北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
気付けば、俺は大量のヘンな汗を流していた。ヤバイ。
サウザーが、ヒザを矢で射られてしまったのだ。
犯人は、南斗の誰かでも、ジャギでもない。ターバンのガキだ。
本当に、あいつは何者なんだろうか。
なお、場所は相変わらずカサンドラだ。秋山師匠にミニゲームなしでシゴかれていて、帰れないのだ。
刀削麺と、餃子のニギリを教え込まれているんだが、これって基本技術なんだろうか。確かに、調理技術(中華)のスキルは2に上がったんだが。
そして代わりにスキルポイントが0になった。定期収入みたいに、稼げないもんだろうか。
それで、練習の過程で大量に出来上がった餃子で、宴会だー。とヒャッハーしようとしたところでだ。それを聞きつけたサウザーが遊びに来ちゃったんだよな。
そんで機嫌よさそうに、参加してやるから光栄に思い、感謝するがいいとか言っちゃってる所に、矢が飛んできてね。
いやー。さすがのサウザーも騒ぐ騒ぐ。
なんたって、ヒザに矢だもんな。普通は、引退して衛兵になるしか道がなくなる、戦う者としては致命傷。
でもここには奇跡の聖者、トキがいるわけで。
「ムウ…… これは私でも治せないかもしれん」
でも、そのトキがこんな事を言っちゃったわけで。
ヤバイ。
何がヤバいって…… あ~…… その、なんつーか……
ターバンのガキに、ボウガン渡したの俺です。
いや、待ってくれ。違うんだ。本当に違うんだ。
別にサウザーに恨みがあったわけでも、排除を企んだわけでもないんだ。
何の意図もなく、ただ何となく、あのガキに武器を渡しただけなんだ。
他意どころか、何の目的も無かったんだ。
スキルを見直してたら、モヒカンリーダーのスキルで武器が出せるのに気付いて、ああ、これをアイツが持ったら強いだろうなあって思っただけなんだ。
悪気は無かったんだ! 善意も無かったけど!
「しかしあのガキは、いつも小さなナイフを使っていたのだが。ヤツめ、どこで飛び道具などを手に入れたのだ」
いかん。サウザーが武器の出どころに疑問を持ってしまっている。
ここは話を逸らさねば。
「それよりも今は、まず治療しないと。一応は、南斗のリーダーなんだし」
だが治療法が…… などと未だにハッキリとしないトキだが、治せないとは断言しないあたり、実はジラして遊んでいる可能性が否定できない。
そこんとこ、どう思うよアミバ。
「!?」
急に話を、それも際どい話題を振られて困惑した顔をしたが、それでも質問には答えてくれた。
ジェスチャーで。
いや、しゃべれよ。わかんねえよ。
「アミバよ……」
おっ。さすが師匠。トキには判ったか。
「口で言ってくれるか」
わかんねえのかよ!
いや、俺もわかんなかったけどもさあ。
アミバが言いたかったのは、サウザーが普通の体ではない、という事だった。
ああ、あったな。そんな設定。
心臓が逆位置にあって、秘孔の位置もズレているから北斗の技のほとんどが無効という、対北斗神拳用とも言える体だったっけ。
やはり殴った方が早い、というトキの悟りは正しかった…?
「かくなるうえは仕方が無い。サウザー、覚悟しろ。二人は良く見ておけよ」
どうやら、そのトキが覚悟を決めたらしい。
ゴゴゴ…… と気が全身から立ち上がり、筋肉が盛り上がっていく。
「ま、待て。何をする気だ!? アレだぞ。患者には説明をしないといけないのだぞ。いんふぉーむど・こんせんとだ!」
それを言うなら、インフォームド・コンセント……って合ってるのか。棒読みな発音なんで勘違いしたわ。
ちなみに、医者が患者に病状やら、なぜこの治療が必要なのかを事前に説明して、患者の了解を得る事を言うんだぜ。
急にヘタれてバカっぽくなったサウザーが、わたわたとうろたえるが、トキは止まらない。
「患者を救うためなら、私はなんだってしよう。そう、なんだって、だ……」
なんかどっかの元祖看護人をモデルにした、バーサーカーみたいな事を言い出した。
そしてそのまま、有無を言わさず、サウザーの両足に手を突き立てた!
