君は小宇宙を感じたことがあるか?俺はない。   作:高任斎

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ちょっと時間稼ぎ、じゃなくて、幕間を始めます。
ぽんこつヒロインって、いいよね。(ヒロインとは言ってない)


幕間1:あいりすさん15歳。(ぽんこつ味)

「じゃあ、また明日ね」

 

 あの子がそう言ったとき、正直絶望を感じた。

 

「いやいや、アル。あなたとは違うんです。1週間は休ませてあげてください」

 

 イオニス……いえ、イオニス様。

 生意気言ってすみませんでした、一生ついていきます。

 

「ただし……瞑想は続けるように」

 

 ……先の聖戦を生き抜いただけあって、甘くはない。

 

 でも。

 

「治療と回復なら、俺がお手伝いできますけど?」

 

 そう言って微笑む、この子ほどじゃない。

 聖闘士候補とか、小宇宙に目覚めてないとか、関係ないわ。

 

 この子……悪魔じゃないの?

 

 というか、治療と回復ってなんなのよ?

 そもそも、小宇宙に目覚めてないくせにどうやって……?

 

 すっ、と。

 あの子の手が、私の身体にかざされた。

 

 え。

 なに……。

 痛みと、疲労が……。

 

「こうやるんですよ」

 

 か、顔に出てたのかしら。

 で、でも……お礼は言うべき、よね。

 

「あ、ありがとう……」

「ええ。では、また明日」

 

 にこりと。

 悪魔が絶望を差し出してくる。

 

「大丈夫ですよ。俺も、シュルツやイオニスに、そうやって鍛えられましたから……回復はしてもらえなかったけど」

 

 え、嘘……でしょ。

 イオニス様を見たら、目を逸らされた。

 

 

 

 

 

「きゃああああああっ!!」

 

 空を飛ぶ。

 

 ええ、悲鳴が出るうちは大丈夫。(白目)

 昨日、それを学んだわ。

 

「黄金聖闘士の、それも、双子座の聖闘士の重みを背負っていれば、そんな簡単に飛べないはずだけど」

 

 黄金聖闘士の重みというか誇りは持ってるけど、この子、なんか双子座の聖闘士に思い入れでもあるの?

 先の聖戦で亡くなったって聞いたけど。

 この子、まだ生まれてないわよね?

 

 

「じゃあ、次は……見えるけど、ギリギリよけられないぐらいの攻撃でぶっ飛ばすから」

 

 このっ、悪魔ぁっ!!

 

 

 

 

 海から這い上がった。

 

「……これで13回。ちょっとペース上げるか」

 

 ぎゃ、逆よね。

 ペースは落とすものだと思うの……。(震え声)

 

 

 

「……………っ!!」(声が出ない)

 

 海に沈んでいく私を、あの子が抱えて引っ張り上げる。

 

 やめて。

 私の身体に、その『手』をあてないで。

 回復させないで。

 このままで、お願い。(心の声)

 

 

「きゃあああああああっ!!」

 

 空を飛びながら。

 

 聖闘士候補としての訓練の日々を思った。

 あれは、訓練じゃなかったって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……黄金聖闘士の仕事があると言って、1週間の安息を勝ち取った。

 イオニス様、フォローありがとうございます。

 ちゃんと、言われたとおり、瞑想は続けますから。

 

 私が、素質に恵まれていい気になっていたことは、深く深く理解した。

 鍛えるとは。

 磨くとは。

 まさしく、自分自身を削るような痛みの中にあるのだと。

 

 この、わずか2日間で。

 自分の、小宇宙の高まりを感じる。

 

 こんな簡単に……。

 

 簡、単……?(遠い目)

 

 た、たったの2日間で効果が出せるということは、これまでの訓練が甘かったと言えるはず。

 

 

 

 

 

 1週間、経ってしまったのね。

 

「おはようございます、アイリスさん」

「おはようございます」

 

 きちんと挨拶。

 

 嫌っていてもいいから、挨拶だけはきちんとするようにと、念を押された。

 うん。

 最初から、嫌ってはいないわ……馬鹿にはしてたかもしれないけど。

 

 ごめんなさい、怖いんです。

 今は、嫌いとか、そういう感情を持つ余裕がないです。

 

 

「きゃあああああっ!!」

 

 あ、空を飛んでいるとき、脱力するとちょっと楽かも。

 ぶっ飛ばされてるのに、余計な力を使う必要はないわ。

 ええ、落ちるときだけでいい。

 

 そんな風に、新しい発見がある。

 

 同じように、空を飛ばされるのでも……この子の攻撃が、色々と考えられているのが分かる。

 

 死角からの攻撃。

 反応できない攻撃。

 見えない攻撃。

 意識の外からの攻撃。

 

 致命的なダメージを受けないよう、全身まんべんなく……痛めつけてくれますわ、ホントに。

 

 

 声が出なくなり、海から這い上がれなくなると、回復させられる。

 

 これも、小宇宙による治療とは違う。

 小宇宙は感じない。

 なのに、効果がある。

 

 興味が、湧く。

 小宇宙じゃない力。

 いいえ、この子そのもの。

 

 

 今日もまた、別の仕事があるからと言って、1週間の安息を勝ち取った。

 ついでに、仕事のためにと偽って、回復させてもらった。

 

 敢えてお礼は言わない。

 もちろん、理由があります。

 

 

 

 服を着替える。

 髪型を変える。

 そして。

 仮面を外す。

 

