それから学校に戻ると、顔に怪我している私を見たマクゴナガルに心配したように医務室へと連れて行かれた。
怪我をした理由を聞かれたからつまずいて転んだと苦しい嘘をついたが、マダムはこれが打たれた跡だと分かったような表情を浮かべた。でも特に深くは聞かれずに、絶対安静を言われてやっとの事で解放された。
もう夕食も医務室で済ましてしまっていたし、あとはもう寮に戻って寝るだけだ。
寮に戻ると談話室で過ごしていた生徒達が、私の方を何か探るように見てきた。勿論、談話室にはセブルスの姿もあってお互い目が合ったのが分かったが、気にすることなく私は部屋に戻った。まだ寝るはずのないルームメイトは誰一人としておらず、私だけだった。
何に考えずに天上を見つめていると頭にある言葉が思い浮かんだ。
【記憶に頼りすぎるな】
そうだ。この言葉の所為で、慣れないことをしてこんなことになったんだ。
そう思った私は、本を取り出して苛立ちながら文章を作った。
【貴方の言葉を信じて、記憶に頼りすぎないようにしたけど、最悪の結果になったわ】
【貴方は今悔やんでいるのでしょう?何故あんなことをしたのかって。でもよく考えてごらんなさい】
すぐ下にゆっくりと文字が浮かび上がってくる。
【貴方にとって最悪の結末は何ですか?】
………私にとって最悪の結末……
首から血を流して独り息絶えるセブルスが頭で映像として流れ始めた。
そう…これが、私にとっての最悪の結末。
私が黙ったままいるとまた、文字が浮かんできた。
【苦しいのは貴女だけではないことを忘れてはいけませんよ】
「……そんなの…分かってる…」
エバンズや、ポッター、ブラック、ペティグリューやルーピンそしてセブルスだってみんなこの世界で心臓を動かして生きている。
時にはそれぞれ苦しい思いをして必死に耐えていることぐらい、分かってる。
でも………それでも…
…………辛いものは辛い
その後は本と会話することは出来なくなり、私はあまり眠れないような気がしながらも浅い眠りについた。
それからは、勿論セブルスやエバンズに関わることなど一切なくなった。
前からそう頻繁に話さなかったが、今はもうお互い顔を合わせることさえも避けているかのように自然とセブルスを見る回数も減っていっていた。
セブルスに殴られた傷もだんだんと治ってきた頃、私は談話室の端で本を読んでいた。あまり興味のない闇の魔術に関する本を読んでいるのはこの先色々と役にたつかもしれないと思ったからだ。
「珍しいね。こんな所で君が独り本を読んでいるなんて」
上から声が聞こえてきて、顔を上げるとルシウスの姿があった。
確かに、私は談話室では本は読まずに課題に取り組んでいることが多い。大体は、自分のベットの上で本を読む。
「…それに……闇の魔術…とは…」
彼は明らかに私が持っている本に視線を移して、決して見ていて気持ちよくなれない笑みを浮かべてくる。
…やっぱり、この人は苦手だ。
「……私が読んではいけませんか?…」
「いや、そんなことないさ。そんなことより、興味あるのかい?」
「……そうですね…全く興味がないと言ったら嘘になります……そんなことよりも私と話していて大丈夫ですか?」
私は、周りにいる睨んでくる生徒達に視線を移して、何とか話を逸らそうとする。残念ながら、今回はセブルスの元へ逃げる事も出来ない。まるでそんな事を狙っているかのように丁度タイミングよく話しかけてきたルシウスが不気味でならなかった。
「…そんな事を君も気にするんだね?少し驚いたよ」
「……私も一応人間ですし……というより、貴方の方が困るでしょ?」
「…どうして?」
紳士的ににこりと笑うルシウスを見て、
…あぁ……この人は死喰い人なんだな…
と改めて思い知らされた。
「……風の便りで、貴方は今話題のあの方の考えを支持していると聞いたので」
「…それがどうして君に、話しかけてはいけない理由になるんだい?」
「…………貴方が純血主義の考えを支持しているということだからですよ」
