北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~   作:far
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自分らしくなくとも、戦ってしまう時もある。人間だもの。

 気付けば、また戦闘だ。なんでだよ、修羅の国だろ。麻雀しろよ

 

 いや、麻雀しろよってのも大分オカしいけどもさ。

 

 あの後、よくわからんが勝手に帰るわけにもイカンだろうと、海岸まで水上バイクでたどり着いたんだが。

 ハンパにマジメな判断をしたのが悪かったのか、運悪く見回りの修羅に見つかっちゃったんだよな。

 

 しかも彼。修羅の中でも実は最強だったんじゃないかと言われる、名も無き修羅さんです。

 十五歳になる前に、赤シャチ率いる海賊たちが殴りこみに来たのを、一人で叩き返した男。

 砂蜘蛛忍道なる、謎の流派の使い手で、砂にもぐってそのまま移動したり、忍棍妖破陣なる謎の棒術で元斗皇拳のファルコを一方的にボコったりしていた男。

 修羅編の幕開けとして、修羅の強さを読者にアピールしようとした原作者さんが、うっかりやりすぎちゃったんじゃね? と言われている程に強い男である。

 

「さ、()とうか」

 

 当然、そんな男と戦いたいわけもなく。俺は即座にスキル麻雀:1を使って、雀卓その他を取り出した。

 だがヤツは、そんなものは知った事かと、雀卓を手刀で切り裂いて、襲い掛かってきたのだ!

 

 おい、デュエルしろよ。ひるみながらもそう言う俺に、彼はこう返した。

 

「俺は、それが苦手でな…… そのせいで名を名乗る事も許されん」

 

 え、そんな理由?

 あ、ヤベエ。麻雀セット出したの、早まった。

 

「こんなもののせいで…… 俺の、俺はぁ!!」

 

 めっさキレて、麻雀牌に八つ当たりしてらっしゃる。

 今のうちだと、ヨガテレポートしようとしたら、その勢いのままにこっちへ飛び掛ってきた!

 

 毒蜘蛛手刃滅把妖牙(どくぐもしゅとうめっぱようが)

 

 あっ。これアカンやつや。

 突き出した手が、なんかもやっとしてる。あれ闘気やん。絶対闘気やん。

 しかも毒蜘蛛って言ってるし。あれは食らったらアカンやつや。

 

 じゃけん、ヨガファイヤーで迎撃しましょうねー。

 微妙に斜めに撃ち出す、対空ヨガファイヤー。ゲームやってる時、微妙に欲しかった技だったりする。今となっては知る由もないが、その後の続編では採用されたんだろうか。

 

 しかし、吐き出した炎は切り裂かれてしまった。

 

 うおぉぉぉぉぉ。緊急回避ー!

 上体をそらして、そのまま足を伸ばす。こちらの心臓を狙ってきた手を、何とか肉まででしのいだ。

 

 これまでにないピンチに、思考が加速する。

 

 血が。痛みが来る。追撃は? 足を戻せ。跳べ。逃げるか? いや戦え。勝て。なんで?

 

 ―――お前も、北斗の拳士だ―――

 

 トンッ トンッ トトンッ

 

 自分の秘孔を突いた。痛みを止め、出血を抑え、視力を上げる。

 ああ、そうだ。俺も北斗神拳の使い手で、北斗の拳士だ。トキ先生は、そう言ってくれた。

 

 気付けば、この世紀末。記憶も無く、そのくせよくわからない仕様のスキルやらシステムは存在していて、よくわからないキャラもいっぱいいて。

 目的も無くフラフラして、成り行きとノリとヒャッハーで生きてきたけども。

 うれしかった事もあったんだ。料理を覚えて、それを色んなヤツに食ってもらって。

 そうしたらいつの間にか、ゲームのNPCみたいに思えてどうでも良かった村人とかも、俺の料理を食ってくれるヤツらなんだって、生きてる気がしてきてさあ。

 ガラにもなく、モヒカンをまとめてリーダーやってヒャッハー控えめにしてさあ。

 そんで力もいるなって、シンのトコに転がり込んで、そのまま居ついて。

 ちょっとカサンドラ行ったら、トキ先生と出会って。それでよう。それで、あの人は認めてくれたんだよ。

 

 俺も北斗でいいって、認めてくれたんだよ。

 

