北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
D×Dで、主人公は転生オリ主だが、天然。かなりの「良かれと思って」の使い手である。提案したり行動したりした結果、結果的にはいい方向へ進むけれど、関係者が引っ掻き回され疲れたり吹っ切れたりする中、本人も巻き込まれたり傍観したり。
主人公の能力は強化されていくんだけど、成果を出すのは、それと関係ない部分が多いという、ね。
なお、主人公は基本善意の人です。
気付けば俺は、マッチョなマユなし兄弟のグチを延々と聞かされていた。
カサンドラに着いたはいいが、門番に捕まってしまったのだ。
それで当初は取り調べ、というか聞き取りというか。どこから来たのかとか、目的はとか聞かれていた―――
―――はずなのだが。
ノドが乾いたのでビールを出して飲み、物欲しそうな顔をした門番たちに渡してしまったあたりから、空気というか様子がオカしくなっていったんだよな。
門番たちの名前は、ライガとフウガというらしい。
名前のコンセプトは雷神風神だろうか。体格も顔も似ているし、兄弟だろうと思って、そう聞いてみた。
地雷だった。
「俺たち双子の父親の名はコウガ。俺たちに良く似た風体の、大きな身体に筋肉がよく付いた豪傑だ」
弟のほうの、ライガが何やら語りだしたのだ。
はあ、それで? と、軽い気持ちで聞き返した俺に、返ってきたのはヘビィー級のシロモノだった。
「そして長兄のシュウガ。これまた立派な体格の豪傑よ。そんな我らには、弟がいてな……我らの誰にも似ず、優男な見た目と、小さめの体格でな。それで名前がミツなのだ」
あっ(察し)
察しはしたが、続く言葉を止められなかった。
だって何て言えばいいのか、わかんないだろ。こんなん急に振られてもさあ。
「コウガ、シュウガ、フウガ、ライガと来て…… ミツ?」
「よせ、ライガ! それ以上考えるな!」
「まさか母者は……」
「よせと言っている!!」
兄のフウガが止めるが、ライガの連想は止まらない。
うん。まあ、なんだ。
この時代に、DNA鑑定の技術はたぶん残ってないから、真相は闇の中だけどもさ。
状況証拠的に、真っ黒だよな。これ。
こういう時には、アレしかないよな。
「お前ら。何も言わずに、飲め」
俺は、今の調理技術スキルのレベルで一度に出せるだけのビールを並べて、混乱する兄弟に差し出した。
言い争っていた兄弟は、動きを止めて目線を合わせた。
そして一つコクリと頷くと、同時にビールに手を出して、一気にあおった。
自棄酒の始まりである。
後は問題がどうでもよくなるまで飲ませて、それから「母親が同じなら、兄弟だろ」という妥協点を用意してやれば、そこそこ丸く収まるだろう。
真相を突き止めて暴露しても、誰も幸せにならないという厄ネタだからなあ。
以前もなんか、家庭板案件にブツかった記憶があるのだが。あの時も確か、女性の側の浮気が問題だったな。
この世紀末。女性が少ないようなので、立場も強いのだろうか。
それとも、複数の男に取り合いをされるのがよく有るので、チヤホヤされたり流されたりしている間に、自然とそうなるのだろうか。
よし。深く考えても、闇しか出てこなさそうなので、ここで考えるのを止めよう。
きっとそれが賢明だな。間違いない。
さて、ついでだ。酔っ払ったフウガとライガから情報収集しようか。
そもそもカサンドラについては、あんまり覚えてないからな。
覚えているのは、ボスキャラくらい。
兜の横の部分の角を外すと「お前それ、頭の中から出したの?」と思えるほど長くてたくさんのムチが引き出せる、たぶん名前はウィグル獄長? くらいだ。
さて。まずは基本的なことを聞こうか。
ここって、そもそもどういう所なの?
えっ? ラオウの支配下だったの?
奥義書を奪った後の拳法使いとか、裏切り者とか、敵集団の捕虜とかを放り込んでいた、と。
それで日々、拷問とかやってたの? なんで? 趣味?
いや、生かしとくのって食糧とかいるじゃん。物資も服とか布とかいるじゃん。
なんでわざわざ生かしておくの? どうせ殺すなら、じわじわ拷問とかしなくても、スパッと殺ればいいじゃん。
なのに、なんでそんな方法を?
