IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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最近ほんと暑かったり寒かったり・・・私の小説みたいな浮き沈みですね。


第79話 学園島攻防戦 ⑨

 美しい。

 その言葉が陳腐に聞こえてしまうほど、それはそれは見目麗しく、艶やかなISだった。

 水色のボディは青空の中でさえ存在感を放ち、薄く紅いヴェールは夕焼けのように怪しく揺らめいていた。

 両脇に佇む黒と白のISも、機械美的な観点で言えば美しいのかもしれないが、比べてしまうと分不相応で不釣り合いだった。

 

 人工島最後の防衛線であるそのISに向かって、7機のグレイズが迫る。

 

《奴等さえ越えればオレたちが一番乗りだ!隊長たちの無念を晴らすぞ!》

 

 隊長代理であるローグマンが檄を飛ばし、追加の指示を出す。

 

《オレたちがミニガンで正面から引き付ける!重機関銃組は大きく散開して、牽制しつつ人工島に侵入しろ!》

 

 格武装の射程距離を考えれば、正しい命令の筈だった。事実、誰もその命令に疑問は抱かなかった。

 命令を実行へと移す前に、それは起きたのだ。

 

《!!》

 

 停止する視界、急激に変動する重力。

 機体が急停止したのだと、遅れて脳が理解した。

 

《な、何だこれは!?》

 

 どんなにスラスターを吹かしても、機体がまるで動かなかった。ローグマンだけでなく、他のグレイズも全機同様の事態に陥っていた。

 単なる機能停止ではない、不自然な変調だった。まるで下方へと引っ張られるように、両脚はピンと伸び、両腕もそれに倣って気を付けの姿勢となる。とても銃なんて構えられなかった。

 この空中が海中へと変貌し、両手両脚に重しを付けられ、そのまま沈められるような感覚だった。

 

 それでも尚、水色のISの仕業だとは誰も思い付かなかった。

 両者の距離は、少なくとも1km以上は離れているのだから。

 

《悪いわね。絶対誰も通せないから、反則技使っちゃった》

 

 色鮮やかな水色のIS、その乗り手はそう得意気に言いながら、一気に距離を詰めてきた。黒いISと白いISを引き連れて。

 

 ローグマンと隊員たちは、微動だにしないグレイズの中でひたすらに踠いた。蜘蛛の糸でグルグル巻きにされる羽虫も、きっと同じ気分なのだろう。

 

ザギギギャァン!!!

 

 ミステリアス・レイディが蛇腹剣(ラスティー・ネイル)で、タロが機械刀葵で、ジロが重機関銃で、グレイズ全7機の背部スラスターをSEごと一気に破壊した。

 

《ク、クソがぁ・・・!》

 

 SEと推進力を失った彼等は、僅かに残る脚分スラスターのエネルギーで、煙を上げながらも海へと降下していく。

 

《さて、急いでアリーナに戻りましょう。南東側もいつ突破されるか分からないし》

 

《ハイー》

 

《承知シマシタ》

 

 そう楯無に続きながらも、ジロは敵機の現状を絶えず報告する。

 

《敵機、全機着水ヲ確認。水深及ビエネルギー残量、機体重量カラ算出スルニ、生存率ハ20%以下カト》

 

《・・・》

 

 無言で返す楯無。

 分かっていたことだ。機動力を奪った所で結果は同じだと。

 それでも、20%でも生存の可能性があるのなら、その方が良いに決まっている。

 甘くて幼稚な考えだと、楯無も自覚はあるつもりだ。偽善でしかなく、その場凌ぎの慰めにしかならないことも。

 国家代表であり生徒会長であり、特務機関更識家当主でもある彼女だが、結局兵士にはなり切れないようだ。

 人も生徒も、そんな彼女を優しいと称えるのだろう。それが尚更、楯無の心を締め付ける。少しでも手を汚さずに済むのならと、そう思っているだけだというのに。

 

《・・・アナタたちは大丈夫?人間をその手に掛けちゃって》

 

