SOUL REGALIA   作:秋水

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※18/09/16現在、仮公開中。
大幅な変更、改訂を行う可能性があります。


第二節 傲慢なる者たち

 

「と、いう訳で! 残念ながらイシュタルが生贄の儀式を行おうとしたのは間違いない! そして! 闇派閥(イヴィルス)と繋がりを持っていた事もだ!」

 神蓋(バベル)の心臓部――『祈祷の間』に、神ガネーシャの声が響く。

「今も【象神の杖(アンクーシャ)】達は戦闘中か?」

「うむ。襲撃者は闇派閥(イヴィルス)一派の【タナトス・ファミリア】のようだな!」

 現場にいる【象神の杖(アンクーシャ)】達は見事に数名の襲撃者を捕縛。自決装備を解除し『開錠薬(ステイタス・シーフ)』を用いて確認。その後、すぐに伝令を送ってきたという。

「それ以外に、【セメクト・ファミリア】も関わってきている!」

「そちらは判断に困るところだな」

 思わず呟いていた。

「うむ。あの派閥は元より暗殺者の育成、派遣を生業としている。報酬さえ払うなら、雇い主を選びはしないだろう」

 つまり、闇派閥(イヴィルス)かどうか以前の問題だ。

 いわゆる『暗黒期』以前から存在しており、今も商会や貴族と言った厄介な連中を顧客にオラリオで活動している。

「そういう意味では見事なプロ魂だな!」

「あまり褒められたものではないがな」

 ある意味公平な神ガネーシャの言葉に、ウラノスが小さく肩をすくめた。

「【タナトス・ファミリア】。主神は『死の神』タナトスか」

 顎を――顎骨を撫でながら呟く。

「正直、あれが天界から降りてくるとは思わなかった」

「うむ。タナトスは仕事中毒(ワークホリック)だったからな!」

 と、ウラノスと神ガネーシャが口々に言った。

「そうなのですか?」

「例えて言えば、ウラノスが祈祷を放り出して歓楽街に入り浸り始めたようなものだな!!」

 それは確かに色々な意味で驚天動地だが。

「……いや、あれは少々生真面目過ぎたのだろう」

 とんでもない例え話にされたウラノスが、軽く目を伏せてから呟く。

「我らが下界に降りてきて千年。『神の恩恵(ファルナ)』を得た冒険者の登場や、彼らが持ち帰る迷宮資源から生み出される数々の道具や薬品、そして魔石製品が広がり、世界は安寧を得た」

 無論、まだ世界の一部に過ぎないが――と、小さく付け足してからウラノスは続ける。

「その結果、天寿を全うできる子供(にんげん)達が増えた。少なくとも、昔より長命となったと言ってよい」

 それは『神の恩恵(ファルナ)』を得た事で、老化が抑制されたという程度の意味ではない。

 例えば【デメテル・ファミリア】や【ニョルズ・ファミリア】と言った派閥によって、安定した食糧供給が成り立った。

 他に【ディアンケヒト・ファミリア】をはじめとする医療系派閥が生み出す数々の医薬品は死病だったもののいくつかを克服している。

 あるいは、軍事大国であるラキア王国など国家系派閥の台頭もまた、モンスターによる被害激減に貢献しているはずだ。

 ……まぁ、こちらについては国家間戦争という厄災の種にもなっているが。

 私が生まれた頃、死は世界にありふれていたが……今はその数をいくらか減らしていると言っていい。それこそが文明の発展であり、あるいは神の恩恵でもある。

 もちろん、悲劇が消えたわけではない。消えた訳ではないが、僅かとはいえ確実に減っている。

 それは、とても好ましい事だ。そのはずである。

 あの神嫌いなクオンですら、それを認めている。

「日々天に還る魂が減り、張り合いがなくなりでもしたか……」

「まさか、死者を増やすために下界に降りてきたとでも?」

「分からん。だが、そうだったとしても、私は驚かない」

 これが人と神の価値観の違いという事か。

 この時ばかりは、クオンの神嫌いに全面的に賛同できる気がした。

「件の少女は?」

 しばしの沈黙の後、ウラノスが神ガネーシャに問いかける。

「うむ。それに関しては問題ない。信頼できる相手に預けてあるからな! 俺達【ガネーシャ・ファミリア】の団員ではないから、そう簡単にはたどり着けないはずだ!!」

 やはり、クオンは『生贄の少女』を神ガネーシャに託していたらしい。

 まぁ、他の選択肢など神ヘファイストスか、神ミアハくらいなものだろう。 

 ……それでも私達より選択肢が多いと言えるが。

「ふむ……。まぁ、お前が信頼する相手なら問題あるまい」

 余計な事は訊かず、ウラノスは呟いた。

 実際、生贄の少女について私やウラノスが知っている事は少ない。

 分かっているのは、狐人(ルナール)の少女である事と――

「しかし、一時的かつ一人限定とは言え、『神の恩恵(ファルナ)』の力を一段階昇華させる魔法とは……。これも人の可能性か」

 目下最大の問題でもある超希少魔法の使い手という事だけだ。 

 いつになくしみじみとした声で言う神ガネーシャを見ながら、小さくため息を吐いた。

「確かに見事なものだが……」

 ウラノスもまた小さくため息を吐く。

 まぁ、気持ちは分かる。今の状況では手放しには称賛しづらい。

 その超希少魔法は、扱いを間違えれば彼女自身を殺す猛毒にもなりえる。

 ……いや、彼女自身を含めたオラリオ全てに影響する。

「彼女については! 俺達が全力で守ろう!」

 陰鬱な空気を、神ガネーシャの叫びが押し返す。

「神の力をも超える人の力! それこそが必要なのだから!! 無論、そうでなくとも守るが! 俺はガネーシャだからな!!」

「……ああ。その通りだ」

 ウラノスが呻く。

「デーモンは地上にまで出現した。『アンデッド』……亡者もまた実在した。『火の時代』の脅威は確実にダンジョンに流れ着いている」

「そしてもう一つ! シャクティ達のもとに闇霊が現れたそうだ!」

「何だと?!」

 思わず声を荒げていた。

 闇霊と言えば、四年前にクオンを()()()存在だ。

「心配無用! シャクティ達は撃退した! そして、全員が無事だ!」

 それは壮挙と言っていい。

 だが……こう言っては何だが、【象神の杖(アンクーシャ)】に倒せたなら、その闇霊はクオンを殺した闇霊ではないだろう。

「どういう経緯でその闇霊は出現したのだ?」

「シャクティの報告によると、『赤い宝玉』が使われたようだ。おそらく、『ひび割れた赤い瞳のオーブ』という魔道具(マジックアイテム)が使われたのだろう!」

「それを闇派閥(イヴィルス)が所有していたと?」

「実際に使ったのは【セメクト・ファミリア】だが、おそらくそう考えていいはずだ!!」

「何という事だ……」

 殺戮を厭わない闇派閥(イヴィルス)と人の魂を求めて彷徨う闇霊。

 およそ最悪の組み合わせだった。

「……その魔道具(マジックアイテム)の場合、召喚には条件が付くはずだな」

「あ、ああ。確かにその通りだ」

 ウラノスの言葉で、どうにか冷静さを取り戻す。

 確かに、彼女もそう言っていたはずだ。

()()()()()()上まで、か……」

 いや、Lv.の差が絶対とされる冒険者にとって、それは絶望的な差である。

 しかし、おそらくこの先、その程度は乗り越えられなくてはオラリオに未来はない。

「もっとも、それもある一定の域を超えるまでは、という話だが……」

「ああ。だが、それは今のクオンではまだ超えられない壁だとも聞いている」

 色々と思う事はあるが……ここは幸運だと思っておこう。

 あいつで越えられないなら、ひとまず今の冒険者には関係のない話だ。

 二ランク上という壁は厚いが……それでも、本当に青天井よりはずっといい。

(問題は不死と言う特性。……いや、その()()()()か)

 不死だから、ではない。

 神々すら抗えなかった『世界の終わり』。神々に匹敵する脅威が隣り合わせにいた『時代』を生き抜いてきた彼らの強靭な精神力は、一千年の間に蓄積された知識を元に適正階層が算出され、ある程度とはいえ()()()を保障された中で戦う現代の冒険者の比ではない。

(もちろん、『深層』領域を目指す【ロキ・ファミリア】クラスになれば、話はまた変わってくるが……)

 とはいえ、それは決して両者の優劣を問うものではない。

 この時代の方が豊かであり、穏やかで、平和で、何より人が人として生きている――と、他ならぬクオンがそう言っている。

 殺し合いで俺達に劣るからと言って、一体何を恥じる必要がある?――とも。

 それは事実だろう。話を聞く限りでも、彼らを()()するなど筋違いだ。

 誰もが納得する道理だった。

 

(……信じてもらえれば、な)

 

 そう。仮に公表したところで『火の時代』など信じてもらえるはずもない。

 それどころか――

(嫉妬は青い炎と言うが……)

 クオン(Lv.0)お前達(冒険者)よりずっと格上だ――そう取られかねない告知をしてしまえば、その嫉妬はどす黒い業火となってオラリオを包みかねない。

 それもまた仕方がない事だった。

 彼らとて命を賭して戦い抜き、築いてきた矜持がある。

 だからこそ、クオンに嫉妬する冒険者は多い。あまりに多すぎる。

 それもまた、どうしようもない現実だった。

(せめて、あいつがLv.0でなければな)

 どうせ神聖文字(ヒエログリフ)を読める人間は多くないのだ。その背中に【ステイタス】が刻まれているなら、例えLv.1のままでもLv.7だと言い張れたのだが。

 それなら、ここまでの事態にはなっていなかったかもしれない。

 ……もっとも、もはや詮無い事だが。

「『ひび割れた赤い瞳のオーブ』。奴らは一体どこからそれを得た?」

 自問するように、ウラノスが呟く。

 確かに気になる事だ。

「可能性としては、四年前にクオンを殺した闇霊か……」

「あるいは私達がまだ知らない誰か、ないし()()とも考えられる」

 それとも、その両方だろうか。

「リド達に頼んで早急に接触をとるよりあるまい」

「アン・ディールとか?」

 異端児(ゼノス)を守護する、私達とは別の勢力。その首魁であり、クオンらと同じく『火の時代』を生きた魔導士。この一件における黒幕であり――

(狂人、か)

 あるいは、その宝玉を作り出せるかもしれない存在でもある。 

「話を聞く限り、控えめに言っても一筋縄ではいかない相手のようだが……」

 何しろ、あのクオンをして狂人と言わしめる相手だ。

「仕方あるまい。不測の事態が起こるのは避けられないにしても、それを起こす要因を取り除く努力だけは惜しむ訳にいかない」

 もっとも、これは()()とも言い難いがな――と、ウラノス。

「アン・ディールの思惑は分からんが、異端児(ゼノス)との共存を求めるなら、意見を交わしておきたい。そして、できればもう少し穏便な関係の構築もな」

 確かにそれは急務だろう。

 異端児(ゼノス)だけでも深刻な爆弾となる。

「とはいえ、クオンがこの状態ではそれもままならんがな」

 だが、クオンが――いや、『火の時代』はそれ以上の代物だ。

 そして、その二つの()()は良くも悪くもこの『時代』を大きく動かすだけの威力を宿している。

 それが意図せずして――少なくとも、私達が想定していない形で炸裂した日には……。

「ウラノス! ウラノス様!!」

 と、そこで。

 ノイマンの切羽詰まった声が祈祷の間に響き渡った。

 ノイマンが様づけでウラノスを呼ぶ時は、大体ろくでもない事が起こっている。

「ガネーシャ、フェルズ」

「うむ! こそっとその辺に隠れていよう!!」

 何分、この謁見は非公式だ。

 すべてのギルドに対して中立であることを標榜しているギルドの創設神が、派閥の主神と密会していたなど知られた日にはまた面倒な事になる。

 大急ぎで神ガネーシャと共に近くの物陰に身を隠す。

 幸い、ここは決して明るくない。

 冒険者相手ならまだしも、ロイマンに気配を察知される心配はなかった。

「ウラノス様! 一大事です。冒険者達がクオンを引き渡せとギルドに詰め掛けて――!」

 この時、とっさに神ガネーシャの口を塞いだのは、我ながら冴えた判断だったと思う。

 神が言うところの『ふぁいんぷれい』というやつだろう。

 

 

 

正体不明(イレギュラー)】クオンにより神イシュタルが殺害される。

「ついにやりおったか……」

 その一報が届いた時、ガレスまでがそう呻いた。

 だが、そこに驚きはない。僕自身も、驚きは感じなかった。

 いくつか気になる事が出来ただけだ。

「ギルドの動きは?」

 それを確かめるべく、リヴェリアにギルドに向かってもらった。

 副団長とはいえ、彼女がそこに顔を出すのはそこまで珍しい事ではない。

 目立たず、ギルドにも顔が効き、この上なく口が堅い。そんな彼女以上の適任者はいなかった。

「ないな。少なくとも、表面上は」

「と言うと、水面下でなら動いている?」

「ああ。すでに【ガネーシャ・ファミリア】が動いているらしい。クオンが関わっている以上、ギルドも絡んでいるだろう。あるいは、これから絡むのかもしれないが」

 確かに、彼らもまたクオンとは深い関係を築いている。

 それにオラリオの治安維持を担う派閥でもある。この状況で動かないはずはない。

 はずはないが――

「もうかい?」

 少しばかり動きが早すぎる。

 まだ昼前。夜が明けてから――少なくとも、僕らの団員が情報を持ち帰ってから数時間しか経っていない。いくらなんでも早すぎる。

「ああ。さらに言えば、もう何事か起こっているようだ。歓楽街から烽火が上がっている。方角と距離からして、おそらく【イシュタル・ファミリア】の本拠地(ホーム)辺りだろう」

 先行隊に何かあったと見るべきだ――と、リヴェリア。

 その見解に異論はない。何しろ、【イシュタル・ファミリア】には敵が多いのだ。

 そして、オラリオ有数の大派閥である。経済力という視点のみで見れば、あるいは僕らより上かも知れない。何しろ、三代欲求の一つを司る『街』の支配者だったのだから。

 その主神が死んだ。つまりその眷属達の【ステイタス】が封じられている今、襲撃を受ける理由には事欠かない。

 ……まぁ、確かにそちらも少しばかり早すぎるが。

(夜明け前か)

 団長の【象神の杖(アンクーシャ)】か主神であるガネーシャが――あるいは、歓楽街を襲っている何者かも含めて――その情報を知ったのはその頃のはずである。

 人員と装備を揃えて派遣する。言葉にすれば単純だが、人数が増えれば増えるだけ必要な時間が増える。

 と、言っても――

(まぁ、地上だからね。食糧や水の手配はいらないか)

 あの派閥なら、各種兵装を持ち出す準備は常に整っているはず。

 ならば、僕が考えるよりずっと早く出撃できるのかもしれない。

 だが、その場合――

(襲撃者の方が早く知っていた可能性もあるな)

 僕らよりも遥かに緊急出動に慣れているであろう【ガネーシャ・ファミリア】ですら少数の先行隊を派遣できる程度の時間しかなかったなら――だから、烽火を上げて増援を求めていると仮定するなら――それはもう、襲撃者の方が先に動き始めていたとしか考えられない。

 それとも、単純にクオンへの対応として援軍を手配していたものが間に合わず、たまたま【ガネーシャ・ファミリア】と鉢合わせたのか。

 だが、それなら素直に撤退すればいいだけだ。雇い主――あるいは同盟相手――である【イシュタル・ファミリア】はもう存在しない。義理立てするとして、それでも【ガネーシャ・ファミリア】を襲撃する理由はない。……いや、情報が錯乱していて、敵を誤認したという可能性もあるが。

(ンー…。気にはなるけど……)

 下手に近づき、何かの弾みで襲撃者の一味だと思われた日には目も当てられない。

 今のところ僕らがこの抗争に首を突っ込む大義名分はないし、何か都合のいい口実もすぐには思いつかなかった。

(そもそも、何故【イシュタル・ファミリア】の本拠地(ホーム)を優先しているんだ?)