「……その言い方だと、君は違うようだね」
気づけば談話室にいた生徒達が私達の会話に耳を傾けて注目していた。
「…純血主義ではないのは私の家系の話で、私個人の考えではありません。」
私のはっきりとした声に、生徒達は少しざわめいた。今まで、純血でありながら純血主義ではない変わり者として浮いてきた私がこんな事を言ったから、驚いたのも無理はないだろう。
何か言おうと、口を開くルシウスを見て、私は咄嗟に言葉を続けた。
「勘違いをしないでください。……別に私は純血主義の考えを支持するという事ではありません。血にこだわるのは素晴らしい事だとは思いますが、…私はどうでもいいんですよ。血の濃さなんて」
私は喉に引っかからずにすらすらと言葉が出てくることに自分自身驚きながら、ルシウスに語りかけた。すっかり私の方を見て、話を聞いている生徒達を視界に入れながら彼に向き合った。
「純血?…半純血?……穢れた血?…そんな事はどうでもいい。そんな事を言っていたらきりがない。……そう思いませんか?」
ルシウスは、すぐに張り付いたような笑みを浮かべて私に上品よく喋り出す。
「…全く、君らしいね。……この思想が今後の魔法界にとってどれだけ素晴らしいものになるかを気づけない君を見ていると、可哀想で仕方がないよ。…残念だなぁ…せっかく君は魔法のセンスがあるというのに」
全く笑っていない瞳を見て、私の背筋は凍りついた。
………怖い…この人に逆らってはいけない
そう思ったのは初めてで、私はその場を逃げるために立ち上がってルシウスに背を向けた。すると彼のわざとらしい思い出したような声が聞こえてきた。
「…あっそういえば、私も風の便りで聞いたんだけど…君はたった1人のお友達のセブルスと喧嘩をしたんだって?」
セブルスという名前が聞こえた瞬間に身体全体から嫌な汗が流れるのを感じた。
「その様子だと、どうやら本当のようだね」
頭が真っ白になって、セブルスが酷く傷ついたような顔をしながら私を殴ってくる映像が流れ始めた。
「…私がいつ彼が友達だと言いましたか?」
自分の声が震えているのをしっかり聞きながら足を動かそうとすると、静まり返っている談話室に誰かが入ってくる足音と、レギュラス、セブルスの話し声が嫌なほどに耳に入ってきた。私は駆け足で、自分の部屋に逃げ込んだ。
あれからというもの、私はスリザリンで前より増して変わり者として浮いていた。思ったよりもルシウスの影響というのは大きく、徹底的に避けられるようになり、ルームメイトも時々私の方を見ては嫌そうな表情を浮かべてくるようになった。
月がだんだんと丸くなってきた夜中に私は本と向き合っていた。今ではルームメイトが寝ているこの静かな時間だけが、私の中での安らぎの時間になっている。どんなに文章を作って話しかけても反応がない本を見つめながら私はため息をついて静かにベッドから抜け出した。
今の時間帯だったら、絶対に談話室に生徒などいる訳がないと思い階段を歩いていると微かな足音が聞こえてくるのに気づいて不思議と胸騒ぎがした。私は、壁の陰から覗き込むように少し顔だけを出して誰がいるのか様子を伺う。
…結構夜は更けているはずだし……何をしているんだろう
ローブを靡かせながら何かをしているその生徒は、決心するように談話室から出ていく。寝間着姿だった事を思い出し、一旦部屋に戻って一番近くにあったローブを身に纏い、私は後を追いかけた。
少し駆け足で後を追いかけると、真っ暗で誰か見えなかった人影に月明かりが照らされると、その正体が目に飛び込んできた。
「…セブルス」
当然小さく呟いた私の声は、誰に聞かれる事なく静かに暗闇に溶けていった。セブルスはキョロキョロと辺りを警戒したように見ると、またゆっくりと歩き出す。彼がこんな寮の点数が引かれるような危険な事をするはずがない。そう思っても確かに前にいるのはセブルスで、まるで波のように不安が襲ってくる。
…まさか…今日だったのか…
案の定セブルスは、暴れ柳に向かっている。
…どうしよう…何も考えてない…
