夜に太陽なんて必要ない   作:望月(もちづき)

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26 沈んでいく

 

 

足が宙に浮き、ぐらりと視界が揺らぐと体の中をかき混ぜられるような感覚に襲われた。

足が地面につき、目を開けると、さっきまでいた不気味な屋敷の代わりに、大きな玄関の扉が視界に入ってくる。あんなに、苦手だった姿くらましもすっかりと慣れた私は、よく見たことのある扉をただじっと見つめた。

 

 

 

 

扉が外れているせいで、自然と家の中が見える。灯りもついていない家は、先も見えず、まるで自分の家ではないような気がして、一気に入る気が失せた。

それだというのにまるで早く中に入れと急かしているみたいに、強い風が後ろから吹いてくる。

 

 

正直入りたくはなかったが、体はそんな私の気持ちとは裏腹にまるで家族を求めるかのように勝手に動いていて、中に入っていた。

 

 

 

 

あんなに綺麗に掃除されていた我が家は、少し埃かぶっていて、明るく暖かかったのに……今はこんなにも暗く冷たい。

 

見ただけで、ここにも死喰い人が来たんだというほど分かるほどに、荒れていて何もかも原型をとどめていない。

 

 

静まり返っているだけだというのに、それだけで恐ろしく感じる。私は、自分があの本を手元に置くために家に戻ってきたことを思い出して、自分の部屋に行こうと一歩足を踏み出した。

 

 

 

 

 

『お帰りなさい、レイラ。』

 

 

突然、前の方から母の声が聞こえたような気がして、私は縋る思いで顔を上げるが、声がした方には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

……分かってる…いるはずがない…

 

 

 

私は左腕を押さえて、瞼を閉じる。

 

 

 

………本が無事かどうかを確認して、早くアウラと…レギュラスを探さないと

 

 

私が今したいことは、出来るだけ早くアウラと合流することだ。

 

そう思っても、中々体は動いてくれない。

 

 

 

『レイラ、お帰り。学校はどうだった?』

 

 

 

今度は兄の声がさっきよりもはっきりと聞こえて、瞼を開けると目の前に笑いかけてくる兄の姿があった。あまりにはっきりと見えるものだから、体が強張ったが、私は無意識に兄の名前を声に出た。

 

 

「………ノ…ア……」

 

 

 

手を伸ばして触れようとすると、音を立てずに消えていき、自分の幻覚だったということを思い知る。

 

 

『レイラ、お茶でもしないか?』

 

 

 

名前を呼ばれた方を見ると、階段の上から私に微笑んでくる父の姿が一瞬だけ見えたような気がした。瞬きをすると、いたはずの父の姿はどこにもなく、ただ崩れそうな階段だけが視界に入ってくる。

 

 

…分かってる。

 

 

いない。もういないんだから。

 

 

私が殺したんだから。

 

 

いるはずがない。

 

 

そう思うと、少し震えていた体は落ち着いて、さっき家族を殺したとは思えないほど冷静でいられた。

すぐに泣いていた頃がまるで大昔のように、涙も出なければ、なぜか悲しくなることもなかった。悲しくならないから、胸が苦しくなることもない。それだというのに、何か大切なものがぽっかりとなくなって、穴が開いてしまったように虚しい空虚感だけが襲いかかってくる。

 

 

何が原因なのか全く分からない私は、この不思議な感覚に胸に手を置いて考え込んだ。

 

 

 

「おやめください!!」

 

 

「離せ!!!僕が外に出ようが君には関係ないだろ!!!」

 

 

 

 

突然、怒鳴り声が上から聞こえてきて、私はゆっくりと顔を上げる。聞こえてくる声は聞いたことのあるもので、私が探している人の声だった。

 

 

 

………ここにいる…

 

 

 

そう思った私は声をする方に向かって歩くと、だんだんと争っているような声はだんだんと大きくなっていく。

 

 

「それはいけません!!!私は貴方のお命をお守りするとお嬢様と約束したのです!」

 

 

アウラの大きい声が聞こえてきた1番奥の部屋の扉を開けると、今にも外れそうな扉の金属が擦れる音が聞こえてくる。

 

 

突然、扉が開いたからだろう。アウラがすぐさまレギュラスの前に立ち庇うような姿勢をとったのが視界に入った。

 

 

「……お嬢様…」

 

 

私だと分かると、強張った体はだんだんと力が抜けるのが見ただけで分かった。

 

 

「……ご無事でなによりです…」

 

 

ほっとしたような表情を浮かべるアウラを見て、私は表情を変えずにゆっくりと近づく。

 

 

「……お嬢様…ご主人様は…「死んだわ。」

 

 

アウラの話を遮るように言った私の言葉を聞くと、彼の瞳孔が開いたのが分かった。

 

 

「…私以外、全員死んだわよ」

 