 いや、確かに先の理由から早急な保護が必要となる派閥ではある。

 一方で、クオンを捕縛なり討伐なりするなら、それこそ『深層』に挑むような派閥を挙げての念入りな準備が必要となるだろう。

 ならば、先に【イシュタル・ファミリア】の団員達の安全確保を優先するのは不自然ではない。

(いや、不自然だな)

 あっさりと否定した。

 クオンを追わない理由はひとまず考えないとして、それでもとにかく動きが速すぎる。

【ガネーシャ・ファミリア】も。あるいは襲撃者達も。

「クオンのイシュタル殺しは、ギルドの意向……というのは流石に考えすぎか」

「そうか? 五年前の事を思えば、まるでありえん話だとは思えんが……」

 どうやら、声に出していたらしい。

 ガレスの言葉で、それに気づいた。

「いや、流石にないやろ」

 僕が何か言う前に、ロキが応じる。

「ギルド言うても、あれを動かせるんはウラノスだけや。がっつり賠償金とられたから言うて、ウラノスがイシュタルを殺させるとは思えん」

 まぁ、ロイマンやったらやりかねんけどな――と、ロキはあながち冗談とも言い難い事を付け足す。

「僕もそう思う。むしろこれは、リヴェリアが言っていた――」

「アン・ディール、か」

 リヴェリアが小さく呟く。

 彼女とアイズが遭遇した正体不明の魔導士。おそらくはクオンの過去を知る何者か。

 そして、【フレイヤ・ファミリア】の連続襲撃事件の黒幕であり、モンスターを生み出す邪法を知る狂人でもある。

「おそらくね。これが、その『試練』とやらなんだろう」

 単身で【イシュタル・ファミリア】程の大派閥を攻め落とすなど、例え【猛者(おうじゃ)】であっても容易い事ではない。

「あ奴が攻め込んだなら、確かに急いで本拠地(ホーム)を守らねばならんな。せっかく生き残った者達も全滅しかねん」

「確かになー。敵やと認めたなら、女子供でも容赦せんからなぁ、あれは」

 四年前、幼気(いたいけ)なロリアイズたんをフルボッコにした鬼畜やで――と、ロキ。

 ……まぁ、あの一件はアイズが有無を言わさず斬りかかったのが事の始まりなので、一概にクオンだけを責められはしないが。

「ああ、そうか……」

 ふと思い至った。

「四年前、僕らとクオンを敵対させたのも、そのアン・ディールなのかもね」

「あー…。そらありそうやな。どう考えても、そうなるように誰かに誘導されとったとしか思えんし」

「儂らも【イシュタル・ファミリア】と同じ役回りにされかけとったと?」

「リヴェリアがいなければ、間違いなくね」

 眉間を指先で掻きながら呻く。

 いくら何でも、あんなに()()()()誤解が重なるとは思えない。

(まぁ、きっかけは僕らが作ったんだけど)

 アイズ一人だったなら、毎日絡んでくる物騒な子どもというだけの話だった。

 彼女は所属を明らかにしていなかったそうだし、クオンも気にしていなかっただろう。

 それが【ロキ・ファミリア】全体へと波及したのは……まぁ、ロキがいつもの調子で絡んだからだ。しかも、ご丁寧にベートを連れて。

 いや、ロキ達にももちろん言い分はある。ロキは勿論、ベートも――本人は認めないかもしれないけど――アイズの事を気にかけていた。

(まぁ、()()()()()妹のように、だろうけどね)

 と、野暮な指摘は置いておくとして。

 そんなアイズが毎日ボロボロになって帰ってくれば、それは気にもなるだろう。

 流石にそれを咎める言葉は持ち合わせていなかった。

 とはいえ、ロキ達の接触と同時に急激に状況が悪化し、気づけば全面戦争寸前に陥っていた。

(アン・ディールに()()()()のは僕らの方だろうね)

 クオンへの敵意は、瞬く間に派閥内に蔓延した。

 まるで性質の悪い熱病のように、だ。

「ホンマ、リヴェリア様様やなー」

 ……そして、それは今もまだ燻っていると言えよう。

 クオンは――『灰色の悪夢(アッシュ・オブ・シンダー)』は僕ら(大派閥)の矜持を無造作に踏み躙っていったのだから。

「ああ、感謝してくれ」

 ロキの軽口に、リヴェリアは珍しく冗談――ではないのかもしれないが――を返す。

 その姿を見ながら、胸中で嘆息した。

「しかし、これからどうする? 事が神殺しとなれば、いよいよギルドも動くかもしれんぞ」

 そうだ。今も燻るその反感は大義名分(火種)さえあれば一気に爆発するだろう。

 そうなれば止められない。

 いや、あの時の熱狂を思えば、()()()()()()()()()()()()と言うところから不安が募る。

「どうかな。ロイマンにクオン討伐を決断するだけの度胸があるとは思えないけど……」

 どちらかと言えば神ウラノスの采配次第だろう。

 かの老神にとって、この状況は想定通りなのかどうなのか。

(この一件で推し量れるかな?)

 ギルド――いや、神ウラノスの思惑を。

「人間が直接手を下すのは確かに異例だが、それ以外は派閥抗争の範疇のようだ。精々罰則(ペナルティ)があるかどうかではないか?」

 胸中で呟いているとリヴェリアが言った。

 確かに。例え下界で神が死んだとして、それは天界に還るだけの話だ。

 下界における神と人の死生観の違いを考慮すれば、神ウラノスがクオンの弁護を優先する事もあり得るかもしれない。

 そう。これがリヴェリアの言う通り単なる派閥抗争の範疇なら。

「そらどうやろな」

「ああ。これはもっと深刻な話だ」

 いつになく険しい顔で唸るロキに同意する。

「リヴェリア、ガレス。君達は、()()()()()()のかい?」

「何にじゃ?」

「もちろん、昨夜神イシュタルが殺された事にさ」

 もし、どちらかが気づいているなら、あるいは僕やロキの考えすぎなのかもしれないが――

「……そうか。確かにおかしいな」

 険しい顔で、リヴェリアが呟く。

「神が死んだなら、夜のうちに騒ぎになっていなくてはおかしい」

「そう。その通りだ」

 下界で神が()()と天界への送還が始まる。

 それは光の大柱と強大な力の波動を伴う荘厳な光景を生み出すものでもある。

 暗黒期に暴虐の限りを尽くした闇派閥(イヴィルス)の主神……あの邪神達のものであっても、思わず見とれてしまうほど幻想的な光景。それを、オラリオの多くの住人が知っているはずだ。

 特に暗黒期を経験している者達なら、一度も目撃した事がない人物を探す方が困難だろう。

 無論、ガレスやリヴェリアが知らないはずがない。

 暗黒期に幕を引く決定的な一打となった邪神の一斉送還は、彼らの助力なしにはとても成し遂げられなかったのだから。 

 だから、もしいつも通りの『神の死』なら、誰も気づかないはずがない。

「ならば、まだ神イシュタルは健在なのではないか?」

 ガレスが顎鬚を撫でた。

 確かに、本来ならそう考える状況である。

 情報が錯綜しているだけ。それが、一番納得のいく話だ。

「いや、そらないな」

 だが、それをロキが否定した。

「うちもちょいと調べてみた。具体的には昨日の夜、歓楽街におった男神連中から話を聞いた」

 重苦しい声で、ロキが続ける。

「連中、揃ってこう言いよったで。『神の力(アルカナム)』の発動を感じたってな」

 それは神々が下界で禁忌している行為だ。

 かつて暴虐の限りを尽くした闇派閥(イヴィルス)の邪神ですら、それには逆らわなかった。

 いや、逆らいようがなかったのか。

 許可なくそれを使用すれば、天界へと強制送還されるのだから。

 さらに言えば、許可されるのは『神の鏡』のみだ。

 ……いや、もちろん【ステイタス】更新も『神の力(アルカナム)』の一つだが。

「ロキの話が確かなら、神イシュタルはいずれにしても天界へと送還されていなくてはおかしい」

 しかし、例え強制送還であっても展開される光景は同じだ。

「となると、考えられるんは二つ。一つは、うちが担がれた」

「君の事だ。当然複数神(ふくすうにん)から聞いているだろう?」

「そらまぁな。これでもし担がれとるんやったら、それこそイシュタル主導でドッキリを仕掛けられたんやろ」

「それだったら、彼女達も誘って祝杯でもあげようか?」

「そうやな。イシュタルんトコなら美人も多いやろし」

 互いにどうにも切れの悪い軽口を叩き合ってから、

「もう一つはイシュタルは()()()()()()()()()いう場合やな」

 ロキは結論を口にした。

「……念のため確認するが」

 しばしの沈黙の後、リヴェリアが呻いた。

「それは、ガレスの言ったように神イシュタルがまだ健在だという意味ではないのか?」

「ちゃうな。おそらく、イシュタルは()()()()()()()()()んやろ」

 あの荘厳な光景は神が天界へと還るからこそ生じる。

 逆に言えば、完全に()()()なら生じようがない。

「……そんな事が可能なのか?」

 ガレスの疑問ももっともだ。

 人類(にんげん)超越存在(かみ)を完全に殺すなどあり得ない。あり得てはいけない。

「デーモン」

 だが、ロキは一言でそれに応じた。

「フィリア祭でリヴェリア達が戦ったあの怪物はうちらの魂を喰らう存在らしい。まぁ、間違いないやろ。あんなにはっきりと死を感じたのは久しぶりや。あのデーモンと同じく、うちらの魂を喰らう事ができるなら……イシュタルも殺せるやろな。いくらうちらかて魂を喰われたら死ぬしかない」

「……クオンも、デーモンだと?」

 もっとも、人間ではないと言われた方が遥かに納得できるが。

「まぁ、デーモンいうのがどういう存在か分からんし、自分ら(人間)の姿をした奴がおっても驚くほどの事やないのかもな」

 ロキもまた、それを否定はしなかった。

「ただ、その場合分からんのは、何でウラノスがあれの肩を持つのか、言う事やな。うちらを完全に殺せるような存在なんて下界におったらあかん。黒竜と同じかそれ以上の厄災や」

 そんなもの、オラリオの全てを費やしてでも滅ぼさなあかん――と、ロキ。

「まぁ、現実問題、まだオラリオにそれだけの力がないから何とか飼い慣らしてるいう可能性もあるけどな。ほれ、他にもあれと同じようなのがおるんやろ?」

「……そのようだね」

 およそ一週間ほど前、ダンジョンを騒がせた二七階層におけるモンスターの()()()()

 謎の人物からその調査の冒険者依頼(クエスト)を受けたアイズと、その後ロキが派遣したベートとレフィーヤ、そして【ディオニュソス・ファミリア】団長の【白巫女(マイナデス)】。さらに、アイズの依頼人が同時に派遣した【ヘルメス・ファミリア】の精鋭からなる大規模パーティを()()した剣士。

 アイズ達が告げられた話を信じるなら、その剣士は四年前にあのクオンを倒したと――それどころか、容易い相手だったと言い放ったという。

 それだけでも最悪だが、よりにもよって例の赤髪の女調教師(テイマー)と組んでいるというのだから、悪夢と言わざるを得ない。

 事実、その剣士によって【ヘルメス・ファミリア】の精鋭パーティが半壊させられたと聞いている。

 だが……彼女達には悪いが、全滅でなかったのは望外の幸運だろう。

 アイズやベートですら死んでいておかしくない状況なのだから。

「クオンを含めて()()、か……。もしロキの予想通りなら、人型のデーモンは珍しくなさそうだ」

 そう。四人だ。それが、アイズ達が生還できた理由である。

 先に挙げたメンバー以外に、もう一人パーティに加わってた冒険者がいる。

 レフィーヤがリヴェラの街で雇った無所属(フリー)の冒険者。

 その人物はクオンを知っており、アイズ達を追い詰めた剣士とも互角に渡り合ったという。

 彼無くしてアイズ達の生還はあり得なかった。

「他にモンスターと人間の混合種(ハイブリッド)もいる」

 六年前に死んだはずの闇派閥(イヴィルス)幹部。【白髪鬼(ヴェンデッタ)】ことオリヴァス・アクトは人と怪物(モンスター)混合種(ハイブリッド)として復活していたという。

 加えて、例の赤髪の女も同様の存在らしい。

怪人(クリーチャー)か……」

 リヴェリアが呟く。

「クオン達もその一人じゃと?」

「どうかな。だとしても、彼女の仲間って訳じゃなさそうだけど」

 とはいえ、彼女もまたクオンを()()()()()

 少なくとも、その二つ名らしきものを。

「その女はクオンを『亡者の王』と呼んだのだったな」

 リヴェリアが問いかけるでもなく呟く。

「……アン・ディールも、クオンを亡者と呼んだ。それに、クオン自身も『亡者の王』になるのも悪くなかったのかもな、と言っていた」

「亡者って。あれ、いっつもうちら()の事をそう呼ぶやん」

 どういうこっちゃ――と、ロキが毒づく。

「なるのも悪くなかった、というなら、実際にはなっていないんだろうね」

「おそらくな。それに、あいつは『アンデッド』の事も亡者と呼んだ」

「今一つ基準が分からんのう」

 確かに。彷徨う死体を亡者と呼ぶのは分かるが、彼自身がそう呼ばれている事と、神々をそう呼ぶ理由がよく分からない。

 まして、それら三つが亡者と一括りにされる理由も。

(それとも、それぞれ意味が違うのか?)