「ぬう、あれは刹活孔……」
アミバがどこぞの大往生流の使い手のようなセリフをつぶやいた。
先ほど、トキに言われたとおりに口で言う事にしたらしい。素直か。
聞き返すのが面倒くさいので、こちらで解説しよう。
セッカッコー、もとい、刹活孔というのは、一時的に生命力やら身体能力やらが上昇する秘孔だ。場所は、両方の内腿の三つの点だな。
ただし、効果が切れたらすごい弱ってしまう、諸刃の剣。素人にはお勧めできない。
なお玄人のトキ(ゲーム版)は、強化を無くしたバーションを敵に打ち込むという、外道戦術を取る模様。
ふむ。
察するに。生命力を一時的に強化して、傷を治すつもりか?
いや、そんな早くは治らんだろう。
そう言いたいけど、ここ北斗ワールドだし、ゲームっぽい世界だからなあ。
どうなるかな。これ。
まっ、いいか。明日にはわかるだろう。
それはそれとして、餃子パーティーだ。ビールも出すぜ。
焼くぜー。焼いたら、熱々を口に放り込んで、冷たいビールで流し込むぜ、ヒャッハー!
具は豚ひき肉と、ニラとネギとキャベツ! 基本は大事だー!
ニンニクはアリとナシの両方を用意するぜ。料理は愛情だー!
えっ。師匠が秋山醤なら、料理は勝負じゃないのかって?
お前の腕でそう口にするのは百年早いそうだよ?
代わりにこう言っとけってさ。
それ、奥さんの信条ですよね。とは言えなかったぜ。
そうら、マッシュしたジャガイモとチーズの揚げ餃子だー!
豚肉系として、ラードも出せるようになったおかげで、揚げ物が出来るぜヒャッハー!
個人的には、植物系の油がいいんだけどな。動物系の油は胃に重いぜ。
豚バラ肉と、チーズをカレー粉で炒めて具にするぜー!
茹でた鶏肉とチーズとトマトも具にするぜー。
じゃがバタにワサビ(大量)も具にするぜー。
もちろん、焼いたらロシアンルーレットだ! ヒャッハー!
なお。ワサビ入りはサウザーがおいしくいただけませんでした。
そして、翌日。
そこには元気に跳ね回る、サウザーの姿が!
良かった。治ったかー。
治らなかったら、南斗鳳凰拳のスキルを極めて、俺が南斗のトップに立とうかなー。なんて考えちゃってたよ。
いや、良かった良かった。これで調理技術を極める方向でポイントを使えるぜ。
ん? あれ?
サウザーの横に、いつの間にかターバンのガキが……
あっ。ボウガン構えてる。
あっ。
●鉄鍋のジャン!
てっかのジャンと長年読んでいたが、てつなべのジャンらしい。
料理は勝負という信念を持つ、傲慢な少年が料理勝負しまくる少年チャンピオンで連載していたマンガ。
その後Rとか2ndとかその後の展開もあったが、なぜか鉄牌のジャンとして麻雀マンガでも主役をやっていた。
●ヒザに矢を受けてしまってな
スカイリムという、世界的に売れた洋ゲーの中のセリフ。昔は俺もお前のような冒険者だったのだが、ヒザに矢を受けてしまってな。と街中の衛兵が言うのだが。
どの町の衛兵のセリフパターンの中にも仕込んであったので、ネタと化してしまった。
●どっかの元祖看護人
FGOのナイチンゲールさんです。昔の人とは言え、あのエロ霊装はいいんだろうか。
なお看護婦という単語は消えたらしい。看護師と言わねばならないようだが、気にしすぎではなかろうか。
●大往生流
魁!男塾より。
知っているのか雷電。でおなじみの雷電さんの使う拳法の流派。