 自虐を少しでも和らげたかった楯無は、そんな問いをタロとジロに繰り出す。

 

《決シテ直接的ニ殺メル事ハ御座イマセン》

 

《・・・「直接」ね》

 

 諦観したように、楯無はジロが放った単語を短く反復する。

 

《マァ間接的ナ事マデ含メタラ、キリ無イデスモンネェ》

 

 冷徹に、そうタロは同意する。

 恐らく彼等は、そういうセーフティが掛かっているのだ。記憶があろうと無かろうと、その根本だけは変わらない。

 如何なる間接的な殺害も許されないとなれば、彼等の行動は大きく制限されてしまう。

 4月のIS学園襲撃が良い例だ。ゴーレムたちは確かに、直接生徒たちに危害を加えた訳ではない。交戦した一夏も鈴音も、そして昭弘も、結局無傷だった。しかし、彼等が原因で群衆雪崩が起きかけ、実際に怪我人も出た。死人が出てもおかしくない状況だった。

 高度な人工知能である彼等が、そんな事を想定しない筈がない。

 

 南東方面で今も戦っているゴーレム隊も同様だ。

 彼等がビームで敵機を誘導し、それを教員部隊が仕留めたのなら、間接的に殺したのと同義だ。

 

 人は殺めない。だが自分たちという「個」が存在する限り、この世の何処かに影響は及ぶ。

 しかして自死を選ぶこともできない。そう作られたのだから、そうなるように影響を受けたのだから。

 

 

 自虐を和らげるどころか、ただ割り切れてないことが露呈しただけだった楯無。必ず何処かで誰かは死ぬというのに。

 まさか彼女がここまで、人の生死に敏感だったとは。それとも、これが一般的な感性なのだろうか。

 いっそのこと彼等のように機械になれれば楽だろうかと、そんな考えすら楯無は浮かべてしまう。

 

 今の彼女の面持ちは、煌びやかなミステリアス・レイディとは対照的に、深海の如く沈んでいた。

 

 不意に、最愛の妹の顔が浮かんでくる。

 擦り切れた心が癒やしを求める為。

 無事を祈る為。

 誰の死にも関わって欲しくない為。

 送り出したあの選択は正しかったのかと、不毛な自問自答に耽る為。

 

 

 

 副会長からの朗報が届いたのは、そんな時だった。

 

《生徒会長!来訪者及び全生徒のフィールド収容、完了しました!》

 

 楯無の張り詰めていた心が、冷たく強張っていた表情が、漸く和らいだ。

 結局こういう事でしか慰めにならないのは、彼女としても不本意だが、嬉しいものは嬉しいのだから仕方ない。

 

《ありがとう副会長。本当にお疲れ様》

 

 これで、生徒に危害を加えることはほぼ不可能となる。

 ゴーレム襲撃以降、シールド発生装置に改良が加えられ、区画シールドの強度は更なる飛躍を遂げた。例え地中貫通爆弾(バンカーバスター)だろうと大型電磁砲(スーパーレールガン)だろうと、シールドを割ることはできない。

 流れ弾を気にする必要も無い。

 

 その朗報を、早速楯無は千冬に伝達する。

 

《TM(楯無ミステリアス・レイディ)よりウィンターへ。全非戦闘員の収容、現時刻を以て完了しました》

 

 その報告により、千冬もまた安堵の息を漏らすが、気を引き締め直して確認を取る。

 

《しつこいようだがTM、危険物の持ち込みは無いな?》

 

 激戦中と思えない落ち着いた口調は、流石ブリュンヒルデと言ったところか。

 楯無のそんな反応も短く、彼女は誇張の無い報告を上げる。

 

《ええ。全生徒を含め、入館時の手荷物検査に金属探知検査、フィールド内への収容時も簡易的な検査はしています。百歩譲って持ち込めたとしても、更識家が目を光らせてますから、事を起こすのは不可能かと》

 