 

自分でもこんなにも淡々に、死んだと言えることに驚きながらも、ゆっくりとレギュラスに視線を移す。

 

 

 

「………目が覚めてばかりで、申し訳ないんだけど「どういうつもりですか?」

 

 

私の話を最後まで聞かずに、口を挟んできたレギュラスは何か怪しんでいるようにすごい剣幕で言い寄ってくる。

 

 

「僕はあのロケットを変えた後、湖に沈んだはずだ。それなのに目を覚ましたら、見知らぬ所にいるし、彼は貴女が僕を助けたとまで言いだす。」

 

 

「………えぇ…」

 

 

 

私が冷静に目を逸らさずに答えると、彼は今思っていることをどんどんに言葉にしていく。

 

 

「あそこに行くなんて、誰にも言っていない。貴女が僕を助けることなんて、……僕があそこに行くということを知っていなければ、できない。

 

…一体貴方は……何を隠しているんですか?」

 

 

 

すらすらと噛まずに言ってくるレギュラスを見つめて、私はゆっくりと口を開く。

 

 

 

「……全て貴方の言う通りよ。

 

…私は貴方があそこに行くことも、命を落とすのも知っていた。だから貴方の屋敷妖精にコインを渡したの。」

 

 

 

……私1人では…きっとこの先乗り越えられないことがある。

 

 

「……私は……少し先の未来を知ってる」

 

 

……彼の力を借りないと、きっとこの先上手くいかない。

 

 

私の言葉に、アウラは唖然な表情を、レギュラスは信じられないような表情を浮かべ、恐る恐るといった感じで声を出す。

 

 

「未来を…知っているなんて……そんなの信じられる訳がない。」

 

 

「…未来を知っているといっても…私が知っている未来が訪れるという保証もない。……でも、少なくとも今までは私が知っている通りに進んでいる。

 

 

 

 

これから起こる出来事も、命を落とす人物も……知ってる。だから、貴方を助けられたの。

……貴方が今生きていること自体が、私が未来を知っていることの証拠になるんじゃないかしら?」

 

 

ごく普通に答える私を見たレギュラスは、信じられないように声を絞り出す。

 

 

「そんなの……現実的じゃない…」

 

 

 

 

 

「貴方がごく普通に使っている魔法だって、…マグルからしてみれば、現実的じゃない。…それと同じよ。

 

現実的じゃなくても今こうして現実で起きている。」

 

 

私は、ゆっくりと彼に歩み寄って話を続けた。

 

 

 

「…貴方に提案があるの。」

 

 

黙って私を見てくるレギュラスは、どこか警戒しているように身構える。

 

 

 

「…貴方が生きているということはまだ、私達以外に誰も知らない。

 

 

………貴方は今、家に戻るに戻れないんじゃないかしら?」

 

 

 

「だから、何なんですか」

 

 

 

「………私に協力してくれないかしら?…勿論、損はさせないわ。…お互い、手を貸しあっていくのは悪いことではないと思うんだけど…」

 

 

何か考えるように黙り込んだレギュラスは、私から目を離さずに、口を開き、声を出した。

 

 

 

「………断ったら…?」

 

 

 

 

 

レギュラスの声を聞いて、私が杖を取り出すと仕草で気づいた彼は、咄嗟に杖を懐から取り出す。私は、一瞬の隙をついて、レギュラスの手から杖を弾き飛ばし、杖を向けた。

 

 

「……その場合のことは、考えてなかったけど……さっき言ったでしょ?

 

 

貴方が今生きていることは私達しか知らない」

 

抵抗できない彼に杖を向け、こんなことを言うこの状況は、誰が見ても提案というより、脅しだろう。

 

 

「……これのどこが提案何ですか?

 

 

…僕には脅しにしか見えませんけど」

 

 

 

 

そう言いながら少し笑みを浮かべるレギュラスは、私を少し見つめて口を結ぶ。

 

 

 

「………1つ教えてください。」

 

 

 

私が返事をするのを待つことなく、彼は後を続ける。

 

 

「…一体貴女は何をするつもり何ですか?」

 

 

 

 

杖を握る手を強めて、レギュラスを見つめることしか出来ず、彼の声が聞こえてきた。

 

 

 

「…………僕に協力してほしいのなら、貴女が何をするつもりなのか、教えてください。……それぐらい、僕にも知る権利があると思います。」

 

 

全く彼の言う通りだ。

 

 

今から何をするのか教えない人に、協力するはずがない。

 

セブルスを救いたいと言うだけだと言うのに、私の口からははっきりとしない言葉しか出てこなかった。

 

 

 

 

「………死なせたくない…人がいる…」

 

 

 

私の小さな声を聞いた賢い彼は、何か考え込むように少し黙ると、一瞬何か分かったように瞳が揺らぎ、口を開いた。

 

