北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~   作:far
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ニシヘヒガシヘ。

 

 気付けば、なんかまた別ゲーが始まっていた。

 しかも今度はミニゲームじゃなくって、シナリオのあるキャンペーンだ。

 

「おーっと、杉本ここでドリンクを取り出して飲んだ。これは栄養補給か? いやっ、なんと筋肉が盛り上がり、マッチョ化したぞ!? これはどういう事だー!?」

 

 実況のブラボーおじさんこと、須原椎造のアナウンスが響き渡る。

 どういう事だとは、こっちが言いたい。

 そしてマッチョになった杉本は、その筋肉を生かして高速でたこ焼きを形成、ひっくり返し始めた。

 別にマッチョにならなくても出来たと思うし、焼き上がりが早くなるわけでもないんで、ほぼ意味はないと思うんだが。

 まあ、観客へのパフォーマンスだわな。

 

 うん。そろそろ何をやっているのか説明しよう。

 皆さんも、何事かわからなくて混乱してるだろうし。

 

 現在、たこ焼き対決中です。

 

 うん。端的過ぎてわかんないよね。

 わかった人は、訓練されすぎです。日常生活にその意識を持ち込まないよう、ご注意を。

 

 そもそもはさ。前に、こう決意した事があったんだが、覚えてるかな。調理技術(中華)を上げようって思ったやつだけど。

 で、まあ当然ながら、そういう場合は師匠やら先生に聞きに行くよね。俺もそうした。

 すると秋山師匠がこんな事を言い出したんだ。

 

「そうか…… お前もそろそろ、料理は勝負、という段階に挑む時期か」

 

 どんな段階だよ。

 そう思ったが、口に出してはツッコめなかった。だって秋山師匠にヘタにツッコむと、殴られるんだもん。

 そんなもんどうにかできるだろって?

 そりゃ殴られても避けられるし、殴り返したら勝てるけどさ。そんな事して破門されたらどうすんだよ。まだまだこの人からは学ぶ事が多いんだぞ。

 

 それでさあ。勝負するには、相手が必要じゃん?

 師匠を相手にするにはまだ全然技術が足りてないし、アミバを相手にするのはなんかヤだ。

 そんな俺に、師匠が薦めてくれたのが味将軍グループへの挑戦だった。

 

 うん。味将軍グループ。

 

 とうとうそこまで来たか。

 その単語を耳にした俺の、素直な感想がそれだった。

 そっかー。この北斗ワールドも、そこまで浸食を受けちゃったかー。

 と、そんな感慨にふけるくらいには、余裕があったな。

 

 その余裕も、えっ俺がソレと戦うの? と気付いた瞬間に吹っ飛んだけどな。

 

 いや、戦わなくてもいいだろうと反論はした。

 だが、そこにシンまで出てきて、戦わざるを得ない状況にまで追い込まれてしまった。

 

「味将軍グループ。奴らは、食糧の流通をその手に握り、食を支配する事で拳王無き世に、覇を唱えるつもりだ」

 

 マジな顔をしてそう言うシンに、俺はどんなツッコミを入れれば良かったんだろうか。

 

「いや、ないだろ」

 

 とりあえずはそうツッコんでおいたけども。

 だがそんなオーソドックスなツッコミでは、この流れは止められなかった。

 チクショウ、ツッコミ力が足りなかったぜ。

 

 でも考えてみれば、腕力でヒャッハー極まりない世紀末世界を支配するぜ。というラオウをはじめとする拳法家スタイルよりも、物資の流通を支配する事で世界への影響力を確保する、味将軍グループの方がすげえまっとうな気がする。

 

 まあ、使うスキルが拳法系か料理技術かの違いだけ、という気もしないでもないけどな。

 

 

 と、まあ。そんなわけだ。

 そんなわけでテキトーに各地を回って、目に付いた味将軍グループ関係者に料理勝負をしかけて回る。そんな別ゲーが始まってしまったんだな、これが。

 

 最初はなんと、サザンクロスだった。

 まさか地元にまで、味将軍グループの魔の手が伸びていたとは。とはシンのセリフ。確かに地元だけど、地元って言うな。なんか笑えるから。

 

 相手は、弁当屋の及川というヤツだった。

 冷めてもうまい、ご飯やおかずに工夫があるいい弁当だったんだが……

 

 このサザンクロスに、弁当という需要はあまり無かった。

 

 秋山師匠と、師匠がいつの間にか育てていた助手軍団が経営する食堂が、すでに需要を満たしている。

 わざわざ弁当を持ち帰って食べるよりも、暖かいメシを食堂で食べるのを選ぶ客が多数派を占めた。

 そしてここは世紀末世界。町の外へ出かけるのに持って行くのは、弁当ではなくてもっと保存がきく携帯食か、調理前の食材だ。だって移動距離が長いもん。

 他所の町まで、マジで遠いんだよ。バイクが無かったら、俺もあちこちへ行く前に心が折れていた。きっと最初にたどり着いたあの村で、時々種モミを奪いながらも居ついていたんじゃなかろうか。

 

 そんなわけで、何もしないでもツブれかけていた弁当屋に、料理勝負を仕掛けてみた結果。

 弁当 vs 出来立て熱々の料理という、あまり負けようが無い勝負が成立した。

 相手の足元を見て、勝負内容をこうしたとも言う。

 

「お前は弁当屋だよなあ? 弁当屋なら、弁当で勝負するのが当たり前だよなあ?」

 

 俺のこの言葉に、最終的には首を縦に振った及川の顔は、実にくやしそうで。うっかり愉悦を覚えかけてしまったのは、ここだけの話だ。

 

 そして当然のように勝利して、次に出合った味将軍グループの手先は、なんとトラックを持っていた。

 バイクは割りと残っているが、車両は意外と少ない。バギーとかならまだしも、大型車両となれば初見だ。

 しかもデコトラだった。電飾が光まくっていた。

 

 サザンクロスからカサンドラへと移動する途中の、名も無き宿場町。

 そこで出会ったそのトラックに乗っていたのは、出っ歯にピンクの服に分厚いメガネの関西人という、えらい農い目のおっさんだった。

 冒頭の、杉本というのがそれだ。

 そしてそのトラックは、実は移動店舗でもあり、たこ焼きの屋台でもあった。

 

 宿場町で、料理人同士が出会った。ならば勝負でしょう。

 

 そんな謎理論が働いているらしく、気付けば勝負となっていた、というわけだ。

 そしていつの間にか作られた会場で、どこからともなく現れた解説者と観客の前で、こうしてたこ焼きを焼いているわけで。

 

 うん。どういうわけなんだろうね。

 

 正直、俺にももうわかんないんだけども、もう流れに身を任せてどうにかするしかないかなって。

 ただ問題が、ね? 俺さ。タコ、出せないんだ。

 仕方が無い。ブタの角煮でも入れとくか。あと鶏レバーとか、豚ホルモンも入れて肉シリーズでまとめればいいだろ。

 生地に刻んだショウガ入れときゃ、しつこくも感じないだろ。たぶん。

 あとは二度焼きだな。表面をラードでカリッとするまで焼けば、その香ばしさでいくらでも食べられるだろ。

 あとはソースだけでなく、ポン酢も選べるようにしとけば口直しもできる。

 よし、行くぜ勝負だ!

 

 ところで。こんな事してて、俺の当初の目的の調理技術(中華)は上がるんだろうか。

 そして、この旅は次回も続くんだろうか。

 教えて。秋山師匠。

 

 








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