北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
流竜馬の外見に転生。早乙女研は無かったが、その場所に行ってみたらゲッター見つけちゃったオリ主だったが、敵はインベーダーではなくマギウスや邪神なデモベ世界だった…! 違和感があったとしても、目をグルグルさせて勢いで乗り切れ。
気付けば、俺は修羅の国にいた。
なんでや。
ちょっと前に、ひとりで行かなくってもいいやと悟ったとこだったじゃねーか。
うん、まあ、アレだ。別に記憶が無いわけでも、いつの間にか来ちゃってたってわけでもない。
ただ、ちょっと、ね。ちょっとだけ、ね。
お酒が、ね…?
違うんだ。聞いてくれ。
別に酔った勢いで水上スキーで暴走して、なぜかたどり着いちゃったとか、そんなんじゃあないんだ。
傾向は似てるけど、だいぶ違うんだ。
まず俺が水上バイクで遊んで、もとい、水上バイクの試運転をやっていた時まで、話はさかのぼる。
パワーはあるが、3人乗りなんで重いせいで思ったよりも動かない1100STXをブンまわして、何とかジャンプしながらの横回転、独楽のような一回転を成功させた時だった。
「おう。ニイちゃんいいもん持ってんなあ。ちょっと俺たちにも貸してくれや」
あまりにも
「オッケィ!」
向こうも、えっ、いいの。みたいな顔をしていたが、その時の俺は気にしなかった。
今思えばだが、軽くビールを飲んで、マリンスポーツを楽しんで、ようやく技が決まったところだったんで、軽くハイになってたんだな。
声をかけてきたのがモヒカンじゃなかったのも、あったのかもしれない。
ヒザまでの短いズボンに、上半身はチョッキを引っ掛けただけの半裸に、なぜかおそろいのハチマキ。
「うわぁああー!」「ヘッタクソー!」「次オレなー!」
ベルギーのリンデマンス・カシスをビンのまま回し飲みしながら、水上スキー初体験で失敗する仲間をサカナに盛り上がっている。そんな彼らは、地元の漁師たち。
朝の漁が終わって帰ってきたら、何か変な事をしているモヒカンがいる、という事で様子を見に来たらしいのだ。
うん。否定はしづらいな。
だが話してみれば、分かり合える事もある。とりあえず飲みながら話そうか、と酒を入れれば、もっと分かり合える事もある。
今回は、カシスビール飲みたいなー。でも、これ麦以外も使ってるから、厳密にはビールじゃないんだよなー。
そう思いながらも、未練がましく試してみたらイケた。
日本だと発泡酒の分類になってるせいか、例えばクリアア○ヒとかは調理技術スキルで出せなかったんだが。
海外には発泡酒という分類が無く、全部ビール扱いなんでイケたんだろうか。割と判定ガバガバだな。助かるけども。
リンデマンス・カシスは、どこぞの谷に生存しているらしい自然酵母、つまりは野生の細菌の作用を利用して作ったビールに、カシスの果汁を入れたものだ。
ピーチ、アップル、ストロベリーなど他にも多数のシリーズがあるんだが、残念ながら俺が飲んだ事が無いので、取り出せない。本当に残念だ。
もう二度と飲むことは無いんだろう。そう思うと、なぜ飲んでおかなかったのかと、後悔がつのる。
まあ、世界五大ビールの一つとまで称えられた、リンデマンス・クリークは出せるんで、あんまり後悔は重く無いんだがな!
さくらんぼの果汁を加えて、熟成させたビール。その豊かな風味はビールというよりも、もはやスパークリングワインに近い。
軽やかな甘みとさわやかな酸味と、ほのかな、しかし確かな苦味。バランスが大事だという事が良く分かる味だ。
意外と炭酸強めで、ぐいぐいイケるぞ。
「あっ。モヒカンさんだけ、別のやつ飲んでるー!」「ズルイですよ。こっちにも下さいよー!」
ちっ。見つかったか。
しょうがねえなあ。ひとり一本だけだからな?
で、その後だ。
まあ、わかるだろうが、俺らはそのまま昼を大幅に過ぎても、飲んでてな?
奥さんたちやらが、様子を見に来ちゃってな?
うん。スッゲー怒られた。
なんでか、俺も怒られた。
奴らに水上スキーの乗り方を教える代わりに、サーフィン教えてもらって、一緒に遊んでたからだろうか。
ああ、うん。それは一緒に怒られるわ。
いい大人が、昼間っから酒飲んで、遊んでんじゃないよ! という恰幅のいい奥さんのお叱りは、まっとうすぎて反論できなかったぜ。
そんな奥さんも、俺がおワビとして渡した小麦粉と肉には、ニッコニコであったが。
時はまさに世紀末。野良のモヒカンがウヨウヨいるわ、村の支配者や、時に村人たちすらも後先考えずに略奪に走るわで、ロクに交易も出来ないからなあ。行商人自体、いるんだろうか?
