北斗の拳メロン味 ~ただし人工着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません~ 作:far
気付けば、俺は激怒していた。必ず、かの邪知暴虐なKINGことシンを倒さねばならぬと決意した。
俺には世紀末の政治は分からぬ。
わけもわからず荒野に放り出され、スキルを手に入れ、それを磨き、それを頼りに生きてきた。
ただ種モミ、もとい、モヒカン的なヒャッハー行為には、人一倍に敏感であった。
ここサザンクロスには、この世紀末を群れで生きる方法を学びに来た。
それで実地で見て回った結果が、だ。
少年の頭に空き缶を乗っけて、その父親に空き缶を的にして弓で射らせる、ウィリアム・テルごっこをしていたバカがいた。
シンの部下の、ダイヤだった。
自分にとってか、それとも村人や奴隷たちへのものか。どちらにとってかは分からんが、修行だと言って一方的に攻撃して、虐殺していたカギ爪使いのバカがいた。
やはりシンの部下の、クラブだった。
村長をシバいて、種モミを奪うヤツがいた。やはりシンの部下のスペードだったが、種モミなので、俺が横から奪った。
種モミならば、仕方が無い。配下のモヒカンたちも納得である。
なぜか金塊やら宝石、食糧や水や武器や女なんぞよりも、モヒカンにとっては魅惑のシロモノなのだ。
以前にも一度やっちゃったことがあるしな。モヒカンが種モミを奪おうとするのは、きっと世界の掟というか、お約束なのだろう。
何でか、ポイントも入ったしな。
[P:5→11 トロフィー(金):種モミを横取りする を達成しました!]
何でか、レアリティが金だった。確かに、レアなシチュだとは思うけどよ。
それ以外でポイントが上がっているのは、ダイヤとクラブを倒した経験値だな。
配下のモヒカンたちにバイクで轢かせて、倒れたところに俺がトドメを刺す。このコンボが実に有効だった。
仕方が無いんだ。
まだ俺の北斗神拳は2段階目。疲労回復と健康増進、滋養強壮くらいしかできないので、仮にも幹部クラスとのまともな戦闘は避けたいんだよ。
養命酒みたいな効果だと思うだろ? だがこれがバカに出来ないんだわ。
さすがは北斗神拳というか、ロクに運動もしなくともツボの刺激と呼吸法だけで、病弱なトキでさえもムッキムキになれるくらいの効果が出るんだよ。
オカしいだろうとは思うが、そもそもだ。どう考えてもこの世紀末は、筋肉を付けるにはカロリーも栄養も足りていない。
それがそこらのモヒカンはおろか、ただの村人でさえ腹筋が割れていたりする。
海賊王を目指す麦ワラの男がいる世界は、俗に空気にプロテインが入っているとまで言われているが、この北斗世界もそうなのかもしれない。
核の落ちた結果の遺伝子異常とかは、怖いので考えないこととする。いいね?
ともあれ、だ。ダイヤとクラブは、一人2ポイントの経験値として、俺の糧になってくれた。
スペード? スペードなら俺の隣でバイクに乗ってるよ。
種モミに反応してしまうのは、モヒカンのサガ。仕方が無い。他の二人のような外道とは、ワケが違う。
それに倒した結果、モヒカンリーダー:2で従えられてしまったので、始末するのがもったいなかったというのもある。それでポイントも入ったことだしな。
[P:11→13 トロフィー(銅):ネームドモヒカンを仲間にする を達成しました]
別にスペードでなくとも良かったらしいが、まあ、それはどうでもいい。
これからは我らがチーム、烈怒・乱舞羅亜の幹部としての活躍をお祈りしよう。
さて。
ノリで、外道行為をしていたシンのKING軍の幹部を殺ってしまったが、それはいい。最悪、カレーの件で知り合ったサウザーにでも、取り成してくれと泣きつけばいい。
問題なのは、だ。統治するべき人材に、あんな奴らを使っているシンだ。
この何もかもが足りない世紀末なご時勢に、奴隷とはいえ、労働力を何の意味も無く減らすようなバカを、何で統治者にしているのか。
人類、詰んでるかもしれないんだぞ。男女比とか、子供の数とか的に考えて。
それを加速する方向で統治してどうする。
そこもムカつくし、意味なく他人を傷つけて笑ってるのが、単純に腹立つわ。
溜まったポイントで、北斗神拳とバイク取り扱いを3に上げた。残りポイントは5だ。
バイクは、そろそろガソリンの残量がヤバかったので、そこらをスキルで何とかできないかと期待しての選択だったが、当たったようだ。
1で操縦方法と簡単な整備、2で操縦、修理技術の向上と、バイクの召喚が出来るようになっていたが、ガソリンは最初から減る一方だったんだ。
ああ。召喚だ。そうとしか言いようが無い。
別に空間が割れてとか、光る丸い円が現れてその中からとか、そういうのはない。
後ろの方から、つまり視界の外から、ひとりでに走って来て、横で止まるだけだ。最初に呼んだ時。正直、少しビビった。
北斗神拳も、ようやく秘孔が覚えられた。視神経や聴覚、平衡感覚や遠近感など、様々な感覚を狂わせるデバフがかけられるようになったぞ。
うん。コレジャナイ。それはそれでスゴいけども、コレジャナイんだ。求めていたのは違うんだ。
一撃必殺のはずなのに、百発殴らなければいけない百裂拳とか、その場に止まって拳を繰り出すだけなので、速かろうがあまり連打の意味が無い羅漢撃とか、そういうので良かったんだよ。
欲しかったのは、戦闘力なんだよ。攻撃力とかそういうのが欲しかったんだ。
くっそ、仕方が無い。アテが外れたんで、残りポイントをつぎ込んで、調理技術を上げるか。
[P:5→2 調理技術:3を習得しました]
んじゃ解説:3で内容をチェックだ。調理技術は、謎の優遇をされているからな。今度は何が出て来るやら。
ほう。鶏肉全般と醤油とビールとな。
これは、アレだな? 焼き鳥を作れと、そういうことだな?