「むう……」
「言われてみれば……」
その発想は無かった。みたいな顔をする、酔っ払った門番ども。
「年中無休、二十四時間連続勤務で門番をやらされるという、超絶ブラック労働の中、物を考える余裕も無かったが」
「我らも、もっと考えるべきことが色々とあったようだな」
なんかサラッとまた闇が出てきたんだが。
えっ。交代要員いなかったの? 強いから大丈夫って言われて? だからいまだに独身? いやそこは聞いてない。
「だがトキ様がここを解放されてからは、変わった」
「ああ。あの方は、まさに聖者だ」
うん? ちょっと待って。そこのところ、もう少しくわしく。
ふんふん。
元々、トキはここに収容されてたのね。自分のいた村を、村丸ごとを人質にされてラオウに捕まった、と。
で、ラオウとしては、戦ったら負けるかもしれないし、唯一仲のいい弟なので、戦いたくなかったからトキをここに閉じ込めてたと。たぶん、殺したくも無かったんだろうね。
カサンドラを維持させてた理由のひとつは、それかなー。
それで?
ケンシロウが来て、色々ぶっ飛ばして、トキを助けて去っていったと。
去った後は、また元の木阿弥? お前らもう少しガンバレよ。
ああ、もう泣くなうっとうしい。
そんで?
ああ、ラオウの敗北と拳王軍の解散が伝わって来ちゃったと。
その混乱の中に、トキが弟子のアミバを連れてやって来て、かつてのケンシロウバリに色々ぶっ飛ばして、そのままこの地の改革に取り掛かったと。
えっ、アミバ?
アミバって、そんなキャラだっけ?
南斗聖拳でも、才能は有るけど性格がダメだからって、奥義を一つも教えてもらえなかったヤツよ?
トキの偽者やって、患者を人体実験の材料にしてたヤツよ?
素直にトキの言う事には従ってた? 無口だが、善意で動く事が多い?
誰、それ。
見てみたいような、見たくも無いような。
どうしようかなー。ここに来たのは、ポイント稼ぎでしかないんだよなあ。
でもポイントは、道中で思いがけずに入っちゃったんだよなあ。
[P:-2→0 トロフィー(銅):バイクで事故る を達成しました]
[P: 0→4 トロフィー(銀):飲酒運転で事故る を達成しました!]
うん。ちょっと酔ってたせいで手元が狂ってね?
まさか南斗人間砲弾の練習の受け身が、こんな形で役に立とうとは海のリハクでも見抜けなかっただろうさ。
そしてポイントが4になった以上は、もちろんアレを習得している。
[P:4→0 調理技術:4を習得しました!]
出せるようになったのは、魚類と卵と酢と日本酒だ。
魚類は淡水魚も海水魚も問わず。ただし貝類や甲殻類、軟体動物は含まない。つまりイカタコカニなどは含まない。
だがそれでも、充分以上に恵まれてはいる。本マグロもサケもイワナも舌平目も。戻りカツオも眠りサバも城下カレイも時不知も。食べ放題! 食べ放題だ!
これに酢も出せるようになったという事は、寿司か? と思ったのだが。
米が、無い。
オコメが、無いのだ。
ふざけんなよ? マジでふざけんなよ?
ここまでしておいて、米だけオアズケとか、お前、マジでふざけんなよ???
加工品の日本酒がアリで米がナシってなんだよ、おい。
食わせろや! 種モミで作ってみたけど、麦の酢飯って、なんか違うんだよ!
卵は地味にうれしいけどさ。そろそろ主食下さいよ。日本人の魂的に、主食=米なんですよ。
先祖代々、縄文あたりから何千年と食べ続けてきたんですよ。
元々は熱帯の植物だったのに、亜寒帯の北海道でも育つまで魔改造するほど、愛してるんですよ。
ただのモヒカンチームの時は、村人たちとの交渉でがんばらないと、手に入らなかったんだよ。
シンの所に居ついて、多少は楽に手に入るようになったけどもさあ。
まだ気楽に食べられる、主食ってほどじゃないんだよな。
カンストか。やはりカンストさせないと、いけないのか。
そうすると、あと5ポイント要るんだよなあ。
あっ、南斗聖拳も入れると、7ポイントか。
しゃあない。トキに会いに行くか。ラオウの現状とかも、伝えておいた方がいいだろうし。
フウガ、ライガ。じゃあ、俺行くわ。ほどほどなとこで止めとけよ。
お水(水とは言っていない)ここに置いておくからな。
ラベルに上善如水って書いてあるけど、気にするなよ。じゃあ、またな。
●上善如水
じょうぜんみずのごとし。日本酒である。水の如しというだけあって、飲みやすくはある。スッキリとした味わいの、ヘンな安酒のような臭みのない上品な酒である。
割とお値段がお手ごろ。でも常温で日本酒が置いてある所は、劣化してるだろうから避けような。