 しかも、こんなどう見てもアレなモヒカンを、弟子にまでしてくれたんだぜ。

 だからさあ。いくら原作で強キャラムーブしてたからってよお。

 

「お前なんかに、負けてられねえんだよぉぉ!!」

 

 大 伝衝裂破

 

 ここまで盛り上げて使うのが南斗の技なのはどうかと思うが、これが今最も使える遠距離技なんで仕方が無い。

 腕を2倍程度にまで伸ばしながら、伝衝裂破を撃つ。

 途中から伸ばしていく事で、小さく振り出して大きく弧を描く事が出来るのだ。

 

「チッ。少しは出来るか。だがこの千手魔破にて地獄へ落ちよ!」

 

 伝衝裂破で一撃を入れる事はできたが、浅かった。やはりアレは連打できてこその技なのか。

 そして向こうも遠距離には遠距離と、手裏剣を無数に投げてきた。さすがは忍道と名乗るだけはある。

 だが北斗神拳に飛び道具は効かんぞ。

 

 そもそも、よけてさえやらんがね。

 ヨガテレポート!

 

「消えた!?」

 

 千手魔破は、投げた手裏剣が途中で消えて、消えたそれらがなぜか足元から襲い掛かってくるという謎の、まさに忍術というべき技だ。

 消えた。とは本来、俺が言うべき言葉だったろう。

 二指真空把で投げ返しても良かったが、正直、あんなにたくさんの手裏剣って投げられた事が無かったんで、安全策をとらせてもらった。

 

 それに、こっちの方法だと攻撃もできるしな。しかも背後からだ。

 

「こっちだ。喰らえ、北斗! 百裂拳!

 

 若干デトロイト気味なフリッカーも混ざったので、連打速度は若干落ちたが、キッチリ百発殴っておいた。

 そして、とうとうあのセリフを言う時が来た。

 

「お前はもう 死んでいる」

 

 そしてあの悲鳴も聞いた。

 

「あ…… あ…… あべし!」

 

 うむ。ワカっているヤツだ。せめて安らかに眠れ。ちゃんと有情拳にしといたから、苦しまずに逝ったはず。

 

 [P:25→29 トロフィー(銀):名も無き修羅を倒す を達成しました!]

 

 おっ。なんか久々な気がするな、ウィンドウさん。元気だった?

 えっ、まだなんかあんの?

 

 [称号:非情の拳 を入手しました。北斗神拳:5を習得できるようになります]

 [P:29→19 北斗神拳:5を習得しますか?(Y/N)]

 

 あー、そっかあ。これかあ。必要なフラグって、これだったかあ。

 非情と言うか、殺す覚悟決めて殺したのって、そういやこれが初めてだったなあ。

 今までは、ノリとかポイント目当てとか。まさにゲームのノリでバイクで撥ねたり、手刀でスパッといったり、秘穴でうわらばしたりしてたもんなあ。

 

 ……冷静に考えると、ゲーム感覚で殺人するとか、めっちゃヤバいヤツだな。

 

 でも相手は野良モヒカンだったし、世紀末だし、向こうも殺しにかかってくるから、まあ、ギリセーフで。

 それと北斗神拳か…… どうしよっかなあ。5にまで上げたら、マジで伝承者候補見えてくるんだよなあ。

 

 ん~…… まあ、いっか。取れるもんは取っとこう。いつまでもポイントあるとも限らないしな。Yっと。

 

 [北斗神拳:5を習得しました!]

 [称号:悲しみの拳 を入手しました!]

 [最終奥義:無想転生 を習得しました!]

 

 えっ。

 いや、ちょっと待って。

 確かに、ニートなラオウとか、フィギュアマスターなシンとか、最初の出会いがゲンジロウとか、ついさっき捨てられた疑惑とか、色々と悲しみの心当たりはあるけども。あるけども。

 それで習得できちゃっていいの? 最終奥義って、それでいいの?

 

 確かに、ラオウとかもトキが病のせいで、自分との決着をつけるまでも無く、戦いの途中で戦えなくなった事に涙した事よりも、ユリアが病気で長生きできないという事実の方で覚醒しちゃってたけどもさあ。

 

 必要な悲しみがわりと軽い。軽くない?

 あって困るもんじゃなし、助かるっちゃ助かるんだけどさ。

 

 これでいいのか、北斗。

 

 

 






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