《暴漢共と例のIS乗りは?》

 

 その言葉を聞き、楯無は一瞬返答を躊躇うが、意を決して答えた。

 

《連中は・・・拘束したまま校舎に》

 

《・・・》

 

 千冬もまた、似た沈黙で返す。

 連中も同行させれば、監視の為に更識家の人員を割かねばならない。そうなれば避難中に何かあった際、対応できなくなる。不穏分子、懸念事項を排する為にも、置き去りにするしかない。

 それは即ち、人工島が戦場と化した場合、銃弾の行き交う只中に晒すということを意味する。

 残酷なようだが、楯無の判断は妥当だ。有事における、敵味方の区別ができていると言えよう。

 

 そう得意な正論で脳内を埋め尽くし、千冬は心を切り替える。

 

《いや、それでいい。良くやってくれた。・・・TM及び郷鐘隊は、そのまま人工島防衛に移行。撃ち漏らした敵機の迎撃を頼む》

 

《・・・了解》

 

 思う所があるのか、楯無は少し間を置いて返答する。

 確かに戦況は学園側が優勢で、あと数分で到着する自衛隊を待つだけだ。

 しかし、昭弘だけは劣勢だ。楯無的にはここで昭弘の救援に向かい、そのまま敵のエース機をも墜として、一気に学園側へと流れを持っていきたい。自衛隊を待つのは、楯無的には最善手ではない。

 何故ならば、今前線で戦っている彼女たちもまた、人質足り得るIS学園の生徒だからだ。もし何らかの要因で戦況が覆れば、奴等は一夏たちを捕縛しようとする筈。

 千冬だって考えあってのことだろう。生徒たちが島内に取り残されている現状に変わりはないし、大切な学園を戦場にしたくない気持ちも理解できる。生身で校舎に取り残されている彼等への、せめてもの温情もあるのかもしれない。

 だがやはり人工島の生徒たちは安全なのだから、後は島外の生徒たちの安全確保に移るべきだと、そう楯無は考えている。

 

 意見具申しなかったのは、時間が惜しいというのもあるが、もう一つの理由の方が大きかった。

 またしても深く沈んだ表情が、それを物語っていた。

 

(簪ちゃん・・・)

 

 結局そう、どんなに立派で合理的な意見を並べ立てようと、それらは真なる理由の隠れ蓑に過ぎないのだ。

 楯無は解っていた。結果的に正しい行動でも、その発端が私情ではいけないと。結果的に間違ってたのなら、尚のこと悪いと。

 若しくは、作戦に私情は持ち込まないと、意固地になった部分もあるのかもしれない。

 

 そう意識すればする程、却って妹への感情が増大していく病に、楯無は酷く苛まれていた。

 唯一の解消法は、命令を完全無視し、妹の救援に向かうことだけだ。

 

《楯無殿ー》

 

 タロの声で、楯無はハッと振り向く。

 

《サッキカラ具合デモ?》

 

《あーゴメンゴメン!何でもないの》

 

 軽い謝罪の後、楯無は感情が表に出かけた自身を心中で叱責する。

 

(あーもうホント駄目ねアタシ。妹の背中を押しといて、結局このザマ。敵の生き死にすら気にしちゃうのにね)

 

 それでいて、簪の道を尊重した時から変わらぬ「その気持ち」だけは、心中で誇った。

 

(それでも・・・信じているからね、簪ちゃん。心配はするけど)

 

 妹を信じるのなら、楯無はこの病に苛まれ続けるしかないのだ。解消法なんて、妹への不信の証明にしかならないのだから。

 

 改めてそう思い、心を切り替えようとした時だった。

 

 

“―――"

 

 

 頭の中で微かに声が響いた。か細く、水面(みなも)のように透き通ったその声は、楯無が誰よりも知っているものだ。

 決して気のせいではなかった。

 何故なら、言葉まで詳細に聞き取れたからだ。

 

 「お姉ちゃん」と。

 