セブルスと喧嘩をし、ルシウスと言い争った私は平和に学校生活を送るのが精一杯で何も対処法を考えていなかった。
……ポッターが助けに来てくれるはずだし…大丈夫…
そう自分に言い聞かせ私はセブルスの後を追ったが、それでも不安が消えるどころか増すばかりだった。
…でも、もし…ポッターが少しでも遅れたら…
前にいるセブルスの後ろ姿を見ると居ても立っても居られなくなり、私はグリフィドールの寮へと走って向かった。私が、グリフィドールの寮に行ったところで合言葉を知らないから、何も出来ない。よく考えたら絶対にセブルスの後を追いかけた方が良いだろう。でも、もうセブルスに関わってこの物語を大きく変えてしまう事が怖くて怖くてたまらなくなっていた。
私の足音で目を覚ました太ったレディーは、少し不機嫌そうに口を開いた。
「あら、スリザリン生が何か用かしら」
「…中に入れて…今すぐに」
「合言葉を言ってくれないと通してあげられないわ」
「だったら、ポッターを呼」
私の言葉は途中で途切れた。突然何が私にぶつかってきたからだ。ぶった頭を抱え込むように目を開けると、ポッターの顔が目の前にあった。すぐに彼に押し倒されているような体勢になっていることに気づいて、表情が固まっているとポッターを見つめながら冷静に口を開く。
「退いてくれないかしら?」
その言葉にポッターは、すぐに退いてぐしゃぐしゃな髪を触る。いつもの彼らしくないが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「…セブルスがここに来てない?」
私の言葉にポッターはだんだんと顔色を青くしていき、目を見開いた。どうやら、自分が寮を抜け出した訳を思い出したらしく、焦ったように何も答えず背を向ける。その様子を見て、私は今夜だと確信し、駆け出そうとする彼の後を追いかけた。
完全に焦っているポッターとだんだんと距離がひらいていく。
上がる息で必死に呼吸を繰り返し、足をできるだけ早く運びながら私は後を追いかけた。
少し前にいるポッターが急に走るのをとめ壁に体を寄せて何かを警戒するように息を潜めていた。やっと追いついた私を見て、ポッターは驚いたように声を押し殺しながら話しかけてくる。
「なんでついて来てるんだ⁈」
私は息を整えながら、何も答えずに壁から覗き込んでみると、そこにはフィルチの後ろ姿があった。
…なるほど…だから止まったのか
私はひとりで納得して、ポッターに向き合った。
「でも結果的に良かったでしょ。」
私じゃない。今私がセブルスを助けても意味はない。
…まだ駄目なんだ。…私じゃ駄目。
……ポッターがセブルスを救わなければ、意味がない。
私を引き止めようと声を押し殺しながら話しかけてくるポッターを無視して廊下に飛び出た。僅かな私の足音に気づいた猫は振り返って私の顔を見るとにゃあーと鳴き知らせる。振り返ったフィルチの顔が月の光に照らされて凄く怖い演出をしていたが怯まないように彼に歩み寄った。
「こんな時間によくそんな堂々と歩いていられるな、規則違反だということを知らない訳じゃあるまいだろ」
あまりに私が平然と歩く姿を見て、不穏に思ったフィルチは何かを疑うように声を低くする。
「……逃げてもどうせ捕まるんですから、そんなことをするのならすんなりと捕まった方がいいでしょ?」
フィルチは気に食わないといった感じで、鼻をフンと鳴らすと私を睨んできた。
そんな所へマクゴナガルが来たのはすぐのことだった。
「何をしているのです?」
凛とした声が静まり返った廊下に響くと、フィルチはすぐに声がする方を振り返った。
「ベッドを抜け出した生徒を見つけました」
まるで生徒が先生に言いつけるようにフィルチは、私の方を指差してマクゴナガルに報告をする。
「…分かりました。この子は私の方で預かりますので貴方は仕事に戻ってくれていいですよ。」
どこか納得していない様子でフィルチは私の顔を睨むと、猫を連れて私達に背を向けた。ポッターがいる方とは真逆の方へと進んでくれたので、緊張していた体から一気に力が抜けていくのが分かる。