 その可能性はあるかも知れないが……それなら、なおさらいくら考えても無駄だろう。

 何の手がかりもない今の状況では精々予想しか立てられない。

「気になるのは、そちらではない」

 リヴェリアが肩をすくめた。

「【闇の王】。アン・ディールはあいつをそう呼んだ」

 まぁ、他にも【薪の王】や【絶望を焚べる者】などとも呼んでいたが――と、付け足してから、

「その【闇の王】とやらはかつて神々の王ですら恐れた存在だという。もしあいつが完全なる神殺しを可能とするなら――」

 その称号()もまた真実たり得るのかもしれないな――と、彼女はそう言った。

「……ロキ。何か心当たりはあるかい?」

 リヴェリアの推論は、おそらくかなりの真実を含んでいる。

 その予感があった。

 しかし、実際にそんな事があり得るのか?――と、言う点にはまだ疑問がある。

 ……いや、単純に信じたくないだけか。

「ん~…。ないなぁ。そもそもうちらの王言われてもピンとこんわ。『神の王』やなくて『神で王』なら、ラキアのアレス辺りが該当しそうやけど……」

「ラキアの()はあくまで人間だよ。国家系と言っても基本的な構造は僕らと同じさ」

 国家系派閥の団長は王と呼ばれる。ただそれだけの話である。

「そらそうやな。それに、アレスをビビらせるくらいでええなら、自分ら第一級冒険者は皆その【闇の王】とやらや」

 一昔前――まだ『クロッゾの魔剣』が猛威を振るっていた頃ならまだしも、今のラキアならオラリオの敵ではない。何しろ、最強の騎士でも精々がLv.3と言ったところだ。

 一般的に一ランクの差でも絶対的と言われている。

 ならば、二倍の差など絶望的という言葉でもまだ足りない。

「気になるのは、『かつて』という言葉だ」

 ロキの軽口を聞き流し、リヴェリアはさらに言葉を続ける。

「今のあいつは力を失っているらしい。アン・ディールはそれを取り戻させるために、あいつを【イシュタル・ファミリア】に嗾けたのだろう」

「あれでまだ足りんと?」

 思わず、と言った様子でガレスが呻いた。

 だが、気持ちは分かる。【猛者(おうじゃ)】と互角以上に渡り合い、単身で大派閥を攻め落としてなお足りないなど、悪夢という言葉すら生ぬるい。

「少なくとも、アン・ディールにとっては足りないのだろうな」

 リヴェリアは肩をすくめてから、

「クオンも力を失っている事は否定しなかった。おそらく、本当なのだろう」

「何故そう思うんだい?」

 と、問いかけた物の……彼女がそう見当をつけた理由は、実のところ分かっている。

「四年前の闘技場。【古王(スルト)】との一戦だ」

 やはりか――と、胸中で呟きながら、彼女の言葉に耳を傾ける。

「あの時、あいつは()()()()()を見せた」

 ああ、よく覚えている。

 それまでは――少なくとも、僕らと対峙した時は精々火球を放ち、あるいは掌に爆炎を生み出す程度の事しか出来なかったはずだ。

 だが、あの一戦の間に、巨大な火柱を生み出し、青白い極光を放ち、雷を操り、回復魔法まで使うようになっていった。もちろん、体の動きも洗練され、強靭にもなった。

 まるで【古王(スルト)】の戦い方をそのまま己のものにするかのように。

「あれは成長ではなく、元々持っていた力を取り戻していっただけ。そう言われた方がまだ納得がいく。そうは思わないか?」

「……ああ、そうだね」

 あれは成長というにはあまりに早すぎる。

「かつてクオンは神々の王すら恐れた【闇の王】であり、何らかの理由でその力を失った。いや、封じられているだけかな。だから、アン・ディールはそれを取り戻させようとしている、か」

 だが、一体何故? 

 もしロキの仮説が正しい――完全なる神殺しが可能だとするなら、今のままでも過剰と言える力を持っている。

(下界の神々を一掃するためか?)

 クオンが神嫌いなのはよく知っている。あり得ない話でもないが……。

「デーモン」

 ロキを真似するかのように、リヴェリアも告げた。

「あれには『飼い主』がいるらしい」

調教師(テイマー)が?」

「そういう意味かは分からないが……あの怪物は何者かの思惑に従っている、あるいはその何者かが生み出している可能性は充分に考えられる」

 事実、アン・ディールはモンスターを生み出せるらしい――と、小さく嘆息してから、

「クオンは今のところそれを追っている節がある。あるいは、ギルドの指示かも知れないが――」

「アン・ディールも、その『飼い主』を追っていると?」

「可能性はあるだろう」

 リヴェリアはあっさりと頷いたが――それが事実だとするなら事態はより深刻だ。

「その『飼い主』と対峙するには、それだけの力が必要という事か」

 神々に匹敵する。あるいは超えるだけの力が。

 だからこそ、そのアン・ディールは【闇の王】を求めている。

 それなら、話としては筋が立つか。

「それほどの脅威が、ダンジョンに潜んでいると?」

 ガレスが唸る。

 肯定も否定もできない。言えるとしたら、別の可能性だけだ。

「あるいは、オラリオのどこかに、かも知れないね」

 だとすれば、闇派閥(イヴィルス)どころの騒ぎではない。

 オラリオどころか世界の終わりが近いという事だ。

(だから、神ウラノスはクオンを味方に引き込んでいる?)

 毒を以て毒を制す。つまりはそういう事なのか。

「可能性の話だ。だが、それなら黒教会とやらが『暗い穴』なる呪詛(カーズ)で強引に冒険者を強化している理由にもなるのではないか?」

「確かにね……」

 その『暗い穴』は一つでLv.を一段階上昇させるという。

 加えて、『不死』にもなる。その危険性は絶大だが、有益さを否定する事はできない。

「クオンの今を探るのもいいが……」

 リヴェリアが呟いた。

「過去についても調べてみるべきかもしれないな」

「それは、四年前よりさらに過去という事かい?」

「ああ。あいつがどこから来たのか。一体何者なのか。……まぁ、オラリオでどこまでの事が調べられるかは分からないが」

「その割には、あてがありそうな顔をしているね?」

「まぁな。手がかりの手がかりになりそうなものなら、いくつか心当たりがある」

 おそらく、ここしばらくの間、彼女を悩ませている『何か』だろう。

(手がかりの手がかり、か)

 おそらく、それは嘘だ。

 彼女を悩ませる『何か』はそのまま真相に直結する。あるいは、すでにしているはずだ。

 だからこそ、彼女をここまで悩ませている。

「ちなみに、その心当たりは?」

「たまには(じっか)に手紙を書いてみるだけだ」

「……いいのかい?」

 確かに彼女は王族(ハイエルフ)だが、出奔してここにいる。

 王位継承権は下げられている――いや、下手をすると廃嫡されている可能性もあり得た。

「無論、父上に送る訳ではない」

 この状況では何の役にも立たないからな――と、彼女はバッサリと言い切った。

「私の師だ。いや、私が勝手に師だと思っているだけだが……」

 珍しく曖昧に言葉を濁してから、

「ともかく、あの方はエルフの中でも古老だ。それに、大層な変わり者だからな。嘘か本当か定かではないおかしな話もよく知っている」

「……それは、あてにして大丈夫なのかい?」

「さてな。今のところ、私が確認できた範囲では嘘はなかった」

 もっとも、確かめられたのは数える程度だが――と、小さく付け足しされた言葉は……まぁ、この際聞こえなかったことにしておこう。

 どのみち、初めから雲を掴むような話だ。

 駄目で元々。

 そのくらいの覚悟で手を伸ばすところから始めなくては。

「なら、早飛脚を用意しよう。確か往復だと――」

 リヴェリアの故郷の位置を思い浮かべ、ざっと試算していると、彼女はため息を吐いた。

「往復の必要はない。というより、その場合おそらくは長く待たされる事になる」

「何故だい?」

「あの方は変わり者だからな。まず間違いなく森にはいない。昔から数年単位でいなくなる事があったが……風の噂では、私が出奔して以来戻っていないとも聞く」

「それ、ホンマに連絡取れるん?」

「別にあの方に直接手紙を書くわけではない」

 ロキの言葉に、リヴェリアはあっさりと応じた。

「【大賢人(ディア・アベル)】フレーキ。宮廷魔導士長であり、『古代』の英雄の血を継ぐお方に送る」

「フレーキ・ハースト。エルフが誇る大英雄メタス・ハーストの息子、か……」

 迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)に名高い聖女セルディアと並び立つエルフ屈指の英雄。

「まだご健在なのかい?」

 聖女セルディアの血は健在なのは知っている。

 何しろ、その妹君であるリシェーナこそがリヴェリアら王族(ハイエルフ)の祖先なのだから。

 だが――

「ああ。今も私達王族(ハイエルフ)の師を務めている。もっとも、流石に高齢ゆえ直接教えを賜る機会は少ないがな」

 まさメタスの血は息子本人が生きていたとは。

「エルフにしても驚くべき長寿じゃのう……」

 と、いうか。果たしてそんな事が可能なのだろうか。

 メタス・ハーストは『古代』の英雄だ。となると、フレーキが生まれたのもおよそ千年前となる。

「私達の中でも最長老だからな。父上はおろか、あの方もフレーキ様の言葉は無下にしない」

 いかに長命なエルフと言えど、あまりに法外のように思えるが。

「君が当てにしているのは宮廷魔導士の一人なのかい?」

「いや、あの方は違う。フレーキ様から薫陶を受けているとは言っていたが……どちらかと言えば()()()()()()()()()()()()と言ったところだろう。まぁ、あくまで私達の感覚で、だが」

 フレーキ様曰く、今ではすっかり茶飲み友達らしい――と、リヴェリア。

「あの方も、フレーキ様にはこまめに旅の手紙を書いていると聞く。少々不敬だが、連絡をお願いするよりない」

「……大賢者フレーキと少し年の離れた後輩で、今も旅から旅へとは、恐るべき壮健さだね」

 エルフの言う少しとはどれくらいなのだろうか。

 十歳二十歳くらいの差なのだろうか。

「ほとんど人類(にんげん)やめとるのう……」

 ガレスの言う通りだ。

 それでも、すでに数百歳という超高齢なのは間違いない。

 いくらエルフでも長寿すぎるのではないか。

(オラリオにいるエルフの最高齢は、おそらくロイマンだろうけど……)

 確か一世紀以上もこのオラリオで生きているはずだ。

 だが、それでも()()()()()。十分の一でしかない。

 いや、『神の恩恵(ファルナ)』を賜れば――そして、高Lv.になれば多くの場合、老化は著しく抑制される。かくいう僕自身もそうだ。リヴェリアの師もそうなのかもしれない。

「返信がいつになるかは分からないが、やっておいて損はないだろう。どのみち、他にやれる事はいくらもないからな」

「そうだね。任せるよ」

 執務室を出ていくリヴェリアの背を見送ってから、僕も立ち上がる。

「ガレス、あとは頼むよ」

「うむ。任せておけ。……まぁ、少しばかり余計な仕事が増えそうじゃがの」

 と、言っても大半の仕事はラウルに任せてある。

 幸いと言うべきか。今日は元々外出する予定があったからだ。

 いや、そうでなくても最近、遠征準備の指揮はその多くを彼に任せているが。

「あれも遠征前に余計なことしよって」

 廊下を歩きながら毒づくロキに、小さく苦笑する。

「そうだね。正直、延期という事態は避けたいところだ」

 何しろ、今度の遠征は例の『新種』対策として、幹部全員の『不壊属性(デュランダル)』の武具や数多の魔剣の手配。さらには――

「元々無理を言って【ヘファイストス・ファミリア】に同行してもらう訳だからね」

 鍛冶系大派閥【ヘファイストス・ファミリア】の協力――数十名の上級鍛冶師(ハイ・スミス)の派遣――を取り付けてある。こちらの都合で振り回す訳にはいかない。

 ……まぁ、もっとも。人数についてはこれから具体的な話をしにいく訳だが。

 それに――

「リヴェリアに丸投げしてばかり、というのも団長としてはちょっと冴えない話だからね」

 神ヘファイストスと言えば、おそらくクオンと良好な関係にある神の一柱(ひとり)のはずだ。

 

 

 

 第二地区の中心にある【ヘファイストス・ファミリア】の工房にて。

 そろそろ夕日へと移り変わる頃には、遠征前の打ち合わせは一通り終わっていた。

「ところで、神ヘファイストス」

 出された紅茶を飲みながら、()()()()()()()を切り出す。

「クオンの過去について、何か知っている事はないだろうか? いや、顧客の情報を簡単には教えられないのは承知している。ただ、今は状況が状況だ。万が一の時に備えて、少しでも情報を知っておきたい」

 先日、五〇階層で彼の武器を借りている。フィリア祭ではアイズ達もだ。

 その時の感覚からして、彼の持つ武器は第一等級武装を上回っているとしか言いようがない。

 そんなものを手入れできるとしたら、ここか【ゴブニュ・ファミリア】のどちらかだろう。

「あら、どうして彼が私の顧客だと思うのかしら?」

「この街で、彼の武器を手入れできるとしたら、【ヘファイストス・ファミリア】か【ゴブニュ・ファミリア】くらいなものです。そして、彼の性格からすれば選ぶとしたらあなたかと」