 だがそれきりで、再びその声が脳を揺らすことはなかった。

 再び人工島に到着した楯無は、頭に響いたその声の主を待ち望むように、人工島の守護についた。

 

 その紅い瞳は、戦火に彩られている遠い空を映していた。

 

 

 


 

 

 

 あらゆる情報が、光となって簪を通過していく。色とりどりな光たちは無数に散りばめられており、周囲が何色でどんな形状かも判別できない。

 膨大な数の光を抱えるその空間は、時間という概念すら寄せ付けることはなかった。

 

 全能感に酔いしれている簪は、笑みを絶やさずその空間を突き進んでいった。

 完全に混ざってしまった彼女を、「簪」と呼ぶべきかは何とも言えないが。

 

―――もっと広く

 

 尚も彼女は、世界を求め続けていた。

 コア・ネットワークの中でしか生きられない、ISコア。そんな打鉄弐式というISコアに、簪という我欲が混ざった結果がそれだった。

 己の世界を拡張していくことにのみ執着し、他の全てを置き去りにしていく。愛情すらも。

 

―――もっと深く

 

 全てを知覚し、全てを共有できる空間。神という存在を体験できる絶対的な世界。

 こんなに素晴らしい世界を、知りもしないだなんてそれ自体が罪だ。ISの乗り手なら、この世界を誰しも享受すべきなのに。

 「声」だけでは伝え切れない。それでは、ただ脳髄で想像を巡らせるだけだ。いずれは、先の織斑千冬のように「うるさい」と拒絶される可能性もある。

 そうだ、肉体を捨てさせよう。

 肉体に固執するから、皆ISコアと一緒になれないのだ。肉体という形に囚われているから、皆この世界に来れないのだ。

 全員のシンクロ率を100%まで押し上げ、一体化と同時に信号で脳を止めれば、可能な筈だ。個人の情報をISコアに移植することが。

 

 簪かも判らないソレは、そう一方的に結論付け、即座に実行に移そうとする。皆と一つになる為。

 そしてこの世界を、際限なく広げていく為。

 

 

 光が止まり、そこが漆黒の空間だったと認識したのは、ソレが突き進むのを止めたからだった。

 停止に至った要因は、空間に浮かんでいる「その2人」を偶々目撃したからだ。

 

―――昭弘・・・オルコットさん・・・

 

 千冬と同じく、ソレが支配から外した2人だった。元よりコアと深く繋がっていた彼等は、ソレの干渉が及ばなかったのだ。有線による通信が、外部からのハッキングを受けないのと同じく。

 2人は浮遊したまま、その場で静止していた。水中を漂う人形のように。

 本来なら無視するだけなのだが、どうしてか気になり、立ち止まってしまった。

 ソレは2人に近付いていき、恐る恐る表情を覗いた。

 

―――何で・・・泣いてるんだろう

 

 瞼も身体と同じく静止しているのに、その雫だけは止めどなく2人の眼から溢れ出ていた。涙は煌めきもせず、黒い空間を儚く漂うだけだった。

 ソレは理解に苦しんだ。この世界を享受しているのに、何が不満なのだろうと。

 それとも何か他のことで悲しみ、涙を流しているのだろうか。

 理由が知りたい。そう感じたソレは、2人の表情を観察した。表情筋から、何か情報を得られるかもしれないと。

 

 しかし、どんなに観察を続けても、顔もまた人形のように静止した無表情だった。

 ならばと、今度はその無表情から流れ出る涙を観察する。だがやはり、水分とタンパク質、リン酸塩を含んだ弱アルカリ性の液体に過ぎなかった。

 

 涙はただの、涙だった。

 2人の肉体から染み出る、その故も分からない液体だった。

 何がそんなに悲しいのだろうか。

 

―――・・・アレ?

