こちらは由月様宅「施しの英霊に寄り添う」のキラナくんのお話です。
感想にて、作者が妄想が爆発したキラナくんと意地っ張りな女の子のお話です。
由月様の許可は得ています。
そちらを読まなくても大丈夫なようには書くつもりですが、読んでいただいたほうがより楽しめると思います。
知らない方のために言っておくと、「施しの英霊に寄り添う」は現代日本人女子が古代インドにてカルナさんと幸せになる話です。カルナさんはアルジュナに殺されていません。とある村にて2人の子供に恵まれ、幸せにしています。
その子供の1人がキラナくんです。
また、作者は古代インドの生活様式など知りませんし、狩人の矜持など分かりません。ほとんど想像で書いていることを頭の隅に入れて頂けたら幸いです。
ふんわり雰囲気で読んでください。

「施しの英霊に寄り添う」がFate/を原作としているため、三次創作にあたるこの作品もFate/を原作とさせていただきます。ご了承ください。

***

これは、太陽と月の光が織り成す一つの物語。
………それを、人は夜明け(プラバータム)と呼ぶ。







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1年近く掛けて、ようやく投稿します。
これは、作者の100%妄想の産物なので深くは突っ込まないで頂けると大変助かります。

また、ヒーロー視点も予定していますが予定は未定状態なのでいつ頃投稿できるなどは分かりません。
気長にお待ちいただけたらと思います。

18.07.03 加筆
2020/08/24 修正


Side.月光

カウムディーは狩人である。近隣では随一の腕を持っていると自負している。

 

だから、いまのこの状況が信じられなかった。自分がまさか狙っていた獲物を先に射られるということになっているということに。

自分に勝る弓の腕を持っている者がいるということに。

 

後に振り返ると、この時のカウムディーは天狗になっていたのだろう。狩人として尊敬する父親からもう教えることはないと太鼓判を押され、自らが近隣で1番の弓の使い手である、とそう思い込んでいたのだ。

 

だからこそ、その獲物を横取りした奴に一言文句を言ってやりたかった。それが狩人としての最低限のマナーに反するとしても、自らのプライドがそれを許さなかったのだ。

 

射られた獲物の側に行くと、そこには1人の男がいた。黒の髪に青い眼を持つ男。その手には弓がある。この男が、と思ったときカウムディーはその男に思い切り怒鳴り付けていた。

 

「貴様か!この獲物は私が先に目をつけたのだぞ!」

「?ーーー獲物は先に見つけたか否かではなく、どちらが先に射ることが出来たかだろうに」

 

それは正論であったが、男の物言いはいまのカウムディーを刺激するものでしかなかった。

 

「うるさいっ!私の名はカウムディー!貴様の名は何だ!」

「“爽やかな冷たい月からの光(カウムディー)”か、良い名だな。俺はキラナという。」

「キラナ、だな。覚えておけ、次は決して負けん!」

 

キラナと名乗った男は頷きながらカウムディーの名を褒め、笑みをたたえ名乗った。

 

それから、カウムディーは何かある事にキラナに噛み付いた。どちらが先に射ることが出来たか、その勝負にカウムディーが勝つことは無かったがキラナという大きな壁が出来た事でカウムディーの日常は大きく変わった。

 

* * *

 

「カウムディー、最近楽しそうにしているな」

 

カウムディーとキラナが会って1年ほど過ぎたある日の夜、カウムディーの父が嬉しそうに笑みを零しながら言った。

カウムディーの父は近隣で随一の腕を持つ狩人である。流石に隣村のカルナという狩人には勝てないが、その人以外では一番と言っても過言ではない。

 

「ーーー楽しそう?わたしがか?」

 

カウムディーは思わず反復した。楽しいなどと思ったことが無かったからだ。

 

「気になる相手でも出来たのか?」

 

父にそう言われ、カウムディーの脳裏に浮かんだのはあと涼しげな蒼でーーー浮かんだそれを振り払うように頭を振る。

 

「その様子じゃあ、心当たりがあるようだな」

「ないっ、心当たりなんてない!」

 

笑いながら言う父の言葉を即座に否定する。

父はそれを見て、更に笑った。

 