よし。なにはともあれ、ビールが手に入ったなら、やることは一つだ。
「ヒャッハー! おビール様のお通りだー!!」
宴会である。一心不乱の飲み会だ。
いや、違うんだ。聞いてくれ。別に、理不尽な統治に憤っていたのを忘れたわけじゃないんだ。
ほら、ね? 北斗神拳:3でもシンに太刀打ちできそうになかったし、ね?
モヒカンたちの連続轢き逃げアタックも、シンならスッパスッパバイクを斬ったり、跳んで避けて蹴りで反撃してきそうでね?
用心棒のラオウ先生にご出馬いただく他は、なさそうでね?
でもさあ。アイツ、マジメに働いてくれそうにないじゃん。
だから宴会で忠誠度だか友好度を上げて、お願いを聞いてもらおうっていう、そういう作戦なんだよ。
決して、久々のビールを、それも飲み放題になったのを喜んでいるのではない。
ないんだよ。イイネ?
なお。そうやってラオウの暴力を背景に詰め寄ったシンには、逆ギレされた。
「アレでさえマシな方なのだ! この暴力の支配する世紀末の人材不足をナメるなよ!」
「えっ、マシなの? アレが?」
どう考えても、最悪だったんですが。
「ヤツらは、住人を減らした分を他所から浚うなり、買うなりして補充するだけのバランス感覚はあった」
イヤイヤイヤイヤ。そもそも減らすなよ。まともに統治させろよ。
ハート様とか、血を見さえしなければ、出来てるじゃん。
「まともに統治するようなヤツは、大体が力が無い。そうであれば、遅かれ早かれ、村は野盗に襲われて全滅だ」
それなら野盗狩りの部隊と、統治する文官を分けて運用……しても、部隊が勝手に村を襲撃して遊ぶのか……
野盗を全滅させるのは、ムリか。あいつら、無限にポップしてくるザコキャラだもんな。
ふむ。力がなければ生き残れない。しかし力があるヤツは、モヒカンでありヒャッハーする。
モヒカン系に村を任せるしかないが、任せても圧政ですらない、暴力的なナニかのせいで村は衰退する、と。
…………詰んでね?
「だから言っただろう。アレでもマシだと。村を衰退させないだけでも、マシだったのだ」
シンがその濃い目ながらも、整った顔を歪めて吐き捨てた。
さすがは愛に殉じる、殉星の宿命を持つ男。ああいうヒャッハーな行為は、趣味ではなかったようだ。
うん? ということは……
あっ、そっか。こいつ、モヒカンスキル、持ってないのか。
だから部下のモヒカンが統制されてなくて、ヒャッハーな行為を控えないで本能全開なのか。
ならば、俺が幹部になって押さえ込めたら、イケる、か?
上がった北斗神拳で、移動中に遭遇した野良モヒカンを撲殺したら、1ポイント入った。あと3ポイントあれば、モヒカンリーダーが3に上げられる。
1で10人、2で100人のモヒカンを統率できるようになったんだ。3で500だか1000人いけるようになるだろう。
「ゴメンよ。お前さんも苦労してたんだなあ……」
シンにビールのなみなみと入ったジョッキを渡す。
どこから出した、と問いもせずに、シンはそれを無言で受け取って一気に飲み干す。
ゴッゴッゴ、とノドが鳴り、ビールがノド奥へと流し込まれて消えていく。
「おかわり」
ずいっと突き出されたジョッキに、俺は何も言わずにビールを満たした。
「……」
無言で手を出すラオウにも、大ジョッキを出してやった。
ものはついでと、俺も飲み始めた。
そして無言で繰り返される、一気とおかわり。
奇妙なつながりと、理解と共感があった。友情のような、なにかがあった。
そろそろ酔いが回ってきたか。そういった頃に、自然と言葉が口から出た。
「手伝ってやるよ」
シンも、自然と返してくれた。
「頼めるか?」
なぜかラオウが答えた。
「我にもユリアフィギュアを寄越せば―――」
――北斗神拳
説明しよう! 北斗神拳 定神とは! 相手の意識を奪い、眠りに付かせる秘孔である! 正気を失った相手を落ち着かせる効果も期待できるぞ!
「どうやら、酔いつぶれたようだな」
その巨体をゆっくりと倒し、眠りに付くラオウを確認しながらそう言った。
何やら、聞き捨てならないことを言わなかったか? と言いたげなシンを、視線で抑えながらそう言った。
いやあ。先だっての宴会でさあ。うっかり酒のサカナに、話しちゃったんだよね。
シンの、例の秘密の趣味(笑)を。
バカウケだった。
酔いが醒めてから、口止めはしておいたけど、あいつらモヒカンだしなあ。どこまで守られるかなあ。
うん。まあ。なんだ。
協力はするから、その辺はあきらめてくれ、フィギュアKING。