IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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追え、少女たちよ。その先にしか答えは無い。


閑話休題 追跡者たち

―――――6月22日(水)―――――

 

 部活が終わった、その帰路であった。

 

 箒は目を疑った。昭弘が、女子と2人きりで学園寮へと続く小道を歩いているのだ。

 後姿だけなので女子が誰なのか判別出来ないが、夕暮れ時でも目立つ水色の髪からして生徒会長である可能性が高い。

 

(兎に角追ってみるとしよう!)

 

 自分以外の女子と2人きりで居る事への嫉妬を胸の奥に押し入れながら、そう決断する箒であった。

 

 

 

 辿り着いた場所は学園寮のエントランスホール。

 箒は角からホールを覗き込むが、2人は隅の席まで向かうとパネルで人目を遮ってしまう。

 

(な、ナニをする気なのだ2人きりで!?……イヤ冷静になれ私よ。あの昭弘が異性相手にそんな…。イヤイヤ何故そう言い切れる。昭弘の好みなんて知りもしないで。イヤイヤイヤ!それにしたって態々こんな所で行為に及ぶのは可笑しいだろうが!!)

 

 混乱と動揺が箒の頭を掻き乱す。

 そんな思考を正すべく、深呼吸によって新鮮な空気を取り入れ汚染された思考を二酸化炭素と共に吐き出す箒。

 

 先ずこの距離ではパネル内部の音すら聞き取り辛い。忍び足で、然れど端からは自然に見える様何食わぬ感じで近付こう。

 そう判断した矢先だった。

 

「何してますの箒」

 

 突然、背後から良く透き通った声が箒の耳元を擽る。振り向けば、声と口調から予想した通りセシリアが居るではないか。

 箒は驚きに身を任せて声を上げようとするが我慢し、自身の唇に人差指を突き立ててセシリアに静粛を求める。

 

「あの仕切りの中に昭弘と生徒会長(?)が居るのだ!しかも2人っきりでだ!」

 

「?…何故アルトランドが更識生徒会長と?」

 

「分からん…。ただ私も髪の色だけで判断したから、本当に生徒会長なのかどうかも怪しいのだが」

 

「……と言うより箒。アルトランドが見ず知らずの女子と一緒に居る事、そんなに気になりますの?」

 

「えっ」

 

 地雷とは思わぬ所に隠されているものである。

 そう、箒が昭弘に気があると言う事、知っているのは鈴音と本音だけ。セシリアは知らないのだ。

 隠さねばならないだろう。これ以上変な気遣いを送る人間を増やしたくもないし、何より恥ずかしい。

 

「いや…それは…い、意外に思ってな!あの堅物そうな昭弘が」

 

 咄嗟に出た台詞は、急場凌ぎの誤魔化しになるかも怪しいものだった。

 

 セシリアは箒を見極める様に一瞬目を細めるが、馬鹿らしくなったのか瞼を軽く閉じると肩の力も緩めた。

 

「…どの道、大した事はしていないのでは?あの男も馬鹿ではありませんし。性欲を持て余していようと、こんな大ホールで猥褻な行為に及ぶリスクは是が非でも避けるかと」

 

 全く以てセシリアの言う通りで、箒もその辺りは昭弘の事を強く信用している。

 だが箒の敏感な乙女心は、万に一つの僅かな可能性にすら過敏に反応してしまう。

 

「…すまないセシリア。やはり私はどうしても気になる。ギリギリの所まで近付こうと思う」

 

「お止めになった方が宜しいかと思いましてよ。あの男も元は少年兵。近付く者の気配くらい、造作も無く感知しますわよ?」

 

「な、なら堂々と近くの席に座れば怪しまれまい。此処はエントランスホールなのだから」

 

「…第一に箒。そう言った盗み聞き自体私は感心致しませんわ。淑女としてはしたない事この上ない」

「もっと有意義な事に時間を使って下さいまし」

 

「うっ…せ、せめて1分だけでも!」

 

 制止するセシリア、振り切らんとする箒。

 展開が泥沼の膠着状態となる、その時だった。

 

「直接訊きに行けばいいじゃない」

 