 

 

 

「………分かりました。

 

 

 

 

 

…貴女に協力します。」

 

 

 

案外簡単に承諾したレギュラスを見て拍子抜けした私は、彼を見つめた。

 

 

 

「それ以外に、選ぶ選択肢は無さそうですし」

 

 

 

 

少し笑いながら言う彼の言葉を聞いて、私はゆっくりと杖を下ろした。

 

 

 

「…それで、これからどうするんですか?」

 

 

 

 

 

私は、レギュラスの声を聞きながら荒れ果てた部屋を見て、考え込む。

 

 

……ここに彼らが来るとは考えにくいが、絶対来ないという保証はどこにもない。

 

レギュラスが、生きているということを彼らにばれたら色々と厄介だが、…とりあえず…住む場所を確保するまではここにいるしかないか…

 

 

 

 

「…とりあえず……私がいい場所を見つけるまではここで過ごすしかないわね。

……貴方は、自分が死んでいることになっていることをちゃんと頭に「レギュラス・ブラックです。」

 

 

「えっ?何」

 

 

 

突然私の話を遮って名前を言ってきた意味が分からず、聞き直すとにこりと笑みを浮かべて話しだす。

 

 

「僕にも一応名前があるので、……さっきから名前を全然呼んでくれないじゃないですか。

 

 

あっ…僕の名前、知りませんでした?」

 

 

 

「…………いや…知ってるけど…」

 

 

 

………この子……意外と面倒くさいかもしれない

 

 

 

名前で呼ぶとかそういうのは何も考えずにいた私は、そう思いながら彼を見つめた。

 

 

「じゃあ、何でもいいので貴方じゃなく、名前で呼んでください。これから長い付き合いになりそうですし」

 

 

にこにこと笑いながら言うレギュラスを見て、私は少し溜息をついた。

 

 

……別に…ここで反論する必要なんてないだろう。

 

 

「分かった……じゃあブラック「それ以外で」

 

 

私の声に被すように言ってきたレギュラスをひと睨みすると、楽しそうに言ってくる。

 

 

「その呼び名は、兄さんにしているじゃないですか。

 

…………一緒にされるのは嫌なので、別のでお願いします。」

 

 

…………さっき何でもいいと言ったのはどこの誰だろうか。

 

 

私は少し苛つきながら、ぶっきらぼうに答える。

 

 

 

「じゃあ、レギュラスでいいわね。これで満足でしょ?」

 

 

 

「はい。

 

 

…それで、僕は貴女のことを何と呼べばいいですか?」

 

 

 

 

「…別に好きに呼んでもらって構わないわよ。」

 

 

適当に受け流した私の言葉を聞いたレギュラスは、少し考え込んで、すぐにいつもの張り付いた笑みを浮かべてきた。

 

 

「分かりました。」

 

 

 

今日はあまりに色々なことがありすぎたせいで、疲れた私は、ぼろぼろのソファーに腰掛けたと同時に無意識に溜息がこぼれ落ちる。

 

 

 

「溜息をついたら幸せが逃げるそうですよ」

 

 

 

レギュラスは、私の横に腰を下ろして、少しからかうように言ってくる。

 

 

「…溜息ついていないとやっていけないわよ」

 

 

私がソファーの背に肘をついて頬杖をつきながら答えると、何か察したように彼が質問してくる。

 

 

「……ここって…貴女の家なんですか?」

 

 

「………そうね…それが何?」

 

 

 

「………こんなに荒れている理由は、……貴女の家族が死んでしまったことと関係しているんですか?」

 

 

 

レギュラスの言葉を聞いた私は、何も答えることができず、ただ頭の中でさっき見た家族の息絶える姿が浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

「…お嬢様………私から頼みごとをするなど、もってのほかだということは十分に理解しております。

 

しかし、……何故ご主人様達が……あのようなご立派な魔法使い様が命を落とすようなことになったのかを……教えてくださいませんか?」

 

 

 

私が黙り込んでいると、後ろから恐る恐るといった様子のアウラの声がはっきりと聞こえてきた。

 

 

「………何故…知りたいの?…」

 

 

振り返ることもせずに言った声は、自分でも思っていたほど低く、冷たいものだった。

 

 

「………私は…死ぬまでこの身をヘルキャット家の皆様に捧げると誓いました。

 

本来ならば、ご主人様達が死ぬまでお側にいることが、ご主人様達のお命を守ることが私の存在意義でございます。

 

……しかし、それはもう叶いません。………せめて…ご主人様達の最期を知りたいのです。何があったのか、真実を「殺したの」

 

 

 

私に必死に訴えかけてくるアウラの声を聞いていると、もうこれ以上聞きたくなくて、少し声を張り上げながら彼の話を遮った。

 

 

「…えっ…?」

 

 