この漁村も魚介類と塩は豊富に手に入りそうだけど、それと引き換えに何かを手に入れるっていうのは、その機会すらも少ないんじゃなかろうか。
そして飲んでいた俺たち若い衆に、手に入った臨時の食糧と酒。
この二つを前に、残った漁村の人たちはこう思った。
「ワシらも飲みたい」
彼らの顔を見てそれを悟った俺は、深くうなづいた。
「オッケィ!」
そして、宴会が始まった。
その中で「そもそもアンタ何やってたんだ」という質問が、ようやく飛んできたんで「修羅の国に行こうかと思って」と答えたんだよな。
そうしたら、漁村の人らの中に、場所を知ってるって人がいてさー。
追加の食糧と酒で、案内してやろう。って言うんで、お願いしちゃったんだよな。
つい、流れで言っちゃってなあ…… で、そのまま翌日に出発だよ。あ、やっぱキャンセルで。とか言い辛いよな。
そんで水上バイクで小船を引いて、修羅の国へ。
2日かかったが、意外と近かった。
案内役の人とは、陸地が見えたところで、小船を切り離してお別れした。さすがに修羅の国に上陸したくはないらしい。
そして俺がひとりで上陸して、だ。ヨガテレポートでの行き来は出来るだろうか、と試そうとした。その時だ。
首の後ろに衝撃を受けて、意識が無くなった。
誰にやられたかもわからんが、首筋にトンッ! と手刀を入れるアレをやられてしまったらしい。
ああ。ゲームオーバーか。
そう思ったんだが、どうやら違うらしい。
意識を取り戻す事ができたし、取り戻した後も、俺はモヒカンのままだった。
ならばコンティニューか? と思ったが、それも違うようだ。
ここは修羅の国らしいし、そもそも俺は死んでいないという。
まあ、つまりは。気を失わせて攫うという、いわゆるハ○エースされてしまったという事らしい。
で。その狙いだが。
ジャラジャラと、固い小さなものがブツかりあう音がする。
タバコの煙が漂い、殺伐とした空気がピリピリとしている。
チャッチャッ、と固いものを積み上げる音がして、コロコロとサイコロが転がった。
「左、八」
「六」
サイコロの目が読み上げられると、真四角の机を囲んだ男たちが、無言で机の上の物を取っていく。
俺も、その中の一人だ。
そして手元にそろえたそれらを並べると、その中から一つを選んで前に置く。
置いた物を横向きにして、宣言した。
「ダブルリーチ」
うん。何をやっているかは、分かる人には分かってもらえると思う。
麻雀だ。
なんでだよって言われると、俺も困るんだが。
なんか、修羅の国の支配者であるカイオウ相手に、こんな事を言ったヤツがいるらしいのよ。
「麻雀で勝負だ!」
なんでか、それが通っちゃったらしくてね?
しかも、勝っちゃったらしくてね?
それ以降、拳法での殺し合いの他に、麻雀での勝負もしないと修羅になれなくなったらしいよ?
バカじゃねーの。
そう思うけども、そのおかげで命拾いした身としては、なんとも言いがたいものがある。
元々修羅になるには、同類を100人殺さないといけないらしいんだけども、まずそれだけでも大変だ。
拳法家や武術家100人探すだけでも、結構な手間がかかる。しかも探しているのは自分だけではない上に、時間経過とともに他人に狩られて減っていくのだ。
そこに、麻雀での勝負も加わる。
当然ながら、殺した相手とは麻雀を打てない。
だからこうして、倒した後に麻雀で勝負してから殺す、という手順が普通なんだそうな。
普通ってなんだっけ。
なお麻雀には4人メンツが必要なんで、3人倒してメンツをそろえなければいけないのが面倒なんだと、上家に座った修羅候補さんがグチっていた。
いや、知らねーよ。
なんだろうなあ。一応は自分の命のかかったバクチだっていうのに、イマイチ緊迫感が持てないんだけども。
他のメンツはピリピリしてて、場の緊迫感はあるんだけどなあ。なんでだろう。
やはり、いざとなったらヨガテレポートで逃げればいいや。と思っているせいだろうか。
あ。ラス牌。これで流局かな。
ってツモった。
裏ドラは……無いわ。ダブリー、ハイテイ、ツモのみ。ある意味レアだな。
はい、4000オールね。さあ、次の局いこうかー。
今作のサブタイトルは、何となく銀魂っぽくしたやつと元ネタがあるヤツです。
「たいていの問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に、心の中で解決しているものだ」とか。
ちなみにガンダムXより。体も心もケアする医者テクスさんのお言葉。
今回のは咲-saki-より「もし神がいるのなら、前に向かう者を好きでいてくれるはず」ネットではネタキャラ扱いの池田ぁ!の発言。