約ネバアニメ化決定記念。おめでとう!



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「はじめまして」をキミに捧ぐ

 

ーーー最初の記憶は、暗くて狭くて、でもとても暖かい場所。

 

 

 

 

 

ボクとキミは、そこで()()に眠っていた。

 

 

 

やがて景色は色を変える。

 

 

 

はじめての空気の冷たさ。

 

 

 

はじめて見たキミの顔。

 

 

 

まるでパズルのピースみたいに途切れ途切れな記憶達。

 

 

 

ボクはキミの隣のベッドに寝かされて、そのうち首と耳に違和感を感じて。

 

 

 

 

 

その違和感に慣れた頃、ボクとキミは離れ離れになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーボクは、()()()は、この記憶が真実であると知っている。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

GFハウス。

親のいない子供逹が暮らす小さな孤児院。

嘘まみれの情報を、あたかも真実だと信じているかのように、ボクは今日も息をする。

決まった時間に起きて、兄弟みんなで朝ごはんを食べて、その後は学校の代わりにテストをうける。

テストが終わったら自由時間。今日はみんなで隠れんぼをした。

見つかると悔しそうにしながらも、次こそは、と気合を入れる兄弟達。

楽しそうにきゃっきゃと騒ぐみんなと一緒にボクも笑う。

 

そして何時間かして、みんなが昼寝を始めた頃、ボクの元にママが来た。

 

 

「あらレナ、あなたは昼寝しなくてもいいの?」

「うん、別に眠くないからいいや。それよりママ、頼んでたヤツ、そろそろ届く頃じゃない?」

「よくわかったわね。今ちょうどその話をしようと思ってたのよ」

 

 

そう言ってママは背中に隠していたそれを取り出した。

 

 

「はい、頼まれてたモデルガンよ。・・・先月のテスト全部フルスコアだったご褒美。おめでとう、レナ」

「ありがとうママ」

「危ないから、他人に向けて使わないようにね。・・・にしても、先々月分のラジコンヘリといい、レナは男の子のおもちゃが好きなのね」

「そうかな?・・・そうかも、ボク、人形とかぬいぐるみとかは興味ないし」

「そう。まあ好きなものは人それぞれだものね」

「うん。ねぇママ、今月も全部フルスコア取ったら、またボクの好きなもの買ってくれる?」

「もちろんよ。だってそういう約束だものね」

 

 

その後、少しだけママとおしゃべりして、ママと別れた。

手元に残る、貰ったばかりのモデルガン。

毎朝行う300点満点のテストで、一ヶ月ずっとフルスコアを取れたらご褒美を頂戴。

三年前にママとした約束は今もまだ有効だ。

最初はイージーミスなんかもあって落とすこともあったけど、最近はずっとフルスコアを撮り続けている。

このままボクはフルスコアを取り続けなければならない。

残酷なこの世界で、生き続けるために。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

(ママ)と慕う彼女は親ではない。

共に暮らす彼らは兄弟ではない。

そして、ここGFハウスはーーー孤児院では、ない。

 

 

この場所は嘘で塗れている。

だってボクらは知っている、このハウスの先に待っているコトを、外の世界で生きるモノを。

大人達の話し声も耳に仕組まれたモノの正体も、日常に紛れ込んださまざまな意図も。

でもその中で、嘘じゃないものも、ちょっとだけ存在している。

 

 

『で、今日無事にモデルガンを貰ったって訳か』

 

 

 

この、頭に直接響いてくる、知らないのに知ってる彼の声もその一つだ。

 

 

 

『そう。一発だけ撃ってみたけど、さすがオモチャ、威力めっちゃ弱い』

『そりゃそうだ。・・・で、そのモデルガンの製造年月日と製造場所は?』

『2013年の7月、MADE IN CHINA。ちょっと分解してみたけど、発信機壊すのに使えそうな部品は特に無し。ていうかこの前のラジコンヘリの部品で十分って感じかな』

『了解。やっぱ空振りだったか』

『やっぱってことは、予想はしてたんだ』

『まあな。とにかく次は前も言ったが布が欲しいな。できれば絹』

『それ意外と難題・・・絹って高いじゃん、用意してもらえるかな』

『いけんだろ。こっちのママと違って、お前んとこのママは頭抜けてんだから』

『まぁ確かに、未だにご褒美が欲しいから頑張ってフルスコア取ってるっ思ってるもんね。間違いって訳でもないけど、ボクがフルスコア取ってりゃそう簡単には出荷されないってことを知ってるなんて思ってもいないだろーな。・・・あれ、なんだか行ける気がしてきた』

『なんか適当な理由付けておけば疑われることはないだろ。上手くやれよ』

『ハイハイ。このボクにお任せあれ、なんてね』

 

 

頭に響いてくる声に、ボクも頭の中で返す。

今ボクの周りに人はいない。

それもそのはず、今は夜、兄弟達も、ママだってこの時間はもう寝てる。

それでも聞こえるこの声は、“ここには居ない誰か”の声だ。

ボクにとっての彼は、知らないけど知ってる人。

彼にとってのボクも、知らないけど知ってる人。

だってボクらは、()()()()()()()()()だったから。

 

 

『じゃ、今度はキミが話す番。聞かせてよ、キミの大切な兄弟の話』

『お前ほんとあいつらの話好きだよな』

『まあね。いつも結構楽しみにしてる。ボクには、同じレベルの兄弟いないし』

『・・・』

『ノーマンとエマだっけ、その子達の名前』

『・・・あぁ』

『いい子達だよね。羨ましいな。ボクもそういう兄弟が欲しかった』

『・・・あぁ。アイツらは、こんなとこで死んでいいヤツらじゃない。・・・絶対、逃す』

『うん。そのために今頑張ってるんだもんね』

『お前のことも、利用させてもらう・・・アイツらのために』

『わかってるよ。ボクらは同じだからね。キミの願いはイコールボクの願いさ。好きなだけ利用してくれ』

『あぁ。ありがとな』

 

 

礼には及ばない。だってボクもキミのことを利用している。

この孤児院、否人間飼育場から大切な兄弟を逃がそうとしているキミを。

だってキミは、その兄弟を助けるために、死ぬつもりだろう?

そんなのは許さない。ボクを置いては逝かせない。

じゃあ同じタイミングで死ねばいい?だめだ、それじゃボクの願いに反するだろう。

 

キミの願いはボクの願いだ。

だからボクはキミの兄弟を逃す手助けをしよう。

 

そして、ボクの願いはキミの願いだ。

だからキミにはボクのために生きてもらわなきゃ。

 

 

兄弟が大切なキミとは違って、ボクにはキミしかいないんだから。

 

 

 

『じゃあそろそろ寝るな。おやすみ、レナ』

 

『ん。おやすみ、ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーレイ』

 

 

 

 

 

 

たった一つ、ボクが強く願っていること。

 

知ってるのに知らない、一番近くてでも遠い、そんなキミに、

 

面と向かって「はじめまして」を言いたくて。

 

 

 

 

 


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