

 

 後ろでヒールトリガーが煩い。シャレになっていない。

 

「ち、ちなみにどれくらいかなぁ……?」

「これ一杯!」

 

 海賊らしい、樽みたいな木で出来たコップを見せてくれた。

 少な目に見積もって300mlだろうか?

 

「う、ぁ……ま、任せろ!」

 

 無理矢理笑顔を浮かべながらも、血の気が引いていくのを感じつつ取り敢えずリビングを通って部屋に向かう。

 

「…………ねぇ、マイヴァンガード」

 

「ん? どうしたの黒ぺったん?」

 

 黒ぺったんから声をかけてくれるなんて珍しい、なんて思いながら返事をした。

 

「その体の魔力、何?」

 

 

 ――その一言で、家の中は沈黙した。

 

 先までお化け達と談笑していた“お化けのリーダー でめとりあ”はこちらを見て、鼻歌交じりに皿を洗っていた“スターホープ・トランペッター”は手を止めて、ジーナとりっくの笑い声も聞こえない。

 

「え、えーっと……」

「ダークイレギュラーズのだよね? しかも、サキュバスっぽい甘ったるい感じ」

 

 唐突な雰囲気の変化に戸惑いながらも、俺は正直に今日の出来事を話す事にした。

 

「へー……じゃあ、そのユニットはもうお姉さんの所にいるんだ」

「うん、そうだけど……」

 

「良かったね、サキュバスの魔力を貰って元気にお仕事出来て」

 

 怖い。めっちゃ怖い。

 

「……お風呂、湧いてるから」

 

 その言葉に小さく「はい……」とだけ返して、気不味いまま風呂に入る。

 体を洗うだけで上がった俺は、食事する気分にもなれずそのままベットに寝っ転がった。

 

 

 

 

 

 夢、だろうか……?

 

“マイヴァンガード”

 

 黒ぺったんが、俺に抱き着いて……

 

“もう怒ってないから、嫌わないで”

 

 ……

 

“ボクが元気にしたかったから”

 

 …………

 

“これからも一緒にいたいから”

 

 ………………

 

“怒って、ごめんなさい”

 

 ……全く………… 

 

 

 

(黒ぺったん可愛すぎだろぉぉぉ!

 えぇっ、デレ期!? マジで!? やっばマジで嬉しいんだけど!? あ、やばい尊い死ぬ……尊いよぉ……! 起きて今すぐ抱き締めたいぃぃぃ!!)

 

 

 

 

 

「黒ぺったん、おはよぉぉぉぉぉ!!」

 

 小さな体をギュッと抱き締めた俺が気絶する寸前で見たのは、紫色に輝く笛が振り下ろされる瞬間でした。

 

 

 

「……あれ、俺死んだ……?」

 

 目を閉じたままの俺は、首から頭を支える柔らかい感触に心地の良い癒やしを感じていた。

 

「……枕じゃ、ない……? これは一体?」

 

 力を込めて瞼を開く。

 俺の視界一杯に、こちらの顔を覗き込んでいる赤毛の女の娘が見えた。

 

「……ぺっ、たん?」

「……!」

 

 こくりと頷いた彼女の笑顔に心が洗われる様だった。そして、その心地良さに俺自身がとても満足した。

 

「……ああ、俺の楽園は此処にあったんだなぁ……」

 

 伸ばした腕は彼女に掴まれ、頬にそっと連れて行かれた。

 

「……これぞまさに、完全なる未来だ」

 

 もういっその事、仕事とかどうでもいい事は忘れて残りの人生を全てこの時間に捧げてしまおうか――

 

 

 

「――ジェネレーション・ガード! “時空獣 ヘテロラウンド・ドラゴン”!」

 

 唐突に光り輝く眩しい空間から現実世界に戻された。

 視界の先には、1枚のカードを構えた姉の姿があった。

 

「大丈夫?」

 

 そう聞かれて俺は胸の上に置かれた1枚のカードを手に取りつつ体を起こした。

 

「……“機械仕掛けの神 デミウルゴス”」

「これで3度目だよ。完全なる未来に引き摺り込まれるの」

 

「流石ラスボスのカード……恐ろしい事してくるなぁ」

 

 床に落ちていたスリーブに入れつつ、眺めてみる。今日も平凡なSGRにしか見えない。

 

「……あれ、所で俺のユニット達は?」

「あんた、今デミウルゴスから開放されたばかりでしっかり実体化出来無くなるって忘れたの?

 私はもう行くから、後は1人で頑張りなさい」

 

 そう言って姉は静かに帰っていった。

 

「……イメージ、イメージ」

 

 目を閉じて強く想う。

 

「あ――」

 

「マイヴァンガード!」

 

 出来たと思った瞬間、ぺったんに抱き着かれた。

 

「ごめんなさい! 昨日の夜は怒っちゃってごめんなさい!」

 

「ははは……良いよ、俺は大丈夫だから」

 

「…………」

 

 部屋の奥からは涙目のジーナがこっちを見ている。

 

「……トマトスープ飲んでない」

「あははは……じ、じゃあ……今日こそ飲もうか……あはははぁ」

 

「っ! うん!」

 

「で、黒ぺったんは……」

 

 ソファー上で体操座りしている彼女。どうやら先程俺を殴った事に罪悪感を感じている様だ。

 

「黒ぺったん」

「別に……ボク悪くないし……占い見れなくて、落ち込んでるだけだし……」

 

 なんか拗ねてる。ので、俺は彼女の前で両手を付けて謝った。

 

「ごめん! 急に抱き着いて悪かった! もう絶対にしない!」

 

(……ずるい……マイヴァンガード、殴ったボクより先に謝った)

 

「……許してあげる。ボクも、やり過ぎたよ」

「うん! ありがとう!」

 

 黒ぺったんが顔を上げて笑ってくれたので、俺も顔を上げて笑った。

 

「……よーし! 今日は休日だし、豪勢に寿司にしよう!」

 

「マイヴァンガード……そんな事したら給料日来る前に倒れちゃうよ?」

 

「トマトスープが良い」

「ボクはステーキ」

 

「えぇ……マジで連帯感ないな俺のユニット達ぇ……」

 

 

 

 私の弟は上手く仲直り出来た様だ。

 まあ、元々はあいつが立てたフラグなんだけど……

 

「ほら、肉まんいるー?」

 

 アパートの屋上で、私は精一杯腕を伸ばした。

 

 相手は座ってるけど半分も届いてない。

 

『……』

 

「要らないの?」

 

 答える代わりにデカイロボットみたいな見掛けをした歯車だらけの神様は私を掴んで肩に置いた。

 

 先まで弟を良い夢の中に閉じ込めていたデミウルゴスだ。

 

「あんたも損な役周りだよねぇ? 弟とユニットの仲直りをする為に得体の知れない黒幕なんてするなんて」

 

 喋りながらも肉まんを頬張った。

 うん、美味しい。

 

『……』

 

「苦しみも痛みもない世界の創造の為に、ねー……まあ、これからも弟をよろしくね?」

 

『……』

 

 頷きもしなかったけど、きっとこのユニットは弟を助けてくれる。

 根拠なんてない姉として勘だけど、そう確信した私はデミウルゴスに興味津々なアモン様を見た。

 

「世界的には、この状況の方がピンチじゃね?」

 

 なーんて、思ったけどその時は我が弟にでも止めてもらう事にして私はアモン様と一緒に世界を闇で覆う事にしよう。

 





【Vanguard】先導者になる為に楽しそうにファイト!!【ヴァンガード対戦動画】

 検索してぜひ視聴して見て下さい。
 
 ありがとうございました。





※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。