北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~   作:far

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映画効果か、ヒロアカのSS増えてるっぽいですね。
ちょっと止まってたのも動き出して、うれしい。

そんな中でアットマーク氏の 意図を切る を推してみる。
デクくんらが一年生の時に二年生という、原作では谷間の世代。同級生が相澤先生にクビにされまくった中、一人残って進級した人。
たまにはヴィランに容赦しないキャラも読んでみたい人へ、お勧めします。
今の所6話。月に二回更新。


回想シーンの回。ただし回想するのは、出た事も無い他人のシーンです。

 

 気付けば、缶ビールを片手に座り込んでいた。

 ウィンドウさんセレクトの、俺のパイセンたちの人生シリーズを見ている間に、無意識にスキルを発動させる感覚で出していたらしい。

 まあ、ここ夢の中みたいなもんだし、この程度はアリなんだろう。実際の所は、よくわからんけどな。

 

 いや、待てよ。今なら飲んだ事が無い、憧れのアレやソレやコレだって出せるのでは…?

 

 よし、やってみよう。ものは試しっていうし。

 まずはイメージ。ボトルを想起して、中身の香りと味は想像で補う。ついでに願望もつぎ込む。

 調理スキルで、まだウィスキーもブランデーも出せないが、今ここでならそれを越えられるはず。いや、超えられると思い込め。

 確信するんでも信じるんでもない。呼吸するように、当たり前にできるものだと無意識で感じろ。

 

 3、2、1 ――― ゼロ。

 

 うん。出なかったね。

 仕方ないね。ここもウィンドウさんが出る以上は、システムの管理下ではあるんだろうからね。

 でも飲みたかったなあ、竹鶴25年ピュアモルト(1ml100円)とかカミュ・ロイヤルバカラ(1ml250円)とか。なんなら飲みなれたメーカーズマークとか、響でもいいよ。洋酒飲みたい。

 

 でも出ないんだもんなあ。

 出ないもんはしょうがないよなあ。ここは、素直にビール飲んどこう。埼玉の地ビールのコエドビール伽羅(キャラ)を飲もう。

 しっかりした濃い目のビールの、苦味やコクと穀物の香りを持ちながらも、何でかスッキリ飲みやすいという、日本風のビールのいい所も持っているビールだ。

 ビールだけに、ウィスキーとかと比べて安いしな。

 いや、蒸留して量が減ってる上に、長年保存して、しかも保存する間も徐々に量が減っていくウィスキーとかをビールと比べるのが間違いなんだってのは、わかってるんだがな。

 

 

 えっ。

 

 いや、急にすまん。

 眺めてた動画で、一味違ったヤツがいたんで、ビックリしてな。

 

 まずスタート地点からして、修羅の国でね。だいたい修羅の国スタートだと、そのまま野良の修羅候補に狩られて終わるみたいなんだけどね。

 なんでかカイオウに弟子入りしててね。

 しかもさっき、裏切って後ろから破孔を突くのに成功したヤツがいたのよ。

 

 うん。色々とビックリだろ? 俺も驚いたわ。

 

 しかも突いたのが、秘孔でいうところの心霊台に相当するヤツらしくて、カイオウの髪がみるみる白くなっていってなあ。

 ああ、心霊台ってのは、アレだ。レイがラオウに、3日くらい経ったら死ぬという新血愁(しんけつしゅう)っていう秘孔を突かれた時に、トキ先生が治療として突いた秘孔だ。

 

 ただし、3日という時間を少し引き伸ばすだけの応急処置でしかなく、しかも死を選びたくなるほどの痛みを味わうという欠陥品。

 

 レイも今のカイオウと同じく、治療後は髪が真っ白に変わってしまっていた。

 わざわざあの秘孔だか破孔を選んで突いたあたり、あのパイセンはカイオウに何か恨みでもあったんだろうか。

 苦しんでてスキだらけのカイオウにトドメを刺さないあたり、あるんだろうなあ。その辺の事情はカットされてるんで知らんけど。

 

