北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~   作:far
<< 前の話 次の話 >>

50 / 65
明日のためにその1って踏み出す方向がわかんない。

 

 気付けば、湿度が上がっていた。こう、むわっとした感じで。

 原因というか、犯人は羅将ハン。カイオウ時代の修羅の国トップスリーのひとりで、3位の人。

 

 ジャギの魔改造に、北斗琉拳でも混ぜてみるか。

 

 ちょっと味噌でも加えてみようか。そんな感じで、料理にアレンジを入れるような、軽い気持ちだった。

 そうして呼んでみた彼は、ひたすらに濃かった。

 

 なお、料理のアレンジはちょっとしたものに抑えておけ。隠し味だ。隠しておけるくらいの、ほんのちょっぴりのアレンジに抑えるんだ。いいな?

 さもないと、南斗家庭板案拳の奥義がまたひとつ生まれてしまうだろう。メシマズ戦隊アレンジャーの新入隊員は、増やしてはならない。イイネ?

 

 嫁の飯がま○いスレの住人も、増やしてはいけないのだ。あのスレ自体は面白いんだがな。

 だいぶん前にサブタイを付けるのはやめたらしいが、秀逸なものが多くて好きだった。

 【隠しきれない】【隠し味】とか【味覚の秋】【死角の味】とか【これ美味しい!】【今度作るね!】、【嫁の料理は】【当たりつき】、【カレーには】【生魚】などなど。恐るべき内容が手に取れるようだった。

 なお、記念すべき100スレ目のタイトルは【それでも俺は】嫁のメシがまず○100皿目【愛してる】だったのには少し感動した。そしてそれでもまずいのはまずいんだな、とちょっと泣いた。

 

 それを知っていたのに、アレンジを入れてしまった天罰なんだろうか。

 修羅の国の統治システムを構築するのに(部下が)四苦八苦していたラオウに頼んで―――あん? ラオウ本人は四苦八苦してないのか? ラオウは君臨するだけだぞ? 反対意見は圧殺してくれるけど。なお結果が気に入らないと壊すけど。

 まあ、そんなラオウに頼んで派遣してもらった講師は、なんというか、アレだ。ひっじょ~~に、アレだった。

 第一声からして、アレだったもん。

 

「キサマ、童貞ではないなっ!」

 

 コレだった。

 

 なお、指さした相手はバットだった。

 ケンシロウがすごい顔になった。原作でも、あんな「う……裏切られた!」って顔はしてなかったぞ。

 シンにユリアをさらわれた時でさえも、あんなショックを受けた顔じゃなかった。

 

 でもあいつ、チャンスがあっても「ユリアへの愛を貫く」とか言って手を出さないからなあ。

 ひょっとしたら、童貞をこじらせかけているのかもしれん。

 リン、早く何とか……しちゃったらケンシロウが事案っちゃうのか……

 クッ、詰んでやがる!

 

 そんな感じに俺が現実逃避している間にも、話は進んでいたらしい。

 本人曰く、童貞でないがゆえに円滑なコミュニケーションに長けているハンは、ケンシロウにトドメをさしていた。

 

「お前の兄は、この間結婚したぞ。当然、すでに童貞ではないっ!」

 

 これが致命傷だった。

 このお話では、ケンシロウはまだ修羅の国へと行っていない。

 ゆえに、存在自体を知らなかった実の兄の存在を知り、同時にその兄が結婚したという事を知らされるという、言わば家庭板案拳の二重(ふたえ)の極み。

 これが北斗琉拳流の家庭板案拳か。やるじゃねえか。

 

 というか、バットから始まりトドメに至るまでが、やけにスムーズなんだが。

 ひょっとして狙ったか、こいつ。

 まさかの、ラオウからの刺客なのか?

 

「ねえよ。どういう方向の刺客だよ」

 

 そうは言うがな、ジャギ。この世界、ヘンな方向にこそ奥が深いんだぞ? 何が起こるか、わかったもんじゃない。

 見ろ。あそこのバットを。リンに対して、なぜかわいてきた罪悪感を解消しようと、必死で謝ってるだろ? あの姿を1時間前に想像できたか?