 若干幼さの残る、甲高くもドスの効いた声。

 2人同時に後ろを振り返るが、声を捩じ込んだ本人はもう其処には居らず、ホールの端へとズイズイ進んで行く。

 

 後ろ姿だろうと、その豪胆さと特徴的なツインテールは鈴音以外居ない。

 だが打って変わって急過ぎる展開に置いてかれる箒とセシリアが、そう気付く時には既に仕切りがノックされていた。

 

「昭弘ォー。女子と2人で何してんの?」

 

「―――!?―――――――――!」

 

 鈴音の言葉は、音の波となってホールの外まで響く。

 対して、仕切りに遮られた昭弘の声は解読不能な音声となって箒たちの元へ届けられる。

 だが鈴音に邪魔されて憤慨している事だけは、何となく箒とセシリアにも理解出来た。

 

「ゴメンゴメン!気になっちゃって。何?勉強?」

 

「―――――。――――――――――」

 

「あーハイハイ分かったわよ。邪魔して悪かったわね」

 

 そう言って仕切りを閉じると、箒たちの元へ一直線に戻り何気ない顔で報告する鈴音。

 

「勉強してただけだったわよ?相手も生徒会長じゃなかったわ」

 

「…あ、ありがとう。…お前凄いな」

 

「ええ…ある意味敬意を表しますわ…」

 

 少し引き気味で称えてくる2人を、鈴音は気にせず続ける。

 

「あの娘、生徒会長の妹ね。日本の代表候補生で、確か名前は『簪』。ホラ、決勝トーナメントにも出てたじゃない」

 

 そう言えばそんな選手も居た様な気がすると、交友関係の狭い箒は自身の記憶を漁ってみる。

 

「しかしアルトランドと生徒会長の妹君、一体どんな接点があるのでしょうか?」

 

「そこよね。勉強だって教えて貰うのなら山田先生とか居るのに」

 

 そうだった。箒は肝心な事から目を背けていた。

 箒にとって重要なのは簪が誰でどう言う人物なのかではなく、昭弘とどう言う関係なのかであった。

 

 脂汗を滲ませながら焦り出す箒を見て、鈴音はほくそ笑みながらちょっとした意地悪を言ってみる事にした。

 

「やっぱしあの娘に気があるんじゃない?男って意外な女を好きになったりするからね~」

 

 鈴音の言葉は、箒の心へ粘膜の様に絡み付く。その影響は正常な思考をも鈍らせる。

 結果として箒が止む無く取った行動は、シンプルなものだった。

 

「何処へ行かれますの箒」

 

「…もういい、部屋に戻る。セシリアの言った通り、これ以上此処に居ても時間の無駄だ」

 

 そうするしか無かった。

 此処に居た所で、ただ苦しい時間がゆっくりと流れるだけ。ならばせめて、別の事に没頭して気持ちを変えてしまいたいのだ。

 

(…ちょっと言い過ぎた?)

 

 冗談の通じない女だと思いながらも、鈴音は自身の軽率な発言を悔いた。

 

 

 

 いきなりだが、セシリア・オルコットは『布仏本音』の事を愛している。

 この場合2人は同性なので、「性的に愛している」と言う表現は正しいとは言えないかもしれないが。

 

 だが困った事に、どうにもセシリアは本音に対して未だ素直になれないのが現状だ。故に関係性は入学時から全く進展せず、未だに「可愛らしく迫る本音、煙たがるセシリア」と言う構図がずるずると続いている。

 だからか、セシリアは本音の部屋番号も知らない。直接本人に訊くのも周囲に訊ねるのも、「本音とそんなに仲良くなりたいのか」と思われるかもしれないからだ。

 それもこれも、セシリアの身体を巡るプライドが邪魔をしているのだ。

 

 そんな歯痒さを、常日頃から脳内に充満させているセシリア。

 この日、そんなセシリアの脳内を一閃が穿つ。その切っ掛けとなったのは、鈴音の口から零れた『更識簪』の存在であった。

 

―――そう言えばISTTでも本音と簪はタッグを組んでいた

 

 そう思い出した途端、セシリアの中にある種の直感めいた物が芽生える。本音と簪は、同じ部屋なのではないかと。

 無論、余りに短絡的な関係付けである事はセシリアの馬鹿らしそうに頭を抱える様子からも見て取れる。だが、かと言って絶対に違うとも言い切れない。

 

