北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
気付けば、なんか別ゲーが始まっていた。
「そうだ! いいぞ。手首の返しを生かせ! もっと早く! もっとリズミカルにだ!」
俺、なんで中華ナベに砂入れて回転させてるんだろう……
しかも効果音が聞こえる。
上手く振れたら ティロン♪ でダメだとブッブ~! だ。
「左右にブラつかすなよ! 振るって言っても前後に揺するだけ。引く時を意識しろ。強く、早くだ!」
む。こうか? おお、なんか砂の動きが違う。
ナベの中で、輪を作りやがるぜ。
「中華ナベは火の通りがいい。良すぎて、焦げやすい程にな。だから素早くかき混ぜるために、振るんだ。基本を忘れるなよ!」
ティロレロティロン(↑)♪ ティラリラティン(↓)♪
なんか、どっかのコンビニの入店の音がしたんですけど。
「よし。ナベはそんなもんでいいだろ。感覚を忘れないように、日々反復連取を忘れるなよ!」
いや、それはいいんだけど、どっかのコンビニの自動ドアの開閉音がしたんですけど。
疑問に思う俺を他所に、師匠は次のミニゲームの用意を始めた。
どうやらイベント進行中らしく、俺の言う事を聞いてくれないのだ。
単に、素でそういう性格だという疑いもあるが。
「カーカッカッカ! ここの厨房になぜかあった中華包丁だ! 俺の予備にしようと思ったが、使わせてやる。感謝しろよ!」
[一分以内に、魚を三枚にさばいて下さい 01:00]
ウィンドウにそう表示されて、すぐにタイマーが減りだした。せめて、ヨーイドンでやってくれ。
ところで、まな板はあるが魚が見当たらないんだが。
これは、自前で出せということかね。
え~っと、三枚下ろしにしやすい魚は…… 中華包丁はデカいから、魚もある程度の大きさは欲しいな。サバで行くか。
おらぁ! まずはウロコを落とすぜぇ! 落としたら、ヒレの下から切れ目だぁー!
そのまま胸ヒレの辺りへと包丁を進めて、頭を落とせ! 落ちたらケツの穴まで切腹だぁー!
開いた腹に手を突っ込んで、ワタを片側へ寄せて、引きずり出せ! 血あいに切れ目を入れるのも忘れるなよぉ~。
ふう。刃物を扱って何かを切ると、テンションが上がるな。モヒカン的に。
タダの危険人物にしか思えないんで、以降は気をつけよう。
なんか師匠もそんな感じだった気がするが、そこは気にしない事にしよう。
え? 師匠が誰かって? 秋山って名乗ってたよ?
さーて、水を出してサバを洗ってと。残り時間は、と。
いかん。残り時間が10秒切ってる。このままだと間に合わん。
だが、普通にやって間に合わないなら、普通にやらなけりゃあいい。いくぜ。
即興奥義! 南斗 三枚下ろし!
どうだ。時間には間に合ったと思うが、最後は包丁使わなかったんで、そこのところの判定はどうだ!?
でんでんでんでーん♪
[P:1→4 ミニゲームをクリアしました!]
[P:4→9 秋山醤に弟子入りしました!]
[P:9→8 調理技術(中華):1を習得しました!]
よっしゃ、クリアした。
でもさ。え、なに、このメッセージにも効果音付くの?
今回だけ? それとも、俺の知らない間にアップデートでもあったの?
それとやっぱこの師匠、ジャンか。秋山としか聞いてなかったぞ。まあ祖父の方じゃないだけマシか。
それにモヒカンの時はモヒカンリーダーにスキルが変化したけど、調理技術は変化しないということは、他のジャンルの調理技術も取れるのか?
だとすると、それらの師匠もどっかにいるのかよ。ていうか誰だよ。
あ~…… あとどっかツッコんどくとこあったっけ。
どうでもいい事に悩んでいると、ようやくイベントモードが終わったらしい秋山師匠がこちらに歩いてきて、こう言った。
「ああ、その中華ナベと包丁は弟子入り記念にくれてやる。ちゃんと炙って消毒しとけよ」
アッ、ハイ。ありがとうございます。
じゃあちょっと火ぃ吐くか。ヨガファイヤーっと。
ああ、うん。俺、吐けるんだ。ヨガファイヤー。
ヨガを2に上げたらさあ。なんか吐けるようになっちゃったんだよね。
高レベルのモヒカンだけに、火とは相性が良かったみたいなんだわ。
汚物は消毒だー! ってやつだろうね。
それと秋山師匠は、前回カレーうどんを作ってたら、どこからともなくやって来た。
鍛えた身体に、傷だらけと来たら拳法使いだろう。そう誤解されて捕まっていたらしい。
ロクに食う物もなくてクサっていた所に、カレーのスパイスの香りを嗅ぎつけて来たんだそうな。
えっ。調理技術がある人って、食材を出せないんですか? って聞いたら、お前は何を言っているんだっていう顔をされたのは、今でも解せない。
いや、もしかするとこの食材出し放題な仕様は、プレイヤー限定か、それともあの味皇由来のスキルなせいかもしれない。
ともあれ、いきなり出てきて料理をさせろ。という秋山師匠の要求に、代わりに調理技術を教えてくれ。と俺は条件を返した。
そして契約は成立して、なぜかミニゲームが始まった。というわけだ。
いやあ。カサンドラに来たのは正解だったな。
主にトキのおかげで、思った以上にポイントが稼げたし、こうして調理技術も高まったし。
さーて。調理技術(中華):1では何が出せるかなー?
…………えっ。
何も出せない……だと……?
純粋な、調理技術だというのか? バカなっ!
調理技術スキルといえば、食材の調達ができるようになるスキルではなかったのか!?
うろたえる俺の前に、出待ちをしていたようなタイミングでウィンドウが立ち上がる。
[P:8→2 調理技術:6を習得しますか?(Y/N)]
なん……だと……
……そういえば、調理技術はこれ以上上がらないとは言ってなかったな。
これ以上を目指すには、師匠を見つけてくださいって言ってたな。確か。
つまり、そういうことか。純粋な調理の腕を上げれば、その分調理技術スキルを上げられるということか。
フッ。つまりはまだ、お米への夢は閉ざされていない、という事だな?
よかろう。ならばポイントのほぼ全てを賭けてでも、行かねばなるまい。
せっかくだから、俺は調理技術を6にするぜ!
[P:8→2 調理技術:6を習得しました!]
7に上げるのは、さすがに遠そうだな。
さて、6で出せるようになった食材は?
内蔵を含む豚肉と、キャベツなどの葉野菜か。うん。まさに中華な食材だね。あとは焼酎もイケるようになったか。
でも、お米はおあずけ、か…… 知ってた。
ああ、知っていたさ。
ウィンドウの中の人は、そこまで甘くないってさ。俺、知ってたよ……
でもさあ。夢くらいは…… 見ても、いいじゃあないか。
こんな、世紀末の世の中でも、さ。
さて。
秋山師匠! 新しい食材出せるようになりました!
早速料理して、皆で食べましょう。酒も出しますよ!
切り替えていこう。声出していこう。勢いだけで乗り切っていこう。
宴会だ、ヒャッハー!!