「本当にお前は母さんにそっくりだな」

 

カウムディーには母がいない。彼女が生まれて少しして亡くなったからだ。

寂しいと感じたことはない。カウムディーにとっては母がいないことは当たり前のことであったから。

けれど、父が母に似ていると言うのを聞くのは好きだった。

その時の父は嬉しそうに笑うから。

 

「カウムディー、明日俺は朝から狩りに行く。どうやらあの獣が出たらしい。」

 

先程とは打って変わり、真剣な面持ちで父は言った。「あの獣」とは十数年ほど前に出た巨大な獣の事だろう。

隣村のカルナがその獣を落とした、というのを聞き、悔しそうな顔をしていた父を思い出した。

 

「どうやら、あれの子供らしい」

 

獲物を仕留める時のように目をギラギラとさせ、父は俺が仕留めてやると狩人の目をして言った。

 

そんな父にカウムディーは小さく微笑み、月並みの応援の言葉を送った。

 

それが父と交わした最期の会話になるなんてカウムディーは考えもしなかった。

 

* * *

 

ーーーー父が亡くなった。

その知らせをカウムディーが受けたのは翌日の夕方頃だった。

件の獣に殺されたらしい。

それを聞いた時、頭が真っ白になった。そして浮かんでくるのは、父の優しげな笑みだった。

 

ーーー分かっていたつもりだった。

狩りは一歩間違えれば命の危険があることを。

けれどそれは所詮“つもり”だったのだ。

 

「ーーーなんで、」

何で涙が出ないのだろう。

 

カウムディーは嘆いた。悲しいとは感じるのだ。けれど、父がいなくなったのだとそう思いたくなかった。

ひょっこりただいま、といつもの笑みを浮かべ帰ってくるのではないかとそう思ってしまう。

その夜カウムディーの代わりのように天からの涙が村へ降りた。

 

 

父の仇を討たなければ、ぼんやりとした頭で思った。

父が亡くなった、と聞いてからカウムディーは狩りに出ることは無かった。

とてもでは無いが、狩りに行く気力が湧いてこなかったからだ。

 

仇を討てば父は褒めてくれるに違いない。矛盾している、と分かっていた。

死んだ父が頭を撫でてくれることは、もう二度とないのだと。

もう、不器用なあの撫で方もしてくれることはないのだと。

 

それでも、仇を討とうと思うのは自己満足かもしれない。否、自己満足だ。

ただそうすれば泣けるのだろうと、受け入れることができるのだろうとおもったから。

 

カウムディーは狩りに出た。たとえ、その結果父と同じように死んでも構わないとさえ思った。

これを聞いたのなら、キラナはどう思うのだろうか。ふと、そんなことを思った。

あの涼し気な風貌を殴り捨て怒るのだろうか。それともいつものように淡々として、そうか、とうなづくだけだろうか。

 

フフッ、

思わず笑いが零れ、それまで張っていた緊張がとれたきがする。けれど笑みをすぐに引き締め、辺りの気配を探る。

 

ーーーー近くにいる。

大きな気配がこちらに近づいてくる。

 

気配を消し、矢を番える。手元に魔力を集中させ、鏃に氷の礫を作る。

 

音を立てないよう獣が見える位置に移動する。

そこで見た獲物は自身の丈よりも高そうな猪であった。

あまりの大きさに一瞬、矢を射ることを躊躇する。だが、すぐに気を取り戻し、矢を射る機会を伺いーーーー

 

ーーーーここだ!

 

カウムディーの矢は獣の左肩に刺さったようで、かの獣は左腕を庇うように辺りを見回しこちらを見た。

 

ーーー見つかった

そう思った時、獣がこちらに突っ込んでくる。

ギリギリでそれを避けるが、少し腕にかすってしまった。

これでは満足に矢を射ることも出来ない。

獣はそのまま木にぶつかり、それが鍵となって怒りを爆発させた様だった。

ーーこれで、父の元に行けるのだろうか

その様子をボーっとして眺める。

 

獣がこちらに突っ込んできて、あと数mでこちらにたどり着こうかという時に、聞き覚えのある声がした。

 

梵天よ地を覆え(ブラフマートラ)!」

 

何処からか光の線の様なものが飛んできた。それは目の前の獣に当たり、そして爆発する。

その爆風で木にぶつかり私は気を失った。

 

 

目が覚めたとき、そこは知らない天井だった。

「起きたか」

声のした方を向くと、絹を思わせる白の髪に蒼い瞳をした......

