北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
気付けば、種モミを奪ってバイクで走っていた。
「ヒャッハー!」と楽しそうに叫んでいる俺がいた。
ボーナスポイントがついた。
[P:0→4 トロフィー(銀):種モミを村長から奪う を達成しました!]
「アハハハハハハハ」
笑いがこみ上げてきた。もう、笑うしかないだろ、こんなん。
半ば事故で使い切っていたポイントが入ったのはうれしいが、今はそんなものはどうでもいい。
トロフィーとかいう、新要素だってどうでもいいぞ。
わけがわからないって?
大丈夫だ。俺もわからない。
だが、何があったのかを語るくらいはできる。聞いてくれ。
頼むから聞いてくれ。一人で抱えていると、頭がオカしくなりそうだ。
助けると思って聞いてくれ。
ほら、さ。俺、スキル覚えてただろう?
バイク取り扱いと、北斗神拳と、調理技術な。
で、まあ、この先も増えていったら、何がどれだけのレベルなのか、把握が面倒になるな。そう思ったのが、発端だ。
こういうゲームシステムのある世界に飛ばされたヤツ特有の、アレを唱えてみたんだよ。
「ステータス、オープン!」
何も起きなかったんだがな。
そうなることも見越して、酒場のマスターにムリ言って泊めてもらった部屋で、一人で実験してるんでまだいいんだが。
やっぱり、少しばかり恥ずかしかった。
それからも、状態確認やら、ウィンドウオープンやら、開けゴマやら、開けポン○ッキまで、思いつく限り色々言ってみたんだが、ダメだった。
「どうすればスキルとか確認できるんだよ……」
そうボヤいた時だ。
急にウィンドウが出てきて、そこにはこう書いてあった。
[現在の所持スキルを確認しますか?(Y/N)]
今思えば“スキル”“確認”の二つの単語がカギだったんじゃないか、と思うわけだが。
あの時は色々試した後だったんで、すぐさまYを押したんだ。
「あなた の 現在の 所持 スキル は―――」
まさかの、音声ガイダンスだった。
しかも、合成音声だった。単語でブツ切りになった状態で、平坦な機械音声だった。
ゆっくりかよ。いや、ゆっくり以下かよ。せめて初音ミクを見習え。
そうツッコミを入れていた俺だったが、それでは聞き流せない情報も流れてきた。
「―――調理技術:1 モヒカン:3 を 所持 して います」
聞き間違いと思いたかったが、そうではなかった。
モヒカンだ。
あの時は、精神的なショックで思考が止まった。
でもそういう時ほど、直感が働いて物事がうまく進む時ってあるだろ?
「“スキル”“解説”モヒカン」
考えた結果ではなく、単なる勘で、俺はウィンドウさんにそう聞いていた。
[P:6→5 解説:1を習得しますか?(Y/N)]
ああ、うん。タダじゃ教えてくれないのね。
俺はYに指を通しながら、納得とともに精神的な再建を果たしていた。
なお、解説はそのレベルまでの解説しかしてくれなかった。
モヒカン:3の内容を知ろうとしたら、解説も3まで上げて下さいとウィンドウに出て、少しイラッとした。
それで感情のままに、ウィンドウさんを平手でスパーンとやったら、解説:3が手に入っていた。
[P:5→3→0 解説:3を習得しました]
いや、違うから。今のは、Yを選んだんじゃないから。
そう訴えたが、キャンセルという概念は無いらしい。俺のポイントがゼロになったのは、こういうわけだ。
それで、あとは種モミだが。
まあ、だいたい想像が付くだろう? え、つかない?
でもモヒカンスキルのせいだってのは、わかるよな?
モヒカンは、1で髪型が整髪料も散髪もなしに、モヒカンになる。なお色も自由に決められる。
そして2になると、飲食が不要、とまではいかなくても、かなり必要が無くなる。そして筋肉質になる。
これは荒野でヒャッハースタイルで生存するには、必須のスキルかもしれない。
デメリットとしては、行動がモヒカンになる。
つまり普通には働かなくなり、略奪で生きていこうとしてしまうようになる。らしい。
だが3になると、このデメリットも軽減されるようだ。チンピラとは違い、幹部は軽々しく動かないということだろうか。
その軽減された衝動でも、種モミに対するソレはかなり強烈だった。
なんか疲れたんで、外の空気でも吸おう。そんな軽い気持ちで外に出た俺の前に、村長らしき他人がいたんだ。
でもって、手に袋を持っててね。
「来年の実りが、今から楽しみじゃ」とか言ってんの。
ふ~ん。麦かな? 種モミかなんかか?
そう思った瞬間。それが欲しくて欲しくて、仕方が無くなった。
確かに原作の北斗の拳でも、それは畑にまく種モミだからという村長から、強引に奪っていた敵キャラはいた。
だがまさか、ここまで強烈な衝動ということは、まさか俺、そのキャラだったりするの?
さすがに、そんな一発キャラの顔とか覚えてないぞ?
考えを逸らそうとしたが、ダメだった。
衝動に、どうしても逆らえない。
このままだと、村長を殺してでも奪い取ろうとしてしまう。
せめて理性が残っているうちにと、村長を不意打ちで気絶させて、袋を奪い取った。
そこで袋を返して、何食わぬ顔で部屋に戻れば、村で生きていく道もあったかもしれない。
だが、ダメだ。モヒカンとして、種モミを奪わずにはいられない以上、村にいたらまた種モミを見かけるたびに、俺はそれを奪おうとしてしまうだろう。
去るしかあるまい。
俺は種モミの詰まった袋を持って、バイクにまたがり、走り出した。
種モミは返せって? いや、何を言っているんだ。
世紀末では、食糧は貴重なんだぞ?
持って行かずして、どうする。
さて。逃げるぜ、ヒャッハー!
これでもう、書き残したネタは無いっ…!