高校に入ったのでやっぱり青春を楽しみたいらしい。
部活の描写がほとんどなかったのでみんなどんな感じで活動してたんだろうなーってずっと気になってました。
とある平日。前の授業が早く終わったため暇な時間を過ごしていると、話し声が聞こえてくる。
「…それで先輩が面白くってさー、スマッシュ打とうとして照明で羽見失った上にズッコケたの!」
「あんたバド部だっけ、いいよねー楽しそうでさー。ウチは先輩みんな厳しくって」
「弓道部はねー。厳しい分強いって感じあるよねー」
部活か、そういや学校で部活ってやったことないな。もしかして俺は青春を損しているんじゃないか?うーむ…
「部活してえなあ…」
何気なくそう呟いた瞬間にクラス中の視線を一身に受ける。なんだお前ら獲物を見つけた獣のような眼をして。
「お、織斑君部活やるの!?私文芸部なんだけどどうかな!?」
「私フットサルやってるんだけどよかったら入らない!?というか入って!!」
「いやここは七月のサマーデビルと呼ばれたこの私を擁するバレー部に!!」
「織斑君ここは演劇部でしょ!もう織斑君が主役の舞台の脚本はできあがってるよ!!しかも3つ!!!」
なんかおかしいのなかったか?とか思っていると箒たちもワラワラと近づいてくる。
「い、一夏!やはりここは剣道部に入り特訓の機会を増やすべきだ!うむ!」
「いいえ、一夏さんのようなお方は我が英国が誇る紳士のスポーツ、テニスこそがふさわしいのですわ!」
「一夏は料理上手だし、料理部に入って僕に教えてほしいかなぁ…なんて…」
「一夏。夫婦たるもの部活も同じものに入るべきだろう。既に入部届は用意してある」
「ま、まてまて、一度にそんないっぱい言われてもわからないって。第一、生徒会があるから正式には入れないぞ」
そうなのである。楯無さんにいつもこき使われているおかげで毎日暇をせずにすんでいる。ありがてえこった。
「でもでもー、おりむーはお仕事頑張ってるからー、ちょっとやりたい部活にお邪魔するくらいならいいと思うよー」
「のほほんさんの気持ちはありがたいけど、楯無さんがいいって言うかはわからないし」
「大丈夫だよー。会長がたまには一夏君に息抜きさせてあげたいって言ってた、ってお姉ちゃんが言ってたからー」
「あの人そんなこと言ってたのか。ならまあちょっとなら大丈夫かな」
俺がそう言うとみんなが集まり話し合いを始めた。おお、おすすめの部活をまとめてくれているのだろうか。
「それでは第一回、織斑一夏に部活動紹介する権利争奪!1年1組大じゃんけん大会を開催しまーす!!」
「「「「「「イエエエエエエエイ!!!!!」」」」」」
全然違った。そして盛り上がり方がアイドルのコンサート並みで俺は若干引いている。
「勝ち数の上位4名だけが織斑君に部活を紹介することができるぞ!さあお前ら近くの奴とじゃんけんをしろ!」
「じゃんけんポン!」「ポン!」「あいこでしょ!」「しょ!」
結局俺はしばらくの間、目の前で繰り広げられる死闘を眺めることになった。
――――――
「えー、厳正なる勝負の結果、篠ノ之さん、オルコットさん、デュノアさん、ボーデビッヒさんが勝者となりました!みんなありがとー!」
「フン、当然の結果だな」
「神に感謝しますわ」
「3人に負けた…危なかった…」
「順当な順位だな」
素敵なコメントどうもありがとう。そして司会してた人、ラウラの名前言えてないぞ。いや苗字か。
「4人には今日の放課後、織斑君に部活を紹介する権利が与えられまーす!」
「結局専用機持ちかー」
「いっつもそうやってやれると思わないでよ!」
「はいはいみんな解散してー。文句がある人は受け付けられないから壁でも殴っといてー」
「ちょっと待って?ということは織斑君は放課後4人に貸し出し?」