 と、言ってから慌てて付け足す。

 このままだと、とんでもない誤解に繋がりかねない。

「もちろん、あなたとクオンが男女の関係にあると勘ぐっている訳ではありませんが……」

「そうね。別に彼の事は嫌いじゃないけど、そういう関係になるのはちょっとね」

 彼、気が多いから――と、神ヘファイストスは苦笑した。

「ってことは、ファイたん。ホンマにあれの武器手入れしとるん?」

「四年前に何回かね。ついこの前も顔を見せたけど、その時はちょっと世間話したくらいよ」

 ロキの問いかけに、彼女はあっさりと肩をすくめて見せた。

「……訊いておいて何ですが、いいのですか?」

「いいわよ。私達に危害が及ぶかもしれないから黙っている方がいいとは言われたけど、別にあなた達はそんな事をしないでしょう?」

 そう言われてしまえば、頷く以外の返事などありはしない。

 まして、これから遠征で大いにお世話になる予定なのだからなおさらだ。

 ……いや、もちろん、そうでなくても危害など加えはしないが。

「それに、あなたが聞きに来たなら教えていいって言われてるしね」

「あれが? 意外やな」

「ええ。あなた相手なら下手に隠すと余計面倒な事になるぞって。まぁ、本当はもっと酷い言われ方だったけど……聞きたい?」

「……遠慮しとくわ」

 神ヘファイストスの言葉に、いつになくロキは素直に応じた。

 どんな評価をされているのか若干気にはなる……が、ここは主神の意向に従うとしよう。

「椿、君も面識があるのかい?」

 代わりに、傍らの最上級鍛冶師(マスター・スミス)に声をかける。

「受付嬢と間違えられて声をかけられた事はあるが、それだけだな」

 後で主神様に教わって、あれが【正体不明(イレギュラー)】だとはじめて知った――と、椿。

「あと、あなたアマゾネスだと思われてたわよ」

「はははっ! ハーフとは言えドワーフの手前をか? 意外と女を見る目がないのう!」

 主神のひやかしに、椿は豪快に笑って見せた……が、確かにその誤解は仕方ない。

 ドワーフ――と、言っても彼女はハーフだが――らしからぬ、すらりと長い手足と一七〇Cに届く背丈。秀麗な顔立ちに、健康的な褐色肌。そして、胸だけを隠すさらし一枚の姿で平然としている女性を見れば、クオンでなくともアマゾネスと誤認するだろう。

 いや、そもそも初見で彼女をドワーフだと認識できる人間がどれだけいる事やら。

「あやつはここに来てもろくに武器を買わん。精々投げナイフか矢、ボルトくらいだな。それ以外にするとしたら手入れの依頼だけだ。それも主神様を指名する故、ほとんどの団員は何も知らんだろう」

「まぁね。彼の武器を手入れできるのは、私か椿くらいなものだろうし」

 下手に手入れさせたら、私達が補償金を払う羽目になるわ――と、神ヘファイストスのみならず椿までが肩をすくめて見せた。

「それほどの物なのかい?」

「ええ。あまり詳しくは話せないけれど、彼が愛用する武器や防具はみんな『『私の作品』並みよ。……天界で打った、ね」

 その言葉に、ロキまでが目を見開く。

「マジでか?」

「大マジよ。初めて見た時は、私も我が目を疑ったもの。誰かが規則(ルール)を破ったんじゃないかって」

 それどころか、私自身が夢遊病にでもなって、自分でも知らない間にやっちゃったんじゃないかってつい不安になったくらいよ――と、その美しき神匠は肩をすくめた。

「誰が打ったかご存知ですか?」

 彼女の言葉は、あながち嘘ではないだろう。

 リヴェラの街での戦闘で見せた『ドラゴンウェポン』なる武器。

 確かにあれは既存の魔剣とは全く違く特殊兵装(スペリオルズ)だった。

 それに、あの不壊属性(デュランダル)の槍も。少しばかり重さが気になったが、それ以外は全く文句の言いようがなかった。

「さぁ。彼は大体拾い物だって言ってたけど……」

「天界でファイたんが打った武器なん、『深層』にだって落ちとらんわ!?」

 思わず、と言った様子でロキが叫んだ。

 その隣で、椿も腕を組んでは何度も頷いている。

 ……まぁ、確かに落ちてないけど。少なくとも、今のところ発見した事はない。

「ただ、何人か鍛冶師の名前を口にしていたわね」

「参考までにお聞きしても?」

「ええ。レニガッツだとか、マックタブだとか、バモスだとか……一番よく聞いたのはアンドレイという鍛冶師ね。彼が愛用するクレイモアを今の形に仕上げたのはこの人みたい。アンドレイのおっさんがいてくれれば、ってよくぼやいてたわよ」

「まったく、手前どもの工房に来て他の鍛冶師の名を挙げるとは……」

 神ヘファイストスの言葉に、最上級鍛冶師(マスター・スミス)の椿が呻く。

「心当たりはあるん?」

「残念ながら。私もぜひ一度会ってみたいと思うんだけどね」

「うむ。同じ名前の鍛冶師、という意味でなら心当たりがないわけではないが……とても主神様に匹敵する武器など打てまいな」

 手前でもまだその域には届かんのだ――と、椿が捕捉した。

 確かにアンドレイという名前は別にそこまで珍しいものではない。

 同名の鍛冶師が一人や二人いたとしても何の不思議もありはしない。

(となると、クオンの言うアンドレイという鍛冶師は、オラリオには居ないという事か)

 鍛冶神ヘファイストスが絶賛するほどの腕の持ち主なら、全くの無名というのはあり得ない。

 例えオラリオの外にいたとしても、噂の一つくらい届いていていいはずだが……。

「オラリオに来る前の事を、何か聞いた事はありませんか?」

「ずいぶんと物騒な場所を旅してきたって話は聞いてるけど、それが本当かどうかは分からないわね。少なくとも、オラリオで手に入る世界地図では、彼の口にした地名は確認できないわ。……ああいえ、一切見当たらないわけじゃないけど、とてもそんなに物騒な場所ではないわね」

 つまり、その場所――ないし街――もまた、単なる偶然の一致と見るべきか。

 分かってはいたが、手掛かり一つ得るのも容易ではないらしい。

(オラリオで手に入る世界地図は世界最高峰だからね)

 何しろ、オラリオは魔石製品を中心に世界中と交易を結んでいる。

 各地から集まる交易商が持つ地図を重ね合わせるだけで、文字通りの世界地図を作れる程に。

 世界の中心という謳い文句は伊達ではないのだ。

 その地図に記されていないとするなら小さな寒村か、もしくは辺境や僻地となるだろう。

 辺境などは一般的に危険な場所と言われている……が、クオンのような怪物を育て上げられる程に過酷な土地なのか?――と、問われれば首を傾げるしかない。

(所詮、と一概には言い切れないけど……)

 辺境にいるのは、外のモンスターだ。母なる迷宮(ダンジョン)から離れ、己の魔石の力を削って子孫を残し――その結果、大幅に弱体化している。

 とは言え、忌まわしき黒竜を筆頭に、今の僕らにとっても危険なモンスターもちらほらと存在が報告されている。されているが、個体数で言えば絶対的に少ない。

 そうでもなければ、流石に戦力流出が――などと暢気な事は言っていられない。

 世界各地から救援を求められる事になり、所謂『傭兵稼業』もオラリオの大きな経済基盤になっていただろう。

 だが、現実にはオラリオの外に住まう神々の眷属だけで――あるいは、獣人やドワーフなど『神の恩恵(ファルナ)』を持たずともモンスターとも戦える種族の奮闘によって対応できている。

 外のゴブリンなら、そこそこしっかりした体を持つヒューマンでもどうにかなる程度なのだから。

「急に彼について聞くなんて……。昨夜の()()が原因かしら?」

 流石はオラリオ有数の大派閥。耳が早い。

 歓楽街で騒ぎがあった事は街の噂になっているが、それにクオンが絡んでいるというのはまだほとんど知られていないはずだ。

 もちろん、そこで何があったのかも。

「まーそんなとこや」

 と、ロキは肩をすくめてから、

「ファイたんはあれがイシュタルを殺した理由に心当たりはある?」

 その問いかけに、椿が目を大きく見開く。

「……まぁ、イシュタルが『美の神』だから、かしらね」

 一報、神ヘファイストスは静かに応じた。

「フレイヤと同じいう事か?」

「ええ。フレイヤと同じように、彼を『魅了』しようとしたんじゃないかしら」

 もっとも、それだけが原因とも思えないけど――と、神ヘファイストスは呟く。

「彼は何故そこまで『美の神』を嫌うのでしょう?」

 誠実とはとても言えないが……それでも、巷で噂されてるような、全く見境なしの女好きという訳ではない。それはリヴェリアやラウルの話から分かっている。

 とはいえ、多くの男がそうであるように、見目麗しい女性を好むというのも確かだろう。

 神ヘファイストス、リヴェリア、【象神の杖(アンクーシャ)】――いずれ劣らぬ美女である。

(いや、だから友好な関係にあるという訳でもないだろうけど)

 神フレイヤや神イシュタルといった美の極致にいる存在とは相性最悪なのだから。

 しかし、一体なぜ?

「これはあくまで私の主観だけど……彼は私達(神々)あなた達(人間)を良いように扱うのが許せないのよ」

 別に『美の神』だから嫌っているわけではないわ――と、神ヘファイストス。

「少なくとも、下界にいる神は等しく嫌っていると言っていいんじゃないかしら。具体的に何をしたかは知らないけど、もし私がイシュタルと同じ事をしたなら迷わず殺しに来るでしょうね」

「ファイたんでも?」

「もちろん。私だろうがガネーシャだろうが同じよ。ロキ、あなただってそういう傾向があるから嫌われてるんじゃない?」

「ぐ……。そら確かにまるっきり否定はできんけど……」

 神ヘファイストスの指摘はなかなかの説得力があった。

 確かにロキは身内の悪ノリを他所の派閥の団員に向けてする時もある。

 そうでなくとも、『トリックスター』を自称する神だ。心当たりが皆無とは流石に言えない。

 ……そして、間違いなくクオンから見た第一印象は最悪だろう。

「け、けど。最近はこれでもオラリオのために身を粉にしとるんやで?」

「私にそれを言われてもね」

 それはそうだ。別に神ヘファイストスは彼の主神でも何でもないのだから。

 鍛冶師と客。ただそれだけだ。あるいは、だからこそ成立している関係とも言える。

子供(あなた)達を唆したり、誑かしたり、狂わせたり、害したりする神を嫌っている。そういう認識さえ忘れなければ、それなりの関係は築けるわよ。基本的には別に気難しい性格ではないし」

 なるほど。確かにそれなら『美の神』は危険か。

 例え本神(ほんにん)にその気がなくとも、『魅了』してしまう可能性はある。

 まして、神フレイヤや神イシュタルがその力を積極的に利用していたのは間違いない。

 逆に神ヘファイストスや神ガネーシャはオラリオ屈指の神格者として有名だ。

「まぁ、別におかしな話でもないでしょ。そういう事をしながら、好かれようと思う方が無理があると思わない?」

「そ、それもまた容赦ない正論やけど……」

 行動は苛烈極まるが、その基準は平凡と言える。

 むしろ平凡すぎる程だ。

 神ヘファイストスの見立てが間違っていないなら、クオンにとっては神も世界に存在する数多の種族の一つでしかないという事なのだろう。

 ……それを傲慢だと怒る神は、このオラリオにも多そうだが。

「うむ。主神様は時に厳しくもあるが、別に横暴ではない。手前どもが修羅場に陥るのは主神様のせいではなく、顧客がいきなり無茶な要望をよこすせいだ。どこぞの狼人(ウェアウルフ)の小僧のようにな」

「それについては本当に感謝するとしか言いようがないな」

 からかうような椿の言葉には苦笑するしかなかった。

 僕ら全員分の不壊属性(デュランダル)の武具に加えて、ベートは愛用の特殊兵装(スペリオルズ)――二四階層での戦闘で破損した≪フロスヴィルト≫まで打ち直してもらったのだから。

「あとは、最後の一線を越える理由があれば、それで充分なんでしょうね。彼にとっては」

 椿とのやり取りに苦笑してから、神ヘファイストスはそう呟いた。

「最後の一線、か……」

 あるいは、アン・ディールに唆されて神イシュタルはそれを超えてしまったのか。

 それとも、単に自分で越えてしまい、アン・ディールはそれをクオンに伝えただけなのか。

「まぁ、彼の神嫌いの原因はもっと根が深そうだけど、それが具体的にどんなものなのかは私も知らないわ。彼、滅多に身の上話はしないもの。こっちから聞いても適当にはぐらかすくらいだし」

 それはよく分かる。リヴェリアやラウルもほとんど昔の話は聞きだせていない。

 だからこそ、今さら改めて彼の過去を探り始めているわけだが。

 

 …――

 

 工房をお暇してからしばらくして。

「結局空振りやったなー」

 第一地区に戻った辺りでロキがぼやいた。

「まぁ、そう簡単に分かるとは思ってなかったけどね」

 すでに夕刻。高級住宅街も隣接するこの区画には、夕食のいい匂いが漂い始めている。

 普段なら僕もそろそろ一日の仕事納めとなる時間だ。

 ……まぁ、遠征前ともなれば、そうも言っていられないが。 

「そらそーやけど。……他に知ってそうな奴やと、ガネーシャかウラノスやな」

 今回はそれに更なる厄介事の種が撒かれている。

 いや、四年前から燻っていたものがついに火の粉を上げた――という程度だが。

「ああ、そうだね」

 この二柱(ふたり)なら、確実にクオンの過去についても何か知っているはずだ。

「ウラノス、か……。この前はまんまとはぐらかされたしなぁ」

「フィリア祭の時かい?」

「そうや。ディオニュソスの無茶ぶりに付き合ったはええけど、これと言って収穫なしや」

 頭の後ろで手を組み、夕焼け空を見上げながらロキは言った。

「まぁ、僕としては神ウラノスと神ガネーシャがクオンと共謀してオラリオを滅ぼす、なんて話はちょっと現実感がなさすぎると思うよ」

 何しろ、あの神ガネーシャが含まれている。

 変わり者だが、それ以上に善良なあの象神が無辜の民を害する姿などまず想像できない。

「そらな。あのガネーシャがおるし」

 それについては、ロキも異論はないようだ。

「それに、クオンがいるならあの新種を外に運び出す必要はない。今の状況からすればなおさらね」

 大派閥である【イシュタル・ファミリア】を単独で壊滅させたのだ。

 例え相手が僕らや【フレイヤ・ファミリア】でも同じ事をしてきただろう。

 何より恐ろしいのは、彼ならそれでもなお達成しかねないという事だ。

 極論で言えば、クオンは一人でオラリオを陥落させられる。

(この街に住まう神々を皆殺しにさえできれば、それで事は足りる)