あまりに突然な言葉に、アウラの戸惑ったような声が聞こえてきたが私は、気にすることなく後を続けた。

 

 

「私が殺したのよ。」

 

 

 

私の声で静まり返った部屋は重苦しく、息がしづらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アウラ、お茶淹れてきてくれない?」

 

 

あまりに居づらくなった空気を壊すために、私が頼むと、アウラが部屋を出ていく音が聞こえてきた。

 

 

 

 

レギュラスと2人っきりになっても一体彼にどこまで話せばいいのかわからずに、少し考え込んでいると、静まった部屋に声が響いた。

 

 

「…何か……殺さなければならない状況だったんですか?」

 

 

彼が、まさかその話を掘り下げてくるとは思っていなかった私は、少し驚いてレギュラスに視線を移した。彼は私の方も見ずに、ただ前を見て、後を続ける。

 

 

 

「……僕は…貴女が何も理由なしに人を殺すとは思えない」

 

 

 

はっきりと断言するレギュラスを見ていると、少し悲しくなって胸が苦しくなった。

 

 

「……貴方が思ってるほど…私は綺麗じゃないわよ」

 

 

ぼそり呟くように言った自分の声が静かに消えていくと、部屋はまた静まり返る。

 

 

 

 

「…気づいているかどうか……分かりませんが」

 

 

もう耐えきれなくなったかのように、話し出すレギュラスの声を聞いて、横を見るとさっきまで前を向いていた彼は私の方を見てきていた。

 

 

「……どうして…さっきから…左腕を隠すように握っているんですか」

 

 

彼の言葉を聞いて、自分の左腕に視線を移すと、確かに私は左腕を力強く握っていた。

 

 

…完全に無意識だった。

 

 

黙り込むしかない私を見てレギュラスは何か考え込み、そしてゆっくりと前を向いた。

 

 

「…………僕は…信用……ないですか…」

 

 

寂しそうな声が耳に入ってきて、彼の方を見ると、悲しそうな表情を浮かべる姿が目に入ってきた。

 

 

「……………そういう…ことじゃない……」

 

 

そう言うので精一杯な私は、左腕を力強く握りしめるしかなかった。

 

 

「………話してくれないと…協力したくても…できませんよ」

 

 

あんなに私よりも小さく、子供だと思っていたレギュラスは、今では歳が変わらないと思うほどに大人じみているように感じた。私よりも、先に死喰い人になった訳だし、きっと想像できないようなことだって乗り越えてきたんだろう。

 

 

 

困ったように笑いかけてくる彼を見て、私はぎゅっと服を握りしめながらゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「…自分が生き残るために家族を殺して、死喰い人になった。

 

…ただそれだけのことよ。」

 

 

 

レギュラスが何か言おうとした時、アウラが部屋に入ってくる音に遮られて彼が口を閉じたのが見えた。

 

 

「お嬢様、申し訳ありません。茶っ葉がこれしかありませんでした。」

 

 

「…こんな時だもの。……お茶できるだけでもましでしょ。」

 

 

謝りながら私の前にティーカップを置く、アウラに言って、少し変わった香りの紅茶を口に含んだ。

 

 

「……変わった香りですね。」

 

 

紅茶を飲んだレギュラスは飲んだことがないのか、ぼそりと小さく独り言のように言った。

 

 

「…その茶っ葉は……ご主人様のお気に入りでして、何か大切なことがある度に必ずお飲みになっていたものです。とても貴重なものだと、私に話してくれました。」

 

 

アウラの言葉を聞いた瞬間、頭に紅茶を飲みながらゆったりと過ごす父の姿が自然と浮かび上がってくる。私は、父の姿を消し去るように、2人に別の話を切り出した。

 

 

「できるだけ早く見つけるように努力するけど、いいところが見つかるまではここで我慢してくれるかしら?」

 

 

「えぇ…大丈夫ですよ」

 

 

レギュラスは紅茶を飲みながら、呑気に答える。

 

 

「……貴方が生きているということは、私達以外の人には知られないように。分かった?」

 

「分かってますよ。」

 

 

横から聞こえる彼の声を聞いて、私は飲み終わったティーカップを机の上に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

隣に座っていたレギュラスは、いつの間にか寝ていて、部屋には物音ひとつせず、彼の寝息だけが聞こえてくる。夜にしては明るいと思うほど、月明かりは眩しくて、私はちらりとレギュラスに視線を移した。

体を丸めて、眠っている姿を見るとまだ少しだけ子供らしい表情を浮かべながら、眠りについている。

 

 

 

 

「お嬢様…」

 

 

私を呼ぶ小さな声が聞こえた方を振り向くと、アウラが何か大事そうに両手で持ちながら立っていた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

レギュラスを起こさないように、声を押し殺しながら、聞くと彼は私の方にゆったりと腕を伸ばして両手の中にあるものを見せてくる。

 