 

「それじゃあ、本人に聞いてみようぜ。オイ、あんた、ハンっつったか。あんた何しに来たんだよ?」

「我が肌が粟立ち、その予感がここへと導いたのだ」

 

 わかる? わかんない

 

 あちこちでそんなアイコンタクトが交わされる。

 そして次に誰がハンに話しかけるかの、妙な緊張感が部屋を満たす。

 だが、こういう時にこそ使うべきもんだよな、弟子ってやつは。

 というわけだ。行け、ジャギ。君に決めた。

 

 じゃあ、あとは若いもんに任せて。皆さん、仕事に戻りますか。

 ええ、今日も忙しいですからね。さあ、お昼ご飯の仕込みに入らなきゃ。

 あ~。忙しい、忙しい。忙しくって、抗議の声が聞こえない~。

 

 

 そうして、放置した結果のジャギが、こちらになります。

 

 

「ああ…… もうこのまま朽ち果てて、プランクトンの栄養になりたい」

 

 なにがあった。

 

 すっかり気力がなくなっている。なんでや。そこは魔法戦士になってて、俺に立ち向かってくる所だろ。

 それと陸にプランクトンはいねえよ。

 

「童貞でないとは言え、愛ある行為にあまり恵まれなかったようだな」

 

 どういう意味だ、ハン。俺の弟子に何をした。いやわりとマジで。

 

「北斗琉拳の拳士とは言え、俺は唯一魔界へと落ちてはおらぬ」

 

 そうだな。理由は聞きたくないけど。

 そういう俺を無視して「童貞ではないからだっ!」と、どこからともなくグラスに入ったワインを取り出し、ポーズを決めつつ語りやがった。

 お前、その理屈だとお前の師匠のジュウケイも童貞って結論になるけど、いいのかそれで。

 

「ゆえに魔闘気は使えぬ。普通の闘気は使えるがな」

 

 マジかよ。北斗琉拳の講師として呼んだ意味が、ほぼ消えたんだけど。

 

「だが魔界へと落とす方法は知っている。魔界とは一種の境地! 北斗琉拳の使い手が、怒りや憎しみに染まった時に至るもの」

 

 哀しみに染まった時に、北斗神拳の使い手が無想転生の境地に至るみたいなもんか。

 喜怒哀楽とあるが、哀しみと怒りは強い感情だからなあ。それをトリガーに闘気がなんやかんやで変化して、なんやかんやするというわけか。

 

 あん?なんやかんやってなに? だと? なんやかんやは、なんやかんやだ。

 そもそも無想転生がどういう奥義なのか、俺ら、自分らでもわかってないからな?

 色んな意味で、ふわっとしたもんで出来てるからな? まあ、それは置いとけ。今はそこでグッタリしてるジャギだ。

 怒りどころか、なんか燃え尽きてるんだが。

 

「うむ。怒りと憎しみに染めるため、破孔を突き、過去を思い起こさせた」

 

 破孔ってのは、秘孔の北斗琉拳での呼び名だな。

 北斗琉拳の創始者は北斗神拳が嫌いだったんで、同じ技でも呼び名が違ったり、微妙に効果が違ったりする。

 ただ北斗神拳の708個を大幅に越える、1109個まで破孔を見つけているのは正直すごいと思う。でも覚える立場の弟子の事も考えてあげて。

 

「その結果、ヤツは自分が勝負において童貞であった事を思い知ってしまったのだ」

 

 はい?

 え~っと。勝った事がないって意味?

 あ~~。確かに、ここぞという大事な勝負だと負けっぱなしだわ。

 それを一気に、それも強制的に見せられちゃって、憎悪にとらわれるどころか逆に心が折れたと。

 

 ジャギ…… お前、どこまでジャギなんだ。

 

 グレる事はできるけど、墜ちる所まではいけないのか。

 やっぱりトキ先生に預けて、アミバみたいに改心コースしかないんだろうか。

 うーむ。どうしたもんやら。

 

 




○二重の極み
有名どころだが。一応解説。るろうに剣心より。
拳を軽く握って対象に当て、その衝撃で抵抗値がゼロになったところに拳をつぶして二撃目を入れて大ダメージを入れる技
授業中などにこっそり練習したヤツは、わりといるはず。





※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。