 何しろ、主神を失ってしまえば、あの【猛者(おうじゃ)】ですら満足に戦えなくなるのだから。

「そーやな。他のモンスター逃がしたんはフレイヤやし、フィリア祭の騒ぎをウラノスが裏で糸ひいとるいう可能性は低いなぁ」

 もっとも、全くの無関係とも思えんけど――と、ロキ。

 それもまた事実だ。

(おそらく彼らはあの『新種』を()()()()()()しようとしている)

 思えばあの宝玉を探しに行ったのは【ガネーシャ・ファミリア】の団員だ。

 そして、クオンが神ウラノスの私兵なのはほぼ間違いない。

 さらに【ガネーシャ・ファミリア】が治安維持のため、中立中庸を標榜するギルドと例外的に提携を結んでいるのは誰もが知るところである。

 もちろん、だからと言って【ガネーシャ・ファミリア】がウラノスの完全なる私兵だとは思わないが。

「ウラノスとガネーシャとあれ。それに、極彩色の『魔石』や怪人(クリーチャー)。他にデーモンやら何やら。これがみんなどっかで繋がっとるんは間違いないんやけどなぁ……」

「ああ。僕もそう思う」

 現状を公平に見るなら、クオン、ウラノス、ガネーシャの勢力とそれ以外は対立関係があると見るべきだろう。

 しかし、それなら――

「何故、神ウラノスはオラリオの危機を公表しない? いや、オラリオ全域に公表したら混乱が起こるのは確かだ。それを避けるために避けているというのも分かる」

 全てを公表すればいいわけではない。それは、団長としてよく分かる。

 そもそも、ギルドが情報規制を敷いている有名な話だ。『下層』の最下層から『深層』領域にかけての情報については、相応の資格を示さなくては開示されない。

 それに不満を抱く派閥は聞いた事がなかった。

 ……下手に知らせては冒険者の心が折れかねないという理由があるからだ。

 ダンジョンに触れていれば、誰もがそれに実感を抱くだろう。抱けないなら、長生きはできない。

 だが、今回はどうなのだろう。それと同じなのか。

「少なくとも僕らや【フレイヤ・ファミリア】には情報を流しておいて損はないはずだけど。口止めされれば、あえてそれに逆らう理由もない訳だしね」

 少なくとも、今のところは――と、小さく付け足してから、ふと思い至る。

(ああいや、()()()か?)

 僕らが神ウラノスを信用してないように、神ウラノスも僕らを信用していない。

 だとするなら――まぁ、あまり文句も言えないか。

「むむ。そら、まぁ……。けど、うちらはオラリオ最大派閥やで? 多少面倒でも味方にしといて損はないやろ?」

 ふと思いついたそれを告げると、ロキが唸った。

「どうかな。人員の【ガネーシャ・ファミリア】。戦力のクオン。これは意外と隙のない布陣だと思うよ」

 所属する第一級冒険者の数で見れば【ガネーシャ・ファミリア】が群を抜いている。

 個々の練度で見るならともかく、動員できる人員の数は彼女達の方が一段上だ。

 そして、クオンは()()()()オッタルと互角の戦力である。

 構図としてはオッタルを絶対的な頂点に据え、さらに数多の第一級冒険者がその脇を固める【フレイヤ・ファミリア】に通じるものがあった。

「欠点と言えば、【ガネーシャ・ファミリア】が動かしにくい事かな?」

 公にできる理由がない限り、この派閥は動かせない。

 少なくとも公的にはウラノスの私兵ではないのだから。

「それなりの理由がないとね。治安維持っていう重要な役割を担っているからこそ、ギルドとの連携が認められているわけだし」

 すべての【ファミリア】に対して中立であるギルドと【ガネーシャ・ファミリア】の関係が黙認されている大きな理由だ。

 まぁ、逆に言えば【ガネーシャ・ファミリア】もギルドのような公平さが求められている訳だけど。

 その原則に従うなら――

「あれのイシュタル殺しには()()()()()理由があるんかな?」

 と、言う事になりそうだけど……。

「さぁ。僕としては、神ウラノスの思惑すら飛び越えた可能性の方が高いように思うけど」

 もちろん、神ガネーシャにとっても想定外だったはずだ。

 そして、この場合問題となるのはその原因だった。

 ただ単にクオンが暴走しただけなら話は簡単……とは言えないか。

(その方が厄介だな)

 最悪の場合、クオンとの全面抗争が始まりかねない。

 そうなればオラリオ側の消耗は深刻なものとなるだろう。

 どれほどの数になるかはさておき、神という代替不能な存在を失う事になるのは避けられないのだから。

「今のところ、ギルドからは何の通知もない。遠征の準備をしつつ、様子を見よう」

 何しろ今度の遠征は、今までとは意味合いが違う。

 未知に挑む冒険者の性。派閥としての名声――それだけではなかった。

怪人(クリーチャー)闇派閥(イヴィルス)残党が企むオラリオの破壊。これにクオンや神ウラノスがどう絡んでいるかは定かではないけど……」

 オラリオに迫る脅威。それを知るためのものでもある。

「まぁ、流石に無視はできんしなぁ」

 それに、それはオラリオだけではなくアイズにも絡んでくる。

 少なくとも、あの極彩色の『魔石』に関してはもはや当事者と言っていい。

 こちらはこちらで火急を要する。

「それに、この繋がりからクオン達の思惑に迫れる可能性は充分にある」

 執務室でも触れた正体不明の剣士。彼は確実にクオンと同質の何かだ。

 その繋がりを辿れば、神ウラノスの思惑にも行きつける。その予感があった。

 そして、そこまで至れば、あちらも無視はできない。

 僕らが交渉の席に着くことも可能だ。

 しかし、それにしても――

(極彩色の『魔石』。怪人(クリーチャー)。デーモン。『アンデッド』。それにクオンと同質の何か)

 今オラリオに迫っている脅威を列挙する。

 大きな何か――『暗黒期』をも上回る途方もない何かが動き出しているのが嫌でも分かる。

 ただし、その中心にいるのは神々でもなければ名だたる冒険者の誰でもない。

(クオン、か)

 認めるのは少しだけ――そう、少しだけ癪だが。

 再び動き出した歴史の中心にいるのは、ほぼ間違いなくあの【正体不明(イレギュラー)】だ。

 あるいは、彼の登場と共に全てが動き出したのかもしれない。

(アン・ディール。そして黒教会)

 突如として現れた異分子。いや、これもまたクオンと同質の何かか。

 何より、本当に黒教会が『アンデッド』を生み出しているなら、クオンが姿を見せる前から存在していたはずだが――

「気を揉んでいても仕方がない。『深層』は余計な事を考えながら攻略できる場所じゃないからね」

 ひとまずそれらは考えないでおく。

「そーやなぁ。何にしろ、もう【イシュタル・ファミリア】はないし、ギルドの発表を待つくらいしかやれる事もないか」

 あれへの対応で、ウラノスの思惑を測るとしよか――と、ロキが呟く頃には僕らの本拠地(ホーム)が見えてきていた。

「団長! 報告っす!」

 本拠地(ホーム)に入るや否や、留守を任せていたラウルが駆け寄ってくる。

「どうかしたのかい?」

 遠征に関する何かであれば、最悪ガレスが対応する。

 そうでないとなると――

「クオンさんの身柄引き渡しを求めて、いくつかの派閥が徒党を組んでギルドに詰めかけたそうっす!」

 思わず、ロキと顔を見合わせていた。

「あれ、もうギルドに捕まっとるん?」

 意外だった。

 クオンはウラノスの私兵かもしれないが、ギルドそのものとは特に関わりがない。

 ()()()()()換金だけは自由にできるが、専属アドバイザーがいるわけではない。それどころか、ギルド公式の冒険者依頼(クエスト)すら――少なくとも表向きは――受注できない。

 とはいえ、これは別に何らおかしな話ではない。冒険者登録されていないのだから当然だ。

 オラリオの公的な扱いでは、クオンはあくまで剣闘士であって冒険者ではない。

 と、それはともかく。

「いえ、それがギルドが回答を渋ってて……。その派閥同盟も、お答えできませんの一押しで追い払ったそうっす」

「そうか……」

 これはギルド側も混乱している……持て余していると見るべきか。

 あのロイマンにクオンをどうこうする度胸があるとも思えないし、当然と言えば当然だが。

「まぁ、すでにギルドの手の内にあるなら、僕らが介入する事はない」

 ウラノスの筋書き通りの寸劇で終わるかも知れないが……この際、それならそれで構わない。

 できれば今は、遠征に集中したかった。

「情報収集は継続するつもりだけど……今は遠征の準備に集中しよう」

「了解っす!」

 少々不本意だが――それでも、正直肩の荷が下りた。

 と、そう思っていたのだが。

「フィン! いるか!?」

 そんな思いは翌朝、副団長(リヴェリア)の険しい声と共に打ち砕かれる事となる。

 

 

 

 新たな凶報は、翌朝一番に飛び込んできた。

『【正体不明(イレギュラー)】クオンが『美の神』イシュタルを殺害した』

 オラリオ全域に向けてそう発表したのは、昨日ラウルの報告にあった派閥連合――『神罰同盟』と名乗る者達だった。

 彼らはクオンの蛮行、その大罪を痛烈に批判し、早急な粛清を訴えているという。

「連中、景気よく人数を動員しとるような」

「そのようだね」

 各区画のメインストリートのおよそ八〇〇Mごとに一人という勢いで。

 さらに朝市やバベル前、アムール広場など人目につく場所に宣伝者を配置し、果てはビラまでまき散らしているという。

 実際、執務机の上にもロキが――すぐそこの通りで――拾ってきたビラが置かれている。

「各派閥は今再び正義を示す時である――か」

 その末尾に描かれた文言を読み上げる。

 まぁ、要するに同盟に加われという勧誘だった。

「胡散臭いのう。参加する者などおるのか?」

 顎鬚を撫でながら、ガレスがぼやく。

「いるようだな。すでに七派閥が参加を表明している。……まぁ、出来の悪い寸劇だが」

 弾みをつけるための()()()だろう――と、リヴェリア。

 おそらく、それは正しい。その七派閥は初めからそのつもりだったと見るべきだ。

 そうでもなければ、いきなりこれだけの人員を展開させられる訳がない。

「問題はそれ以外だな」

「そうやなぁ……。あれがイシュタルを()()()いう意味を()()()()()()()()奴がどんだけおるかいう気もするけど」

「それについても、一応このビラにも書かれているけど……」

 安物の羊皮紙は、すでにインクがかすれ始めている。

 そこには、これは天界への送還ではない――と、記されていた。

「ああ。何人が信じるか、だな」

 リヴェリアが小さくため息を吐いた。

「……まぁ、それを()()()()なら、これに乗せられる危険も分かりそうなものだけどね」

「そうやな。これに乗っかるんは()()()()()奴らや」

 この神殺しが従来のそれ――単に天界に還るだけだと思っている……それ以外にあり得ないと思っていない限り、簡単に賛同などできるはずがない。

「情報の共有か……。本当に急務だったね」

 オッタルとの密談を思い出し、ため息を吐く。

 あの時は情報を引き出すための方便でもあったが……もはやそれどころの騒ぎではない。

「かといって、これから言っても信じてもらえんやろな」

「まぁね」

 それどころか、弱腰だと非難されかねない。

 ありもしない理由をでっちあげて、クオンの肩を持つのか――そう糾弾されるはずだ。

(選択肢は二つか)

 糾弾覚悟で、クオンの『スキル』を暴露するか。

 それとも、ここは沈黙を保つか。

 前者を選べば、なし崩しにこの『神罰同盟』とやらに参加する羽目になる。

 その危険性を訴えた以上、()()()()()()()()()()()対応する義務が生じるのだから。

(全戦力を投入すれば……)

 如何にクオンと言えど、()()()()()余裕はないはずだ。

 彼を戦場から逃がさないこと。それが彼を倒す絶対条件だ。

 あとは――

(何人がそれを信じてくれるかだな)

 必殺の覚悟と共に包囲し、討滅しなくてはいけない。

 クオンを相手に、少しでも綻びがあれば容易く食い破られる。

 そこまでの覚悟を持って挑む冒険者が一体どれだけ用意できるのか。

 それともう一つ。

 この『神罰同盟』が僕の指揮下に入るかどうか――と、いう問題もある。

 彼を過小評価している指揮官ではまず勝ち目がない。もちろん、僕なら適切に評価できるとまでは言わないが、少なくともその恐ろしさは知っているつもりだ。

(欲を言えば、ロキ達の安全確保も必要だけど……)

 包囲網が完全なら、そこまで重要ではないが……いや、念を入れておいて損はないか。

 ともかく、彼と対峙するなら全力を費やし、それを余すことなく活用できなくてはならない。

 さもなくば、『灰色の悪夢(アッシュ・オブ・シンダー)』は容易くすべてを蹂躙するだろう。

「しっかし、正義言うてもなぁ……」

 ビラを見やり、ロキがため息を吐く。

「こいつらイシュタルの取り巻きやんか。しかも闇派閥(イヴィルス)に片足突っ込んだ悪党ばっか。どこ捻っても正義いう柄やないなぁ」

「単なる仇討ちってことかな?」

 だとすれば、後者――沈黙を保つという選択肢も選べない事はない。

 当事者達にだけそっと伝え、あとは自己判断に任せる――と、それでいい。

 彼らの目的が復讐ならば、そういう選択をしてもそこまで文句は言われない。

 仇討ちにつきあう義理が僕らにあるはずがないのだから。

「そんなとこやろ。イシュタルがおらんくなった以上、オラリオの勢力図は大きく変わる。ここでええトコ見せて、イシュタルの後釜狙ったろ!――くらいの気分やろ、どうせ」

 それは大いにあり得る。

「昨日の一件といい、ちょい動きが速すぎるんが気になるけど……このくらいの()()()()()なら四年前に何度もあったし、このアホ共がボッコボコにされて終わり、言う可能性も充分あるやろ」

