北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~   作:far

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北斗神拳のアップデートはお済みですか?

 気付けば俺は、アミバと一緒に右手の平を左右に激しく振っていた。

 

「いやいやいやいや」

 

 目の前には、トキ(絶好調で酔っ払い継続中)が白い気(?)を両手から放出して、その反動で宙に浮いている。

 それだけでもドン引きだというのに、そのままゆっくりとその場で回転して、気のビームで自分の周囲360度を薙ぎ払い始めたのだ。

 俺、これ見た事ある。でもそれは生身の人間じゃなくて、ロボが、というか翼の生えたガン○ムがやってたと思うんだ。

 

「見たか! アミバ! モヒカン! これが北斗ローリングバスターライフルだ!!」

 

 ローリングバスターライフルって言っちゃったよ。

 なんでも北斗って付けとけば許されると思うなよ?

 それは南斗がアニメでやらかして、原作者に怒られた事ですでに失敗した道だ。

 

 それと、どうだって言われても。その。正直、リアクションに困る。

 見ろよ、アミバなんかこの前からずっと困り顔のままだぞ? 誰得だよ。

 

「北斗神拳は人体の内部からの破壊を極意とする拳法だ……」

 

 お、なんか語りだしたぞ。

 一応聞いとけ、アミバ。ひょっとしたら、今のトキなら秘伝の一つや二つ、うっかりポロッと言ってくれるかも知れん。

 

「だが、学ぶ者は皆、一度はこう思う。普通に殴った方が早くないか、と」

 

 言っちゃったー!

 ヤ、ヤロウ…… 北斗神拳のタブー中のタブーに触れやがったぜ…!

 

「兄、ラオウも幼少の頃、不思議そうな顔でそう言っていた」

 

 ああ、あの人は言いそうですね。

 そもそも剛拳って、どう考えても、外部からの破壊の拳ですもんね。

 

「正直。戦いの中、それも実力が近かったり上の相手に、正確にピンポイントで経絡秘穴を突くのは厳しいものがある」

 

 お、おう。ぐいぐい来るなあ。

 大丈夫? あとで頭抱えない?

 面白いから、止めないけどもさ。このまま、行けるとこまで行ってくれ。

 

「百裂拳について、不思議に思ったことはないか? 一撃入れればいいのに、なぜ100回も殴るのか、と。あれはな。100回も殴れば、そのうち一回は秘孔が突けるだろうという、数撃てば当たるのを期待しての技なのだよ」

 

 いや、アンタもその百裂拳使ってたよね? 天翔百裂拳使ってたよね?

 

「60代以上続く継承者の中にも、あるいは開祖すらも、チマチマ秘孔を突くのが面倒になった者がいたのだろう。北斗神拳に、普段は眠っている70%の筋力を引き出す呼吸法やら、岩山両断破のような明らかな外部破壊技も多々ある事がそれを証明している」

 

 ふーむ。で、結局の所、何が言いたいんだろう? オチは?

 酔っ払いの話にそんなもんは無いだろ、と言われれば。まあ、その通りではあるんだが。

 で、どうなの。そのへん。

 

「うむ。私が伝承者となる以上は、そのあたりも変えていいのではないかと思ってな」

 

 なんかまた、とんでもない事を言い出したぞ。

 見ろ。アミバが困り顔から、メッチャ困った顔になってるじゃないか。

 

「秘孔は医療と補助のみ。狙えたら無論狙ってもいいが、基本は殴り合い。気による攻撃を奥義とする。それが私の考える、私の北斗神拳だ!」

 

 うわあ、脳筋くせー。こいつはラオウの影響のニオイがぷんぷんするぜー。

 というか、モロにラオウの戦闘スタイルじゃん。何だかんだ言って、お兄ちゃん大好きですね。

 柔の拳を極めたのに、実はラオウの使う豪の拳が使いたかったと原作で言ってましたもんね。

 

 ふむ。

 

 じゃあさあ。ついでだから、南斗の拳もちょっと混ぜてみない?