 

「これを…」

 

 

アウラの手にあるペンダントは、月明かりに照らされて少しきらきらと輝いているように見えた。

 

 

「………ありがとう…。」

 

 

私はペンダントを受け取り、首からかけて服の中にしまいこむ。

 

 

「アウラ、貴方も寝ていいのよ。」

 

 

「それは、なりません。……貴方様を差し置いて私なんかが眠りにつくなど」

 

 

「………私は眠れないし、…それに貴方には体力をつけといてもらいたいの。ほら、早く寝なさい」

 

 

私が優しくアウラの背を押すと、何か迷ったような彼の声が聞こえてきた。

 

 

「……私に………お嬢様の…苦しみを背負うことは……できませんか?…」

 

 

私の方を見るアウラは少し瞳に涙を浮かべていた。私は少し笑みを浮かべるしか出来ず、何も答えられなかった。

 

 

「……お嬢様は…そんな笑みを浮かべる方じゃなかったはずです。

 

 

 

 

………今の貴女はまるで…別人のように感じます。」

 

 

アウラの言葉に少しドキッとしながらも、私は口を開いて、彼の頭に手を置いた。

 

 

「……私は何も変わってなんかないわよ。

 

 

 

アウラ、貴方には…私よりも、レギュラスを守って欲しいの。」

 

 

アウラは私の言っている意味が分かっていないようにただ私の顔を見つめてくる。

 

 

「彼が生きているということは私達以外に知られてはいけない。彼が命をかけてまで守りたいものを、危険に晒すことなんて、できないでしょ?」

 

 

私は優しくアウラの頭を撫でながら、後を続ける。

 

 

「……貴方の主人を殺した私に…もう手は貸したくない?」

 

 

私が笑いかけながら問いかけると慌てたように、否定してくる声が聞こえてきた。

 

 

「そのようなことを言い出すのは、おやめください。ご主人様がいなくなった今、私にとっての主人はもう貴女様しかいないのです。

 

 

 

……どうか、私を独りにしないでください」

 

 

何か勘違いしたアウラの声は少し大きくて、私は落ち着かせるように声を出した。

 

 

「………そう……じゃあよろしくね。アウラ」

 

 

私の言葉を聞いた途端、アウラはほっとしたような表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日が過ぎたが、私は未だにいい場所が見つけられずにいた。そろそろ見つけないとレギュラスが生きていることが彼らにばれてしまうのも時間の問題だ。

 

 

荒れはれた家に帰り、今にも崩れそうな階段を上がって奥の部屋に入るといつも通りレギュラスがにこりと笑いかけてくる。

 

 

「おかえりなさい。…良い場所は見つかりましたか?」

 

 

「残念ながら、どこもかしこもすぐに見つかってしまいそうな場所ばかりね」

 

 

……そろそろ、一旦この場所を離れた方がいいかも知れない。

 

 

 

彼が私の帰りを待ち、出迎える姿はすっかりと慣れたもので、私は平然と返した。

 

 

「ほら、また癖が出てますよ」

 

 

突然そう言われて、左腕に視線を移すと彼の言う通り、私は左腕を握っていた。あれから、無意識に左腕を触るのは治るどころか癖になってしまい、彼曰くよく触っているらしい。

 

 

「そんなことでは、あの人は騙せませんよ」

 

 

少し笑いながら言うレギュラスの瞳の奥は、明らかに私よりも何かを知っているような色を宿していた。

 

 

「……ひとつ相談なんだけど」

 

 

私から相談されるとは思っていなかったんだろう。少し間が空いて、レギュラスの戸惑ったような声が聞こえてきた。

 

 

「…えぇ……何ですか」

 

 

「こんなにも集まらないものなの?」

 

 

あれっきりあの人の顔も見ていなければ、何か命じられることもなく、何となく不安だった。

 

 

「まぁ……何か大切な用があれば、集められる程度ですし、自分で出向いて報告するのがほとんどですからね」

 

 

「……そう…」

 

 

私が左腕を見て、小さく呟くとアウラが部屋に入ってくる足音が聞こえてきた。

 

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。…丁度お茶を淹れたところですが、どうなさいますか?」

 

 

アウラの尋ねてくる声を聞こえ、答えようとすると外から何人かの足音が聞こえてきた。その瞬間に部屋には緊張感が走り、一気に静まり返る。

 

壊れている床を人が歩く音が聞こえてきて、私は静かに杖を握った。

 

 

「………アウラ、一旦レギュラスを連れて、ここを離れて」

 

 

 

 

「…どうかご無事で…」

 

 

 

アウラは、私の言うことを素直に聞き入れてレギュラスの手を握るとばちんという音を立て、消えていった。

 