「アレ?アンタはホールに残るの?」

 

「ええ。私も偶には此処で勉強しようかと」

 

 そんな「もしかしたら」に突き動かされる様に、セシリアは簪の後を付けるべくホールに残った。先程、箒に対して「時間を有意義に使え」と言っていた筈だが。

 

 

 

 

「…ただいま」

 

「あ~!カンちゃんお帰り~~」

 

 廊下の角からその様子を覗くセシリアの顔面は、真っ青に変色していた。

 簪が部屋の扉を開けて直ぐ、部屋の中から聞いているだけで心がほぐされる様な柔らかい声がしたのだ。

 

 扉が閉まると、セシリアは簪が帰還した部屋番号等を恐る恐る確認する。

 

―――622号室

―――布仏本音 更識簪

 

 セシリアは絶叫する様に口をガバリと開け、ヤモリの如く目玉を飛び出させる。

 

(お、落ち落ち落ち着きなさい私。たたた単に部屋が一緒なだけではありませんか)

(し、しかしながら、ISTTでもこの2人はタッグを組んでおりましたし…。単なる友人と判断するのは些か早計と言うものですわ)

 

 そんな思考により部屋内の状況がますます気になり始めたセシリアは、左耳をシックな扉にベタリと当てる。先程、箒に対して「盗み聞きは感心しない」「淑女としてはしたない」と言っていた筈だが。

 

 当然、防音対策が完璧なIS学園寮。その様な行為等まるで意味を成さない事に時を待たず気付いたセシリアは、今度は顔を赤らめながら再び立ち上がる。

 

 遂にはどうしようどうしようと、部屋前の廊下を何度も往復し出す。気が動転してしまったらしい。

 

「何やっとるんだお前は…」

 

 何故か簪を追っているセシリアを不審に思って追ってきた昭弘は、奇行を繰り返す貴族に声を掛ける。

 

「見れば分かるでしょう!学園寮6Fの廊下を歩き回っているのですわ!」

 

 突然の昭弘に仰天する余裕も無いのか、セシリアは苛立ち混じりで追い返す様に答える。

 

「その訳分からん行動の理由を訊いてんだよオレは」

 

 そう訊ね方を改めるも、セシリアは重力に引っ張られる様に肩を落とすだけだった。

 

「私、部屋に戻りますわ…」

 

「待て、何故更識を追っていた?せめてその位は話せ」

 

「さっきから喧しいですわ…忘れましたわ…」

 

 そう昭弘を突っぱねると、令嬢らしさすらかなぐり捨てたのかセシリアは猫背になりながらエレベーターホールへと向かった。

 

 

 

 

 

―――――6月23日(木)―――――

 

 簪を尾行し、鈴音が辿り着いた先は格納庫であった。

 

 彼女の記憶が確かなら、現在此処はゴーレム研究に使われている筈。

 

 でだ、何故鈴音が簪を尾行しているのかは以下の通りである。

 

(…此処確かカード必要よね?ああじゃあさっき更識は職員室でカード借りてたのか)

(めんど…。けど昭弘とあの娘の関係性を掴んでやらないと、箒が不憫だし…)

 

 詰まる所、昨日言った自身の冗談のせいで落ち込んでしまった箒を、鈴音は存外気にしているのだ。

 

 そしてその隣でセシリアもまた、奥歯を軋ませながら格納庫を睨む。

 

(おのれぃ更識簪ィィ!貴女が本音とどんな関係なのか見定めてやりましてよぉ!)

 

 何はともあれ、先ず最初に2人はSC(セキュリティカード)を借りねばならない。

 

 

 

 再び格納庫に到着した2人。

 初めての見学だからか千冬から色々と注意事項を聞かされた為、少し遅くなってしまった。

 二度手間に若干の苛立ちを覚えながら、鈴音はカードリーダーにSCを翳す。電子音が短く響き、ドアノブが回るようになり、入室する鈴音と続くセシリア。

 

「…アレ?」

 

 だが格納庫中何処を見渡しても、水色の頭は見当たらない。

 途方に暮れる2人に、ある会話が飛び込んで来る。

 

「更識さんはー?」

 

「さっきまで居たけど…また出てったんじゃない?」

 

 それは正に、鈴音とセシリアの精神を谷底まで突き落としかねない情報であった。

 

(まさかの入れ違い…) (…ですの?)

