プロローグ
目覚める。軍の施設にあるベッドは寝心地が悪い。寝返るとベッドがきしむ音がする。
「おい、後輩。早くしないと早朝の訓練に遅れるぞ」
素っ気ない態度で先輩の梶谷が急かしてきた。梶谷は顎ひげが生やし、右手の甲に蝶の刺繍を入れている。根が優しくてこの先輩は好きだ。
朝日が眩しい。窓から差し込む夏の朝日に目が眩む。
帝国の軍部は優秀であることは既に述べたが、飯は嘘でも美味とは言えない。
パンに牛乳。それがいつものだ。パンは土の味がする。咀嚼するたびに不快感が訪れる。だがこんな日常も恋しい。
軍部では、人がよく死ぬ。こうして、パンと牛乳を飲み不快に味わうことこそ喜びと噛み締めなければ死んでいった者たちに顔を向けられない気がしていた。
今日は特別な軍事作戦があるらしい。噂こそ流れてきてるものの、大隊長クラスで情報統制が行われているので奇襲を仕掛ける我らの中隊の隊長にも連絡が来ていない。
朝のメニューは通常通りやったので、五体が余すところなく筋肉が悲鳴を上げている。
今回の作戦が伝達されたのは昼頃であった。
作戦決行は0100。つまり一時だ。夜襲ということであろう。我らが行うのはとても容易である。見張りをできる限り欺き、火薬庫を爆破。連合軍の兵士には質の悪い目覚ましになるだろう。その後、後退しながら遅滞戦闘に務める。本隊との合流を待つそうだ。
奇襲する班は一般に死ぬ人数が少ない。狙うのも補給班なのが多いので一般的には無事に生還できる役所だ。
だが今回は敵の防衛拠点に攻め込む…胸の高鳴りと共に故郷を思い出していた
一
ここでどれだけの人が死んだのだろう。立ち込める硝煙の香りが鼻にピンと突き刺さり、ここが戦場なのだと思い出させる。
私は陸軍の遊撃隊であり、訓練は積んでいるものの戦場は初めてである。
遊撃隊とは、陸軍が構える本隊に対し別働隊となって回り込み奇襲をしかけるのである。
我が帝国の参謀本部はとても優秀である。参謀本部から送られてきた将校が実地で経験を積み数々の勝利を収めてきた。
我が領土は狭いものの、実質的に領有している領土は広いため我が帝国は確実に三大王国の一つと言えよう。
おっと、中隊長の突撃のサインが出た。我が遊撃中隊007はこれより、側面奇襲を行う。
一斉に走り、打ち、殺した。序盤は圧倒的だった。武器も持たぬ家畜同然である眼下の敵をただ蹂躙するだけであった。実家でシチューを作っているのと対して気分は変わらない。
ただ、家畜と異なるところは、体制を立て直そうと武器を持ち直し、反撃するところである。本隊も合流し、勝算なんて乏しい今、なぜ反撃するのか。理解ができない。
これだから連合王国は嫌いなのだ。私は被弾した。腹部の左斜め上辺りに痛烈な痛みを感じた。訓練で応急処置を学んだが、目の前の果実をもぐことに集中しどこかに落としたみたいであった。
鎮痛剤を指し、手にある自動小銃で銃殺を続行する。
私はそこで一回目の死に即した。