2人を見送った後、私はもう外れそうな扉をゆっくりと開けて、玄関へと向かった。

 

 

死喰い人だろうか。……そうだとしたら、一体何のためにこんな所へ来たというのだろう。

レギュラスが生きていることが彼らにバレてしまったとしたら、厄介だ。

 

私は唾を飲み込みながら廊下を歩き進め、二階の手すりにつかまりながら覗き込むと玄関前にいる人影が目に入った。

 

 

……思ったより…いる…

 

 

そう思いながら、階段を下りようすると1人の人影が明らかに私の方を見上げているのに気がついた。何も言わずに杖を向けてくるその人影が視界に入った瞬間、咄嗟に身構える。

 

襲いかかってきた赤い閃光を杖を一振りして弾き飛ばすと、破裂音がその場に鳴り響いた。そうなれば、そこにいる全員が私の存在に気づくわけで、杖を向けてくる。

 

流石にひとりで防げる自信もないが、とりあえず次、襲いかかってくるであろう攻撃に身構えると、張り上げた声がその場に響いた。

 

 

「止めろ!!!すぐに杖を下ろせ!!!」

 

 

どこかで聞いたことのあるような男の人の声を聞いた人影が、ゆっくりと杖を下ろしていく。

 

 

 

「………安心してくれ。…私達は敵じゃない」

 

 

私を安心させるように話しかけてくる声を聞いても、杖を下ろせるはずがない。

 

 

「……名乗らない人を信用できる訳がありません。」

 

 

私がそう言い放つと、男の人は少し咳払いをしてゆっくりと近づき、杖先を灯らせた。

 

 

「失礼……私は、ハロルド・ミンチャム。君の父親に頼まれてここにきた」

 

 

私を見上げながら名を名乗る男の人は、流石の私でも顔も名前も知っている人物だった。

 

 

………何で…魔法大臣がこんな所に…

 

 

日刊予言者新聞で顔も見たことあるが、直接話したことなんてない。

 

 

 

「少し、君に話さなければならないことがあるんだ。下りてきてくれないか?」

 

 

私は言われた通り、階段を下りて彼の前に立つと、周りにいる人たちの中に見覚えのある顔があることに気づいた。

 

 

アラスター・ムーディ……

 

 

彼がいるということは…この人たちは全員闇払いの可能性が高い。ムーディは、何か探るように私をじっと見つめてくる。

 

 

「……君が、セシル・ヘルキャットの娘さんで間違いないね?」

 

 

「……そうですが…なぜ、父のことを知っているんですか?」

 

 

「……ここで話すのも何だから、少し移動しよう。」

 

 

そう言いながら差し出してきた手を握ろうとした瞬間に、左腕が少し熱く熱を帯びだし、何故か屋敷の風景が脳裏に過ぎる。本能的に呼び出されていると感じても、今彼らが目の前にいる状態で姿くらましなんかできるわけもない。

 

中々握ろうとしない私を見た彼が、心配そうに問いかけてきた。

 

 

「姿くらましは苦手かな?」

 

 

「……いえ、大丈夫です。」

 

 

 

 

タイミングが悪すぎる左腕の違和感を感じながら差し出してきた手を握ると、視界が歪み、いつもの気持ち悪い感覚が襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宙に浮いていた足が地面を捉えた感覚を感じてゆっくりと目を開けると、何人もの魔法使いらしい格好をした人たちが忙しそうに歩く姿が目に飛び込んでくる。

 

両方にある暖炉のようなものからは、緑色の炎が舞い上がったと思うと、ローブをなびかせながらゆっくりと人が現れていた。

 

 

私は慌てて先を歩くミンチャムの後をついていきながら、周りを見回した。

 

 

やっぱり私の記憶通りで、広げた大広間の中心には大きな石像と噴水が視界に入ってくる。

 

 

 

 

 

気づけば、応接間のような部屋に案内されていて、ソファーに腰掛けるように言われ、目の前でローブを脱ぐ彼を目で追いかけながら私は聞きたいことを口走った。

 

 

「……一体父から何を頼まれたというんですか。」

 

 

「そんなに慌てなくても、きちんと一から説明するよ。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着きなさい。」

 

 

そう言われて、机に視線を移すと気づけばティーカップが置かれていた。ミンチャムにじっと見られていることに気づき、私は渋々お茶に口をつけた。

 

「……ところで、……他の人の居場所は知っているかい?」

 

座りながら問いかけてきた彼の声が耳に入ると、私はゆっくりとティーカップを置く。

 

 

……父や母、兄のことを言っているんだろうか。

 

 

そうだとしたら……一体何と言えばいいのだろう…。

 

 

 

 

 

「すまない。…今のは忘れてくれ」

 

黙り込む私を見て、何か悟ったように彼が謝ってくる。話を変えるように、お茶を一口飲むミンチャムは、私に話しかけてきた。

 