 あっ。でもトドメさした。普通に大振りのナイフで首の頚動脈切ったわ。

 

 あっ。でも自殺した。手に持ったナイフで、そのまま自分の首も切ったぞ。

 

 あのパイセン、いや何か凄かったんできちんと先輩と呼ぼうか。

 あの先輩に、一体何があったんだ。もう次のパイセンの映像に移ってるけど、すげえ気になるんだけど。

 

 

 と思ったら、今度はトキ先生に弟子入りしたパイセンか。

 割と王道なんじゃないかな。なんでこのパイセン失敗したん―――って死んだー!? 速攻で死んだー!?

 

 

 アミバの嫉妬からの暗殺で死んだー!!

 

 

 えっ。ちょっ。お、おおう?

 アリなん? そうゆうのアリなん? このゲーム、それでいいの???

 

 まさかのギャルゲー要素あり、それもデスゲーム風とは。見抜けなかった。あの海のリハクアイしちまったぜ。

 

 だがまあ、アミバの嫉妬も、わからんではないな。

 ポイント消費して、スキル習得するだけでみるみる腕が上がっていくんだもんなあ。

 ハタから見たら、天才か化け物にしか見えないよな。

 逆にポイントが無かったら、これっぽっちも腕が上がらないんだけど、ポイントが尽きる前にアミバが行動に出ちゃったからなあ。

 天才を自称していたアミバには、自分以上の天才に見えたパイセンを許容できなかったんだろう。

 それでも初手殺害はどうかと思うが。

 

 

 おっ、今度の動画はいきなりクライマックスか。

 ケンシロウとのバトルとは、このパイセン。なかなかのロマンの持ち主かつチャレンジャーだな。

 しかも構えからして北斗ではなく、南斗聖拳系か。うん。南斗で挑むとはワカっているな。

 北斗と南斗は表裏であり陰陽であるらしい。初期の構想では、原作者さんは北斗の拳をシンとの対決までしか考えていなかったそうなので、北斗のケンシロウに南斗の拳法で挑むのは、実に美しい。

 

 お互いがラッシュを繰り出し、拳を、貫き手を相手に突きつけようとする。

 ケンシロウは多少のケガはかまわない、とばかりに攻撃に重点を置いているようだ。パイセンはそれを丁寧に、落ち着いてサバきながら反撃している。

 これは一撃必殺の北斗神拳を、お互いが意識に置いて戦っているせいだろう。

 

 俺もスキルを上げていなかったら、普通に見えなかっただろう速度で、攻防が続く。

 そのさなか。パイセンの突き出された腕に、ケンシロウが指で触れる事に成功してしまった。

 それまでは、多少かわすことは出来ても、防御も触れる事も許さなかったパイセンの攻撃。それが疲労で衰えたのか、それともケンシロウがパイセンの拳に慣れたのか。

 

 ……慣れたっぽいなあ。ケンシロウの学習能力と対応力は高いから。

 突いた秘穴は竅星(きょうせい)かな? パイセンは腕が動かなくなってるらしいし。

 あっ。ダメだ。まだイケるとばかりに、今度は足技で戦いだしたぞ。ケンシロウ相手に、悪あがきは死亡フラグだっつーに。

 命だけは助けてやる → なんだとキサマー → テーレッテー みたいな。もしくは 心を入れ替えるのなら(略) → 入れ替えます! → 後ろから奇襲 → すでに突かれてた秘孔でヒデブッ!

 

 あ、いや。ワンチャンあるわ。うまい事、空中戦に持ち込んだ。

 アニメ北斗の拳のOPにもあった、シンとの最初の対決のアレを再現するつもりか。

 あのただの飛び蹴りにしか見えないのに、北斗なんとかと、南斗なんとかという名前の、ほぼ同じポーズ、アクション同士の対決。アレをやる気だ。

 だがイケるか? アレはケンシロウにも、たぶんトラウマになってるだろうし、乗って来ない可能性もあるぞ。

 

 って、行ったー! なんかパイセンが挑発してたけど、うまくいったー!