 

「...キラナ!?」

 

ではないはずだ。キラナの髪は夜空を思わせるような黒で、けれど目の前の男の見た目はキラナに瓜二つであった。

 

混乱しているカウムディーに男は首を傾げ、ひとつ頷く。

 

「俺はキラナではない。あいつが世話になったな」

 

微かに口角を上げ男が彼女の頭を撫でたそのとき、

「父さん?」

部屋の入口から、聞きなれた声が聞こえた。

「キラナっ」

助けを求める声を上げたカウムディーはキラナの口から聞こえた単語に思わず、目の前の男を見つめた。

 

男...キラナに父と呼ばれたその人はそれを肯定するように首を縦に振った。

「父さん...」

「お前のだろう」

 

責めるように父を呼んだキラナに対し、その父は嘆息する。

う''ーっと唸り声を上げるキラナの頭を撫で、その人は部屋から出ていった。

 

キラナは父親が出ていったその場所をしばらく眺めていたが、その後カウムディーの側までやってきた。

 

「キラナ...」

「カウムディー、済まなかった」

何を喋ればいいのか、言い澱んだ彼女にキラナは謝罪の言葉を浴びせた。

 

「何故、謝る?」

助けてくれたのだろう?、と首を傾げたカウムディーに対し気まずそうに彼は顔を逸らす。

「俺が未熟だったから、お前を巻き込んでしまった」

モゴモゴと言い訳のようなことを呟くキラナにカウムディーは目を瞬かせた。

「父さんにちゃんと加減が出来るまで使ってはダメだといわれてた技なんだ」

その青が陰りを見せながらもカウムディーから逸れた。

その様子に彼女は思わず笑ってしまった。

 

「でも、お前がその技を使ってくれたおかげで私は助かったんだ。ありがとう。」

「……、だが君を傷物にしてしまった。」

 

「実践で使うにはまだ早い、そう言われてたんだ。ダメだな、俺は。」

ため息をひとつ吐くとキラナはこちらをちらりと見た。

 

「好いた人を守れないなんて、母さんのようにはいかないな。」

 

キラナが憔悴した姿で言い訳をしているのをおかしな気分で聞いていると、最後に言われた言葉に思考が停止した。

 

「す、す、好いた人!?」

思わず大きな声が出た。

「あぁ、言ってなかったか?俺は君を好いてる。」

さも当然のことを言うように彼は言った。

 

「聞いてない!」

「そうか。俺は君を好いてるぞ。」

反論すると、キラナはこちらに伝えるように繰り返した。

 

いつもは涼やかな眼差しを向けるその瞳は今はなにかの熱を帯びている。

それが恥ずかしくなって、逃げるように下を向いた。

 

 

「……君は、俺のことが嫌いか?」

 

「そんなことない!むしろ好ましく思ってる!」

 

彼の悲しそうな声が聞こえて、反射的に顔を上げて反論した。

それに彼は嬉しそうに笑った。花が綻ぶように。

 

それを見て、分かってしまった。

自覚せざるを得なかった。

 

自分は目の前のこの男に懸想してるのだと。

 

顔に熱が集まるのを感じて、手で顔を覆い隠す。

 

「耳が赤いな、照れているのか?愛いな。」

甘い声が脳に浸透する。

まるで耳元で囁かれたかのように。

 

ビクッと体を強ばらせると、そのまま彼に抱きすくめられる。

 

「ほんとうに、愛いことだ。」

今度は耳元で囁かれ、何かを誤魔化すように顔を手で覆ったまま肩口に頭を擦り付けた。

 

彼は、光だ。

カウムディーを照らしてくれる、光。

彼の前では何もかもがさらけ出されてしまう。

その光はこれからも彼女を照らしていく。




最後の終わり方が強引なので、こっそり訂正すると思います。

2020/08/24 終わり方をかえました。

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