北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
気付けば、俺は羅将ヒョウと海上で闘っていた。
何があったと聞かれても、それはこっちが聞きたい事だ。
なんか周りでも殴りあったり、斬りあったりしてるしさあ。
なんでか、船の上だしさあ。しかもなんか木の船か、これ? でかいけど、核戦争後にどこで造ったんだよ。そもそも残ってたのか、こんなでかい木。
ああ、もう。どうしてこうなった。
「戦いながら考え事とは、余裕だな!」
うおっ、危ねっ。
横合いから、向こうの戦闘員こと修羅の一人が仕掛けてきやがった!
「卑怯者め! タイマンの概念は無いのか、キサマらはー! ってだから危なっ!」
いかん。挑発してみたが、乗ってこない。無言で攻撃してくる。こいつらガチだ。
っと、いけね。カスッた。今、カスッたよ。
しかも連撃来るか。腕の外側に刃物つけてるから、よけにくいんだよ!
ああ、もう。船の上では戦いにくいわ! 誰か陸地持って来い!
ん? 待てよ。
揺れるから、踏ん張りが利かなかったり、バランス崩すんだよな。
浮けばいいじゃん。
「とうっ」
後ろにジャンプして、空中で座禅を組み、そのまま空中にとどまる。
これぞヨガの奥義のひとつにして、トキ流北斗神拳の奥義、有情破顔拳の構え!
「ハ?」
船のあちこちで起こっていた戦いが、ほんの一時だが止まった。
空中で座禅を組んだまま浮いているモヒカンが、すいーっと浮いたまま、戦場を横切っていったのだ。そうもなろう。
うん。浮いたはいいけど、船が止まっておらずに動いてたみたいでね?
空中に止まった俺を、置いてけぼりにしてしまったのだな。
それでまあ、完全に置いてけぼりを食らう前に、奥義のひとつも放っておきたいものなんだが……
俺、まだ有情破顔拳、撃てないんだよね。
というか、北斗神拳の闘気を使った奥義、平たく言うとビーム出すやつ。アレ全般が、まだ使えないんだわ。
北斗神拳:4までしかまだ取れてないからなあ。5にしたら使えるかもしれないけど、まだ上げますか? ってウィンドウさんが聞いてくれないんだよね。
何かイベントかフラグが足りてないんじゃないかな。ゲーム的に考えて。
代わりにヨガファイヤーでも撃っとくか。
木製の帆船という燃えやすそうな船の上だったんで自重してたけど、まあいいじゃん。
北斗ワールド的に考えて、これはアレだ。消毒だから。
さあくらえい、逃げ場の無い炎を! 消毒消毒ぅ!
「ヨガファイヤー! ヨガファイヤー!」
「ちょっ! おまっ! 覚えてろよー!!」
あれっ?
あそこでわめいている、今しがたちょっとコゲちゃった、見覚えのある鉄仮面は。
ジャギ! ジャギじゃないか! 生きとったんかワレェ!
よし! もう2、3発撃っとこう!
さて。
船が遠ざかっていくが、ひとまず俺は無事なので、問題ない。
少なくとも、俺は問題ない。
少し、落ち着こう。そして何があったのかを、思い出そう。
え~っと、なんだ。まずは、なんだったか。
ウダ、じゃなかったユダのトコから帰ってからだな。そこでトキ先生にラオウの説得を頼まれたんだっけ。
というのも、トキ先生が北斗神拳の伝承者になるのに、障害になりそうなのはラオウだけ。
ケンシロウは、素直に譲ってくれそうだしね。静かに生きろとか言っとけば、拳を封じるとかしなくていいだろうし。先代伝承者のリュウケンにも、そんな兄弟弟子いたらしいしな。
だがラオウだと、そうもいかない。しかし殺すとか拳を封じるというのは、実の兄弟だし、やりたくない。
だが、素直に伝承者の座を譲ってくれそうにも無い。そこで、トキ先生はこう考えたのだ。
よし。修羅の国に捨てよう。と―――
ホント。覚醒してからは、聖者じゃねえよな。このトキ先生は。
具体的には、もともと修羅の国に渡ってカイオウを倒して、国を立て直すのがラオウの目的だったんで、それを後押ししようって策だな。
ラオウもトキ先生もケンシロウも、生まれは修羅の国らしいしな。
だがこの策には、ひとつ問題があった。
ラオウがニートと化していて、動いてくれそうにない。という致命的な問題が。
かつてケンシロウも、ユリアとイチャコラしていてロクに修行も就職もしないという時代があったらしいが、似たようなものだ。
ケンシロウの場合は、そんなケンシロウを見ていられなくなったシンが彼に活を入れてくれた。結果的にだが。
ラオウにも、修羅の国行きという活を入れて蘇らせよう。トキ先生には、そういう意図もあるのかもしれない。
で、まあ。説得してみたその結果なんですが。
ダメだったんで、酔いつぶして寝てる間に船で運ぼう。
そんな強制執行になってしまったんだな、これが。なんか、気がすむまでニートしたいとか言われちゃってなあ。
で、俺もその酔いつぶす場にいて、一緒に飲んでたんだよな。
秋山師匠の 芹菜爆肝(豚レバーとセロリの強火炒め)が美味かった。臭みを消すために、炒める時にウォッカをからめていたんだが、どっから持ってきたのやら。
まさか秋山師匠も、調理スキルで食材を出せるようになったんだろうか。
まあ、それはいいや。
重要なのは、そこで俺も酔いつぶれたらしい、という事だ。
それで俺も、寝てる間に船に乗せられてたんだよな。たぶん。
なんせ、なにか騒がしいなと目が覚めたら、修羅の国の軍勢に襲撃されてて、船の上だったもんなあ。
羅将ヒョウとか居てビビったわ。
あれ確か、ケンシロウの実の兄ちゃんなんだよな。原作であんま目立ってなかったけど。
なんかヒョウだけが握ってる情報あったはずだけど、覚えてないなあ。なんだっけ。
それと修羅の国でもナンバー2なんだったよな。そもそも羅将がカイオウとヒョウと、あとハンの3人だけなんだよな。
トップの羅将、その下の郡将、あと修羅という大雑把なくくりの組織だったはず。
まあ、拳王軍やウチも、トップと幹部と雑兵くらいのくくりだけどな。
それとあの帆船は、今思えばだけど、たぶん赤シャチだったかいう海賊の船じゃないかな。
ラオウを修羅の国に送る約束してたはず。
まさか、その船でラオウを捨てに行く事になろうとは、思ってもいなかっただろうさ。
でも待てよ。あの船、ジャギも乗ってたよな。ラオウの他にも、この際だからといらない人材を投げ捨てる事にしたのか。
と、いう事は……
あれ? 俺も捨てられてる?
修羅の国に向けて、捨てられてる?
え? モヒカンぞ? 我、モヒカンぞ?
食糧と酒をいくらでも出せる、KING軍の幹部ぞ?
しかもトキ先生の生徒でもあるんだが。
え? なのに捨てられたの? えっ。マジで?
えっ?