「しまった、部活に入る前から既に戦いは始まっていたというのか…!」
その言葉を聞いて火花を散らしあう4人。お前らは一体何と戦っているんだ。
「では一夏、放課後は剣道場に行くぞ!」
「何をおっしゃるんですか箒さん、まずはテニスコートからでしょう?」
「そこは僕も譲れないなあ。先に家庭科室に行くべきだよ」
「当然茶室からだろう。顧問である教官への挨拶もしなくてはならないからな」
「「「「一夏!!」」」」
「ええ、俺!?」
「お前はどこから行きたいんだ!」
「一夏さん、はっきりしてください!」
「「一夏!」」
「えーっと…悪い!腹痛いからトイレ!みんなで考えといてくれ!」
三十六計逃げるに如かず。後ろから聞こえる叫び声には耳を貸さず、俺はトイレへと走った。普通に漏れそう。
――――――
放課後。結局午後の授業中ずっと俺に鋭い視線を向け続けていた4人に取り囲まれる。
「えっとね一夏、どこからまわるかでじゃんけんをしたんだけど…」
「不本意ではあるが勝った順に箒、セシリア、私、シャルロットだ」
「さあ一夏、剣道場に行くぞ!」
「箒さん、なんでそんなにじゃんけん強いんですの…」
「勝負運が強いのも武士の嗜みだ」
運なんてどうやって嗜んでんだよ。なんて思っているとすぐに剣道場が見えてくる。
「あ、織斑君だ!」
「久しぶりだね織斑くん。覚えてるかわからないけど私が部長だよ?」
「一夏さん、お知り合いですか?」
「ああ、学園祭の時に箒と一回来たからな」
というかテニス部以外は学園祭の時にまわったよな。アニメ版は知らん。
「剣道部の体験だね?よければ私が相手しようか?」
「でも俺、全然強くないですよ」
「毎日篠ノ之くんと特訓してるのは知ってるよ?うちの部員の大多数より強いんじゃないかな?」
「僕も一夏が剣道するところ見てみたいなあ」
「うーん、じゃあお願いできますか?」
「お安い御用だね?」
防具と竹刀を貸してもらった俺は臨戦態勢だ。やってやるやってやるやーってやるぜ。
「では始め!」
――――――
「織斑くんも修行が足りないね?」
「いやいやおかしいですって部長、箒といい勝負なんじゃないですか?」
「私も部長には負けることがある。それだけ強いということだ」
無意識の内に少し舐めてかかっていたのかもしれない。それはそれは手痛くやられてしまった。
「ですが一夏さんもいいところまでいっていましたわ…たぶん」
「私も嫁がここまでやるとは思っていなかったからな。誇っていい腕だぞ」
「えっと…僕も頑張ってる男の子は好きだよ?」
「そう言ってくれるのはありがたいけど、俺が弱いのは事実だし。もっと精進するよ」
「うむ、その心意気だ一夏」
こうして剣道部の体験はひとまず終わった。…んだけどいつの間にか集まっていたギャラリーがこっちを見ながら話している。
「あーあ、負けちゃったよ」
「前も篠ノ之さんに負けてたよね」
「織斑くんってさあ」
「やっぱり弱い?」
…やりました…やったんですよ!必死に!って言わなきゃいけない気がする。
「一夏、あんなのに耳を貸す必要はないからな」
「そうだね?筋はいいとから練習してればもっと強くなると思うよ?」
2人の優しさが心にしみる。部活云々抜きにしても、特訓を増やすか。
「さて一夏さん、次は我がテニス部に参りましょう!」
「お前のではないだろうお前のでは」
「あらラウラさん、私がテニス部最強な以上、私の部活と言っても過言ではありませんわよ?」
「ほう、言うではないか。ならその腕前を見せてもらおうか」
「お安い御用ですわ!さあ一夏さん、早く参いりましょう!」
セシリアに腕を引っ張られながら、俺はテニスコートへと移動した。まわりの視線がすごく痛いです。