 

 何と言う徒労、何と言う無駄足。

 

 これから簪を探しに行くか。否、まだ格納庫へ入ったばかりだ。今抜けるのは、真面目に取り組んでいる研究員・整備科生に対して失礼極まりない。

 それ以前にIS学園人工島はとても広大で、聞き込みを含めると何時見つけ出せるかも判らない。

 

 やる事が全て裏目に出てしまった鈴音とセシリアは、精神的に格納庫へと閉じ込められてしまったのだ。

 

「そこの1年!金髪とツインテ!ボーッとしてないで見学に混ざりなさいよ!!」

 

「ハ、ハァイ!」

 

「い、今向かいますわ!」

 

 2年生にそう促され、2人はぎこちなく人混みへと同化していく。

 

 結局この日19:00ギリギリまで出る機会を見測れなかった2人は、機動訓練もろくに出来ず一日が終わった。

 

 

 

 

 

―――――6月24日(金)―――――

 

 学習した鈴音とセシリアは、更に作戦を変える事にした。

 それは単純に、格納庫外で簪が出て来るのを隠れて待つ

戦法である。これなら見学に時間を割かれる事もない。

 出て来ない可能性もあるが、昨日整備科生の会話を聞いた限りだと、簪は毎回見学途中で格納庫を飛び出しているみたいだ。

 

 では待ち伏せて直接問い詰めるのかと言うと、そうではない。

 所詮口では何とでも言える。人と人との関係性は、聞くよりも直接「見る」と言う視覚情報がものを言う。

 

 

 

 そんな訳で、ゼェハァと息を切らしながら尾行し辿り着いたのがアリーナDだ。

 

 だが簪は特に誰と接する事も無く、延々と機動訓練に勤しむだけだった。

 

 

 

 そして現時刻。

 既に日は海へと沈みかけ、それに追従する様に青空は赤々と染まる。

 簪は未だフィールド中を飛び回り、鈴音とセシリアはスタンド席にて疲労の蓄積された虚ろな瞳でそれをぼんやりと見ている。

 

「セシリアぁ先帰って良いわよぉ…。馬鹿らしいでしょこんな事ぉ…」

 

「私にお構い無くぅ…」

 

 2人は満身創痍であった。今の彼女たちは、1分が10分に感じる程体感時間が可笑しくなっていた。

 

 しかしここで漸く、フィールドに動きがあった。簪がピットへと戻って行くのだ。

 それを確認した2人もまた、麻痺した感覚を切り替えてスタンドからピットへと向かう。

 

 

 日没までアリーナDにて張り込んでいた甲斐があった鈴音であった。と言うのも、再び昭弘が簪へ会いに来たからだ。

 ただ、来たのが本音じゃないからかセシリアは落胆していた。

 

 そんな2人は、一部消灯されているが為に薄暗い空間とそこにある機材を上手く利用しながら隠れ、様子を伺う。

 

(思ったより仲良くないのかしら?更識あからさまに不機嫌だし)

 

(…成程。本音と更識簪、少なくとも親友同士である事は間違いないようですわね。ですがそれは裏を返せば、何時「それ以上の関係」へ昇華しても可笑しくはないと言う事)

 

(あっ!昭弘が説教してる。…更識も反抗的になった。…うーん何かよく解らないけど、姉妹関係は良くないみたいね)

(うぉっと昭弘が怒鳴った!肩も鷲掴みに!………凄く良い事言ってるけど、一体何があったのよアンタたちの間で…)

 

 昭弘と簪を観察する2人の様子はまるで実況者だが、結局何か解ったのだろうか。

 

 

 

(…昭弘と更識は、多分デキてる訳ではないわ。たださっきの感じからすると、今後発展していく可能性も捨て切れないわね。……箒には何て伝えようかなー)

 

(更識簪…!今後も厳重に警戒しておく必要はありそうですわね。本音は正に母性の塊(主観)。ああ言った子供っぽい御相手になら、いつ何時惹かれても可笑しくは御座いませんわ)

 

 互いにそんな事を頭の中で纏めながら、帰路に就く鈴音とセシリア。

 

 そして、今更ながら互いにふと思った。

 

(そう言や結局セシリアって何故更識を追っていたのかしら?)