 

「あまり時間もないから、単刀直入に聞くけど…………魔法省に身を置く気はないかな?」

 

 

 

思いもしなかった言葉に、私は聞き返すことしかできなかった。

 

 

「…意味が分かりません。」

 

 

「君のお父さんから、頼まれたんだ。もし自分がいなくなった時には、子供達の安全を確保してほしいと。

 

……君は今住むところもないんじゃないか?」

 

 

私が何も答えずにいると、ミンチャムは後を続けていく。

 

 

「……君が、魔法省に居てくれると私だけではなく、他の人達の目もあるから安全も確保できる。」

 

 

今、私はあの人に信用されていない。あの人の信用を得るために、この状況を利用すれば今後動きやすいのかもしれない。

 

淡々と説明する彼を見ながら、頭の中で浮かぶ色々な考えを整理しながら耳を傾ける。

 

魔法省に身を置けば、情報も入ってくるだろうし、あの人のスパイとして魔法省に潜り込むといえば、少しずつ信用を得られるかもしれない。

 

 

 

「……何があったかは、家の様子を見て、大体予想はつく。………君ひとり、野放しにして死喰い人に襲われるのは確実だ。

 

 

………君にとって悪いことではないとは思うけど……どうかな?」

 

 

 

 

変にここで断る必要もないだろう。

 

 

 

私に問いかけてくるミンチャムを見つめながら、私はゆっくりと口を開いた。

 

 

「………分かりました。……貴方の言う通りにします。」

 

 

私に断れるとでも思っていたのか、彼はほっとしたように、表情筋が緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は適当に誤魔化して、魔法省から出ると人通りが少ない通りへと急いで移動する。路地裏に入り、周りに誰もいないことを確認して、服の袖を捲り上げてみると、変わらず黒い印がはっきりとついていた。もうあの違和感はないが、今からでも行った方が良いだろう。

 

もう一度周りにマグルがいないかを確認して、姿くらましをした。

 

 

 

 

目にしただけで怖かったのに、今ではすっかりと慣れて平然と屋敷の中へと入っていく自分の体が、自分のものではない気がした。

 

中に入り、きっともう集まっているであろう1番奥の部屋へと歩き進める。立派な扉の前に立つと中から微かに声が聞こえてくる。

 

 

「………裏切り者は……消せば良いまでだ」

 

 

聞こえてきた冷たい声に、私の体は震えることなく、自分の意思とは裏腹に扉に手をかけ、中へと入っていた。一斉に私の方を見てくる全員の視線を感じながら、口を開く。

 

 

「申し訳ありません。……どうしても抜け出せない状況でしたので、遅れてしまいました」

 

 

見たところによると、集まっているのは全員ではないらしく、数人しか集まっていなかった。

 

椅子に座り、私の方を見てくる人達の顔を一人一人確認する。私が知っている人は、ルシウス…それから、バーテミウス・クラウチ・ジュニアらしき男、ベラトリックス………そして…セブルスぐらいだ。

 

 

 

 

薄暗い部屋を少し歩き、目の前に座っているあの人の目を見つめながら、話しかけた。

 

 

「…1つご報告があるのですが、宜しいですか?」

 

 

 

私が問いかけると、あの人は少し口角を上げてゆっくりと答える。

 

 

「…良いだろう。話してみろ」

 

 

 

「………実は、先程成り行きで魔法省に身を置くことになりました。」

 

 

 

その言葉に少し反応みせるあの人を見つめながら、後を続けた。

 

 

「…父が、生前魔法大臣に頼んでいたようでして、……私としてはこの状況を利用して、貴方様のお力になりたいと考えているのですが、どういたしましょうか?」

 

 

嘘の言葉をつらつらと吐き出していく私は、自分の体じゃない気がするほど、淡々としていた。

 

 

……こんなにも…嘘がつけるというのなら……

 

 

 

 

どうして………あの時…つけなかったんだろう

 

 

 

「残念だが、その必要はない」

 

きっぱりと言い捨ててくるあの人の声が耳に入ると、頭に浮かんだことは消えていった。

 

思ってもいなかったことを言われた私は、嫌な予感がして、あの人から目を離さないようにしながら慎重に声を出す。

 

 

「…………貴方様にとって良い話だと思うのですが」

 

 

視界の端にセブルスの姿を入れながら問いかけると、ただ彼の姿を見ただけだというのに、緊張したように少し鼓動が速くなった。

 

 

……ひさびさに顔を見たからだろうか。

 

 

 

………こんな時にセブルスの顔を見るだけで、少し胸が暖かくなるなんて、もう私はどうしようもない。

 

 

 

 

「……貴様に1つ聞いておきたいことがある。」

 

 

「何でしょう」

 

 

 

 

少し笑みを浮かべながら、聞き直すと腰掛けているあの人はゆっくり口を開いた。

 

 

 

「エド・ヘルキャットはどこにいる。」

 

 

 

私は、思えがけない言葉に聞き直すしかなかった。

 

 

「……それは…どういった意味でしょうか?