「私について来なさい。」
鋭い視線を感じて、無意識に彼女から視線を逸らした。私のことは気にせずに前を歩くマクゴナガルを見て、私は静かに後ろを振り返る。
ポッターが少し駆け足で無事廊下を横切っているのを確認して、急いでマクゴナガルの後を追いかけた。
彼女の部屋かなんかに連れて行かれるかと思ったが着いた場所は、スリザリンの寮の前だった。
「スリザリンから10点減点です。処罰は後日知らせます。…さあ、早くベッドに戻りなさい」
マクゴナガルは、スラスラと慣れたように私に言い伝えてきた。私は頷いて、何も言わずに寮に入ろうとしたが、流石に挨拶はしといた方がいいかと思い、振り返って重い口を開いた。
「……おやすみなさい…先生…」
後ろからマクゴナガルの声が聞こえてきたが私はそのまま扉の中へと入る。談話室は暖炉の微かな火で暖かく、体の芯まで温まるのを感じながらソファーに腰掛けた。今ベットに戻っても眠りにつけるはずがない。
………どうか…ポッターが間に合っていますように
………どうか…セブルスが無事でいますように
目を瞑り、何度も神様に縋るように祈った。
……お願い…お願い。
死なないで…
私は気づけば、父からもらったペンダントを握りしめていた。どうやらローブのポケット中に入っていたらしく無意識に取り出していたらしい。開くと、青白い光を放ちかながら、惑星が周りだして何本もの針が時を刻むように前と変わらず動いている。
針を触っても、何も反応はしてくれない。ましてや惑星なんて触ることさえも出来なかった。
『…レイラに使う時が来て欲しくない』
父がぼそりと言った言葉を思い出して、ペンダントを閉じる。
…あれはどういう意味なんだろう。私が使える日がくるという意味なのだろうか。大体本当にこのペンダントは、時間を止めたり戻したりできるのだろうか。
考え出したらきりがなくなり、私はペンダントをポケットの中にしまった。
セブルスを待ち続けてどれぐらい経ったのか自分でも分からない。ただ暖炉の微かに燃えている火を見つめながら、私はセブルスが寮に戻ってくるのを待ち続けた。相当待ったような気がするが、それは私の体感時間がおかしいのかも知れない。でも今の私には、3時間以上待っているような感覚に襲われて、不安が押し寄せてきた。
…遅い。…あまりに遅すぎる。
……まさか…セブルスに何かあったんじゃ⁈
もう居ても立っても居られなくなった私が暴れ柳の所へ行こうと立ち上がった瞬間に、後ろの寮の扉が開く音が聞こえてきた。振り向くと人影がゆっくりと動いているのが見え、私はその人影がセブルスなのかどうか確かめるために目を凝らす。ゆっくりと歩く人影は、暖炉の火に照らされて真っ暗で見えなかった顔がよく見えるようになった。
「…セブルス。」
安堵と安心感で、私の口は勝手に彼の名前を口ずさんでいた。
セブルスは頰に怪我をしたのかガーゼを当てていた。私の顔を見た瞬間に、気まずそうに視線を逸らして何も言わず部屋に戻ろうとする。
…どうやら私を殴ったことを悪かったと思っているらしい。
部屋に戻ろうとするセブルスの後ろ姿がまるでスローモーションのようにゆっくり見える。
……お願い。
…動いて、私の体動いて。
…お願いだから、口だけでも動け!
心の中で葛藤するように、全くと言っていいほど動かない自分自身の体に命令した。
「…………………ごっ……ごめんなさい」
やっと動いた口からは、謝罪の言葉が出てきた。声は掠れていて、決して大きなものではなかったが、静まり返っている談話室には十分すぎる音量だった。セブルスは驚いたように振り返り、足を止める。セブルスが私の言葉の続きを待つかのように見つめてくるが、その後の言葉は喉に引っかかって出てこない。ただ口をパクパクさせて、私は彼の足元を見ながら必死に頭を回転させた。
…この後はなんて言えばいいのだろうか。どうしよう。
…どう言えば正解なの?