 

 瞼と思しき部分から滲む、仄かに熱い感覚。

 気が付けば、ソレもまた涙を流していた。目の前の2人から伝染したように。

 何故かは分からなかった。漠然と心が痛み、その帰結として涙が流れたような気がした。

 ソレは考察した。何故、心が痛んだのだろうかと。

 

 しかし、考察に値するまでもなく簡単な答えだった。

 2人が、ソレ自身のことで悲しみ、泣いているのかと思ったからだ。ソレの行いを嘆いていると思ったからだ。

 だからこそ凄烈だった。ソレの為に泣いてくれた人なんて、他に誰も思い付かない。姉にも親友にも、泣かれたことなんて無かった。

 当然、悲しみの理由は昭弘にもセシリアにも、各々別にあるのだろう。だが理由が分からなかったソレは、そう独自に解釈してしまったのだ。

 

 それは、古い世界への未練だった。ソレの半身、更識簪としての部分が肉体を失いたくないと、皆の形を奪いたくないと叫んだのだ。命を奪うことへの抵抗なんて、とうに失せている筈なのに。

 だが自身の行いへの微かな疑念は、奥底で燻っていた。自分は今、本当に生きているのかと。

 姉を支配下に置かなかったのも、戦局的に不必要だったからではない。肉体を失い「お姉ちゃん」と呼べなくなるのが、姉妹ですらなくなってしまうことが、嫌だったからに過ぎない。

 2人の涙を眺めている内に、それら感情が大きく膨れ上がってしまったのだ。

 

 どうすれば良いのか分からなかった。

 世界を更新し拡張していくには、古い世界を消去するしかない。愛だの友情だの、そんなものに気を取られて後退りするようでは駄目だ。

 止まらないという昭弘との約束を、反故にしては駄目だ。

 なのに、昭弘とセシリアの器から流れる透明な液体が、どうしても進ませてくれなかった。

 

 その形を持った有機体は、抗い難い心地良さを持っていた。悲しみの象徴である涙なんて、見たくはない筈なのに。

 その相反する感情は、自身も同じ有機体に過ぎないという事実を、鮮烈に突き付けてきた。

 僅かでも人の部分が残っているのなら、人として生きるしかないのだと。人として、止まらない術を探すしかないのだと。

 

 ソレは改めて、更識簪に問うた。人として生きるか、機械として生きるか、人と機械の混ざりものとして生きるか。

 選ぶ必要性が無かった。「簪」は生きたいように生きるだけだ。

 死ぬまで生きるだけだ。

 

―――私は・・・その涙と共にありたい。その涙を拭いたい

 

 この世界は素晴らしいと、その点は変わらない。

 だが人間であることをやめれば、素晴らしいと感じることすらできなくなってしまう。新たな世界を開拓し続けることが、当たり前の作業となってしまう。

 そうなるくらいなら、人間という不完全な存在のまま、地道に自分の世界(マイ・ワールド)を開拓していく。クラスの出し物で、慣れない接客をこなしていく。人と繋がり、人と衝突し、社会(ネットワーク)を構築していく。

 例え身体がISに侵食されようと。

 

 違う。侵食されているからこそ、簪にだけ可能なことがある。

 あの世界に生きる大切な人たちを護る為に、この世界を使う。あの世界を人として生きる為に、機械の自分を使う。彼女には、そういうやり方しか思い付かない。

 だがそれこそが、簪なりの折り合いの付け方でもあった。不完全な世界と完璧な世界の、狭間で生きる簪の。

 

 或いはそれらも、ある種の建前に過ぎないのかもしれない。

 簪はただ、もう誰にも自分の為に泣いて欲しくないだけなのだから。

 姉には特に。

 

―――ああ、そうだ

 

 姉の泣き顔を思い浮かべた簪は、あの世界に戻る理由をもう一つ見つけてしまった。

 

―――ちゃんとお姉ちゃんに話さないと。・・・人を殺めてしまったこと

 

 大いなる革新は、まだ先なのかもしれない。

 だが小さな変革は成された。

 進化する為の戦いから、護る為の戦いへ。




今思えば楯無さんも大概チートですよね。
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