 過去にクオンに喧嘩を売った派閥はいくつかある。

 僕らも他人事ではないし、【フレイヤ・ファミリア】だってそうだ。

 だが、本当に主神を殺された派閥は【イシュタル・ファミリア】を除いて存在しない。

 そのはずだ。精々()()()()()()だけのはずである。

 一番危険だった僕らですら、リヴェリアが交渉するだけの余地があった。

(それを考えれば、むしろ神イシュタルこそが例外だったと言えるかな)

 と、そんな甘い予想はたった数時間後にいとも容易く否定される事になった。

 

 …――

 

「はぁ?! ホンマか?!」

 新たな凶報は、もうじき正午になるといった頃に届いた。

「ホンマに()()()()()()()()言うんやな?!」

 ロキが語気も荒く、ギルドから戻ってきた団員――まだ入団して日の浅い駆け出し冒険者――を問い詰める。

「は、はい……」

「待つんだ、ロキ。まずは()()()()をしないと」

 まだ新しい装備から滴る血からして、決して浅い傷ではない。

「お、おう。そうやな」

 頷くロキを見ながら、近くから様子を窺っていた団員に治療薬を持ってくるように指示を出す。

「念のため確認するけど、君達はまだダンジョンには潜っていない。そうだね?」

 鎧を脱がし、近くのソファに寝かせてから、彼と一緒に戻ってきた団員へと問いかける。

「はい。ギルドで冒険者依頼(クエスト)を見繕っている途中でしたので……」

 彼女もまだ一軍には遠いが、彼よりは経験を積んだ冒険者だ。

 しかし、その彼女もまた、決して少なくない手傷を負っている。

「君達を……ギルドを襲ったのは、クオンかい?」

「いえ、違います」

 その頃には、団員が治療薬の入ったケースを持って戻ってきた。

 ひとまず、手当てが終わるのを待つ。

「しっかし、こら派手にやられたなぁ」

 確かに、彼の負っている傷は喧嘩や小競り合いの域ではない。

 派閥抗争に巻き込まれたか、戦争遊戯(ウォーゲーム)にでも参加したような有様だった。

「すみません、ロキ、フィン団長。私がついていながら……」

「ええって。今のオラリオでギルドにいる時に襲撃されるなんて誰も思わんわ」

 ギルドの命令に素直に従わない――それについては僕らも心当たりがないわけではないが――派閥は珍しいとは言い難いが、武装して襲撃する派閥など存在しない。

 それこそ、かつての闇派閥(イヴィルス)を除いては。

「質問の続きだけど――」

 ハイ・ポーションを煽り、すっかり回復した彼女に問いかける。

「ギルドを襲ったのは『神罰同盟』という事でいいかい?」

「はい。【正体不明(イレギュラー)】の身柄引き渡しを訴え、ギルド職員が断ると――」

 一斉に武器を抜いて迫り、止めようとした周囲の冒険者達と乱戦になったという。

 それどころか――

「ギルド職員にも負傷者、か……」

 神罰同盟はギルド職員にすら容赦なく斬りかかったという。

「はい。一緒にダンジョンに向かう予定だった治療師(ヒーラー)と他のメンバーは治療と警備のため、まだギルドに残っています。彼は伝令として逃がそうとしたのですが、外にも神罰同盟が展開していて……」

「そう簡単に見逃してはくれなかった、か」

 とはいえ、彼女の判断に大きな問題はない。僕も現場にいれば――そして、彼女と同じLv.だったなら――似たような指示を出していた。

「よく無事やったなぁ、自分ら」

「は、はい」

 しみじみとしたロキの言葉に、少し躊躇ってから彼女は言った。

「その、【正体不明(イレギュラー)】が参戦したので……」

「クオンが? 確かかい?」

「私は今日初めて姿を見たので、断言はできませんが……。黒衣にクレイモア、それに竜の紋章が施された盾を持ち、火炎魔法を使っていました。それと、武器をどこかから取り出す『スキル』も」

 と、なるとほぼ間違いない。

「ギルドの様子は?」

「ギルド周辺での戦闘はすでに終わっているはずです。【正体不明(イレギュラー)】が神罰同盟の指導者に……その、()()()()()ので」

 指導者の眉間を弓で射ぬき、さらに取り巻きを斬り殺したらしい。

 さらに、指導者の装備から派閥を示すエンブレムを奪い――重傷のギルド職員達を魔法で癒してから――どこかへと姿を消したという。

「フィン、こらアカンで……」

「ああ。彼は本気だ」

 彼女も念のため医務室に向かわせてから、唸った。

「このままだと神罰同盟に所属する神は皆殺しにされる」

 四年前のように、じゃれあいで終わらせる気はない。

「もうすでに殺されとるかもな」

「あり得るだろうね」

 一柱(ひとり)では終わらない。

 現時点で神罰同盟に加盟しているのは一〇派閥。

 神殺しはまだ続く。

「こうなると、あとはギルド次第か」

「そうやな。ギルドがはよ動けば、犠牲者は減らせるかもしれん」

 この戦慄を、一体ギルド職員の何人が共有してくれているだろうか。

 そして、オラリオ全域では?

「動くかな」

「流石に動くやろ。下手するとまた暗黒期に逆戻りやからな」

 冒険者が失われれば失われるだけ、オラリオの戦力は低下し、基幹産業は滞る。

 さらにギルドはその求心力を失墜させるだろう。となれば、オラリオの内政は大いに乱れる。

 そんな隙を見せれば、外部勢力――例えばラキア王国辺りはここぞとばかりに攻め入ってくるだろう。他に娯楽都市(サンリオ・ベガ)のような強大な財力を持つ国もオラリオでの影響力拡大を狙ってくるはずだ。

 場合によっては、前回の内乱とはまた違う形の暗黒期が訪れかねない。

「分かっとるんやろな、ウラノス。もう火遊びや済まんぞ!」

 バベルがある方角を睨み、ロキは叫んだ。

 

 …――

 

 ロキの予想通り、ギルドはロイマン(ギルド長)名義ですぐに声明を出した。

 もちろん、内容は『神罰同盟』を非難するものであり、ギルドへの重大な反逆行為を糾弾し、即時解体および責任者の出頭を命じている。

 一方の神罰同盟はギルドの対応を痛烈に批判。『大逆者』クオンを庇いたてするのであれば、もはやオラリオの都市運営を担う資格はないと叫び、オラリオ中の派閥へクオン討伐への協力を求めている。

「今のところ、神罰同盟が少し優位、といった感じかな」

 賛同を集めているのは神罰同盟側だった。

「そうやな。まぁ、まだお祭り気分いうこっちゃ」

 クオンに対する漠然とした敵愾心と、ギルドに対する慢性的な不満。それを未だ状況がつかめていない神々がいつもの調子で煽っている――と、言ったところか。

 つまるところ、賛同しているのではなく無責任に担いでいるというだけの話でしかない。

「いうても、そこまでボンクラな神はそうおらん。逆転するんは時間の問題や」

 それに、そのうち嫌でも思い知る――と、ロキ。

「だろうね」

 先ほど調査から戻ってきた団員の顔を思い出す。

『神が、違いました……』

 戻ってくるなリ、彼女は青ざめた顔でそう報告した。

 今街頭で演説しているのは、今朝方まで神罰同盟の盟主――主神だった神ではないという。

 このあまりに唐突な主神交代の理由ははっきりしている。

「少なくとも、また一柱(ひとり)殺されたか」

「そうやな」

 やはり小競り合いで終わらせる気はないらしい。

 もはや全面戦争が開戦していると見るべきだ。

一柱(ひとり)どころの騒ぎではない」

 そう言って執務室に入ってきたのはリヴェリアだった。

「最初に同盟の主神だった派閥は、団長以下幹部全員が殺されたようだ。それも、【ステイタス】が封じられてからな」

 彼女の報告は、その確信を肯定するものだった。

「何だって?」

 それはもう戦闘ではない。一方的な虐殺だったはずだ。

「一人も見逃さない言うことか?」

「……いや」

 それはおそらく違う。

(あまりに迅速な【ガネーシャ・ファミリア】の動き。それと彼女達を襲った襲撃者)

 今までになく素直にギルドに身を寄せていたクオン。

 そして――

 

『あとは、最後の一線を越える理由があれば、それで充分なんでしょうね。彼にとっては』

 

「神イシュタルが超えた一線。神罰同盟の本当の狙いがその『何か』だとするなら説明はつく」

 女神ヘファイストスの言葉。その全ての情報を繋ぎ合わせれば、一つの可能性が浮かび上がる。

「その『何か』に手を出したからこそ神イシュタルは殺された。そして、神罰同盟の幹部達もそれを()()()()()からこそ殺された」

 ピクンと、リヴェリアが眉を動かした。

 それには気づかなかった事にして、言葉を続ける。

「【ガネーシャ・ファミリア】や彼女達を襲撃した勢力が迅速な動きを見せたのはその『何か』を回収するためだったとしたら説明はつく」

 だとするなら、クオンが素直にギルドに身を寄せた理由も分かる。

 要するに彼は神ウラノスに後始末を押し付けに行ったのだ。

「イシュタルの『遺産』、か……。そらまぁ、それやったらウラノスが何も言わん理由にもなるっちゃなるけど」

 全てはオラリオの危機を回避するために。

 それなら、あの二柱の神は助力を惜しみはしない。

「ああ。あるいは、それこそがクオンの力の正体かもしれない」

 関係者を皆殺しにしてでもクオンが知られたくないもの――そう考えれば、これもまた充分に候補に挙がるはずだ。

 が。途端に、リヴェリアの顔に焦りの色が浮かんだ。

(ンー…。これは――)

 やはり、彼女はこの一件の裏側について何か知っている。

 というより、アン・ディールから何かを聞かされていると見るべきか。

「と、思うんだけど。どうかな、リヴェリア?」

「……それは誤解だな。神イシュタルの『遺産』はクオンの力の正体とは関係ない」

 ロキが同席しているからだろう。

 リヴェリアはあっさりと肩をすくめて見せた。

「リヴェリア、何か知っとるん?」

「アン・ディールがどうやってクオンを神イシュタルに嗾けたかなら」

 ロキ()に嘘はつけない。沈黙を保つか、正直に答えるか。

 選べるのはそのどちらかだけだ。

「詳しい話はできない。クオンに秘密にすると約束しているからな。それも、アン・ディールの前で」

 それに反する不義理が、私達にとっての致命傷にならない保証はない――と、リヴェリア。

 現状を鑑みれば、考えすぎだと笑う事はとてもできそうにない。

「だが、この状況では完全に黙っているのも危険だろう」

 肩をすくめてから、彼女は続けた。

「神イシュタルは『生贄の儀式』を企んでいたという。アン・ディールの言葉が正しいなら、それが全ての元凶だ」

 ロキに視線を向けると、彼女は小さく頷いた。

 嘘ではない、という事だ。いや、この状況でリヴェリアが嘘を吐くはずがないが。

「なるほどね……」

 それは、神ヘファイストスの言葉を完全に肯定するものだった。流石は神の慧眼と言うべきか。

「何故神イシュタルがそのような真似をしたかは分からない。その儀式によって何が得られるかは聞いていないからな。あいつを嗾けるには、その事実だけあればいいらしい」

「そーなると、ホンマにファイたんの言う通りっちゅう事やなー」

 ロキが露骨に肩を落として見せる。

「けど、こんだけ派手にうちら()を喧嘩売ってタダで済むと思っとるんか? あれがやなくて、ウラノスがや」

「……まぁ、確かにそれも懸念事項だけどね」

 派閥を左右するのは究極的には主神の意向である。

 これが()()()()()()()だと知れ渡れば、少なくとも神々は黙っていないはずだ。

 このままクオンを野放しにすれば、ギルドと各派閥が対立する原因にもなり得てくる。

「それだけの価値がある、という可能性もあるな」

「クオンにかい?」

「あるいは【闇の王】に。ダンジョンに蠢く異変を迎え討つために、神ウラノスが黙認しているとも考えられる。実際、デーモンや『アンデッド』が今後も姿を見せるとすれば、あいつの力はこの上なく有益なものとなるだろう」

「そらそうやけど……」

 実際に追い回されたロキが、げんなりとした様子で唸る。

「ほとんど丸腰だったアイズ達はともかく、杖を装備した君までが手を焼いた存在か」

 第一級冒険者が四人。そして、第二級冒険者が一人。

 だが、第二級冒険者(レフィーヤ)は火力に限って言えば、第一級冒険者にも匹敵する。

 彼女達が総出で挑みなお苦戦するとなると――

「第二級冒険者だけなら十数人から数十人規模でかかる必要があるね」

 つまり、階層主と同等の対応が求められる訳だ。

 そんなものがフィリア祭では七体も同時に現れたという。

(あのクオンですら同時には相手にできないと言ったそうだからね)

 それはそうだろう。階層主を同時に七体など、僕らでも派閥の総力を挙げなくてはならない。

 単独(ソロ)限定なら、あの【猛者(おうじゃ)】ですらおそらく不可能だ。

「せやけど、それやったらまだ代替も可能や。……そう考える神はきっと多いで」

 まぁ、実際に丸投げされるんはうちらやけど――と、ロキが嫌そうに呻く。

 それもオラリオ最大派閥としての宿命と言えばそれだけの話だが……実際にそれを対応する僕らにとっては、全く頭の痛い話でもある。

「神ウラノスの思惑はともかく」

 軽く腕を組み、リヴェリアがロキに問いかける。

「神ディオニュソスは相当にギルドを疑っていると聞く。もし、かの神が神罰同盟への参加を決めた場合……いや、私達をそれに巻き込もうとした場合はどうするつもりだ?」

「そら断る」

 ロキはきっぱりと言い切った。

「ウラノスが何や隠しとるんは確かや。けど、このアホどもに正義があるか、言われたらない」

「そうだね。せめてギルド職員に危害を加えたりしていなければ、まだ悩む余地もあっただろうけど」

 勢い余ってつい――と、いう次元の話ではない。クオンの介入がなければ死者が出ていた可能性すらあるのだ。

 その情報が広まれば、神罰同盟への風当たりは確実に変わる。

 さらにギルドが……いや、神ウラノスがリヴェリアの言う『生贄の儀式』を公表した場合、神罰同盟を擁護する事すら憚られる状況になるだろう。

「今この時にクオンを討てば、僕らの名声も上がるだろうけど」

 それは色々な意味で魅力的だが、

「沈むと分かっている泥船に乗り込む気はないよ。これでも団長だからね」

 神罰同盟と組むという選択肢だけはあり得ない。

 その決断を掲示する時は、思いの外早く訪れた。

 