 

(そう言えば鈴音は何故更識簪を追跡していたのでしょうか?)

 

 簪の事に集中し過ぎて、どうやら訊ねるのを後回しにしていたようだ。

 

((まぁ私的な関心でも有るんでしょう))

 

 適当にそう片付ける事にした2人。今更訊ねた所で後の祭りだ。

 

 そんな事よりも残りの短い時間をどう使うか、彼女たちにとってはそちらの方が重要だ。

 この2日間、尾行にかなりの時間を費やしてしまったので、それも無理からぬ事だった。

 

「こんばんはー!お2人さん?」

 

 と艶かしい声が、後方から2人を絡め捕る。振り向いてみると、我が校の生徒会長『更識楯無』が其処には居た。

 不気味な程に笑顔な楯無に対し、2人は小さく「こんばんは」と返した。

 

「ネェネェ2人共ぉ。この2日間どうして簪ちゃんを付け回していたのかな?」

 

「「!!?」」

 

 馬鹿なと2人は思った。変に怪しまれない様、人目には細心の注意を払っていたからだ。なのに何故。

 

 いや今はそれより、それらしい理由を答えねばなるまい。

 楯無は口元こそ笑っているが、大きく見開かれた目はまるでその逆だった。理由は不明だが、酷く怒っている様だ。

 

「えと…ア、アタシたち、簪さんと仲良くなりたくて…」

 

 鈴音の答えに、セシリアは何度も首を縦に振って激しく同意する。

 が当然、シスターコンプレックスの権化である楯無がそんな理由で容易く開放してくれる筈等無かった。

 

「フーン…ねぇ、本当にそれだけ?もう一度訊くけど、本当にそれだけ?」

 

 「それだけです」と言わせない。世闇にて血溜りの様に輝く楯無の瞳と強い語気には、それ程の圧が乗っていた。

 では素直に答えるのかと問われると、それも無理だ。この陽気でお喋りな生徒会長様に話したら、何時バラされるか解ったものではない。最悪、学園生活中ずっとイジられ続けるかもしれない。

 そうなると選択肢はもう1つに絞られる。それは―――

 

ダッ!!

 

「「すみませんでしたァァァァァ!!!」」

 

 逃走であった。

 

「待てェゴルァァァ!!!訳を話さんかいィィィィ!!!!」

 

 乙女の作法なんて知った事かと全力疾走で逃げる鈴音とセシリアを、瞬時加速顔負けのロケットスタートで追い回す楯無。

 

 怪物じみた身体能力の楯無から逃げ切れる筈も無く、2人はあっさり捕まった後、何時間か定かではないがみっちりと「個人的な聴取」を受けてしまった。

 

 

 

 

 

―――――6月25日(土)―――――

 

 早朝。朝練の為に部屋から出て来た箒。

 

 と同時に、ジャージ姿の鈴音が廊下の角から飛び出す。何故か下瞼に黒紫色の隈を表出させながら。

 

 余りに奇遇過ぎて当惑する箒だが、鈴音は気にせず伝えるべき事をさっさと伝える。

 

「昭弘と更識簪、別に付き合ってる訳ではなかったわ」

「ただ、此処IS学園は女の園。いつ誰に昭弘を取られても可笑しくないんだから、アンタもそろそろ一歩踏み出した方が良いんじゃない?」

 

 それだけ言うと、鈴音は踵を返して去ろうとする。

 

「…鈴。もしかしてお前、先日私に言った事を気にして…?」

 

「勘違いしないで。偶然、昭弘と更識が喋ってるとこ見かけただけよ。今だってただジョギングに行こうと思ったら、偶々アンタに会ったってだけ」

 

 

 そうして、今度こそ鈴音は去って行った。




まるで違う思惑の三者から、追跡される簪ちゃんでした。最初は箒の傷心がメインになる筈だったのですが、気が付いたらとんでもない追跡劇となってしまいました。

次回、ゴーレムコアの義体への接続。その解決へ向けて大きく話が動きます。
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