 

 

…叔父は、死んだのではないのですか?」

 

 

確かにあの時、叔母が死ぬ直前に助けられなかったと言っていた。

 

 

私の言葉が響いた部屋は、静まり返り、重い空気だけが流れる。

 

我慢できなくなったベラトリックスが、椅子から立ち上がり私にズカズカと歩み寄りながら声を張り上げてきた。

 

 

 

「黙って聞いておけば、さっきからデタラメばかりよくもまあそんなに言えるものだな。お前があいつを庇っているんだろ!!!!!

さあ、早く居場所を言いな!!!」

 

 

「何のことだか…さっぱり分からないのですが………その様子だと、叔父は生きているんですね?」

 

 

私の言葉を聞いたベラトリックスは、怒りでなのか、体を震わせると、私に杖を向けてくる。

 

腰掛けているあの人に視線を移すと、何も言わず、私の様子を見ているだけだった。

 

 

「………信用されていないのは…分かっていましたが……まさかここまでされていなかったとは…

 

あの時……貴方様は私を僕にしてくれるとおっしゃいましたよね?」

 

 

「あぁ……確かに言ったな。………だが、信用したとは言っていない」

 

 

感情がこもっていない声を聞いた私は、少し可笑しくて、ついつい笑みがこぼれた。

 

 

「……では何故、信用していない私をわざわざお呼びになったのですか?」

 

 

「口を慎め!!!」

 

 

隣から聞こえるベラトリックスの怒鳴り声が鬱陶しく感じて、私は彼女を睨みつけた。

 

 

「今から死ぬ人間がそんなこと知らなくてもいいだろう」

 

 

口角を上げながら、言ってくるあの人の冷たい声が耳に入ってきても怖いと思うことはなかった。

 

 

「…………確かに…そうですね。

 

 

……1つ言っておきますが……私は叔父の居場所など知りませんよ。」

 

 

 

 

笑いながら言った私を見たセブルスの表情が少し歪み、眉間の皺が深くなったのが見えたが、私は後を続けた。

 

 

「…死ぬ前に、1つご質問があるのですが、……叔父を殺してここに体を持ってくれば、……私のことを信用してくださるという意味でしょうか?」

 

 

 

ここで殺されるのは、何としてでも避けなければならない。

 

 

「貴方達の言う通り、叔父が生きているというのなら、…私の前に姿を現わす自信があります。叔父には随分と可愛がってもらいましたし、彼はまだ私が貴方様の下についたとは知らないはずです。」

 

 

スラスラと出てくるその場しのぎの言葉を繋いでいく。

 

 

「……そんなの信じられる訳がないだろ?…そう言って貴様もあいつのように尻尾巻いて逃げるに決まっている。」

 

 

「同じにしないでくれませんか?」

 

 

口を挟んでくるベラトリックスを睨みつけて、あの人に視線を戻した。

 

 

「…私に任せてくだされば、貴方様のお望みどおりになりますし、私も晴れて貴方様に信用される。

お互い、良い事ばかりではありませんか?………」

 

 

 

 

ここで死ぬわけにはいかない。ここで死んだから意味がない。

 

 

 

 

 

 

私の声が響いた部屋は静まり返り、最初に口を開いたのはあの人だった。

 

 

「………ベラトリックス…杖を下ろせ」

 

 

彼女は少し戸惑いながらも、大人しく従った。

 

 

「…………良いだろう。…貴様の提案をのんでやる。」

 

 

「…ありがとうございます。」

 

少しほっとしながらお礼を言う私の声に被せるように、冷たい声が聞こえてきた。

 

「だが、………貴様が殺す気がないと俺様が判断した場合、…直接手を下す。もちろん、逃げようとした場合も例外なくだ。…いいな?」

 

 

「勿論です。」

 

 

 

自分でも信じられないほどに、平然と笑みを浮かべながら答える私は、どんどんと底に沈んでいっているように感じた。

 

 

 

 

先も見えない真っ暗な闇に沈むのは、決して良い気分にはならない。

 

…息もしづらくて、生き辛くて、……冷たい。

 

 

でも……貴方と一緒なら………

 

 

 

セブルスが側に居てくれるのなら…

 

 

 

 

沈むのも…そんなに悪くない。

 

 

 

 

こんなことを思ってしまう私は、可笑しいのだろうか。

 

 

 

こんなにも1人の人間を愛して、執着するのは普通じゃないのだろうか。

 

 

 

 

でもきっと……

 

 

大切な人を…愛している人を守りたいというこの感情は…間違ってない。

 

 

 


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