 そしてすれ違ってー。着地してー。倒れるのはー?

 

 …………………… ああー。パイセンかー。

 

 うん。でも頑張った! アンタ精一杯やったよ! アンタもパイセンじゃない。先輩だ!

 先輩、お疲れっした!

 

 

 ほう。今度のパイセンは村人か。平和そうでいいな。

 そう思って眺めていたら、モヒカンたちの襲撃でアッサリとその平和が終わった。知ってた。

 だって世紀末だもんな。がんばって土地改良して、穀物の種も探してきて、村を豊かにとがんばってたダイジェストが流れた時点で「あっ。これ、この努力ムダになるな」って思ったもん。

 

 あっ。逆上して向かってった。

 あー、あー。戦闘スキルもないのに、野良モヒカンとはいえ、群れにケンカ売っちゃあ……

 

 あれ? 意外と戦えてる?

 

 クワを振り回して、槍だか槌みたいに戦ってるんだけど。

 えっ。なに。農具取り扱いスキルとかあんの? で、それで戦ったりできるの?

 なにそれ、すごい。

 

 あっ。でも終わったわ。人質取られちゃった。しかも素直に従っちゃった。

 クワを手放して、素直にそのまま無抵抗で殴られてるわ。

 

 思うんだが、なんでこういう時って、何もしないで従うんだろうな?

 そのまま無抵抗で負けたり、死んだりしたら、人質も無事じゃないだろうし。

 どうせ人質が無事じゃすまないんなら、無視して敵を倒しちゃって、それでも人質が生きてるラッキーにワンチャン賭けた方がマシだと思うんだけどなあ。

 現に、あの農業パイセンは終わっちゃったわけだし。人質になってた女の人も、なんかそのまま連れ去られちゃったし。

 うん。でもまあ、悪い人じゃなかったみたいだし、最後は死ぬ覚悟もしてたし、農業もがんばってた。

 

 全部野良モヒカンたちにツブされたけどな。

 

 悲しいなあ。

 農業パイセン。お疲れでした。合掌。

 

 

 ちょっと気分を変えるのに、ビールから日本酒にするか。

 秋田の花邑。山形の十四代を造ってる醸造所の社長が、なぜか米選びや製造法からラベルまで仕切って造ったという、よその醸造所で何やってんですか社長、というしかない酒だ。

 間違いない。この社長、絶対に趣味に走っている。

 そして趣味に走って、こだわりを持って造り上げられたこの酒が、まずいわけが無いってのも間違いないんだよな。

 芳醇旨口。ポンと栓を開けると甘い香りが広がり、口にすれば濃厚な米の旨みと甘みが、その香りとともに口と鼻を満たす。

 そしてスッ… と消える。まさに花のように広がって、散る。

 問題は、少量生産なんだよなあ。そんな所まで、趣味に走った日本人のテンプレに忠実じゃなくてもよかったんだが。

 

 でもスキルで出してる今なら、無限に出せるからね! 問題ないね!

 飲むぜ、ヒャッハー! ツマミは作るのもめんどくさいんで、トマトを手刀で切って醤油かけるぜー!

 

 あん? トマトに醤油はオカしい?

 オカしくねーよ。トマトのうま味も醤油のうま味も、肉や魚と同じグルタミン酸だ。相性は悪くないんだよ。

 かけるのはカツオダシ醤油にして、イノシン酸もプラスだ。異なるうま味を掛け合わせると、なぜかよりうま味を感じるようになるから、これでいいんだぜ。

 

 

 さーて、次のパイセンはどんな末路かな。

 こうも立て続けだと、だんだん飲まなきゃやってられなくなって来たけど、飲んだからまだイケるぞー。

 よっしゃ。次、かかって来い。

 

 

 


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