…――

 

「『オラリオの安寧を乱す大罪人クオンを今こそ誅すべし。そのために我ら【神罰同盟】は貴公らの参戦を期待する。オラリオ最大派閥の義務を全うされたし』、か」

 ()()()の指導神からそんな書簡を使者が届けに来たのは夕食間際の事だった。

「ま、話がまとまった後で良かったわ。パパっと返答しとき」

 リヴェリアが留守にしているせいか、早くも晩酌を始めたロキがあっさりと言う。

「ああ。そうだね」

 死刑判決を待つ囚人のような顔色をしたその使者を前にすれば、少しばかり罪悪感にも似た感情を覚えはしたが――

「僕ら【ロキ・ファミリア】は君達『神罰同盟』へ一切の援助をしない」

 書簡にも記した文言を告げる。

「クオンの肩を持つわけじゃない。もし、ギルドからクオンの捕縛ないし討伐の要望があれば、総力を挙げてでも応じよう」

 卒倒しそうな顔で反論しようとする使者より先に言葉を続ける。

 彼らの書簡に書かれている通り、クオンがオラリオの安寧を乱すならば彼の捕縛ないし討伐はオラリオを二分する大派閥の責務となる。

 そこに勝ち目の有無は問題ではない。

「だが、無抵抗のギルド職員を襲った君達にも、もはや大義はない。それだけの話だ」

 これは後で知った事だが、この頃ちょうど【フレイヤ・ファミリア】も同様の声明を出していたという。

 

 

 

 オッタルとの会談や、地下水路の調査。

 それに遠征の準備やフレーキ様への手紙など諸々重なったせいですっかり遅くなったが――

『遠い昔、未だ世界が闇に閉ざされていた頃……』

 アイズに教わった『火の時代』にまつわる英雄譚は、そんな言葉から始まっていた。

(大筋としては、あいつの話と変わらないな)

 昼頃から何度も目を通した頁を繰りながら呟く。

 その物語は二部構成……いや、おそらくは三部構成となってる。

 神々による邪竜討伐と、その後の繁栄。それを先導した三人の王。

 第一部は、彼らの成し遂げた煌びやかな繁栄を紡ぐ物語だ。

 神王、炎の魔女、死の神。そして、聖竜。

 そこには御名こそ記されていないが――

(太陽の光の王グヴィン、イザリスの魔女、最初の死者ニト、白竜シースと置き換えられそうだな)

 少なくとも、クオンの言っていた神々と数字の上では合致する。

 数々の描写を照らし合わせても、その置き換えはそこまで不自然とは思えない。

(『火継ぎの王』か……)

 そして、第二部。

 神の与えた『聖火』の下で繁栄を迎えた人間達の――例えて言うなら『旧神時代』とでも呼ぶべき時代の物語だ。

 もちろん、実際にそんな時代があったかどうかすら定かではないが。

 ともあれ、その物語は以下のようなものだった。

 ある時、その『聖火』が奪われ、世界を再び闇が覆う。

 そんな中、神託を受け『聖火』奪還に向かう英雄の物語。

 それは、いわれなき罪によって牢獄に囚われていた彼に神託が下るところから始まる。

 神の大鴉の導きによって牢獄から抜け出したその英雄の行く手を阻むのは、かつて世界を席巻し神々によって滅ぼされた邪竜の生き残りや、『聖火』が奪われた事で具現化した厄災の化身、神への畏敬を忘れ、邪法に走った王国が生み出した異形達。

 そのどれか一つでも偉業と称えられる程の試練を乗り越えた英雄は、ついに神々の都へと迎え入れられ、神王の娘より直々に『聖火』の在処を伝えられる。

 かつて神王の相談役でありながら、それを裏切った世界蛇の片割れ。

 それに唆された『火の簒奪者(ダークレイス)』。

 彼らが潜む闇の奥底に至るには、英雄は聖竜の叡智、魔女の炎、死の神の加護が必要であると、神の娘は英雄に伝えたのだ。

 魔女が住まうのは劫火の都。死の神が住まうのは冥府の底。

 どちらも人の身ではたどり着くことは叶わない。故に英雄はまず聖竜の叡智を求めた。

 迎えた聖竜は彼に一つの試練を課す。

 自らの英知が眠る呪われた大書庫の解放だった。

(真理とは必ずしも光ならず。蒙を啓くとは狂を発する事でもある、か……)

 竜の二相――そう記されたこの逸話は、個人的に興味深い。

(私がやろうとしている事は、まさにそういう事なのかもしれないな) 

 クオンが神殺しを繰り返す中、書庫に引きこもって古い英雄譚を読み耽っているなど、狂を発していると言われても仕方がない。

 とはいえ、別に本当に発狂しているわけではない。これはあの男の力の正体を知るためだった。

(おそらく、それは『火の時代』に触れる事と同義なのだろうな)

 少なくとも、現時点での手掛かりはその言葉しかない。

 まさに雲を掴むような話だが……この英雄譚の原形となった何かがあったと信じるしかない。

 しかし、

(真理とは必ずしも光ならず、か)

 例えクオンの力の正体を突き止めたとして――その先にこの『神時代』を揺るがす可能性がある以上、それは光とは言えまい。

(ここは一つ、この英雄にあやかってみるとしようか)

 思ったよりも感情移入している自分に苦笑してから、物語を読み進める。

 月光に導かれるまま大書庫に至った英雄は、かつて叡智を求め、その『呪い』に敗れた者達、何よりそこに眠る叡智と狂気の間で翻弄されながらも、ついに魂の真理へと至る。

 生死の境界を乗り越えたと書かれているが……。

(まぁ、人には辿り着けない場所に行くための資格ということか)

 あるいは神の域に達したという意味なのか。

 ともあれ、英雄はその叡智を以って、劫火の都への道を踏破し、そしてまた冥府の底へと至る。

 魔女と死の神が課した試練をも乗り越えた英雄は、ついに闇の奥底へと向かう。

 堕ちた世界蛇の甘言にも惑わされず、その闇を踏破した英雄は、ついに『火の簒奪者(ダークレイス)』と対峙する。

 相手は『聖火』を簒奪した存在。いわば神そのものと言って過言ではない。その戦いは熾烈を極め、三日三晩続いたとされている。

 しかし、魔女の炎が『聖火』の力を英雄に与え、竜の叡智は闇を退ける。そして、死の神の加護が、ついに『火の簒奪者(ダークレイス)』に死を与えた。

 見事『聖火』を奪還した英雄は神王にその功績を認められ、人の身でありながら神の一柱として迎え入れられる。さらに地上に領土を与えられ、王となった。

 その国は、神の都の名を冠する事すら許されたという。

 ついに王となった英雄は、『聖火』の守り手としての責務を負うと共に、名君として世界を光で満たしていく。人々はその功績を讃え、いつしか英雄は『火継ぎの王』と呼ばれるようになる。

 火継ぎの王クロウ。

 名も知れぬ英雄は神の大鴉に導かれた事から、いつしかそう呼ばれるようになった。

 そして――

 

「ふむ……」

 一通り読み終えてから、小さく吐息をつく。

「やはり系統としてはフィオナ神話に通じるものがありそうだが……」

 小人族(パルゥム)達に栄光と衰退をもたらした架空の女神。

 数々の偉業をなした騎士団の擬神化であり、フィンが目指すもの。

 人の身で神に至るというのは、それに通じそうではある。

 しかし、『古代』の歴史書や他の民話や伝説、英雄譚を読み解いても他にそれらしい逸話はない。

 いや、類似点がある、という程度ならいくつかそれらしいものもあるが……その程度なら他の英雄譚や伝説でもよくある話だ。

 それこそ、フィアナ神話を例に挙げたのも『類似点がある』からである。

 だからと言って、その神話がこの物語から派生した、あるいは逆にその神話を原典としているなどと断定できるはずもない。そのためには、あまりに情報が少なすぎた。

「フィオナがどーしたん?」

「ロキか……」

 気配に気づかないとは、自分で思っていた以上に集中していたらしい。

「何かあったのか?」

「いんや。ただ、姿が見えんから探しとっただけや」

 リヴェリア、アレのお気に入りの一人やから心配やねん――と、ロキ。

「あいつに靡くと思われているなら心外だな」

「いや、『力づくで押し倒されたらどうするんですかっ!?』ってレフィーヤが」

「…………」

猛者(おうじゃ)】と斬りあえる時点で、腕力勝負では勝ち目がないのは認めるしかないが。

 しかし、いくらあいつでも、複数派閥を相手にしている状況で、そんな事をするために忍び込んでくるほど暇ではないだろう。

 無節操と言う以前にいくら何でも脈絡がなさすぎる。

 こと戦闘中に限って、あいつはそういう無駄な事をしない。

「まぁ、真面目な話、ようやくまともに情報が集まってきたから伝えに来たんや。こっから先、まだ何が起こるか分からんしな」

「そうだな。聞かせてくれ」

「まぁ、おもろい話やないけどな」

 ロキの話を聞く限り、クオンは命令系統の上から切り崩しているらしい。初日の時点で最初の盟主だった神と二代目、さらに三代目までがすでに殺されているという。

 今頃は次の盟主の押し付け合いが起こっているのではないか、とフィンは予想しているという。

 それに関しては私も同感だ。

 今頃は指揮系統が大いに混乱している事だろう。

(しかし……こういう時は、つくづく合理化の化身のような奴だな)

 無駄な戦闘は避け、主神と幹部に狙っているらしい。

 今のところ、その策は見事に成果を上げている。

 神罰同盟の総数は三〇〇人ほどだというが……そのうち一体何人が戦力として機能した事やら。

「んで、ギルド襲撃がバレたせいで評判も一気に悪化しとる」

「それについては自業自得だろう」

「そうやな。今も治療院に入院しとる職員がおる。そうでなくても【ガネーシャ・ファミリア】の団員が重装備で警備しとるんや。目撃者もぎょうさんおるし、そらもうバレて当然やな」

 ここんとこガネーシャの子らは大忙しやな――と、ロキは笑う。

「歓楽街の様子は?」

 そこがこの動乱の始まりの場所だ。

「いつまで続くかはともかく、すっかり【ガネーシャ・ファミリア】の『島』やな。営業はまだ再開されとらんけど、再編の方は始まっとる。このまま【ガネーシャ・ファミリア】が一枚噛むなら、前よりは風通しもようなるやろ。どうやって口説いたかは知らんけど、結構な数の戦闘娼婦(バーベラ)がガネーシャんとこに改宗(コンバージョン)したようやし」

 まぁ、それはそれで好ましい事だろう。

 何しろ、あの区画が麻薬や人身売買と言った犯罪の温床になっているのは公然の秘密だった。

 だが、神ガネーシャが関与するならそのような行為は数を減らしていくはずだ。

「まぁ、そうは言っても一時的なもんやろ。そのうちガネーシャが支持するイシュタルの後釜が引き継ぐはずや」

「確かに、神ガネーシャに歓楽街の運営ができるとは思えないな」

 祭り好きで派手好きで、陽気で快活な善神を思い浮かべる。

 どれほど控えめに言っても、淫都と揶揄される歓楽街の主は似合わない。その評価が不敬に当たるとはまったく思えない程に。

「けど、ガネーシャんトコがそんだけ早く動いたんは結構物騒な裏がありそうやで」

「裏だと?」

「いや、裏言うんはちょい違うかも知れんけど。ほれ、襲撃を受けたらしいいう話はしたやろ?」

「先日の朝の話だな?」

「そう、それや。その襲撃者がどうも闇派閥(イヴィルス)残党っぽい」

「確かなのか?」

 それは最悪、この動乱に闇派閥(イヴィルス)残党まで介入してきかねない。

 下手をすれば、本当に暗黒期に逆戻りだ。

「おそらくな。戦闘娼婦(バーベラ)達があっさり改宗(コンバージョン)したんはそのせい、と考えるなら信憑性も出てくるやろ?」

「ああ。いくら豪放なアマゾネス達でも、『恩恵(ファルナ)』もなしに闇派閥(イヴィルス)と対峙したくはないだろうからな」

 眉間を指先で掻きながら呻く。

 今さらながら、【ガネーシャ・ファミリア】内部の風紀が気になってきた。

 別に私達のように男女比が偏っているとは聞いていない。

 若い男が相応にいる場所に、歓楽街でならしたアマゾネスが一気に流入したとなると、派閥内の風紀維持には莫大な労力が必要になるのではないだろうか。

(【象神の杖(アンクーシャ)】が心労で倒れなければいいが……) 

 彼女には微妙に共感(シンパシー)を感じるというか何というか……。

 正直、派閥内での立ち位置に通じ合うものが多い気がしてならない。

(まぁ、クオンから伝え聞く話だけだが……)

 他派閥の内情など、そうそう聞けるものではないが。

(団長と副団長と言う意味でも多少似通ってはいるか)

 如何に他派閥と言えど、流石にそれくらいの事は知っている。おそらく、オラリオの大多数が。

 だが、今言いたいのはそういう肩書ではなく、もっと……こう、心理的な面で。

 いや、それはともかく。

闇派閥(イヴィルス)も『遺産』を狙っていると?」

「その可能性もある。けど、やっぱちょい動きが早すぎるなぁ。いや、全体的にそうなんやけど」

 となると、

「神イシュタルは、あらかじめ闇派閥(イヴィルス)残党と繋がりがあったと?」

 そう考えれば、あまりに迅速すぎた動きにも納得がいく。

 要は口封じだ。戦闘娼婦(バーベラ)達から自分達の存在が露見しないようにするための。

「おそらくそっちやろな。……まぁ、イシュタルはかなりフレイヤを目の敵にしとったし、その辺が関係しとるんかもしれん」

「五年前の延長戦という事か」

 あの時、神イシュタルは自らの派閥に【ステイタス】偽装の嫌疑をかけてきた――もちろん、以前から対立関係にあった――派閥の全てを壊滅させている。

 それこそ、主神を天界に送還するほど徹底的に。

「そういう事や。あの腐れおっぱいんとこが大派閥やなかったら、五年前に一掃された連中に含まれとったやろ」

 それができなかったのは、そもそも神フレイヤが神イシュタルを歯牙にかけていなかったからだ。

 もちろん、【イシュタル・ファミリア】もオラリオ有数の大派閥だが、【フレイヤ・ファミリア】はさらに格が違う。特に戦力的な視点で見ればその差は圧倒的だ。

 何しろオラリオ唯一のLv.7である【猛者(おうじゃ)】を筆頭に、希少なLv.6やLv.5が多く所属しているのだ。こう言っては何だが、私達とて確実に勝てるなどとはとても言えない。