「…あっ……えっと……」
口からはそんな言葉しか出てこなくて、気まずい空気が流れた。まともにセブルスの目を見ることができずに、背中に汗が流れるのがわかった。
「………………なんで」
急にセブルスの声が聞こえてきて、顔を上げると、彼の表情が目に飛び込んできて目を見開いた。
悲しそうに苦しそうに辛そうに今にも泣き出しそうな、一言では言い表すことができないほど複雑な表情だった。
「……なんで…謝るんだ…。」
真っ黒な瞳が、いつもよりも奥深くまで広がっているように感じて、吸い込まれそうになる。
「…あれは、誰から見ても僕が悪いじゃないか。…抵抗できない人を……ましてや女の子を殴りつけるなんて……それなのに…お前は誰にもこのことを言わなかった。一層言ってくれた方が楽なのに」
セブルスは自分の掌を見つめながら、静かに話し出す。
不器用すぎるセブルスが何を伝えようとしているのか私には分からなくても、苦しそうな彼を見ていると貴方が悪いんじゃないと言わなきゃという思いに駆られた。
「…貴方だけが悪いんじゃない。あれは、私にも非はあったから………だから…謝ったの」
「……でも…あれはいくらなんでもやりすぎだ……我を失っていたとはいえ…あんなこと平然とできるなんて………まるで…まるで…」
その後の言葉は、彼の口から出てこずに言葉は途切れた。セブルスが何かを思い出したように目を瞑って、耐えるように少し震える手を握り始めたからだ。
私は少し心配になり、近づくと小さく呟くセブルスの声が聞こえてきた。
「………あいつ……みたい…だ……」
あいつという言葉が誰のことを指しているのかなんて分からない。…でも、彼が震える手を握りしめ何を耐えている姿を見て、セブルスの両親の仲を思い出した。会ったこともないし、どんな顔かも知らないけれど、セブルスの両親が不仲ということと、父親は魔法にいい印象を持っていないことは、思い出した記憶の中にあったものだった。
もし、両親が喧嘩をしていて父親が母親を一方的に殴ることがあったとしたら……………
今、彼は自分を父親と重ねている……
そんなことを考えていたら私の体は勝手に動いていて、震えているセブルスの手を握っていた。
「………私も貴方に謝ってないことがある…」
頰に一筋涙を流しているセブルスは、ゆっくりと顔を上げると私を見つめてきた。
「…去年……私は酷いことを貴方に言ったのに謝まらなかった。……だからこれでお互い様」
今のセブルスに貴方は悪くない、私がエバンズを傷つけたのが悪いんだからと言っても、彼はもっと自分自身を責め続ける。
だから、この言葉が一番セブルスの苦しみを少しでも軽くしてあげられると思った。
「………手…冷たいから、早くベッドに戻った方がいい」
セブルスの手を離して彼から離れると私は、背を向けた。
振り返り、部屋に戻るセブルスの後ろ姿を確認して私も部屋に戻る。
セブルスは、不器用だ。きっと彼は伝えたいことを上手く伝えることができない。いつも空回りして、そして後から後悔する。
人よりも繊細で傷つきやすくて不器用で、言い方がきついことだってあるけど、それでもセブルスは誰よりも優しくて強くて、人の為に自分を平気で犠牲にできる。
……そんな彼に好きになるなと言う方がよっぽど無理がある。
私じゃなくて、彼女だっただけ……
片想いなんて珍しいことじゃない。
それなのに、どうしてこんなにも涙が溢れでてくるのだろう…
エバンズだったら…セブルスを苦しみから救い出せたのだろうか…
彼女だったら、あんな表情を浮かべるセブルスを笑顔にできたのかな…
……………やっぱり
「………私じゃ……駄目なのかな……」
いくらベッドに潜り込んで目を閉じても寝ることは出来ずに、結局一睡もしないまま朝を迎えた。