 そうね、双子座の黄金聖闘士アイリスの付き人か、聖域の女官とでもしましょうか。

 んーと。

 違いすぎると反応できないかもしれないし。

 そうね、アリス。

 アリスと名乗りましょう。

 間違って反応した時も、聞き間違いってことでごまかせるものね。

 

 

 

 

 小宇宙を鎮める……小宇宙を感じ取れないとは言うけど、念のためよ。

 聖闘士ともなれば小宇宙の質だけで、個人を特定できてしまうもの。

 今の私は、双子座の黄金聖闘士アイリスではなく、従者のアリス。

 

 えっと。

 

 回復させてもらった礼を言うのを忘れていた。

 黄金聖闘士として、礼を失するわけには行かないが、仕事に取り掛からなければいけない。

 なので、従者のアリスを向かわせた。

 

 うん、完璧。

 そして、ちょっとした食べ物と、飲み物を手土産に。

 

 食事の世話をするって名目で、色々と観察させてもらうわ。

 

 

 

「聖闘士候補生のアル様でしょうか。私、双子座の黄金聖闘士アイリス様の従者をしているアリスと申します……アイリス様からの伝言と、お礼の品をお持ちしました」

 

 え、えっと……どうしたのかしら?

 そんなにまじまじと見つめられると、ちょっと恥ずかしいのだけれど。

 顔を見られても、今の私はアリスだから問題なし。

 

「……マジかよ、マジでいるじゃん双子の姉妹枠……やっぱ、双子は命までそっくりになるのか……これ、仲悪かったりしたら、やべーじゃん……黄金聖闘士とその従者とか、厄ネタとしか思えないんですけど……まてよ、どっちか片方しか双子ってことを知らないパターンか……」

 

 双子って……双子座の聖衣のこと?

 ……よくわからない独り言ですわね。

 

 聖闘士と聖衣は、深いつながりを持つ……ということかしら。

 

 

「……あ、すみません。ぼうっとしてました。その、ご丁寧にどうも。とりあえず、中に入ってください」

 

 

 食事の世話をするはずが、何故か一緒に食事をすることになった。

 しかも、あの子が作った料理。

 

 ……どうしよう、美味しい。

 味付けが違う?

 調理法?

 今まで訓練ばっかりで、食事にはそれほどこだわってこなかったから……。

 

「お口に合いますか?」

「あいます、すごくあいます!普段の食事よりっ……」

 

 慌てて、口を閉じた。

 恥ずかしい……。

 

 呆れた顔、されてる……。

 

「……その、従者の食事は、黄金聖闘士とは別だったりするのですか?」

「え、あ、そ、そうです……わ、アイリス様は、用意されたものを召し上がりますから」

「あ、というと……アイリスさんは、1人で食事を?」

「ええ、まあ……」

 

 な、何かしら……この、探り合うような会話は。

 この子も、私のことが……気になってるとか?

 

「……双子の姉妹なのに、この格差ぁ……厄ネタだろ。やべえよ……心の闇のカードが、場に伏せられまくりだろ、これ……」

 

 ひ、独り言の多い子ですわね。

 

 心の闇……とか。

 この子には、私には見えない何かが見えているということでしょうか。

 

 気が付くと、じっと見られていた。

 

「あ、あの……なにか?」

「いえ……その、アイリスさんも、その……アリスさんと同い年というか、同じぐらいの年齢だと思うんですが、なにか、思うこととかありますか?」

 

 探られてる?

 そ、そういえば……この子から私は、どう思われているのかしら?

 あれだけ生意気な態度を……。

 

 訓練を思い出す。

 思うところもあるけど、私のことを考えて訓練してくれていることだけはわかるもの。

 

 感謝……すべきよね。

 

「俺から言うことじゃないかもしれませんが」

「は、はいっ!?」

「アイリスさんが……その、黄金聖闘士であるまえに、1人の人間というか、女の子であるってことを忘れないでいてあげてください」

「……」

「まだ子供なのに、聖闘士の最高峰の黄金聖闘士になって、その重圧はもちろんだけど、周囲も彼女を、黄金聖闘士としてしか見ないと思うんで……その、近くに1人だけでも、女の子であることをわかってあげる存在がいたらいいなあと……思ったりするわけで」

 

 黄金聖闘士である前に、1人の……人間。

 

 私は、私たちは、アテナのもとに……あぁ。

 

「わ、わかります。そのとおりだと思います……聖闘士である前に、ひとりの人間……まさしく」

 

 その上で、聖闘士としての誇りを。

 双子座の黄金聖闘士としての重みを。

 

「黄金聖闘士は、自由に出歩くことも少ないから、わりと孤高の存在になりがちだと思うんで……その、アリスさんも、節度は守りつつ、家族のように接するのも悪くないと思いますよ」

 

 暖かさを感じる。

 小宇宙ではなく、人としての暖かさ。

 

 この子は。

 この人は。

 誰よりも人なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、アルさん」

「おはようございます、アイリスさん」

 

 

 今日も、私は空を飛ぶ。

 

 痛いし、辛いし、苦しいけど。

 

 

 強く、なります。

 きっと。

 

 




黄金聖闘士だけに、光の速さで成長してくれるはず。

主人公のひとりごとがやたらピンポイントなのは、文章の形式上、仕方ないと諦めてください。(懇願)
主人公が、普段このレベルで独り言をたれながしているわけではありません。

あと、この世界(時代)に『悪魔』という概念かあるかどうかわかりませんが、ノリで流してください。
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