 ほら。殴り合いなら、あっちの方が専門だし。

 鍛錬方法だけでも、ちょっと取り入れてみるとかさ。

 うん。俺が基本だけなら知ってるから。というか、ついさっき南斗聖拳:1覚えたから。

 

 うん。まずは試してみるのね。よし。じゃあ行こうか。

 たぶん、中庭とか城壁の上のあたりとかなら、あると思うんだ。大砲

 

 

 

 まずは目標となる人物の、移動方向と速度から目標地点を先読みする。

 そしてその地点へ、上空から。それも出来る限り垂直に近い角度で到達できるように、弾道を計算する。

 その弾道に必要な速度と角度を割り出す。そうしたら、速度から必要となる火薬の量が決まる。おっと、体重の影響も計算に入れるのを忘れるな。

 ともに飛ぶ仲間がいるのなら、ここで微調整だ。ブツからぬように、角度か射出のタイミングをズラせ。これは声を出しても、アイコンタクトでもいい。

 

 ここまでの計算は、もちろん素早くこなさなければ意味は無い。相手が止まってくれていたり、距離が近ければ話は別だがな。

 熟練の南斗の拳士は、だいたいこんなもん、とカンだけでこの調整をやってのける。

 更なる達人は、もはや大砲など必要とせずに、自分で跳ぶ。

 

 用意が整ったのならば、導火線に火をつけろ。大砲に入れ。

 爆発からは、気で身体を守れ。むしろ積極的に受け止めろ。その分、勢いよく飛び出せる。

 上手く飛び出せたなら、姿勢と重心に気を配れ。バランスを崩すと、変な回転を始めることがある。

 空中での回転で今の自分の位置や上下の感覚を失えば、待っているのは無様な墜落だけだ。

 だが空中での機動に慣れたのならば、自分で回転を作れ。攻撃の威力を高めるも良し、攻撃のタイミングを操るも良しだ。

 

 空中での動き方が分かったなら、後は攻撃と着地だ。

 位置取りに成功したならば、南斗水鳥拳奥義 飛翔白麗 だろうと、南斗鳳凰拳奥義 天翔十字鳳 だろうと、竜玉(ドラゴンボール) ナム流 天空×(ペケ)字拳 だろうとマネできるぞ。マネだけだがな。

 これが! これがっ!

 南斗聖拳の基礎訓練、南斗人間砲弾だ!

 

 まあ、俺ら北斗の使い手なら、訓練しなくてもこの辺の基礎から奥義まで、水影心でパクれるかもしれないけど。まだそこまで、北斗神拳の腕がないからなあ……

 

 ああ。北斗神拳なのかどうか今となっちゃあ心底怪しいけど、俺も一応、北斗の拳を使えるんだわ。

 ん? どれか秘孔を突いてみろ?

 いいけど、なぜアミバを差し出す。そこは自分じゃないのか。

 

 いいけどさ。心配すんな。死なせたりするようなのは一個も知らないから。はい、上血海。これで片足が動かなくなりましたー。

 そう慌てるなよアミバ。ヘンな秘孔をむやみに突こうとするなって。

 上血海って言ったろ。これ、一時的な効果しかないから。そのうち勝手に治るから。

 で、どうよ? 他にも毒に強くなる安騫孔とか、動きを鈍くする椎神とか、簡単な秘孔ならいくつか使えるぜ。

 他には身体能力が上がってるのと、按摩や鍼も、お灸も出来るぜ。

 

「単に秘孔を突くだけでは、効果は薄い。こうして効果が出ている以上、気を秘孔に流し込んで肉体に影響を与えてはいるのだから、北斗の拳を名乗っていいだろう。北斗神拳かどうかは別にして、お前もまた、北斗の拳士だ」

 

 マジかよ。やったぜ。なんせこれ、味皇さまからツボを教わったら覚えられたスキルだったからなあ。

 スキル名が北斗神拳になってるけど、実は不安だったんだよ。

 良かった良かった。

 

 じゃあ、景気付けに飛ぼうか。

 よし。まずはアミバ行け。遠慮すんな。お前もかつて、南斗聖拳を学んだ事があったんだろう?

 だったらお前だって飛びまくった日々が…… えっ、ないの?

 あ~。そっか。きっと、その前の段階で止められちゃってたんだな。

 よし。ならなおさら遠慮すんな。かつて教えてくれなかったヤツを、今、俺がここでお前に教えてやるから。

 大丈夫大丈夫。行ける。行けって。飛んでみれば、案外いいもんなんだって。

 

 さあ。行くぜ! 南斗名物! 人間砲弾!! ヒャッハー!

 

 

 


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