 一方で【イシュタル・ファミリア】は最大でもLv.5。まともに戦ってはまず勝ち目がない。

「神イシュタルの『遺産』はそれだけの差を埋められる程のもの、という事か?」

 つまり、『殺生石』とやらの性能だが。

(……ああ、そちらについても調べておかなくてはならないか)

 しかし、そんな書籍はあっただろうか。

 この書庫にある魔法技術関連の本は一通り目を通しているが、心当たりがない。

「どーやろな。うちはいくつか用意した策の一つ、いう程度やと思うけど」

 ちょい希望的観測いうやつかもしれん――と、ロキは肩をすくめて見せた。

 確かに。『殺生石』一つでその差が覆せるなら、その価値は計り知れない。

「少なくとも神罰同盟はそう考えているという事か……」

 あるいは誤解している、と言うべきかもしれないが。

「あり得るやろな。だとしたら、こんなに狂気じみた真似するんも納得や。もしリヴェリアの予想通りなら、うちかて飛び入り参加したくなる」

「手に入れる前に殺されそうだがな」

「分かっとるって。冗談や。……少なくとも今んとこは」

 今後、クオンと敵対するなら、そして私の予想通りの力があるなら、その時は冗談ではなくなるという事か。

「正気か?」

「別に自分ら(人間)の命をないがしろにする気はない。けど、あれがもし本当に手当たり次第に神殺しを始めたなら、オラリオどころか下界そのものの危機や。そうなったら、それも必要な犠牲、言う話になるかも知れん」

 まぁ、そんな事せんで済む事を本気で祈っとるけど――と、ロキ。

 神が一体何に祈るのか――と、そんな野暮なことはとても言えなかった。

「しかし、もし神イシュタルが闇派閥(イヴィルス)と繋がりがあったとするなら、ますますクオンの正当性は高まるな」

「そーやな。闇派閥(イヴィルス)相手に情け無用、いう空気はまだ残っとるやろし」

 そして、神罰同盟はギルド襲撃という形でそれに火をつけている。

 ロキの話が確かなら、ギルドの上層部がクオンに肩入れする可能性は大きく高まったと言えよう。

「あのクソジジイ(ウラノス)もその辺を知っとるから、沈黙を保っとるんやろ。ガネーシャんとこの子らが()()()()()証拠を確保したらそれを理由に一気に幕引きを図る。そんなとこか」

「まぁ、この際何事もなく、予定通りに遠征に向かえるならそれでいい」

 赤髪の女―――怪人(クリーチャー)達も、決して放置できない問題だ。

 まして、これに関しては他人事ではない。

 そちらに集中できるなら、この際良しとしておこう。

 と、そこで――

(なるほど、闇派閥(イヴィルス)の効果か)

 今も続いているであろう神殺しに対する忌避感が一気に薄まっている事に気づいた。

 だが、それも仕方がない。どのような神意があったとして、それでもあの時代を肯定する事は私にはできない。

 それはおそらく、オラリオに住まう多くの者達も同様だろう。

 

 …――

 

 闇派閥(イヴィルス)襲撃から一夜が明けて。

「派手にやってんなぁ、おい」

 仮初の支部となった『女主の神娼殿(ペーレト・バビリ)』で、同じく一時的な同僚となったサミラがぼやいた。

「しかもこいつら全員イシュタル様の取り巻きじゃねぇか。オレが言うのもなんだけど、正義って柄じゃねぇなぁ」

 朝食をとりながら、手にしたビラ――『神罰同盟』とやらがまき散らしたそれを覗き込み、彼女はため息を吐く。

「知っているのか?」

「そりゃ何人かは。つっても、あんまし表沙汰にできねぇ連中だし、オレも全員は知らねぇよ」

 確かに――と、思わず納得していた。

 麻薬をはじめとした違法物品の売買や密輸入。さらに人身売買。

 分かってはいた事だが、この歓楽街は犯罪行為の温床でもある。

 たった一日歓楽街を調査しただけで、至る所からそれらの証拠が次々に見つかった。

 その『神罰同盟』に属する派閥は辺りに関与していた連中なのだろう。

「まぁ、イシュタル様が主になった時点でそこまで念入りに隠す必要がなくなったからなー」

 加えて五年前からはギルドの査察も形式的なものになり果てていた。

 その影響で証拠隠滅が疎かになっていたらしい。

 もちろん、この区画の主だった戦闘娼婦(バーベラ)達の協力がなければここまで素早く集める事はできなかっただろうが。

(その分、サミラ達には相応の恩赦が必要になるが……)

 それもまた仕方がない事か。

 サミラ達の協力により誘拐されて、あるいは騙されて身売りされてきた者達がいる事も分かった。

 彼女達の心の傷は深いだろう。

 ……だが、得体の知れない娼婦宿に売り払われるよりはいくらか幸運だったはずだ。

 神イシュタルは彼女達にも相応の待遇を保証し、また給与も公平に与えられていた。

 歓楽街の外にある怪しげな娼婦宿ではとてもこうはいかない。

(それがどの程度の慰めになるかは定かではないがな)

 同じ女性として、その心情は想像する事も躊躇われるが……ともかく、こうして証拠がある以上はギルドからの犯罪被害者支援が受けられる。

 本人達が望むなら、帰郷することもできる。

 もちろん、名前を変えてオラリオで生活する事も可能だろう。

 他にもオラリオと交易を結び、ギルド支店がある街への移住という選択肢もある。

 いずれにせよ、彼女達の新たな人生に幸多からん事を心から祈ろう。

「しっかし、イシュタル様の『遺産』か。大事になってるな」

 それについても、ある程度はサミラから聞き出した。

(生贄の儀式か)

 それが神イシュタルとクオンの敵対を決定づけた直接的な原因だという。

 私達の本拠地(ホーム)にサミラ達を避難させた際にガネーシャに問いかけたが、どうやら事実らしい。そちらに関する()()はギルド――いや、創設神ウラノスの元に直接届けられていると見ていいだろう。

 そのせいで、私もその全容は把握できていないが――

「つーか、主神も含めて幹部連中皆殺しってのはマジなのか?」

「そのようだな」

 あの男ならやってのけるだろう。

 驚きを感じないのは、私自身も闇霊と対峙したからか。

(ああいう脅威が当たり前に存在していた場所を旅してきたと聞くが)

 ならば、最大でもLv.3が精々の中堅派閥同盟など、臆するに値しない。

 ……仮に申請していない者が多少いたとしても、それでどうなるものでもない。

「オレ、一応幹部の一人だったんだけどな。つーか、結局オレらには死人が出てねぇけど……」

「アイシャに感謝しておけ」

 サミラの言葉に肩をすくめて見せる。

「彼女が庇っていたお前達を殺す気にはならなかったのだろう」

 とはいえ。正直、私も少し意外だったが。

 四年前のあいつなら、一般の団員すら皆殺しにしていたとしても驚かない。

「まぁ、そのアイシャからも口止めされてっけどな」

 そのおかげで、私も情報を得るのにずいぶんと苦労した。

 まぁ、理由を聞けば納得だが。

「これから先も、素直に従っておく事だな」

「そうするぜ」

 コーンスープを一気に飲み干すと、サミラは同僚数人を連れて見回りに出ていった。

 あれから闇派閥(イヴィルス)の襲撃はない。

 私達が大隊を投入しているというのもあるだろうが……土地勘のある戦闘娼婦(バーベラ)の多くが戦線に復帰しているというのも理由としては決して小さくはあるまい。

 ひとまず一年限りの仮改宗(コンバージョン)

 その条件のもと、サミラをはじめとした複数人の戦闘娼婦(バーベラ)が【ガネーシャ・ファミリア】に入団している。闇派閥(イヴィルス)から襲撃を受けた以上、彼女達にとってもやむを得ない選択だっただろう。

 足元を見たようで少々座りが悪いが……しかし、私達としても背を腹には代えられない。

 何しろ、非戦闘員の娼婦達だけでも相当数に上る。闇派閥(イヴィルス)の狙いが【イシュタル・ファミリア】関係者の口封じだとするなら、彼女達も保護しなくてはならない。

 だが、流石の私達も、そこまでの人員を用意するのは簡単ではない。元よりこの区画の運営に携わっていたサミラ達の協力が取り付けられるなら、それに越した事はなかった。

闇派閥(イヴィルス)か……)

 だが、話はそれだけでは収まらないかもしれない。

 ポーチから、古びた首飾り(ペンダント)を取り出す。

 神イシュタルの神室に無造作に放置されていたそれは、他の装身具(アクセサリー)と異なり、非常に質素なものだった。

 だからこそ目に留まったのだが――

(この紋章は……)

 施されたその紋章には見覚えがあった。

 だからこそ、これを()イシュタルが持っていたというのはどうにも解せない。

(最悪は【九魔姫(ナイン・ヘル)】の知恵を借りる事にもなるか)

 食後の紅茶を飲み干してから、立ち上がる。

「イルタ。私はしばらく留守にする。その間の指揮を頼む」

「それは構わぬが……。神罰同盟絡みか?」

「それもある」

 歓楽街と万神殿(パンテオン)の警備に多くの団員が従事している今、さらに三〇〇人規模の派閥連合まで相手にするとなるとさすがに少々骨だ。

 場合によっては大規模な人員配置の見直しも必要となるかも知れない。

(もっとも、もはや戦力も激減しているだろうがな……)

 主神を失った時点で、その派閥は終わっている。

 幹部まで皆殺しにしていると言うが……もし、主神を失った後まで生き残った幹部がいたとするなら、彼らが感じたであろう絶望は想像に余りある。

 そこだけを見れば完全なる虐殺行為だが――

(今のところ、市民への被害は確認されていない)

 それこそ、()()のギルド職員達以外は。

 主な戦場となっている第四、第五、第七、第八地区だが、そこですら少なくない数の市民が抗争が起こっている事を知らなかったらしい。

(あいつとは真逆だな)

 盟友の姿を思い出し、小さく嘆息する。

 容赦ない襲撃なのはどちらも同じだが、周囲への被害に大きな差がある。

(暗殺者の真似事までこなすとはな)

 神出鬼没なのはいつもの事だが、今回はそれが特に顕著だ。

 忽然と現れ、()()()を皆殺しにして消えていく――まるで、恐怖劇の花形である怪人か怪物の如き立ち回りをしているらしい。

(不死身の怪人と言う意味なら、あながち間違ってもいないか)

 あるいは『古代』において神域を冒した者を罰すると恐れられた伝説の怪物(神獣)だろうか。

 もっとも、この怪物は神にこそ容赦しないが。

「とはいえ、神罰同盟への加担はしないとガネーシャは通達している。あとはギルドの采配次第だ」

 神ウラノスにとってもこの騒ぎは想定外だっただろうが……それでも、ギルドに討伐指令を出させる事はしないはずだ。

 オラリオには、あるいは黒竜にも勝る脅威がすぐそこまで迫ってきている。

 いずれ起こるその戦いにおいて、クオンは欠かせないのだから。

(それに、ギルド長にもそれだけの度胸はないだろうからな)

 あの老エルフにクオン討伐の命を出すだけの度胸があるとは思えない。

 まして、職員達が()()()()()()と言う事実もある。

 ()()()()()()()という事で幕引きをしたい――と言うのが本音だろう。

「それとは別に気になる事が出来た。それの調査をしたい」

「それなら、誰か団員に――」

「いや、少し扱いの難しい問題だ。あまり口外したくない」

「……闇派閥(イヴィルス)関連ではなく?」

「ああ。ある意味、そちらより厄介かもしれない」

 そう。下手に扱うと()()()()――あるいは()()()()()の引き金にもなりかねなかった。

 

 

 




―お知らせ―
 お気に入り登録していただいた方、感想を送ってくださった方、ありがとうございます。
 次回更新は18/09下旬を予定しています。
 18/09/20:一部修正
 18/10/26:一部修正

―あとがき―

 まずは感謝を。
 お気に入り数がついに250を超えました。
 皆様、本当にありがとうございます!!
 これからもおつきあいいただけましたら幸いです!
 
 皆様、ご無沙汰しております。何とか予定通りに更新できました。
 今回もちょっと時間は遅れてしまいましたが…。
 つ、次こそは…! 

 さて。前話でも触れましたが、本作のオリジナル設定がだんだんと姿を見せています。
 フロムソフトウェアのゲームが好きな方は今回出た名前にピンときたかもしませんが、本作はあくまで『ダークソウル』シリーズと『ダンまち』シリーズのクロスオーバーです。
 今回出てきたキャラに限らず、主人公以外のオリキャラの名前は、ほとんどフロムソフトウェアの他作品(具体的にACシリーズ、デモンズソウル、ブラッドボーン)からお借りしています。ですが、あくまで名前だけで設定的にはまったく繋がりはありません。
 いえ、確かに今回出てきたキャラのように役回りというか立ち位置の影響を受けているキャラは何人かいるのですが……。
 なので、あまり名前の元ネタは気にしないでやってください。
 
 さて、今回も主人公は出番なしです。
 どうにも一方的な戦いになってしまうので、あんまり長々と書くのもなぁと思いまして…。
 ただ、戦闘シーンがないのも何だか凄くもやっとするので、次回は誰か派手に暴れさせたいところです。

 主人公と言えば、原作主人公のベル君もしばらく出番がないという体たらくですが…こちらは、もうじき全力で活躍させます。
 何しろ、序盤最大の見せ場がありますからね。
 原作者様の胸を借りるつもりで挑む予定ですが……ハードルの高さが物凄いですね。
 とはいえ、あの戦いは本作でも重要な節目となりますから、しっかり描いていきたいと思います。

 さて、次回は9月中…早ければ来週には更新できるかと思います。
 書き溜めができているとは言えませんので、次々回がどうなるかはわかりませんが。 

 それでは、どうか次回もよろしくお願いいたします。
 また、返信が遅くて恐縮ですが、感想など頂けましたら幸いです。
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